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第十一章 名誉騎士と宝石の角
現役軍人
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健太郎達が暗殺者達の襲撃を受けていた頃、トライヘッズの誘拐部が商品を取り戻すべく行動を開始していた。
彼らも暗殺部と同じく気配を殺し対象に忍び寄り仕事を行う。
違いといえば仕事が殺しか拉致かぐらいだ。
「対象は最上階、スイートルームにいる」
「そりゃあ、贅沢なこって」
「作戦はいつもと同様、眠りの雲で眠らせ、その後、部屋に侵入する」
ホテル近くの石畳の道、そこに止められた大型の馬車の中でリーダーらしき男が四人の部下達に説明している。
「偽装はリネン業者だ。シーツ運搬用のワゴンを使って対象を運ぶ」
「対象は虎の半獣人に狼の獣人、エルフの女に魔人族の女、あとはダークエルフのガキでしたね?」
「そうだ。特にダークエルフには高値がついているそうだ。傷を付けるなと指示が出ている」
「まったく、トラッドの奴らのミスをなんで俺達が……」
「そう言うな。今回は仕事として受注している、奴らにはかなりの請求が行くはずだ」
ぼやく部下に男はそう言うと、御者に作戦開始を告げた。
御者は手綱を振って馬車を走らせホテルの裏、業者が出入りする搬入口に馬車を横づけする。
馬車から降りた隊員達は馬車の後部に詰まれていた四台のワゴンを取り出し、それを押して搬入口に入った。
「お世話になっております。シーツの回収に参りました」
搬入口の警備員にリーダーの男が声を掛ける。
「あれ? いつもの人と違うね?」
「ああ、彼らは今週、慰安旅行なんですよ。その代わりにいつもは別地区を担当してる我々が」
「慰安旅行? いいなぁ。何処行ってるの?」
「鉄道で南部を巡ってますよ。来週は我々の番なんで楽しみですよ」
「そうかい……鉄道の旅か……ロマンだねぇ」
「ハハッ、確かに。では失礼します」
「ああ、よろしく」
いつもの業者の制服、ごく自然なやり取りに警備員も不審がる事なく彼らを素通りさせた。
その後、業者用の大型エレベータに乗り込んだ五人は業者の制服を脱いだ。
制服の下からはホテルの従業員の制服が現れた。ポケットから取り出した帽子を被ればもうホテルマンにしか見えない。
エレベーターが止まると、彼らはリーダーを先頭に廊下を進み、諜報部が調べた情報に従い商品がいるであろう部屋の前で立ち止まった。
リーダーともう一人、ドアに近寄った二人の周囲に残りの三人がワゴンを置き、自然な形で目隠しをする。
「万能なる魔の力よ、彼の者に眠りを誘う安らかな空気を、眠りの雲」
囁く様な詠唱が廊下に静かに響き、リーダーの額の角が流れた魔力に反応し輝いた。
同時に部下の一人がピッキングによって部屋の鍵をこじ開ける。
部屋をこじ開けた男はそのままドアに耳を押し付け、起きている物がいないか室内を探った。
暫く無言の時が流れ、やがてドアに耳を当てた男はリーダーを見上げ小さく頷く。
頷きを返したリーダーが部屋のドアをコンコンとノックした。
「失礼します。シーツの交換に参りました」
返答がない事を確認し、ゆっくりとドアノブを回しドアを押し開ける。
素早く周囲を確認するがドアの先のリビングには誰もいない。
リーダーの男は周囲を警戒しながら室内に侵入、部下達に部屋を探る様に指示を出した。
四人の部下はそれぞれがワゴンを押して室内に入ると、二人一組で数部屋あるスイートルームの寝室を確認していく。
やがてリーダーの下に戻った部下達は全員、首を横に振った。
「……逃げられた?」
「だって諜報部がずっと見張っていたんでしょう?」
「諜報部ねぇ。マフィアってのも意外と軍隊と変わらん編成なんだな」
声に視線を向ければ、入り口の壁にもたれた緑色の髪の魔人が、こちらを眺めながら皮肉げな笑みを浮かべていた。
「クッ、万能なる魔力よ」
「おっと、やめときな。あんたらはもう包囲されてる」
「そうッスッ!! 下手な事するとフッ飛ばしてやるッス!!」
