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第十一章 名誉騎士と宝石の角
面倒な王族たち
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お披露目会への鉄の鳥の乱入は箝口令が布かれたものの、貴族達の何名かは操縦席ではしゃぐクルストの姿を見ており、国王乱心の噂は瞬く間に貴族達の間に広まる事となった。
外交はもとより、王家の一員として国を支えて来た公爵のガッドは現在、その事に頭を悩ませていた。
「すまんかったのぢゃ。反省しているのぢゃ」
「反省しているのは結構ですが……困った事になりました。一部の貴族の中には国王の代替わりを望む声も出ています」
「あの、公爵様、王様はこんな状態ですし、代替わりを考えても良いのでは?」
お披露目会は取りやめとなり事件の発端となった健太郎の他、ミラルダ達はガッドに呼ばれ王の寝室に集められた。
ミラルダに叱られた事が堪えたのか、ベッドに座ったクルストは少し怯えた目で発言したミラルダに視線を送っている。
「代替わりつってもなぁ……」
「何か問題が?」
ミラルダの言葉に事情を知るアドルフが口をへの字に曲げる。
「爺さんの息子の第一王子ロレントは野心家でな、優秀な冒険者による軍の設立を議会で提案するような奴だ。これまでは爺さんを中心とした穏健派がその提案を突っぱねて来たが……」
「冒険者で軍隊を……王子様は戦争を望んでいるのですか?」
「積極的にどこかに攻め入ろうって訳じゃないみたいだが、その力によって周辺国に睨みを効かせたいみたいだぜ」
「はぁ……そんな事をされたら仕事がやりにくくで敵わんよ」
ラーグ王国の外交の長であるガッドはため息を吐いて首を振った。
「武力を背景にした周辺国への威圧か……付き合い難い国になりそうだな」
「まったくだ。俺達としちゃあ、温厚な第二王子のルクドランに王を引き継いでもらいたいが、継承順位としちゃロレントが上でなぁ」
アドルフやガッド、彼らが先程話題に出たクルストを中心とした穏健派なのだろう。
アドルフの困り顔を見ると第一王子のロレントを推す声も貴族の中では多い様だ。
「陛下がご健勝であればもう少し時間も稼げたのだが……」
「ふぅ……こりゃ、急いでエルダガンドに行って爺の頭を治療できる医者を連れて来た方が良さそうだな」
「コホーッ」
だなッ。じゃないとそのロレントって王子様に軍隊に組み込まれちゃいそうだ。
「はぁ、あたしら平和にのんびりやりたいだけなんだけどねぇ」
「すまない。本来であれば国としてエルダガンドに交渉すべきだろうが、あの国にも密偵は送っているものの、表向きは国交がなくてな……最初の接触が王の治療を願う物というのは避けたいのだ」
「今後の関係性と言う事か?」
「そうだ。最初に借りを作ってしまうと、今後の付き合いは常にラーグが下手に出る事になるだろう」
「ふぇえ……国同士の付き合いも面倒だねぇ……」
パムの呟きにガッドとアドルフは自嘲気味な苦笑を浮かべた。
「ともかく、あたし等はエルダガンドに向かうとするかねぇ」
「だな。まずはグリゼルダの角の話をレベッカの仲間に聞く。その後に頭の医者、あとは鉄道って奴に乗るって感じか」
「俺の鉄道の話は出来たらでいいぜ。それより爺さんの医者の事、よろしく頼む」
「お主らはどこかに行くのか?」
それまでベッドに座り黙って話を聞いていたクルストが、健太郎達に視線を向けながら尋ねて来た。
「この者達は陛下の為に魔人の国、エルダガンドへ向かうのですよ」
「爺の為ってだけじゃねぇがな」
「予の為……ぢゃったら予も行きたいッ!!」
「なッ!? 駄目に決まっているでしょうッ!!」
「なんでぢゃッ!! 予の為に民が動いておるのにじっとして等いられんぞッ!!」
「だったら代わりに僕が彼らに動向するよ」
声の主に目をやれば、そこには長い金髪を後ろで纏めた青灰色の瞳の少年、リグナリオが寝室のドアを開け姿を見せていた。
「リグナリオ、君も行かせる訳にはいかない」
「大叔父上、僕も伯父上の武力政策には反対なのですよ。ラーグには平和であって欲しいですから」
