紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十一章 名誉騎士と宝石の角

見て見ぬふりは出来ない

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 オークションで売られそうになった人々を詰め込んだVTOLモードの健太郎けんたろうは、ミラルダ達の待つクーリエに向かい飛行を続けていた。

「スゲェな、こりゃ。鉄の塊が空を飛んでるぜ」
「ねぇ、あたし達、これからどうなるの?」
「バババババッ!!」

 君達にはトラッド商会を潰す為に協力して欲しい。

「……ミシマが言ってる事は、仲間のミラルダって魔法使いじゃないと分からないんだよ。ただミシマはトラッド商会を潰したいって言ってたから、みんなにも協力して欲しいんだと思う」
「協力?」
「うん、ミシマはオークションの様子も動く絵で記録してたんだ」

 操縦席から後部座席に顔を出したパムがそう言うと、操縦席のモニターにオークションの様子が映し出された。

「うぉッ、俺が映ってるッ!?」
「あっ、あたしも……こうやって客観的に観ると破廉恥な格好させられたものね……」

 エルフの女は開けた胸元や深いスリットの入ったスカートが恥ずかしいのか、手でそれらを隠しながら顔を赤らめた。

「お前なんかまだいいぜ。俺なんか殆ど裸だぞ」
「いいじゃない、獣人は毛皮があるんだから」

 銀の毛並みの狼の獣人にエルフの女は口を尖らせる。
 手枷が外れ自由を得た事で、暗く沈んでいた彼らの心も多少は平穏を取り戻したようだ。

「それで協力って何をすればいいの?」
「具体的には宿に戻ってからかな。今の状態じゃさっき言った通り、ミシマが何言ってるか分からないから」
「そう……こんな鉄の鳥になれるのに喋れないとか、不便ねぇ」
「ババババババッ……」

 まったくだぜ……。

 健太郎のボヤキは誰にも届かずエルダガンドの空に消えた。


■◇■◇■◇■


「それで全員連れて来たと? はぁ……君達は一体何がしたいんだ? 今回の目的は仲間の角、それにお爺様の治療ではないのかねッ?」
「だって見て見ぬふりなんて出来ないよッ!!」

 ダークエルフの少年リューの他、トラッド商会に囚われていた人を引き連れホテルに戻った健太郎達に、王子のリグナリオは顔を顰め嫌味を言った。

「まぁまぁ、いいじゃないか。困っている人を助けるのはお互い様だよ」
「ミラルダ、君も本来の目的を忘れてるんじゃないか?」
「忘れちゃいないさ。でも冒険者は依頼で関わった全ての事でベストを目指すもんだからね」

 リグナリオは顔をさらに顰めたが、それ以上はもう何も言わなかった。

「それでミシマ、この後どうするつもりだい?」
「コホーッ」

 取り敢えずみんなに見て貰いたい物がある。

 健太郎はホテルのリビングに集まってもらった仲間達に、撮影した倉庫とオークションの様子をテレビに変形し観て貰った。

「人身売買か……噂には聞いていたが」
「あの、皆さんはどういう経緯で捕まる事になったんスか?」
「どうもこうも、俺は見ての通り半獣なんだが、生まれたのは東の国でよ。親父から聞いた獣人の国ってのを見てみたくて旅してたんだ。その道中でエルダガンドに来たんだが突然、眠気に襲われて気が付いたら檻の中だった」

 虎の半獣人の男はそう言って肩を竦める。

「多分、眠りの雲だな。にしても旅人を襲って拉致とは、やる事が派手過ぎるぜ」

 隊長のバッツの言葉にビビとオーグルが頷きを返す。

「顧客は恐らく貴族や大商人、彼らの力を借りて裏から手を回して、エルダガンドで起きた事はもみ消してるんじゃないですかね」

 魔人の軍人の一人、オーグルが客が何者か当たりを付け、推測を口にした。

「他のみんなもそんな感じかい?」

 ミラルダが問うと捕まっていた人々は大体同じだとそれぞれに返事を返した。
 攫われた者は半獣人の男の様に旅人であったり、リューの様に異国で暮らしている者ばかりだった。
 全員、基本いなくなっても騒がれない。仮に騒ぎになったとしても、もみ消されるか、遠い異国の住人だ。
 エルダガンドのトラッド商会に辿り着く者は中々いないだろう。

「あの、僕達、家に戻れるんでしょうか?」
「ヴーン」

 それなんだが、リュー達にはもう少し付き合って欲しいんだ。

「ミシマがもう少し付き合って欲しいってさ」
「……ミラルダさんはミシマさんが言ってる事が分かるんですか?」
「ああ、それでミシマ、みんなに付き合って貰って何がしたいんだい?」
「ヴーン」

