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第十一章 名誉騎士と宝石の角
上への依頼
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エルダガンドの首都、クーリエ。
そのクーリエの三番街の裏通りにある黒大理石の建物では、ドラッド商会の会長であるバード・ロックスが、目の前にいる部下たちを睨みつけていた。
「俺もこの商売初めて三十年以上になるが、こんな間抜けな話は聞いた事が無いぜ。たった一人と一匹によぉ」
「ボス、あのゴーレムは唯のゴーレムじゃねぇ。俺たちゃ気が付いたら宙を舞って湖の中。それに賊は鉄の鳥になって逃げたんだ」
「船の艦橋から見てたんですが、その鉄の鳥は青いゴーレムが変形した物です。あんなもん見た事ねぇ」
「部下の話じゃあいつは電撃をばら撒いたりしたそうです。拳を飛ばして俺を吹き飛ばしたりもしたし……」
電撃と聞いてバードは眉を顰めた。
確か少し前、ドラゴンが王宮を襲った時、電撃を放つ青黒いゴーレムの事が貴族の間で話題になった事があった。
まさかその時のゴーレムが……。
バードが聞いた話ではゴーレムは公娼のキュベルを誘拐したらしい。
その後、キュベルは戻ってきたが以前の様な無謀な計画を口にする事は無く、マフィアのバードから見てもまともな事をやり始めた様に思えた。
「……なんにしてもだ。このままじゃ色々マズい事になる。客はこっちの警備の不備を追及するだろうし、奪われた商品もオークションが終わってたのが痛い。客は当然、商品を送って来いって言うだろうしな」
「それはそうですが……俺達じゃあのゴーレムには勝てそうにありませんぜ」
「だろうな……仕方ねぇ。こうなったら上に頼る事にするぜ」
上と聞いて部下達は顔を青ざめさせた。
トラッド商会はある組織の下部企業だ。
組織の名はトライヘッズ、クーリエに拠点を置く犯罪組織で、主な活動は暗殺や誘拐。
政財界からの依頼を受け、邪魔な人間を始末する事で大きくなってきた。
その中でも暗殺部は凄腕だと裏社会で噂が流れている。
超遠距離から額を撃ち抜かれたとか。ボディーガードが回りを固めていたのにいつの間に対象の首が落とされていたとか。
極めつけは自分が狙われていると気付き、屋敷に引き籠っていたのに毒殺されていたとか。
ただそれもあくまで噂で、本当に暗殺部の仕業なのかかどうかは分からない。
死体が発見されて、恐らくこんな事が出来るのはトライヘッズの暗殺部ぐらいだろうと推測されるだけだ。
「あの……大丈夫でしょうか? ミスをした俺達が消されるなんて事は……」
「さあな。俺も含めて始末されるかもしれねぇな」
「そんな……」
「甘えた事言ってんじゃねぇッ!! お前も今までいい思いしてただろうがッ!! ヤバい仕事だからこそ見返りがデカいッ!! そう覚悟を決めてこっちの世界に飛び込んだんじゃねぇのかッ!?」
バードが声を荒げデスクに拳を叩きつけると、部下達はビクリっと体を震わせた。
「ボス……」
「出掛ける。馬車を回せ。あと一応、身の回りの整理をしとけ」
バードはそれだけ言うと、右手を振り部下達に退出を促した。
彼らは一様に顔を青くし部屋を出ていった。
「青いゴーレムとハーフリングか……余計な事をしてくれたもんだぜ……」
小さく呟き、バードが今後の事を考えていると、コンコンと扉がノックされた。
「ボス、表に馬車を回しました」
「ご苦労」
バードはそう言うとコートを羽織り部屋を後にした。
■◇■◇■◇■
「どちらに向かいますか?」
「記念公園だ」
「了解しました」
二頭引きの馬車の前方の小窓から顔を覗かせた御者に短く返すと、バードを乗せた馬車は王の即位を記念して作られた公園に向かって移動を始めた。
トライヘッズの本部が何処にあるか、商会の会長であるバードも知らない。
ただ、トライヘッズへの接触の方法だけは会長になった時、先代から聞いていた。