「いきなり出て来てお前は誰ぢゃッ!?」
「お爺様、あなたの孫のリグナリオですッ!?」
「お前など知らんッ!! それよりミシマ、予を連れて魔人の国に行くのぢゃッ!!」
ベッドから飛び降り手を握るクルストに、健太郎は困ったなぁと頭を掻く。
「コホー……」
お願いは聞いてあげたいけど、王様を連れ歩くのはちょっと……。
「ちょいと、王様」
「うっ……なんぢゃ?」
「ちょいとだと? 王に対して無礼ではないかッ!?」
「お前は黙っておるのぢゃッ!! この者は怒らせると怖いのぢゃ!!」
ミラルダの物言いに声を荒げたリグナリオをクルストが制止する。
ボケと幼児退行が入り混じった国王、その国王を気遣う孫、その孫を赤髪の半獣人を恐れ制止する国王。
訳の分からない状況に嘆息しつつ、ミラルダは言葉を紡ぐ。
「はぁ……王様、あんた、どうしてもあたし等と行きたいのかい?」
「行きたいのぢゃッ!! 王宮には刺激が無くて退屈なのぢゃッ!! もっとミシマの変形を見たいのぢゃッ!!」
「民の為って言ってたけど、退屈しのぎかい……んで、王子様もついて来たいのかい?」
「王族の僕になんて口の利き方だッ!?」
「止めるのぢゃッ!! こやつを怒らしてはいかんのぢゃッ!!」
「お爺様……クッ、本当はお爺様の代わりに同行して、君達が真に名誉騎士に相応しいのか見るつもりだったけど……」
祖父に叱責され顔を歪めながら、リグナリオはミラルダに答える。
その様子を見ていたアドルフがおもむろに口を開いた。
「どっちも連れてきゃいいんじゃねぇか?」
「アドルフッ!? 王と王位継承権を持つ王族二人を他国へやるなど!?」
「まぁ、聞けよ、ガッド。爺さんの頭の治療にエルダガンドの医者を呼んだら、結局、ラーグの要人が治療を受けた事になっちまうんじゃねぇか?」
「……確かに、身分を隠していようと、ある程度高位の貴族であると気付かれるだろうな……」
「だろう? だが、こっちから出向けばどうだ? 金持ちの外国人ぐらいで通るんじゃねぇか?」
アドルフの言葉にガッドはうめき声を上げながら眉を寄せた。
「うぅ……しかし……」
「こいつはロレントへの牽制でもある。流石に王不在の状態で王位の継承は行えねぇ、違うか?」
「だが……」
アドルフは渋るガッドの首に右腕を回し、耳元で囁く。
「どの道、爺さんが正気に戻らなきゃ、遅かれ早かれロレントが次の王になる。そいつは俺もお前も望んじゃいねぇだろ?」
「それはそうだが……」
「ミラルダ、爺さんと坊主を必ず守ると誓えるか?」
「……冒険者が軍隊に組み込まれる。そんな国にはあたしもなって欲しくはないので、出来る限りの事はしたいと思います」
「ギャガン、グリゼルダ、パム。お前達はどうだ?」
アドルフは不敵な笑みを浮かべながらギャガン達に視線を向けた。
「俺は軍人やってるのに飽きたから、この国に来たんだ。また同じ事させられるぐらいなら、爺とガキぐらい守ってやるよぉ」
「私もギャガンと同じだ。軍は……軍人はもうやりたくない」
「わたしもわたしもッ!! 冒険者は自由でないとッ!!」
「へへ、やっぱそうだよな……最後にミシマ、お前はどうだ?」
そう言うとアドルフはクルストに手を握られた健太郎に目を向けた。
「コホー……」
俺は……俺も戦争は嫌だな。それに軍隊なんて上下の厳しそうな組織に組み込まれたら、ストレスでどうにかなっちゃいそうだ。
「……ストレスでどうにか……」
健太郎の言葉を聞いたミラルダの脳裏に、軍の施設を破壊し暴れまわる健太郎の姿が思い浮かんだ。
そんな事になったら、健太郎を止められる者は恐らくこの世に存在しないだろう。
そんなミラルダの不安を他所に、親指を立てた手を突き出した健太郎を見てアドルフは頷きを返す。
「リグナリオ、お前は爺さんの面倒を見てやれ」
「アドルフ……前々から気になっていたが、貴様は王族をなんだと……」
「あん、お前とは喧嘩の仕方を教えてやった仲じゃねぇか」
「グッ……確かに貴様には借りがあるが……」
「まっ、とにかくよ。お前と爺さんはラーグの大商会の隠居と孫、ミシマ達はその大商会から依頼を受けた護衛って事で頼むわ。報酬は弾むからよッ」
