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第十一章 名誉騎士と宝石の角
大地で生きて大地に帰る
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ロガエストの中心に広がる広大な砂の大地、ガリア砂漠。
かつてはこの地で暮らす獣人達の怨嗟の対象だった砂の海は、現在は大地から噴き出す水によって緑化が進み、魔人の手で作られた運河がその豊富な水を各地に運んでいた。
運河が運んだ水は土壌を魔法によって改善された畑に撒かれ、不毛の土地に命を芽吹かせた。
「親父からはロガエストは草原と砂漠の国だって聞いてたが……」
「色々あって砂漠の地下から水が湧いてね。あたしも聞いただけだけど、ロガエストは農業国に変わりつつあるらしいよ」
「色々あってって、端折り過ぎだよ。水が湧いたのはミラルダ達がした事なんでしょ?」
「あ? そうなのか?」
ロッドの言葉にミラルダは言い辛そうに口を開く。
「……正確にはミシマが赤い光を放って、地面の底に埋まってたレアメタルの鉱脈をぶち抜いたのさ。そのレアメタルは空気に触れると大量の水を発生させるらしくてね……全部、偶然だからさ。自慢するような事じゃないんだよ」
「ゴウンゴウン……」
ホント、たまたま上手くいっただけだからなぁ。
「だよねぇ……」
「自慢するような事じゃないって……砂漠を畑に変えたんでしょう? それって十分凄い事だわッ!」
「畑に変えたのはこの国で暮らしてる獣人と魔人の力さ。あたし等はほんの少しの切っ掛けを作っただけだよ」
「切っ掛けを……でも凄い事だと思う……これだけ広い畑があれば皆、食べ物に困る事はなくなるよ」
リューは眼下に見える緑と黄色の大地に瞳を輝かせていた。
「村の教えにあるんだ。人は大地で生きて大地に帰る。土の恵み、それが無ければ生きていけないって……」
「リューが住んでる所はどんな所なの?」
艦橋の窓からガリア砂漠を見下ろしていたリューにパムが歩み寄り訪ねる。
「ロベット村は森の恵みで生きている……エルダガンドみたいな大きな街と違って、穏やかで静かな村だよ……」
「そう……」
パムがリューの横顔に目を向けると彼の顔はほんの少し寂しそうに見えた。
「もうすぐ帰れるんだから、そんな顔しないで」
「……うん……もうすぐ、みんなともお別れなんだね……パムと別れるのは寂しいよ……」
そう言ってパムを見たリューの目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「うっ……リュー、あんた、そこらへんにはいない美少年なんだから、そういう顔は止めたほうがいいよ」
「ん? どうして……僕は助けてくれたパムに感謝してるし、パムの事、大好きだから……」
リューは顔を赤らめるパムに不思議そうに小首をかしげ、彼女の顔を覗き込んだ。
「やるねぇ。ありゃあ、将来、そうとう女を泣かせるタイプだな」
「リューはエルフでもそういない美形だからね……それはそうと、あなたは虎人族の村に行って、その後はどうするの?」
エルフのオーリーンはリュー達を見てニヤついていた半獣人のロッドに問い掛けた。
ロッドはそうだなぁと視線を斜め上に向けつつ、しばし唸り、やがて口を開いた。
「暫く虎人族の村に滞在したら、そのまま西に抜けてドワーフの国、ロックローズへ行く。あとはそのまま東に進んで海を見てから国に帰るわ」
「海か……ねぇ、その旅、私も付いて行っていいかしら?」
「えっ? お前も……へへッ、なるほど、お前、俺のこのワイルドな魅力にやられ、ギャッ!? なっ、何しやがるッ!?」
ロッドがニヤニヤと好色そうな視線をオーリーンに向けると同時に、彼女はヒールでロッドの足を踏みつけた。
「下品な想像は止めて頂戴。私は純粋に海が見たいだけよ……そもそも、私が旅に出たのは変化の無い里の暮らしに飽き飽きしたからなんだから。そこの所、勘違いしないでよねッ!!」
「うぅ……気の強ぇ女だぜ……エルフッてのはもっとこう、高貴で洗練された種族じゃねぇのかよ……」
「ゴウンゴウンッ!!」
分かるッ!! 分かるぞロッドッ!! 俺の知り合いにもエルフはいるけど、一人はいい人なんだけど関西人で、もう一人はいい娘なんだけどポンコツなんだッ!!