馬車は石畳の上を走り、やがて木々で覆われた公園の入り口へと辿り着く。
「ここで待っていろ。一時間して戻らなければ商会に戻っていい」
「……分かりました」
バードはコツコツと石畳を響かせ、公園中央に作られた広場に向かった。
そこには公園を訪れる者目当てで様々な出店が軒を連ねている。
その大半がいわゆるファストフードを売っている店だ。
その中の一軒、パンに腸詰を挟んだ物を売っている店に歩みを進めた。
「二つだ。一つはキャベツ多めでマスタードは抜いてくれ」
「お二つ。うちお一つはキャベツ多めでマスタード抜きですね」
「ああ」
「少々お待ち下さい」
注文を受けた青年は手際よく注文された物を調理していく。
何度かこの方法で組織と接触しているが、青年が関係者かは分かっていない。
「おまちどう様です。二つで銀貨一枚です」
「ありがとよ」
「毎度どうもッ!!」
銀貨と引き換えに手渡された紙袋を抱えバードは広場を出て、石畳の道の脇に置かれたベンチに腰を下ろした。
やがてベンチに男が一人座る。
運動用の服を着たこの公園では何処にでもいそうな男だった。
「いい天気ですね」
「まったくだ。こんな日は無性にコイツが食べたくなる」
そう言ってバードが袋からパンを取り出すと、男は美味しそうだとバードに近づいた。
「用件は?」
「もう知っているだろうが、うちの商品が盗まれた。こっちじゃどうも対処できそうにない」
「……了解だ。今回は仕事として引き受けよう。えっ!? 一つ頂けるんですか!? ありがとうございます」
「いや、つい二つ買っちまったが、食い過ぎだって上さんに言われてるのを思い出してね」
「そうですかぁ。じゃあお言葉に甘えて」
男はバードから受け取ったマスタード無しのパンを食べ終えると、健康の為にはランニングが良いですよと笑みを浮かべその場を立ち去った。
男を見送ったバードはふぅとため息を吐く。
これで後は上が全部やってくれる。その分、結構な額を請求されるだろうが、殺されなかっただけましという物だ。
チラリと一つ残ったパンに目をやる。全く食欲の無かったバードはパンを袋ごとベンチ横のゴミ箱に捨て公園を後にした。
そのクーリエの三番街の裏通りにある黒大理石の建物では、ドラッド商会の会長であるバード・ロックスが、目の前にいる部下たちを睨みつけていた。
「俺もこの商売初めて三十年以上になるが、こんな間抜けな話は聞いた事が無いぜ。たった一人と一匹によぉ」
「ボス、あのゴーレムは唯のゴーレムじゃねぇ。俺たちゃ気が付いたら宙を舞って湖の中。それに賊は鉄の鳥になって逃げたんだ」
「船の艦橋から見てたんですが、その鉄の鳥は青いゴーレムが変形した物です。あんなもん見た事ねぇ」
「部下の話じゃあいつは電撃をばら撒いたりしたそうです。拳を飛ばして俺を吹き飛ばしたりもしたし……」
電撃と聞いてバードは眉を顰めた。
確か少し前、ドラゴンが王宮を襲った時、電撃を放つ青黒いゴーレムの事が貴族の間で話題になった事があった。
まさかその時のゴーレムが……。
バードが聞いた話ではゴーレムは公娼のキュベルを誘拐したらしい。
その後、キュベルは戻ってきたが以前の様な無謀な計画を口にする事は無く、マフィアのバードから見てもまともな事をやり始めた様に思えた。
「……なんにしてもだ。このままじゃ色々マズい事になる。客はこっちの警備の不備を追及するだろうし、奪われた商品もオークションが終わってたのが痛い。客は当然、商品を送って来いって言うだろうしな」
「それはそうですが……俺達じゃあのゴーレムには勝てそうにありませんぜ」
「だろうな……仕方ねぇ。こうなったら上に頼る事にするぜ」
上と聞いて部下達は顔を青ざめさせた。
トラッド商会はある組織の下部企業だ。
組織の名はトライヘッズ、クーリエに拠点を置く犯罪組織で、主な活動は暗殺や誘拐。
政財界からの依頼を受け、邪魔な人間を始末する事で大きくなってきた。
その中でも暗殺部は凄腕だと裏社会で噂が流れている。
