紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十一章 名誉騎士と宝石の角

攫われた者達の目指す場所へ

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 ゴウンゴウン、そんな音を立て空を行く船の艦橋から虎人族の半獣人、エルフの女、魔人の少女、狼の獣人、そしてダークエルフの少年が流れる景色に驚きの声を上げている。



「ホントに船が空を飛んでるぜ……」
「鉄の鳥にも驚いたけど、これはまるでおとぎ話ね……」
「でも便利だね……ミシマがいれば快適に旅出来そう」
「確かに寝室や風呂もついてるし、野宿の必要は無さそうだな」
「……これで帰れるね……」

 ミラルダとパムはそんな彼らの様子に顔を見合わせ微笑みを浮かべた。

「えっと、まず最初はランゼリカだね」

 ミラルダが名前を呼ぶと魔人の少女、ランゼリカは不満そうな顔を見せた。

「ねぇ、ホントに帰らないと駄目?」

 健太郎達は事前に彼らと話をして、行きたい場所について聞き出していた。
 その話し合いの中でランゼリカだけは口ごもっていた。
 聞けば彼女は都会に憧れ家を飛び出し首都であるクーリエへとやって来たらしい。
 お上りさん丸出しだった彼女はトラッド商会に目を付けられたようだ。

「それは話合ったろ? クーリエに行くにしてもちゃんと親を説得するって」
「だって……パパもママも駄目だしか言わないんだもん」
「ランゼリカ、今回の事で都会には危険もあるって分かったよね?」

 パムの言葉に「それは身に染みたけど……」とランゼリカは眉を寄せた。

「だからさ、親御さんにはちゃんと自分が何処にいて、どんな事をしたいのかちゃんと説明しとくべきだと思うよ」
「……ねぇ、ミラルダ達も説得に協力してくれる?」
「悪いけど、それは出来ないよ」
「えっ、なんでッ!?」
「ホントにクーリエで暮らしたいなら、自分自身の言葉で、一人で説得しなきゃ。あたし達はいつも側にいる訳じゃないからね」

 ミラルダの言葉でランゼリカは改めてクーリエで暮らす事について考えた。
 恐らく一人、働きながら暮らす事になるだろう。街は確かに高い建物が立ち並びキラキラと輝いていた。
 だが、その裏ではトラッド商会の様な悪意も存在していた。
 あの街で暮らすにはそんな悪意に負けない、誰にも頼らない強い意志と心構えが必要だろう。

「分かったよ……そうだよね。自分の親も説得出来ないんじゃ、あの街じゃやってけないよね」
「まぁ、すぐには駄目でも諦める事はないわ。もう少し大人になったら、お父さんもお母さんも許してくれるかもしれないし」

 旅のエルフ、オーリーンがランゼリカの頭にポンっと手を乗せ慰める。

「もうッ、私はもう十六歳なんだからッ!! 子供扱いしないでよッ!!」
「十六歳って……わたし等の種族じゃ赤ん坊だわ……」
「十六で赤ん坊……なぁ、オーリーン、お前、幾つなんだ?」
「キルクス、獣人には女性に年を訪ねるのは失礼だっていうマナーはないのかしら?」

 オーリーンは笑顔のまま、一段トーンを落した声で銀狼族の若者に訪ねた。

「うっ、わっ、悪かった……」

「ゴウンゴウン……」

 ひえぇ、おっかないなぁ……オーリーンって若く見えるけど結構、いってるんだろうか……ウッ!?