そんな健太郎のロッドへの共感の言葉に、ミラルダは苦笑を浮かべ、オーリーンは今度もまた、あぁ? と室内カメラを睨んでいた。
……本当は彼女、俺の言葉が分かってるんじゃ……。
そんな少し不安な思いを胸に健太郎は西に進み、やがて虎人族の暮らす集落に辿り着いた。
VTOLに変形し、銀狼族と同様、遊牧して暮らす為に天幕で作られた集落の近くに着陸する。
虎人族も豹人族や赤狼族などと同じく、ロガエストでは高い地位を持つ種族だ。
だが、宰相ジャルガの起こした陰謀によって、強い力を持つ猛獣系の獣人の中でも現在は随分と肩身の狭い思いをしているようだ。
そんな経緯もあってか、集落の獣人達は国王ランザの、これからは農産物輸出国として周辺諸国と足並みをそろえる為、如何なる種族であっても差別する事を禁ずるという触れに従っていた。
その事もあって半獣人のロッドも、東へ向かったという父親の名を出しただけで受け入れられていた。
また、その旅の同伴者として紹介されたエルフのオーリーンも表面上は歓迎される事となった。
「虎の獣人と聞いて少し心配してたけど、大丈夫みたいだね」
「虎って、悪だくみしてた宰相の事?」
「ああ、あの宰相さんの所為で、あたし等もギャガンに殺されそうになったりしたもんだよ」
「一回、カルディナさんの所でその話は聞いたけど、自分を殺そうとした人とよくパーティーが組めたよね」
「えっ、あの黒豹さん、ミラルダ達を殺そうとしてたのッ!?」
「まぁね」
目を丸くしたリューに苦笑を浮かべ、ミラルダは言葉を紡いだ。
「まぁ、なりゆきだよ。それに今じゃギャガンとグリゼルダがいないなんて考えられないしね」
「確かにね」
「僕の目から見ても、みんなは仲良しに見えたけど……」
「出会いはどうあれ、今は大切な仲間だよ」
ミラルダとパム、それにリューがVTOLのハッチ近くでそんな話をしていると、虎人族達と話していたロッドたちが駆け戻ってきた。
「ミラルダ、パム、それとミシマ、あとリューも。虎人族のみんなは俺達の滞在を快く受け入れてくれた。俺達は二週間ぐらい滞在して西のロックローズに向かう事にするわ」
「みんな、助けてくれてありがとう。感謝してるわ。リュー、あなたも元気でね」
「うん……二人も元気で」
「ふふッ、あと百年もしたらあなた、いい男になってそうだから、その時また会いましょう」
「……百年したら流石にお前もちゅうね、ギャッ!?」
余計な事を言い掛けたロッドの足をオーリーンのヒールがすかさず踏みつける。
「ロッド、私と旅をするんなら口には気を付けなさい」
「うぅ……やっぱ俺の伝え聞くエルフとは……」
「ヴヴヴヴヴヴ……」
だよね。やっぱり、おっかないなぁ……。
「ミシマ。あなた、時々、私に対して何か失礼な事言っているわよねぇ?」
「ヴッ、ヴヴッ!!」
いっ、言ってませんッ!!
「はぁ……まぁいいわ。それじゃあね、みんな」
「また、何処かで会う事があったらよろしく頼むぜッ!!」
「ああ、じゃあね、ロッド、オーリーン」
「バイバイッ、二人とも元気でねッ!!」
「ロッド、オーリーン、またいつか」
「ヴヴヴヴヴッ!!」
んじゃねッ!! 道中、気を付けてッ!!
虎の半獣人、ロッド。旅のエルフ、オーリーンと別れた健太郎は、最後の目的地、ダークエルフのリューの村がある南の大陸、その大陸に広がる黒い森を目指しエンジン音を響かせた。
かつてはこの地で暮らす獣人達の怨嗟の対象だった砂の海は、現在は大地から噴き出す水によって緑化が進み、魔人の手で作られた運河がその豊富な水を各地に運んでいた。
運河が運んだ水は土壌を魔法によって改善された畑に撒かれ、不毛の土地に命を芽吹かせた。
「親父からはロガエストは草原と砂漠の国だって聞いてたが……」
「色々あって砂漠の地下から水が湧いてね。あたしも聞いただけだけど、ロガエストは農業国に変わりつつあるらしいよ」
「色々あってって、端折り過ぎだよ。水が湧いたのはミラルダ達がした事なんでしょ?」
「あ? そうなのか?」
ロッドの言葉にミラルダは言い辛そうに口を開く。
「……正確にはミシマが赤い光を放って、地面の底に埋まってたレアメタルの鉱脈をぶち抜いたのさ。そのレアメタルは空気に触れると大量の水を発生させるらしくてね……全部、偶然だからさ。自慢するような事じゃないんだよ」
「ゴウンゴウン……」
ホント、たまたま上手くいっただけだからなぁ。
「だよねぇ……」
「自慢するような事じゃないって……砂漠を畑に変えたんでしょう? それって十分凄い事だわッ!」
「畑に変えたのはこの国で暮らしてる獣人と魔人の力さ。あたし等はほんの少しの切っ掛けを作っただけだよ」
「切っ掛けを……でも凄い事だと思う……これだけ広い畑があれば皆、食べ物に困る事はなくなるよ」
リューは眼下に見える緑と黄色の大地に瞳を輝かせていた。
「村の教えにあるんだ。人は大地で生きて大地に帰る。土の恵み、それが無ければ生きていけないって……」
「リューが住んでる所はどんな所なの?」
艦橋の窓からガリア砂漠を見下ろしていたリューにパムが歩み寄り訪ねる。
「ロベット村は森の恵みで生きている……エルダガンドみたいな大きな街と違って、穏やかで静かな村だよ……」
「そう……」
パムがリューの横顔に目を向けると彼の顔はほんの少し寂しそうに見えた。
