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第十一章 名誉騎士と宝石の角
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「嫌ぢゃッ!! 予もついて行くのぢゃッ!!」
「お爺様、危険な雪山なんて行かず、この街でこの者達の帰りを待ちましょう」
「予はカーバンクルが見たいのぢゃッ!! 可愛かったら連れ帰って王宮で飼いたいのぢゃッ!!」
ホテルの一室でラーグ国王、クルストゲッバーミン三世はそう言って駄々をこねた。
「はぁ……クルス、ロビー山脈はカルディナさんも言ってたけど、この時期でも吹雪が多い危険な山らしいよ。ミシマがいりゃ遭難する事はないだろうけど……あたしゃ、あんた達は街にいた方がいいと思うけどねぇ」
「ググ…………やっぱり嫌ぢゃッ!! 雪山もカーバンクルもどっちも見たいのぢゃッ!!」
思考が完全に幼子に戻ってしまったクルストは床に寝転がり、嫌ぢゃ嫌ぢゃと手足をばたつかせた。
「……どうする、ミラルダ? 先に爺さんの病院に行くか?」
「……カルディナさんは今が角の生え代わりの時期って言ってた。ミシマの能力で場所の特定は出来たけど、接近したら逃げられちまうかもしれない。もし時間を食って時期を逃したらもう一年待たなきゃいけなくなる」
「お爺様より仲間を優先するつもりかッ!?」
「クルスの医者は逃げないけど、カーバンクルは捕まえられるか分かんないからねぇ」
「……私がミシマと二人、ロビー山脈に向かうというのはどうだ?」
グリゼルダの提案にミラルダ達は難色を示した。
前回は別行動を取った事でグリゼルダの角は折られてしまった。
今回は明確な敵はいないが、パーティーが離れ離れになる事にミラルダ達は不安を感じたのだ。
「うーん、その意味じゃクルス達を街に置いていくのも不安だねぇ」
「そうだな。爺さん達の身分はバレちゃいねぇだろうが、爺さん自身がふらつきそうだしな」
「じゃあ、みんなでロビー山脈に向かう?」
「コホーッ」
王様のお守りはリグナリオだけじゃ不安だし、ここは全員で行ってパパッと終わらせるのがベストな気がする。
「そうだねぇ……んじゃ、全員でロビー山脈に向かうのに賛成な人」
そう言ってミラルダは手を上げる。彼女に続き健太郎達も手を上げ、手を上げなかったのはリグナリオ一人だけだった。
「リグは反対なのかい?」
「どうして危険な雪山に王族が出向かねばならんッ!! お爺様もわざわざ寒い思いをしなくても良いでしょう?」
語り掛ける孫からクルストはプイッと顔を背けた。
「予は王宮以外の場所が見たくてこの者達に同行したのぢゃ。街では見られん物を見る為になッ!」
「お爺様…………分かったよ。行くよ、行けばいいんだろうッ!? そのかわり、僕達の安全は保証して貰うからなッ!!」
「はいはい。んじゃみんなでロビー山脈に向かうって事でいいね?」
「やったのぢゃッ!!」
ミラルダの問い掛けにそれぞれが了承の返事を返したが、リグナリオだけは不満そうに小さく頷くのみだった。
そんなリグナリオの様子に苦笑を浮かべつつ、ミラルダは準備について話し始める。
「みんなも聞いた通り、ロビー山脈は吹雪が多いらしい。取り敢えず防寒用の厚手の服と手袋、ブーツなんかを買おうと思うんだけど……」
「買い物か……ならクーリエの三番街はどうだ? 三番街は色んな商店が軒を連ねるこの国一番の商店街だ」
「商店街……クルベストの市場街みたいな物?」
「いや、アレよりも規模は格段に大きい。なにせエルダガンドで売買されている殆どの商品が集まっているからな」
「へぇ、んじゃ、武器や防具の店もあるのか?」
当初の目的を忘れ、自分の趣味に走り始めたギャガンにミラルダが釘を刺す。
「ギャガン、買うのは防寒用の服だよ」
「チッ、いいだろ。見るぐらい」
「フフッ、武器防具はラーグの方が品質はいいと思うぞ。我々は大体の事を魔法でやるからな」
「それでも見たいんだよ」
「分かった。付き合ってやる」
グリゼルダは笑みを浮かべてギャガンの腕を取った。
「なんだかすっかり恋人だねぇ」
「えッ、そっ、そうか?」
パムが揶揄うとグリゼルダは顔を赤らめ視線を伏せた。ただそれでも掴んだギャガンの腕は放しはしなかった。
「コホーッ?」
んじゃ、その三番街に早速向かうとしようか?