 そんな健太郎の言葉が分かった訳では無いのだろうが、オーリーンは艦橋に設置された内部カメラを「あぁ?」と睨みつけた。
 ミラルダもそうだが、女の勘という奴かもしれない。

 そんな事をしながら健太郎達はエルダガンド国内に住んでいたランゼリカを彼女の実家へと送り届けた。
 ランゼリカの実家では照れ臭そうにドアをノックしたランゼリカを、彼女の母親が涙を流して抱きしめた。
 ランゼリカも感極まったのか、母親に謝りながら泣いていた。

 その様子を見ていたミラルダも少し涙ぐんでいたのが健太郎の心に残った。

 二人目は銀狼族の若者、キルクス。
 獣人の国、ロガエストで暮らしていた彼はダークエルフのリューと同じく、狩りの途中で眠らされ捕らえられたようだ。
 銀狼族はロガエスト東部で遊牧生活をしながら暮らしている一族で、豹人族や赤狼族と同様、ロガエストでは高い地位にある獣人だった。
 その銀狼族の集落は王都ペズンや犬人族の村と同様、大小様々なテントで構成されていた。
 突然、現れた金属の鳥に集落の人々はどよめいたが、中から見覚えのある青年が姿を見せるとその中の一人が駆け寄ってきた。

「父上、ただいま戻りました」

 駆け寄って来た銀の毛並みの獣人にキルクスが声を掛けると、彼は一旦立ち止まり、ゆっくりと歩み寄りキルクスを抱きしめた。

「もう駄目かと、死んだものと諦めていた……良かった……本当によく生きていてくれた……」
「エルダガンドの賊に攫われて、そこを彼女らに救われました」

 キルクスが指差した先、VTOLモードの入り口で、彼を見送っていたミラルダとパムを見た父親は、彼女達に駆け寄りその手を取って深々と頭を下げた。

「息子を救ってくれてありがとう……」
「いや、実際に助けたのは、このパムとミシマってあたしの仲間でね」
「そうか、ありがとう、パムさん」
「えへへ、喜んでもらえて良かったよ」
「それでミシマさんは……」
「えっとミシマはいるんだけど……あー、この鉄の鳥がミシマだよ」

 ミラルダがそう言ってVTOLモードのボディをパンッと叩くと、キルクスの父はどういう事だと首を捻った。

 空を飛ぶ鉄の鳥、そこまでは魔人の国、エルダガンドに近い場所で暮らす彼には許容範囲だった。
 魔導技術に長けた魔人ならそんな物を作り出してもおかしくはないからだ。
 だがそれを仲間だというミラルダの言葉は理解不能だった。

 だとしても行方不明だった息子を連れ帰ってくれた事には変わりない。

「これが……よく分からんが……ありがとう、ミシマさん……」
「ヴヴヴヴヴッ!!」

 どういたしましてだぜッ!!

「そうだ。是非、家によって行ってくれ。恩人をもてなしたい」

 VTOLモードの健太郎に頭を下げたキルクスの父はそう言ってミラルダ達に笑みを見せた。

「ありがたい申し出だけど、まだ送って行かなきゃならない人がいるんでね」

 VTOLの窓からはキルクスに手を振るリュー達の姿が見えた。

「そうか……彼らも攫われたのだな……分かった。次にロガエストに来る事があれば是非、集落に立ち寄ってくれ。その時は食べきれない程のご馳走を用意しよう」

 キルクスの父はリュー達を見て、彼らにも自分と同様、生還を心待ちにしている者がいるのだろうと考え、ミラルダ達を引き止める事を諦めた。

「フフッ、楽しみにしてるよ」
「世話になったな。パム、ミシマ、ミラルダ。父上も言ったがロガエストに来た時は絶対に寄ってくれ。礼をするからよ」
「あいよ……じゃあね、キルクス。元気でね」
「バイバイッ!!」

 ミラルダとパムはキルクスと彼の父に手を振り、VTOLのハッチを締めた。

「バババババババッ!!」

 じゃあな。キルクスッ!! 縁があったらまた逢おうぜッ!!

 エンジン音と共にキルクスに別れを告げた健太郎は、上空で宇宙戦艦モードへ変形し今度は虎人族の半獣人、ロッドの目的地であるエルダガンドの西、虎人族の暮らす集落へと向かった。
 その道中、眼下に見えるガリア砂漠の変貌に健太郎とミラルダは思わず声を上げた。

「……あれからまだ数ヶ月しかたってないのに……」
「ゴウンゴウン……」

 凄いな……。

 かつて砂の大地だった砂漠には畑が作られ、まだ砂漠のままの場所はあるものの緑が蘇りつつあった。
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