寝室から飛び出して来た青い髪の女が角を輝かせながら右手を翳す。
同時に他の部屋からも魔人達が姿を現し、女と同様、右手を掲げた。
「……どうやって我々の動きに気付いた?」
「知り合いの獣人が、俺達を探っている奴がいるって言っててな、警戒はしてた。後はこいつ等のおかげだ」
緑の髪の魔人が親指で指し示す先には、ダークエルフの少年に抱かれたルビーの角を持つ緑色の獣の姿があった。
「わふわふ(悪い奴)」
「それはカーバンクル……チッ、諜報部の奴ら見落としてたな」
「さて、どうするね?」
「クッ、舐めるなッ!!」
リーダーの言葉と同時に誘拐部の隊員達は散開、制服の背中に隠していたナイフを抜いて、魔人達に襲い掛かる。
「あんた達こそ現役軍人を舐めるなよッ! リュー、シャーリア、下がってろッ!!」
「「はっ、はいッ!!」」
緑髪の魔人、バッツはカーバンクルを抱え廊下を駆けだすリュー達を横目で確認すると、腰を落し両手を翳した。
リーダーの男は細剣を扱う時のようにステップを踏み、小さく素早くナイフを振るう。
バッツはそれを拳闘のスウェーのように躱していく。
「チッ」
リーダーの男は舌打ちを一つ打つと、腰だめにナイフを構えバッツに向かって突進した。
バッツはその腹を狙った一撃を左に躱すと、ナイフを握った男の左手首を掴み手前に引きながら足を払った。
「ガッ!? グゥッ!!」
足を払われ、つんのめる形となったリーダーの男は、捕まれた左手首を支点に回転、背中を廊下の床に叩きつけられた。
うめき声を上げる男を引き起こし、男が着ていたホテルの制服でリーダーを拘束する頃には、ビビ達バッツの部下は接近戦を挑んで来た誘拐部の隊員達を全員締め上げていた。
「大した事ないな」
「仕方ないですよ。接近戦闘術は正規軍じゃ、ふるい掛けに使われる基礎の基礎ですからね」
オーグルがバッツ同様、倒した男を制服で後ろ手に拘束しながら苦笑を浮かべる。
「ググッ……」
「隊長、こいつ等、どうするっスか?」
「そうだな……もうすぐミラルダ達も戻るだろうし、こいつ等をどうするかはそれから決めよう」
「了解っスッ!!」
ビビは拘束した誘拐部の男片手に、バッツに敬礼を返しながら微笑んだ。
彼らも暗殺部と同じく気配を殺し対象に忍び寄り仕事を行う。
違いといえば仕事が殺しか拉致かぐらいだ。
「対象は最上階、スイートルームにいる」
「そりゃあ、贅沢なこって」
「作戦はいつもと同様、眠りの雲で眠らせ、その後、部屋に侵入する」
ホテル近くの石畳の道、そこに止められた大型の馬車の中でリーダーらしき男が四人の部下達に説明している。
「偽装はリネン業者だ。シーツ運搬用のワゴンを使って対象を運ぶ」
「対象は虎の半獣人に狼の獣人、エルフの女に魔人族の女、あとはダークエルフのガキでしたね?」
「そうだ。特にダークエルフには高値がついているそうだ。傷を付けるなと指示が出ている」
「まったく、トラッドの奴らのミスをなんで俺達が……」
「そう言うな。今回は仕事として受注している、奴らにはかなりの請求が行くはずだ」
ぼやく部下に男はそう言うと、御者に作戦開始を告げた。
御者は手綱を振って馬車を走らせホテルの裏、業者が出入りする搬入口に馬車を横づけする。
馬車から降りた隊員達は馬車の後部に詰まれていた四台のワゴンを取り出し、それを押して搬入口に入った。
「お世話になっております。シーツの回収に参りました」
搬入口の警備員にリーダーの男が声を掛ける。
「あれ? いつもの人と違うね?」
「ああ、彼らは今週、慰安旅行なんですよ。その代わりにいつもは別地区を担当してる我々が」
「慰安旅行? いいなぁ。何処行ってるの?」
「鉄道で南部を巡ってますよ。来週は我々の番なんで楽しみですよ」
「そうかい……鉄道の旅か……ロマンだねぇ」
「ハハッ、確かに。では失礼します」
「ああ、よろしく」
いつもの業者の制服、ごく自然なやり取りに警備員も不審がる事なく彼らを素通りさせた。
その後、業者用の大型エレベータに乗り込んだ五人は業者の制服を脱いだ。