「だね。それじゃまずは防寒着の店に行くとしようか」
「可愛いのあるかなぁ」
「防寒具には可愛さよりも実用性を求めるべきだと思うが……」
「グリゼルダ、そんな事言ってるとギャガンに嫌われちゃうよ」
「うッ、そうなのか?」
「別に俺は、んな事で嫌いになったりはしねぇよ」
「ギャガン……」
照れた様子でギャガンを上目遣いで見るグリゼルダ。
その姿を見ていたリグナリオはこいつ等はいつもこうなのかと、深いため息を吐いた。
■◇■◇■◇■
三番街はグリゼルダの話していた通り、ありとあらゆる店が軒を連ね商売に励んでいた。
その無数にある石造りの店の中の一つ、登山用品を扱う店に一行は足を踏み入れる。
「この店は私の父が愛用している服や靴を作っている工房の直営店なんだ」
「親父さんの……なぁ、グリゼルダ。挨拶に行った方がいいのか?」
「あっ、挨拶ッ!? 何の挨拶だッ!?」
「いや、だからよ。娘さんと仲良くさせて貰ってますとかだな」
「いいい、いいッ!! そういうのはもっと後でいいッ!!」
「そうか」
乱暴な印象のギャガンだが、獣人の国、ロガエストでは有数の名家に生まれた彼は変な所で生真面目だったらしい。
そんなギャガンとグリゼルダを見てパムが笑みを浮かべる。
「そういえば、みんなの親の話って聞いた事がないね」
「あたしゃ、孤児だからねぇ。親の事はこの前少しわかったけど、相変わらず行方不明だし」
「あっ、ごめん」
「いいんだよ。どうやらいい人だったみたいだし、あたしを捨てたのも、のっぴきならない理由があったんだろうさ」
ミラルダはそう言ってパムに笑い掛けた。パムはそんなミラルダに何とも言えない顔で眉を寄せた。
ミラルダの両親か……特徴が分かって生きているなら衛星で探す事も出来るだろうが……。
健太郎がそんな事を考えている間にも、ミラルダ達は店員が勧める服や靴を試着し装備を整えていく。
「お爺様、その服は少々派手過ぎるのではないですか?」
「なぜぢゃッ!? とても綺麗ではないかッ!?」
「お爺様のお年なら、こちらの落ち着いた色の物の方が……」
「フンッ、それはお前が着るがよいッ!」
クルストは孫のリグナリオが勧めるブラウンの落ち着いた防寒具に見向きもせず、手にしたショッキングピンクの外套を嬉しそうに羽織っている。
「コホー……」
まぁ、あっちの方がはぐれた時、見つけやすいかもね……うぅ、目がチカチカする……。
そんな感じで装備を整え、店を出た健太郎達がウインドショッピングを楽しんでいると、聞き覚えのある声が耳に響いた。
「あれっ、ミシマさん? それにギャガンさん、ミラルダさんにグリゼルダも? 何でエルダガンドにいるッスか?」
声を掛けられ振り返った先には、以前、依頼で知り合った魔人族、ビビ・コラウネルが健太郎達を見て目を丸くしていた。
彼女の横には竜の力を使い切り、人となった元竜のシャーリアの姿もある。
「ビビ、お前こそ、こんな所で何をしている?」
「へへ、今日は非番なんでシャーリアと一緒にショッピングしてたっス」
「何でシャーリアと? お前はバッツとくっついたんじゃねぇのか?」
「そうッスけど……立ち話も何なんで、そこのカフェで話さないっスか?」
ビビは店先にテーブルと椅子を並べ、オープンカフェを提供している店を指差し笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ、ミラルダ。この人達は?」
「依頼で知り合った魔人のビビと元竜のシャーリアだよ」
チョイチョイとローブの裾を引いたパムにミラルダが答えると、パムは元竜? と余計に混乱した様だった。
そんな彼女にミラルダは経緯を説明しつつ、ビビに導かれカフェへと向かう。
「おいミシマ、あの魔人は信用出来るのか?」
「コホーッ」
ビビは裏表のないいい子だから大丈夫だよ。
頷きを返した健太郎にリグナリオは本当だろうなと眉根を寄せた。
「こんな外国で人を疑いだしたらキリがないぜ」
リグナリオの言葉を聞いたギャガンが苦笑を浮かべ声を掛ける。
「チッ、お爺様の安全の為だ」
「そのお爺様だが、もう店に入っちまったみたいだぜ」
「クッ、早く言えっ」
