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第十一章 名誉騎士と宝石の角
青白い雷光
しおりを挟む「では今回のオークションの最後の商品となります!! エルダガンドから遥か南、海を渡った先にある黒い森に住むダークエルフ。そのダークエルフの少年です!! どうですか、艶やかな黒い肌に銀の髪と瞳!! まさに南洋の宝石といった佇まいではないでしょうか!? こちらの商品は初値は三千からお願いしたいと思いますッ!!」
「五千」
「五千が出ましたッ!! 他に御座いませんかッ!?」
「六千ッ!!」
「七千」
「七千ッ!! 当商会としましても、こちらの商品の入手には大変手間と時間がかかりました。次回の入荷はかなり先になると思われますッ!!」
「……八千」
「八千ッ!! ありがとうございますッ!! 他に御座いませんかッ!?」
「きゅっ、九千よッ!!」
真っ赤なドレスを着た老婦人はマスクから覗く目をギラギラさせながら立ち上がり叫んだ。
「くッ……」
「九千ッ!! 他にいらっしゃいませんかッ!? いらっしゃらなければ商品はあちらのマダムの物となりますがッ!?」
司会の男はチラリと先程から老婦人と競り合っていた初老の男に目を向けた。
初老の男は元々、ダークエルフの少年を要望していた貴族だった。
彼は忌々し気に老婦人を睨んだ後、スッと手を上げた。
「……一万五千だ」
「一万五千ッ!! 驚きの値が飛び出しましたッ!! 他に御座いませんかッ!?」
一万五千と聞いた老婦人は初老の男に憎しみのこもった目を向けたが、それ以上声を上げる事無く腰を下ろした。
「いらっしゃらない様ですので、一万五千で落札とさせて頂きますッ!!」
木槌が打ち鳴らされ壇上の少年は老紳士の物となった。
少年は後程引き渡されるのか、商会の人間に連れられ壇上から姿を消した。
「ではこれで今回のオークションは終了とさせて頂きますッ!! お手元のアンケート用紙にご要望をお書き頂ければ、次回以降のオークションに商品を反映させて頂きます!! ありがとうございましたッ!!」
司会がオークションの終了を告げ、客達が要望を書いた紙を片手に席を立とうとしたその時、ステージの上に何か青黒い物が落下して来た。
客達は何かのサプライズかと壇上に視線を向ける。
「コホー……」
青黒い何かは呼吸音に似た音を発しながら静かにステージの上で立つと、おもむろにその右腕を天に翳した。
「おい、何だコレはッ!? こんな事は聞いて無いぞッ!!」
司会の男がステージの袖に向かって声を張り上げたのと同時に「コホーッ!!」と再び呼吸音が響き、オークション会場にいた全ての者が青白い雷光に包まれた。
「グガガガガガッ!?」
「ブブブブブブッ!?」
「ゴゴゴゴゴゴッ!?」
多種多様な叫び声を上げながら、客も商会の人間もガクガクと奇怪なダンスを踊っていた。
その狂乱のダンスが終わりを迎えると、オークション会場で意識を保っている者は雷光を発した青黒いゴーレム一人となっていた。
「ミシマ、終わった?」
オークション会場の出入り口の一つから小柄な人影が顔を見せる。
「コホーッ!」
おうッ、会場にいた奴らは全員眠らせたッ!! 仮面を被っているが全員アフロにしてやったから、剃り上げでもしない限り特定は容易だぜッ!!
「うん、よく分かんないけどオッケーって事だねッ!! んじゃんじゃ、あとは捕まってる人を連れて船から脱出しようッ!!」
「コホーッ!!」
だなッ!!
青黒いゴーレム、健太郎が駆け寄った小柄な人影、パムにギュッと親指を立てた手を突き出していると、袖から「何だコレはッ!?」と男の声が聞こえて来た。
「これは……テメェらの仕業かッ!?」
壇上に姿を見せたのは幹部の男と禿頭の巨漢だった。
「大事な客になんて事を……魔力よ、我が敵に見えざる」
「コホーッ!!」
噴射拳ッ!!
「グガッ!?」
「課長ッ!? テメェッ!! 万能なる魔の力よ、天を切り裂く」
「ディノパラリシスッ!!」
「ググッ……体が……」
健太郎に魔法を使おうとした幹部の男は金属の拳で吹き飛ばされ、巨漢もパムの取り出した黒い短杖によってその動きを封じられた。
「丁度いいや。おじさん、おじさん達が売ろうとしてた人達は何処にいるの?」
パムは短杖に込められた麻痺の魔法によって動けなくなった巨漢に、それを為した短杖を見せつつ尋ねる。
その後ろでは健太郎が飛ばした拳をシュルシュルと巻き取っていた。
「テ、テメェら……こ、こんな事……して……ただで……すむと……」
巨漢は痺れた体に鞭打って、月並みなセリフを吐いた。
そんな巨漢にパムは珍しく皮肉げな笑みを浮かべ口を開く。
「この短杖はさ、麻痺以外にも毒や眠りの魔法も使えるんだよね。あと沈黙とか」
「毒……眠り……沈黙……」
巨漢は怯えた様にパムが揺らす短杖を見つめた。
「ど、毒に……侵して……眠らせ……る……気か?」
「おじさんがあの人達が何処にいるか教えてくれたら、眠らせるだけにするよッ!」
「…………」
「そっか。じゃあ自分で探すよ。ディノ」
「まっ、待てッ!? ……はぁはぁ……ステージ……裏の……階段の……先……船倉の牢に……」
「ありがと、ディノヒュノプス」
パムはコマンドワードを唱え、巨漢を立ったまま眠らせた。
「コホー」
獣人と同じ速さで動けるハーフリングがマジックアイテムを持つと、魔人でも敵わないな。
「行くよミシマッ!!」
「コホーッ!!」
おうッ!!
パムの呼び掛けに応えた健太郎は、駆け出した彼女に続きステージ裏にあるという階段へと向かった。
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