「もうすぐ帰れるんだから、そんな顔しないで」
「……うん……もうすぐ、みんなともお別れなんだね……パムと別れるのは寂しいよ……」
そう言ってパムを見たリューの目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「うっ……リュー、あんた、そこらへんにはいない美少年なんだから、そういう顔は止めたほうがいいよ」
「ん? どうして……僕は助けてくれたパムに感謝してるし、パムの事、大好きだから……」
リューは顔を赤らめるパムに不思議そうに小首をかしげ、彼女の顔を覗き込んだ。
「やるねぇ。ありゃあ、将来、そうとう女を泣かせるタイプだな」
「リューはエルフでもそういない美形だからね……それはそうと、あなたは虎人族の村に行って、その後はどうするの?」
エルフのオーリーンはリュー達を見てニヤついていた半獣人のロッドに問い掛けた。
ロッドはそうだなぁと視線を斜め上に向けつつ、しばし唸り、やがて口を開いた。
「暫く虎人族の村に滞在したら、そのまま西に抜けてドワーフの国、ロックローズへ行く。あとはそのまま東に進んで海を見てから国に帰るわ」
「海か……ねぇ、その旅、私も付いて行っていいかしら?」
「えっ? お前も……へへッ、なるほど、お前、俺のこのワイルドな魅力にやられ、ギャッ!? なっ、何しやがるッ!?」
ロッドがニヤニヤと好色そうな視線をオーリーンに向けると同時に、彼女はヒールでロッドの足を踏みつけた。
「下品な想像は止めて頂戴。私は純粋に海が見たいだけよ……そもそも、私が旅に出たのは変化の無い里の暮らしに飽き飽きしたからなんだから。そこの所、勘違いしないでよねッ!!」
「うぅ……気の強ぇ女だぜ……エルフッてのはもっとこう、高貴で洗練された種族じゃねぇのかよ……」
「ゴウンゴウンッ!!」
分かるッ!! 分かるぞロッドッ!! 俺の知り合いにもエルフはいるけど、一人はいい人なんだけど関西人で、もう一人はいい娘なんだけどポンコツなんだッ!!
そんな健太郎のロッドへの共感の言葉に、ミラルダは苦笑を浮かべ、オーリーンは今度もまた、あぁ? と室内カメラを睨んでいた。
……本当は彼女、俺の言葉が分かってるんじゃ……。
そんな少し不安な思いを胸に健太郎は西に進み、やがて虎人族の暮らす集落に辿り着いた。
VTOLに変形し、銀狼族と同様、遊牧して暮らす為に天幕で作られた集落の近くに着陸する。
虎人族も豹人族や赤狼族などと同じく、ロガエストでは高い地位を持つ種族だ。
だが、宰相ジャルガの起こした陰謀によって、強い力を持つ猛獣系の獣人の中でも現在は随分と肩身の狭い思いをしているようだ。
そんな経緯もあってか、集落の獣人達は国王ランザの、これからは農産物輸出国として周辺諸国と足並みをそろえる為、如何なる種族であっても差別する事を禁ずるという触れに従っていた。
その事もあって半獣人のロッドも、東へ向かったという父親の名を出しただけで受け入れられていた。
また、その旅の同伴者として紹介されたエルフのオーリーンも表面上は歓迎される事となった。
「虎の獣人と聞いて少し心配してたけど、大丈夫みたいだね」
「虎って、悪だくみしてた宰相の事?」
「ああ、あの宰相さんの所為で、あたし等もギャガンに殺されそうになったりしたもんだよ」
「一回、カルディナさんの所でその話は聞いたけど、自分を殺そうとした人とよくパーティーが組めたよね」
「えっ、あの黒豹さん、ミラルダ達を殺そうとしてたのッ!?」
「まぁね」
目を丸くしたリューに苦笑を浮かべ、ミラルダは言葉を紡いだ。
「まぁ、なりゆきだよ。それに今じゃギャガンとグリゼルダがいないなんて考えられないしね」
「確かにね」
「僕の目から見ても、みんなは仲良しに見えたけど……」
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ミラルダとパム、それにリューがVTOLのハッチ近くでそんな話をしていると、虎人族達と話していたロッドたちが駆け戻ってきた。
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「みんな、助けてくれてありがとう。感謝してるわ。リュー、あなたも元気でね」
「うん……二人も元気で」
「ふふッ、あと百年もしたらあなた、いい男になってそうだから、その時また会いましょう」
「……百年したら流石にお前もちゅうね、ギャッ!?」
余計な事を言い掛けたロッドの足をオーリーンのヒールがすかさず踏みつける。
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「ヴヴヴヴヴヴ……」
だよね。やっぱり、おっかないなぁ……。
「ミシマ。あなた、時々、私に対して何か失礼な事言っているわよねぇ?」
「ヴッ、ヴヴッ!!」
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「また、何処かで会う事があったらよろしく頼むぜッ!!」
「ああ、じゃあね、ロッド、オーリーン」
「バイバイッ、二人とも元気でねッ!!」
「ロッド、オーリーン、またいつか」
「ヴヴヴヴヴッ!!」
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