子供に戻り引きそうにないクルスト、そのクルストの身を案じるガッド、そしてクルストの孫のリグナリオ。
面倒な三人の意思を取りまとめ、面倒事を健太郎達に任せたアドルフは満足そうに笑い、その笑みを見たミラルダ達は苦笑を浮かべる他なかった。
外交はもとより、王家の一員として国を支えて来た公爵のガッドは現在、その事に頭を悩ませていた。
「すまんかったのぢゃ。反省しているのぢゃ」
「反省しているのは結構ですが……困った事になりました。一部の貴族の中には国王の代替わりを望む声も出ています」
「あの、公爵様、王様はこんな状態ですし、代替わりを考えても良いのでは?」
お披露目会は取りやめとなり事件の発端となった健太郎の他、ミラルダ達はガッドに呼ばれ王の寝室に集められた。
ミラルダに叱られた事が堪えたのか、ベッドに座ったクルストは少し怯えた目で発言したミラルダに視線を送っている。
「代替わりつってもなぁ……」
「何か問題が?」
ミラルダの言葉に事情を知るアドルフが口をへの字に曲げる。
「爺さんの息子の第一王子ロレントは野心家でな、優秀な冒険者による軍の設立を議会で提案するような奴だ。これまでは爺さんを中心とした穏健派がその提案を突っぱねて来たが……」
「冒険者で軍隊を……王子様は戦争を望んでいるのですか?」
「積極的にどこかに攻め入ろうって訳じゃないみたいだが、その力によって周辺国に睨みを効かせたいみたいだぜ」
「はぁ……そんな事をされたら仕事がやりにくくで敵わんよ」
ラーグ王国の外交の長であるガッドはため息を吐いて首を振った。
「武力を背景にした周辺国への威圧か……付き合い難い国になりそうだな」
「まったくだ。俺達としちゃあ、温厚な第二王子のルクドランに王を引き継いでもらいたいが、継承順位としちゃロレントが上でなぁ」
アドルフやガッド、彼らが先程話題に出たクルストを中心とした穏健派なのだろう。
アドルフの困り顔を見ると第一王子のロレントを推す声も貴族の中では多い様だ。
「陛下がご健勝であればもう少し時間も稼げたのだが……」
「ふぅ……こりゃ、急いでエルダガンドに行って爺の頭を治療できる医者を連れて来た方が良さそうだな」
「コホーッ」
だなッ。じゃないとそのロレントって王子様に軍隊に組み込まれちゃいそうだ。
「はぁ、あたしら平和にのんびりやりたいだけなんだけどねぇ」
「すまない。本来であれば国としてエルダガンドに交渉すべきだろうが、あの国にも密偵は送っているものの、表向きは国交がなくてな……最初の接触が王の治療を願う物というのは避けたいのだ」
「今後の関係性と言う事か?」
「そうだ。最初に借りを作ってしまうと、今後の付き合いは常にラーグが下手に出る事になるだろう」
「ふぇえ……国同士の付き合いも面倒だねぇ……」
パムの呟きにガッドとアドルフは自嘲気味な苦笑を浮かべた。
「ともかく、あたし等はエルダガンドに向かうとするかねぇ」
「だな。まずはグリゼルダの角の話をレベッカの仲間に聞く。その後に頭の医者、あとは鉄道って奴に乗るって感じか」
「俺の鉄道の話は出来たらでいいぜ。それより爺さんの医者の事、よろしく頼む」
「お主らはどこかに行くのか?」
それまでベッドに座り黙って話を聞いていたクルストが、健太郎達に視線を向けながら尋ねて来た。
「この者達は陛下の為に魔人の国、エルダガンドへ向かうのですよ」
「爺の為ってだけじゃねぇがな」
「予の為……ぢゃったら予も行きたいッ!!」
「なッ!? 駄目に決まっているでしょうッ!!」
「なんでぢゃッ!! 予の為に民が動いておるのにじっとして等いられんぞッ!!」
「だったら代わりに僕が彼らに動向するよ」
声の主に目をやれば、そこには長い金髪を後ろで纏めた青灰色の瞳の少年、リグナリオが寝室のドアを開け姿を見せていた。
「リグナリオ、君も行かせる訳にはいかない」
「大叔父上、僕も伯父上の武力政策には反対なのですよ。ラーグには平和であって欲しいですから」
「いきなり出て来てお前は誰ぢゃッ!?」
「お爺様、あなたの孫のリグナリオですッ!?」
「お前など知らんッ!! それよりミシマ、予を連れて魔人の国に行くのぢゃッ!!」