超遠距離から額を撃ち抜かれたとか。ボディーガードが回りを固めていたのにいつの間に対象の首が落とされていたとか。
極めつけは自分が狙われていると気付き、屋敷に引き籠っていたのに毒殺されていたとか。
ただそれもあくまで噂で、本当に暗殺部の仕業なのかかどうかは分からない。
死体が発見されて、恐らくこんな事が出来るのはトライヘッズの暗殺部ぐらいだろうと推測されるだけだ。
「あの……大丈夫でしょうか? ミスをした俺達が消されるなんて事は……」
「さあな。俺も含めて始末されるかもしれねぇな」
「そんな……」
「甘えた事言ってんじゃねぇッ!! お前も今までいい思いしてただろうがッ!! ヤバい仕事だからこそ見返りがデカいッ!! そう覚悟を決めてこっちの世界に飛び込んだんじゃねぇのかッ!?」
バードが声を荒げデスクに拳を叩きつけると、部下達はビクリっと体を震わせた。
「ボス……」
「出掛ける。馬車を回せ。あと一応、身の回りの整理をしとけ」
バードはそれだけ言うと、右手を振り部下達に退出を促した。
彼らは一様に顔を青くし部屋を出ていった。
「青いゴーレムとハーフリングか……余計な事をしてくれたもんだぜ……」
小さく呟き、バードが今後の事を考えていると、コンコンと扉がノックされた。
「ボス、表に馬車を回しました」
「ご苦労」
バードはそう言うとコートを羽織り部屋を後にした。
■◇■◇■◇■
「どちらに向かいますか?」
「記念公園だ」
「了解しました」
二頭引きの馬車の前方の小窓から顔を覗かせた御者に短く返すと、バードを乗せた馬車は王の即位を記念して作られた公園に向かって移動を始めた。
トライヘッズの本部が何処にあるか、商会の会長であるバードも知らない。
ただ、トライヘッズへの接触の方法だけは会長になった時、先代から聞いていた。
馬車は石畳の上を走り、やがて木々で覆われた公園の入り口へと辿り着く。
「ここで待っていろ。一時間して戻らなければ商会に戻っていい」
「……分かりました」
バードはコツコツと石畳を響かせ、公園中央に作られた広場に向かった。
そこには公園を訪れる者目当てで様々な出店が軒を連ねている。
その大半がいわゆるファストフードを売っている店だ。
その中の一軒、パンに腸詰を挟んだ物を売っている店に歩みを進めた。
「二つだ。一つはキャベツ多めでマスタードは抜いてくれ」
「お二つ。うちお一つはキャベツ多めでマスタード抜きですね」
「ああ」
「少々お待ち下さい」
注文を受けた青年は手際よく注文された物を調理していく。
何度かこの方法で組織と接触しているが、青年が関係者かは分かっていない。
「おまちどう様です。二つで銀貨一枚です」
「ありがとよ」
「毎度どうもッ!!」
銀貨と引き換えに手渡された紙袋を抱えバードは広場を出て、石畳の道の脇に置かれたベンチに腰を下ろした。
やがてベンチに男が一人座る。
運動用の服を着たこの公園では何処にでもいそうな男だった。
「いい天気ですね」
「まったくだ。こんな日は無性にコイツが食べたくなる」
そう言ってバードが袋からパンを取り出すと、男は美味しそうだとバードに近づいた。
「用件は?」
「もう知っているだろうが、うちの商品が盗まれた。こっちじゃどうも対処できそうにない」
「……了解だ。今回は仕事として引き受けよう。えっ!? 一つ頂けるんですか!? ありがとうございます」
「いや、つい二つ買っちまったが、食い過ぎだって上さんに言われてるのを思い出してね」
「そうですかぁ。じゃあお言葉に甘えて」
男はバードから受け取ったマスタード無しのパンを食べ終えると、健康の為にはランニングが良いですよと笑みを浮かべその場を立ち去った。
男を見送ったバードはふぅとため息を吐く。
これで後は上が全部やってくれる。その分、結構な額を請求されるだろうが、殺されなかっただけましという物だ。
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