 この映像を。

 健太郎がミラルダに答えようとする前に、パムが口を挟んだ。

「ねぇ、ミシマ。携帯になって話したらどう?」
「ヴーン?」

 携帯に? だが通話モードだと一人にしか……まてよスピーカーモードがあれば……。

 健太郎はその身をテレビから携帯に変え、ジリリリリリンと音を響かせた。
 パムが携帯モードの健太郎を持ち上げ、パカッと開いて通話ボタンを押す。

「ミシマ?」
『パム、通話ボタンを長押ししてくれ』
「長押しだね……」

 パムは緑に光る通話ボタンをギュッと押し込んだ。
 表示が切り替わり合成音声が周囲に流れる。

『みんな聞こえるか?』
「ふええ、この携帯って奴にはそんな機能もあったんだねぇ」
「ミシマ、もう少し早く言えよな。今まで俺達がお前のジェスチャーを読み解くのにどれだけ頭を捻ったか……」
「まったくだ」

 ギャガンとグリゼルダはジトッとした目でテーブルに置かれた健太郎を睨んだ。

『そっ、そんな事言われても……この体は全く説明が無いからこんな事出来るとは思ってなかったんだよ』
「説明がない……ミシマにも何が出来るか分からないのか?」

 オーグルの質問に健太郎はため息交じりで答える。

『はぁ……分からないよ。視界に表示されてる文字は読めないし、ホントに不親切で俺も凄く迷惑してるんだ』
「文字が読めない……ミシマの精神と体は別の場所から来た……?」

 何やら考え始めたグリゼルダに苦笑を浮かべ、ミラルダが話を戻す。

「それで、ミシマは一体どうしたいんだい?」
『俺が撮った映像とリュー達の証言を証拠にトラッド商会を潰したい。勿論、似たような組織は他にもあるんだろうが、商会が潰れれば他の組織の牽制にもなる筈だ』
「潰すか……なら国にも一枚噛んでもらった方がいいな」

 バッツの言葉にミラルダが頷きを返す。

「そうだね。あたし等じゃ、ただ外国人がマフィアと揉めたってだけで終わりそうだし」
「国か……ならやっぱあいつに話をつけてもらおうぜ」
『あいつって、キュベルか?』
「おう、映像を見た感じじゃ、客はオーグルの言う様にこの国でも上流階級の奴らみてぇだしな。バッツじゃ握りつぶされて終わりだろ?」
「たしかにそうかもしれんが、はっきり言われると流石にカチンとくるな」



「へっ、ムカつくってんなら、握りつぶされねぇぐらい偉くなるんだな」

 ギャガンのニヤついた笑みを見て、バッツは小さく舌打ちをした。

「ギャガン、あんたはどうしてそう癇にさわる言い方しか出来ないんだい」
「チッ、こいつは性分だぜ。それにバッツにはいまいち覇気ってもんを感じなくてなぁ」
「はぁ……しょうがないねぇ……バッツ、悪気はないんだ。許してやっておくれ」
「あ、ああ……覇気か……」

 確かに無いかもな。そう呟いたバッツを見て苦笑を浮かべたミラルダは、それじゃあと言葉を続けた。

「あたしとミシマはキュベルに会いに行くとするかねぇ」
「俺たちゃ何をすればいい?」

 ギャガンに問われたミラルダはそうだねぇと周囲を見回した。
 エルダガンドに来た時はフェンデアでの事から分かれて動く事は避けていた。
 だが、現在はバッツ達もいてくれる。

「ギャガンとグリゼルダ、あとパムはクルスとリグを連れて病院に行ってもらえるかい」
「ふぅ……ようやくかい」

 皮肉げな笑みを浮かべたリグナリオを横目にミラルダは考える。

 現在、クルストとエッジは別室でバッツの部下の見張りの下、カーバンクル達と遊んでいる。
 今はまだそれで満足しているが、クルストはいつ飽きたと言い始めるか分からない。
 彼の事はカーバンクルの件が片付いたらと考えていたが、前後しても問題はないだろう。

「先に爺さんの治療をすんのか? カーバンクルはどうすんだよ?」
「そうだよね。あの子達もほっとけないよね。グリゼルダの角の事もあるし……」
『それはリュー達の事と同時で進められる筈だ。商会に捜査の手が入ればカーバンクルを買った貴族が誰だったか、顧客名簿とか販売記録で分かる筈だからな。全てが終わったら俺が攫われた人達を故郷に送り届ける。それでどうだ?』

 最後の部分はリュー達に対する問い掛けだった。

「証言すれば家に帰れるの?」
『ああ、俺達はこの国の公娼、キュベルって子と知り合いなんだ。彼女が協力してくれればギャガンが言った様に上級貴族だって好きには出来ない。結果的に君達みたいに攫われる人は減ると思うんだが……』

 リュー達は机の上で答えを待つ携帯モードの健太郎に視線を向けた。

「俺は証言してもいいぜ。身包み全部剥されたしな。証言すりゃそいつも返ってくるんだろう?」
『捜査となればトラッド商会も捜索されるだろうから、処分されていなければ多分……』
「処分……あたし、指輪とかネックレスとか換金用に持ってたんだけど……」
「恐らくだが、貴金属は売り払われている可能性が高いな。まぁ、売るとしても裏ルートだろうから、捜査が入ればどこに流れたかわかるだろうさ」
「ホントッ!? じゃあ協力するッ!!」

 エルフの女はバッツの言葉を聞いて健太郎の提案に乗った。
 その後、リューを含めた商会に囚われた人達は協力する事を了承したのだった。
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