ベッドから飛び降り手を握るクルストに、健太郎は困ったなぁと頭を掻く。
「コホー……」
お願いは聞いてあげたいけど、王様を連れ歩くのはちょっと……。
「ちょいと、王様」
「うっ……なんぢゃ?」
「ちょいとだと? 王に対して無礼ではないかッ!?」
「お前は黙っておるのぢゃッ!! この者は怒らせると怖いのぢゃ!!」
ミラルダの物言いに声を荒げたリグナリオをクルストが制止する。
ボケと幼児退行が入り混じった国王、その国王を気遣う孫、その孫を赤髪の半獣人を恐れ制止する国王。
訳の分からない状況に嘆息しつつ、ミラルダは言葉を紡ぐ。
「はぁ……王様、あんた、どうしてもあたし等と行きたいのかい?」
「行きたいのぢゃッ!! 王宮には刺激が無くて退屈なのぢゃッ!! もっとミシマの変形を見たいのぢゃッ!!」
「民の為って言ってたけど、退屈しのぎかい……んで、王子様もついて来たいのかい?」
「王族の僕になんて口の利き方だッ!?」
「止めるのぢゃッ!! こやつを怒らしてはいかんのぢゃッ!!」
「お爺様……クッ、本当はお爺様の代わりに同行して、君達が真に名誉騎士に相応しいのか見るつもりだったけど……」
祖父に叱責され顔を歪めながら、リグナリオはミラルダに答える。
その様子を見ていたアドルフがおもむろに口を開いた。
「どっちも連れてきゃいいんじゃねぇか?」
「アドルフッ!? 王と王位継承権を持つ王族二人を他国へやるなど!?」
「まぁ、聞けよ、ガッド。爺さんの頭の治療にエルダガンドの医者を呼んだら、結局、ラーグの要人が治療を受けた事になっちまうんじゃねぇか?」
「……確かに、身分を隠していようと、ある程度高位の貴族であると気付かれるだろうな……」
「だろう? だが、こっちから出向けばどうだ? 金持ちの外国人ぐらいで通るんじゃねぇか?」
アドルフの言葉にガッドはうめき声を上げながら眉を寄せた。
「うぅ……しかし……」
「こいつはロレントへの牽制でもある。流石に王不在の状態で王位の継承は行えねぇ、違うか?」
「だが……」
アドルフは渋るガッドの首に右腕を回し、耳元で囁く。
「どの道、爺さんが正気に戻らなきゃ、遅かれ早かれロレントが次の王になる。そいつは俺もお前も望んじゃいねぇだろ?」
「それはそうだが……」
「ミラルダ、爺さんと坊主を必ず守ると誓えるか?」
「……冒険者が軍隊に組み込まれる。そんな国にはあたしもなって欲しくはないので、出来る限りの事はしたいと思います」
「ギャガン、グリゼルダ、パム。お前達はどうだ?」
アドルフは不敵な笑みを浮かべながらギャガン達に視線を向けた。
「俺は軍人やってるのに飽きたから、この国に来たんだ。また同じ事させられるぐらいなら、爺とガキぐらい守ってやるよぉ」
「私もギャガンと同じだ。軍は……軍人はもうやりたくない」
「わたしもわたしもッ!! 冒険者は自由でないとッ!!」
「へへ、やっぱそうだよな……最後にミシマ、お前はどうだ?」
そう言うとアドルフはクルストに手を握られた健太郎に目を向けた。
「コホー……」
俺は……俺も戦争は嫌だな。それに軍隊なんて上下の厳しそうな組織に組み込まれたら、ストレスでどうにかなっちゃいそうだ。
「……ストレスでどうにか……」
健太郎の言葉を聞いたミラルダの脳裏に、軍の施設を破壊し暴れまわる健太郎の姿が思い浮かんだ。
そんな事になったら、健太郎を止められる者は恐らくこの世に存在しないだろう。
そんなミラルダの不安を他所に、親指を立てた手を突き出した健太郎を見てアドルフは頷きを返す。
「リグナリオ、お前は爺さんの面倒を見てやれ」
「アドルフ……前々から気になっていたが、貴様は王族をなんだと……」
「あん、お前とは喧嘩の仕方を教えてやった仲じゃねぇか」
「グッ……確かに貴様には借りがあるが……」
「まっ、とにかくよ。お前と爺さんはラーグの大商会の隠居と孫、ミシマ達はその大商会から依頼を受けた護衛って事で頼むわ。報酬は弾むからよッ」
子供に戻り引きそうにないクルスト、そのクルストの身を案じるガッド、そしてクルストの孫のリグナリオ。
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