慌ててクルストを追ったリグナリオを見て、健太郎とギャガンは顔を見合わせ肩を竦めた。
「お爺様、危険な雪山なんて行かず、この街でこの者達の帰りを待ちましょう」
「予はカーバンクルが見たいのぢゃッ!! 可愛かったら連れ帰って王宮で飼いたいのぢゃッ!!」
ホテルの一室でラーグ国王、クルストゲッバーミン三世はそう言って駄々をこねた。
「はぁ……クルス、ロビー山脈はカルディナさんも言ってたけど、この時期でも吹雪が多い危険な山らしいよ。ミシマがいりゃ遭難する事はないだろうけど……あたしゃ、あんた達は街にいた方がいいと思うけどねぇ」
「ググ…………やっぱり嫌ぢゃッ!! 雪山もカーバンクルもどっちも見たいのぢゃッ!!」
思考が完全に幼子に戻ってしまったクルストは床に寝転がり、嫌ぢゃ嫌ぢゃと手足をばたつかせた。
「……どうする、ミラルダ? 先に爺さんの病院に行くか?」
「……カルディナさんは今が角の生え代わりの時期って言ってた。ミシマの能力で場所の特定は出来たけど、接近したら逃げられちまうかもしれない。もし時間を食って時期を逃したらもう一年待たなきゃいけなくなる」
「お爺様より仲間を優先するつもりかッ!?」
「クルスの医者は逃げないけど、カーバンクルは捕まえられるか分かんないからねぇ」
「……私がミシマと二人、ロビー山脈に向かうというのはどうだ?」
グリゼルダの提案にミラルダ達は難色を示した。
前回は別行動を取った事でグリゼルダの角は折られてしまった。
今回は明確な敵はいないが、パーティーが離れ離れになる事にミラルダ達は不安を感じたのだ。
「うーん、その意味じゃクルス達を街に置いていくのも不安だねぇ」
「そうだな。爺さん達の身分はバレちゃいねぇだろうが、爺さん自身がふらつきそうだしな」
「じゃあ、みんなでロビー山脈に向かう?」
「コホーッ」
王様のお守りはリグナリオだけじゃ不安だし、ここは全員で行ってパパッと終わらせるのがベストな気がする。
「そうだねぇ……んじゃ、全員でロビー山脈に向かうのに賛成な人」
そう言ってミラルダは手を上げる。彼女に続き健太郎達も手を上げ、手を上げなかったのはリグナリオ一人だけだった。
「リグは反対なのかい?」
「どうして危険な雪山に王族が出向かねばならんッ!! お爺様もわざわざ寒い思いをしなくても良いでしょう?」
語り掛ける孫からクルストはプイッと顔を背けた。
「予は王宮以外の場所が見たくてこの者達に同行したのぢゃ。街では見られん物を見る為になッ!」
「お爺様…………分かったよ。行くよ、行けばいいんだろうッ!? そのかわり、僕達の安全は保証して貰うからなッ!!」
「はいはい。んじゃみんなでロビー山脈に向かうって事でいいね?」
「やったのぢゃッ!!」
ミラルダの問い掛けにそれぞれが了承の返事を返したが、リグナリオだけは不満そうに小さく頷くのみだった。
そんなリグナリオの様子に苦笑を浮かべつつ、ミラルダは準備について話し始める。
「みんなも聞いた通り、ロビー山脈は吹雪が多いらしい。取り敢えず防寒用の厚手の服と手袋、ブーツなんかを買おうと思うんだけど……」
「買い物か……ならクーリエの三番街はどうだ? 三番街は色んな商店が軒を連ねるこの国一番の商店街だ」
「商店街……クルベストの市場街みたいな物?」
「いや、アレよりも規模は格段に大きい。なにせエルダガンドで売買されている殆どの商品が集まっているからな」
「へぇ、んじゃ、武器や防具の店もあるのか?」
当初の目的を忘れ、自分の趣味に走り始めたギャガンにミラルダが釘を刺す。
「ギャガン、買うのは防寒用の服だよ」
「チッ、いいだろ。見るぐらい」
「フフッ、武器防具はラーグの方が品質はいいと思うぞ。我々は大体の事を魔法でやるからな」
「それでも見たいんだよ」
「分かった。付き合ってやる」
グリゼルダは笑みを浮かべてギャガンの腕を取った。
「なんだかすっかり恋人だねぇ」
「えッ、そっ、そうか?」
パムが揶揄うとグリゼルダは顔を赤らめ視線を伏せた。ただそれでも掴んだギャガンの腕は放しはしなかった。
「コホーッ?」
んじゃ、その三番街に早速向かうとしようか?