制服の下からはホテルの従業員の制服が現れた。ポケットから取り出した帽子を被ればもうホテルマンにしか見えない。
エレベーターが止まると、彼らはリーダーを先頭に廊下を進み、諜報部が調べた情報に従い商品がいるであろう部屋の前で立ち止まった。
リーダーともう一人、ドアに近寄った二人の周囲に残りの三人がワゴンを置き、自然な形で目隠しをする。
「万能なる魔の力よ、彼の者に眠りを誘う安らかな空気を、眠りの雲」
囁く様な詠唱が廊下に静かに響き、リーダーの額の角が流れた魔力に反応し輝いた。
同時に部下の一人がピッキングによって部屋の鍵をこじ開ける。
部屋をこじ開けた男はそのままドアに耳を押し付け、起きている物がいないか室内を探った。
暫く無言の時が流れ、やがてドアに耳を当てた男はリーダーを見上げ小さく頷く。
頷きを返したリーダーが部屋のドアをコンコンとノックした。
「失礼します。シーツの交換に参りました」
返答がない事を確認し、ゆっくりとドアノブを回しドアを押し開ける。
素早く周囲を確認するがドアの先のリビングには誰もいない。
リーダーの男は周囲を警戒しながら室内に侵入、部下達に部屋を探る様に指示を出した。
四人の部下はそれぞれがワゴンを押して室内に入ると、二人一組で数部屋あるスイートルームの寝室を確認していく。
やがてリーダーの下に戻った部下達は全員、首を横に振った。
「……逃げられた?」
「だって諜報部がずっと見張っていたんでしょう?」
「諜報部ねぇ。マフィアってのも意外と軍隊と変わらん編成なんだな」
声に視線を向ければ、入り口の壁にもたれた緑色の髪の魔人が、こちらを眺めながら皮肉げな笑みを浮かべていた。
「クッ、万能なる魔力よ」
「おっと、やめときな。あんたらはもう包囲されてる」
「そうッスッ!! 下手な事するとフッ飛ばしてやるッス!!」
寝室から飛び出して来た青い髪の女が角を輝かせながら右手を翳す。
同時に他の部屋からも魔人達が姿を現し、女と同様、右手を掲げた。
「……どうやって我々の動きに気付いた?」
「知り合いの獣人が、俺達を探っている奴がいるって言っててな、警戒はしてた。後はこいつ等のおかげだ」
緑の髪の魔人が親指で指し示す先には、ダークエルフの少年に抱かれたルビーの角を持つ緑色の獣の姿があった。
「わふわふ(悪い奴)」
「それはカーバンクル……チッ、諜報部の奴ら見落としてたな」
「さて、どうするね?」
「クッ、舐めるなッ!!」
リーダーの言葉と同時に誘拐部の隊員達は散開、制服の背中に隠していたナイフを抜いて、魔人達に襲い掛かる。
「あんた達こそ現役軍人を舐めるなよッ! リュー、シャーリア、下がってろッ!!」
「「はっ、はいッ!!」」
緑髪の魔人、バッツはカーバンクルを抱え廊下を駆けだすリュー達を横目で確認すると、腰を落し両手を翳した。
リーダーの男は細剣を扱う時のようにステップを踏み、小さく素早くナイフを振るう。
バッツはそれを拳闘のスウェーのように躱していく。
「チッ」
リーダーの男は舌打ちを一つ打つと、腰だめにナイフを構えバッツに向かって突進した。
バッツはその腹を狙った一撃を左に躱すと、ナイフを握った男の左手首を掴み手前に引きながら足を払った。
「ガッ!? グゥッ!!」
足を払われ、つんのめる形となったリーダーの男は、捕まれた左手首を支点に回転、背中を廊下の床に叩きつけられた。
うめき声を上げる男を引き起こし、男が着ていたホテルの制服でリーダーを拘束する頃には、ビビ達バッツの部下は接近戦を挑んで来た誘拐部の隊員達を全員締め上げていた。
「大した事ないな」
「仕方ないですよ。接近戦闘術は正規軍じゃ、ふるい掛けに使われる基礎の基礎ですからね」
オーグルがバッツ同様、倒した男を制服で後ろ手に拘束しながら苦笑を浮かべる。
「ググッ……」
「隊長、こいつ等、どうするっスか?」
「そうだな……もうすぐミラルダ達も戻るだろうし、こいつ等をどうするかはそれから決めよう」
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