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第十一章 名誉騎士と宝石の角
三人の暗殺者
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バードがトライヘッズの人間と接触した数日後、カーテンの閉められた薄暗い部屋で、三人の男女が丸いテーブルに置かれた地図と似顔絵を見ながら話をしていた。
「今回の対象は正体不明の青いゴーレムとハーフリングの娘。後はその二人に奪われた商品の回収ね。商品の回収は誘拐部がやるみたいだから、私達はゴーレムとハーフリングの始末が仕事よ」
「ハーフリングはいいとして、その青いゴーレムは何なんだ?」
「それが、よく分かってないの。情報じゃ電撃を放ったり拳を矢の様に撃ち出したり、鉄の鳥になったって報告もあるわ」
「鉄の鳥?」
「ええ、それで奪った商品を運んだそうよ」
「なにそれ? 意味不明なんだけど?」
一人は鋭い目をした黒髪の魔人。一見、細身だが鍛えられた肉体をした背の高い男だ。
もう一人は緩いパーマの掛かった桃色の髪の女。
最後の一人は十代後半に見える青い髪の少年だった。
「確かにね。でも意味不明だからって報復しない訳にはいかないわ。放置したらトライヘッズへの恐怖が薄れるから。だから確実に消す為に私達に話が回ってきたのよ」
「電撃に飛ぶ拳か……接近戦は分が悪いな……よし、ゴーレムは俺がやる。お前達はハーフリングの娘をやれ」
「いいけど……仲間ってのはどうするの? 報復なら皆殺しの方が良くない?」
「そうね……獣人は素早いって話に聞くし……情報じゃあ、ハーフリングは仲間の獣人、魔人の女、それに人族の男と毎日病院へ通ってるらしいわ。あなたがハーフリングと獣人を気付かれる前に始末して。私は魔人の女と人族の男を殺すわ」
「りょうかーい。へへ、二人同時か……楽しみだね」
「仕事は遊びじゃない。だからお前は力があっても評価が低いんだ」
「ちぇっ、仕事にも楽しみは必要だろ」
口を尖らせた少年を横目に、男は床に置かれた革張りの細長い鞄を持ち上げた。
「もう行くの?」
「居場所は掴めてる。狙撃場所も想定済みだ」
「仕事熱心だねぇ」
「プロだからな」
鋭い目の黒髪の魔人はそう言うと唇の端を曲げ小さく笑みを浮かべた。
「しょうがない、じゃあ僕達も行こうか。一人が襲撃されれば警戒されるだろうしね」
「忙しないわねぇ。人払いは間に合うかしら……」
三人の暗殺者はピクニックにでも行くように軽い足取りで部屋を後にした。
■◇■◇■◇■
その数時間後、黒髪の魔人グレイブは建物の屋上で、オープンカフェで仲間の女と何やら話している青いゴーレムの頭に照準を合わせていた。
彼の得物は特注の弩だ。滑車で巻き上げた合金製のリムが同じく合金製の太矢を撃ち出し、その撃ち出された太矢を風の魔法によって更に加速、弾道調整する。
彼はその魔法と緻密な魔力操作によって発射後、ターゲットが動いても急所に命中させる事が出来た。
「精々派手に死んで、仲間を怯えさせてくれ。魔力よ、渦巻く風となって我が矢を彼の者の元に、風の隧道」
グレイブが構えた弩の先、縦では無く真横に渦を巻く小型の竜巻が形成される。
それを確認した後、グレイブは息を吐き呼吸を止め引き金を引いた。
バンッ! そんな音と共に打ち出された太矢は、グレイブが魔法によって作り出した風のトンネルの中で加速し、約一秒後にはゴーレムの側頭部を撃ち抜いた。
「馬鹿なッ!?」
グレイブは自分の目を疑った。
これまで彼が狙った者は例外無く、それは固い鱗と頭蓋を持つ竜等の魔物であっても脳を破壊され即死していた。
風魔法で加速した太矢の持つ運動エネルギーは生半に防ぐ事は出来ないからだ。
それをあのゴーレムは無傷で弾き返した。
スコープの先に見えるゴーレムはキョロキョロと周囲を見回し、頭部から回転する何かを出している。