「だね。それじゃまずは防寒着の店に行くとしようか」
「可愛いのあるかなぁ」
「防寒具には可愛さよりも実用性を求めるべきだと思うが……」
「グリゼルダ、そんな事言ってるとギャガンに嫌われちゃうよ」
「うッ、そうなのか?」
「別に俺は、んな事で嫌いになったりはしねぇよ」
「ギャガン……」
照れた様子でギャガンを上目遣いで見るグリゼルダ。
その姿を見ていたリグナリオはこいつ等はいつもこうなのかと、深いため息を吐いた。
■◇■◇■◇■
三番街はグリゼルダの話していた通り、ありとあらゆる店が軒を連ね商売に励んでいた。
その無数にある石造りの店の中の一つ、登山用品を扱う店に一行は足を踏み入れる。
「この店は私の父が愛用している服や靴を作っている工房の直営店なんだ」
「親父さんの……なぁ、グリゼルダ。挨拶に行った方がいいのか?」
「あっ、挨拶ッ!? 何の挨拶だッ!?」
「いや、だからよ。娘さんと仲良くさせて貰ってますとかだな」
「いいい、いいッ!! そういうのはもっと後でいいッ!!」
「そうか」
乱暴な印象のギャガンだが、獣人の国、ロガエストでは有数の名家に生まれた彼は変な所で生真面目だったらしい。
そんなギャガンとグリゼルダを見てパムが笑みを浮かべる。
「そういえば、みんなの親の話って聞いた事がないね」
「あたしゃ、孤児だからねぇ。親の事はこの前少しわかったけど、相変わらず行方不明だし」
「あっ、ごめん」
「いいんだよ。どうやらいい人だったみたいだし、あたしを捨てたのも、のっぴきならない理由があったんだろうさ」
ミラルダはそう言ってパムに笑い掛けた。パムはそんなミラルダに何とも言えない顔で眉を寄せた。
ミラルダの両親か……特徴が分かって生きているなら衛星で探す事も出来るだろうが……。
健太郎がそんな事を考えている間にも、ミラルダ達は店員が勧める服や靴を試着し装備を整えていく。
「お爺様、その服は少々派手過ぎるのではないですか?」
「なぜぢゃッ!? とても綺麗ではないかッ!?」
「お爺様のお年なら、こちらの落ち着いた色の物の方が……」
「フンッ、それはお前が着るがよいッ!」
クルストは孫のリグナリオが勧めるブラウンの落ち着いた防寒具に見向きもせず、手にしたショッキングピンクの外套を嬉しそうに羽織っている。
「コホー……」
まぁ、あっちの方がはぐれた時、見つけやすいかもね……うぅ、目がチカチカする……。
そんな感じで装備を整え、店を出た健太郎達がウインドショッピングを楽しんでいると、聞き覚えのある声が耳に響いた。
「あれっ、ミシマさん? それにギャガンさん、ミラルダさんにグリゼルダも? 何でエルダガンドにいるッスか?」
声を掛けられ振り返った先には、以前、依頼で知り合った魔人族、ビビ・コラウネルが健太郎達を見て目を丸くしていた。
彼女の横には竜の力を使い切り、人となった元竜のシャーリアの姿もある。
「ビビ、お前こそ、こんな所で何をしている?」
「へへ、今日は非番なんでシャーリアと一緒にショッピングしてたっス」
「何でシャーリアと? お前はバッツとくっついたんじゃねぇのか?」
「そうッスけど……立ち話も何なんで、そこのカフェで話さないっスか?」
ビビは店先にテーブルと椅子を並べ、オープンカフェを提供している店を指差し笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ、ミラルダ。この人達は?」
「依頼で知り合った魔人のビビと元竜のシャーリアだよ」
チョイチョイとローブの裾を引いたパムにミラルダが答えると、パムは元竜? と余計に混乱した様だった。
そんな彼女にミラルダは経緯を説明しつつ、ビビに導かれカフェへと向かう。
「おいミシマ、あの魔人は信用出来るのか?」
「コホーッ」
ビビは裏表のないいい子だから大丈夫だよ。
頷きを返した健太郎にリグナリオは本当だろうなと眉根を寄せた。
「こんな外国で人を疑いだしたらキリがないぜ」
リグナリオの言葉を聞いたギャガンが苦笑を浮かべ声を掛ける。
「チッ、お爺様の安全の為だ」
「そのお爺様だが、もう店に入っちまったみたいだぜ」
「クッ、早く言えっ」
慌ててクルストを追ったリグナリオを見て、健太郎とギャガンは顔を見合わせ肩を竦めた。
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