「何なんだアレは……?」
思わずスコープ越しに注視したグレイブの目と、額に両手の指を翳したゴーレムの目が交差する。
偶然だ。見つかる訳が無い。こちらは五百メートル以上離れた場所にいるのだ。いくら矢の飛んで来た方向から大体の位置がつかめたとしても視認できる訳が……。
そんなグレイブの考えはゴーレムが仲間と別れ、こちらに向かって駆けだした事で打ち消された。
「見つかった!? クソッ、仕切り直しだッ!!」
グレイブは素早く弩を鞄に納め痕跡を消すと、飛翔を使い屋上から離れ裏路地へと身を躍らせた。
薄暗い路地を飛翔で駆け抜け、計画していた逃走ルートを辿りセーフハウスを目指す。
その逃走しながら次の手を考えていたグレイブの行く手を、上空から降って来た何かが遮った。
「コホーッ」
「何故、俺の場所がッ!?」
「コホーッ」
行く手をさえぎった青黒いゴーレムは天を指差し、その後、指で長方形を描くと、その長方形の一点を右手の人差し指で指し示した。
正直、全く意味が分からない。ともかく見つかったからには仕方が無い。
専門は狙撃だが自分も組織の暗殺部として長年動いて来た、接近戦も出来ない訳じゃない。
グレイブは腰から大振りナイフを引き抜くとゴーレムに向けて構えた。
奴の装甲は俺の太矢を防いだ。それを考えればナイフで傷が付くとは考え辛い。
だが瞳なら……。
そう考え腰を落とすと、ゴーレムも同様に拳を握り腰を落とした。
どういう事だ?
グレイブの認識ではゴーレムとは魔導技術によって人工的に作られた兵器で、戦闘方法は頑丈な肉体とパワーで押し切る物だった筈……。
考えていても仕方が無い。
グレイブは飛翔で一気に間合いを詰めると、ゴーレムの緑に輝く瞳を狙って真横にナイフを振った。
その振った手がゴーレムの右手に絡め取られ、次の瞬間には胸に強い衝撃を感じた。
「カハッ……グフッ!?」
路地の壁に強かに背中を打ち付け、グレイブは思わず膝を突く。
「貴様……何者……だ……?」
「コホーッ!!」
力強く呼吸音を鳴らして、ギュッと親指を立てた右手を突き出したゴーレムの姿を見て、グレイブはやはり意味が分からんと、頬を引きつらせながら意識を失った。
「今回の対象は正体不明の青いゴーレムとハーフリングの娘。後はその二人に奪われた商品の回収ね。商品の回収は誘拐部がやるみたいだから、私達はゴーレムとハーフリングの始末が仕事よ」
「ハーフリングはいいとして、その青いゴーレムは何なんだ?」
「それが、よく分かってないの。情報じゃ電撃を放ったり拳を矢の様に撃ち出したり、鉄の鳥になったって報告もあるわ」
「鉄の鳥?」
「ええ、それで奪った商品を運んだそうよ」
「なにそれ? 意味不明なんだけど?」
一人は鋭い目をした黒髪の魔人。一見、細身だが鍛えられた肉体をした背の高い男だ。
もう一人は緩いパーマの掛かった桃色の髪の女。
最後の一人は十代後半に見える青い髪の少年だった。
「確かにね。でも意味不明だからって報復しない訳にはいかないわ。放置したらトライヘッズへの恐怖が薄れるから。だから確実に消す為に私達に話が回ってきたのよ」
「電撃に飛ぶ拳か……接近戦は分が悪いな……よし、ゴーレムは俺がやる。お前達はハーフリングの娘をやれ」
「いいけど……仲間ってのはどうするの? 報復なら皆殺しの方が良くない?」
「そうね……獣人は素早いって話に聞くし……情報じゃあ、ハーフリングは仲間の獣人、魔人の女、それに人族の男と毎日病院へ通ってるらしいわ。あなたがハーフリングと獣人を気付かれる前に始末して。私は魔人の女と人族の男を殺すわ」
「りょうかーい。へへ、二人同時か……楽しみだね」
「仕事は遊びじゃない。だからお前は力があっても評価が低いんだ」
「ちぇっ、仕事にも楽しみは必要だろ」
口を尖らせた少年を横目に、男は床に置かれた革張りの細長い鞄を持ち上げた。
「もう行くの?」
「居場所は掴めてる。狙撃場所も想定済みだ」
「仕事熱心だねぇ」
「プロだからな」
鋭い目の黒髪の魔人はそう言うと唇の端を曲げ小さく笑みを浮かべた。
「しょうがない、じゃあ僕達も行こうか。一人が襲撃されれば警戒されるだろうしね」
「忙しないわねぇ。人払いは間に合うかしら……」
三人の暗殺者はピクニックにでも行くように軽い足取りで部屋を後にした。
■◇■◇■◇■
その数時間後、黒髪の魔人グレイブは建物の屋上で、オープンカフェで仲間の女と何やら話している青いゴーレムの頭に照準を合わせていた。
彼の得物は特注の弩だ。滑車で巻き上げた合金製のリムが同じく合金製の太矢を撃ち出し、その撃ち出された太矢を風の魔法によって更に加速、弾道調整する。
彼はその魔法と緻密な魔力操作によって発射後、ターゲットが動いても急所に命中させる事が出来た。
「精々派手に死んで、仲間を怯えさせてくれ。魔力よ、渦巻く風となって我が矢を彼の者の元に、風の隧道」
グレイブが構えた弩の先、縦では無く真横に渦を巻く小型の竜巻が形成される。
それを確認した後、グレイブは息を吐き呼吸を止め引き金を引いた。
バンッ! そんな音と共に打ち出された太矢は、グレイブが魔法によって作り出した風のトンネルの中で加速し、約一秒後にはゴーレムの側頭部を撃ち抜いた。
「馬鹿なッ!?」
グレイブは自分の目を疑った。
これまで彼が狙った者は例外無く、それは固い鱗と頭蓋を持つ竜等の魔物であっても脳を破壊され即死していた。
風魔法で加速した太矢の持つ運動エネルギーは生半に防ぐ事は出来ないからだ。
それをあのゴーレムは無傷で弾き返した。
スコープの先に見えるゴーレムはキョロキョロと周囲を見回し、頭部から回転する何かを出している。
「何なんだアレは……?」
思わずスコープ越しに注視したグレイブの目と、額に両手の指を翳したゴーレムの目が交差する。
偶然だ。見つかる訳が無い。こちらは五百メートル以上離れた場所にいるのだ。いくら矢の飛んで来た方向から大体の位置がつかめたとしても視認できる訳が……。
そんなグレイブの考えはゴーレムが仲間と別れ、こちらに向かって駆けだした事で打ち消された。
「見つかった!? クソッ、仕切り直しだッ!!」
グレイブは素早く弩を鞄に納め痕跡を消すと、飛翔を使い屋上から離れ裏路地へと身を躍らせた。
薄暗い路地を飛翔で駆け抜け、計画していた逃走ルートを辿りセーフハウスを目指す。
その逃走しながら次の手を考えていたグレイブの行く手を、上空から降って来た何かが遮った。
「コホーッ」
「何故、俺の場所がッ!?」
「コホーッ」
行く手をさえぎった青黒いゴーレムは天を指差し、その後、指で長方形を描くと、その長方形の一点を右手の人差し指で指し示した。
正直、全く意味が分からない。ともかく見つかったからには仕方が無い。
専門は狙撃だが自分も組織の暗殺部として長年動いて来た、接近戦も出来ない訳じゃない。
グレイブは腰から大振りナイフを引き抜くとゴーレムに向けて構えた。
奴の装甲は俺の太矢を防いだ。それを考えればナイフで傷が付くとは考え辛い。
だが瞳なら……。
そう考え腰を落とすと、ゴーレムも同様に拳を握り腰を落とした。
どういう事だ?
グレイブの認識ではゴーレムとは魔導技術によって人工的に作られた兵器で、戦闘方法は頑丈な肉体とパワーで押し切る物だった筈……。
考えていても仕方が無い。
グレイブは飛翔で一気に間合いを詰めると、ゴーレムの緑に輝く瞳を狙って真横にナイフを振った。
その振った手がゴーレムの右手に絡め取られ、次の瞬間には胸に強い衝撃を感じた。
「カハッ……グフッ!?」
路地の壁に強かに背中を打ち付け、グレイブは思わず膝を突く。
「貴様……何者……だ……?」
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