紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十一章 名誉騎士と宝石の角

同じ形

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 エルダガンドの南、ロガエストからなら南南東、いくつか国を超え、海を超えた先にダークエルフの国、レミリシアは存在していた。
エルフの国、リーフェルドと同じく住民は森で暮らし、精霊たちと共に自然に根付いた生活を送っているという。
 ダークエルフといってもリューを見れば分かる通り、彼らは健太郎の知識にある様に邪神の手先では無く、エルフという種族の一派生、人間で言えば白人や黒人、黄色人種のように肌や髪の色が違うだけらしい。

 現在、健太郎けんたろうはそのダークエルフの少年、リューを乗せそのレミリシアへ向かい高度一万メートルを航行していた。

「ゴウンゴウン」

 ダークエルフか……銀髪で金の瞳の凄くセクシーな美女もいるのかなぁ……。



「なんだいミシマ、その妙に具体的なイメージは?」
「ゴッ、ゴウンゴウンッ!!」

 いっ、いや、あのね、俺の国で有名なファンタジー小説に、そんなダークエルフの女の子が登場して、すっ、凄く人気だったんだよッ!!

 心無しか冷ややかなミラルダの声に健太郎は食い気味で説明を行った。

「フーン、有名な小説ねぇ……どんな話なのさ」
「ゴウンゴウン……」

 えっと……呪われた島って呼ばれる大陸で英雄たちが戦うお話だよ。
 ダークエルフの女の子は南部の離島にある国の出身で、主人公のライバルの黒騎士のパートナーとして活躍するんだ。

「へぇ……」
「ゴウンゴウン……」

 面白いお話だったよ……まぁ、リアルに冒険者やってるミラルダにはあんまピンとこないかもだけど……。

「で、ミシマはそのダークエルフの女の子が好きだったと?」
「ゴウンゴウン!!」

 まっ、まあね。あっ、ファンという意味での好きだよッ!!

「ファンねぇ……セクシーか……」

 ミラルダはチラリと自分の体を見下ろし、あたしもグリゼルダと一緒に走ろうかねぇと小さく呟いた。
 そんなやり取りをしていた健太郎とミラルダを他所に、リューとパムは艦橋から見える海の先をじっと見つめていた。

 やがてリューが見えたと声を上げる。

「あれがそうなの?」
「うん、あれが黒い森……レミリシアだよ」

 黒い森という言葉通り、濃緑の木々に覆われた広大な大地が広がっている。

「ふぇええ……一面、森だねぇ」
「フフッ、ここからだと森しか見えないけど、集落は僕達が切り開いた平原にあるんだ。レミリシアはそんな人工的な平原と深い森で出来た国だよ」
「嬉しそうだねぇ、リュー」
「うんッ! 森を見てようやく帰ってきたんだって実感出来たよッ!」

 一時、パムと別れる事を寂しがっていたリューだったが、やはり家族の元へ帰れる事は嬉しいのだろう。
 その微笑みは影が無く、明るい物だった。

 やがて健太郎は大陸上空に辿り着き、高度を落してその身をVTOLモードへと変えた。
 太陽は中天を過ぎ、時間でいえば午後二時頃だろうか。
 秋の終わりだったクルベストやエルダガンドとは違い、こちらの季節は初夏、リューが言った平原には緑の草が風に揺れていた。

 リューから説明されたロベット村は地図で言えばレミリシアの北西部、海からほど近い場所にある農業と豊な森での狩猟、そして海での漁で生計を立てるごく一般的な集落らしい。
 村が近づき平原に作られた畑が窓から見え始めると、それまで笑顔だったリューの顔が曇った。

「おかしい……変だ……」
「どうしたのリュー?」
「変なんだよパムッ!? いつもはこの時間、集落の皆は農作業をしてる筈なんだッ!! ……でも、数が少ない」
「どういう事だい?」
「……大人が……大人が一人もいない……」
「大人がいない?」
「……ゴウンゴウン」

 ……ミラルダ、とにかく着陸して探ってみよう。

「そうだね……」

 バババババババッ!! エンジン音を響かせ健太郎が畑近くの草原に着陸すると、その音を聞いて農作業をしていた子供達は一斉に森の中へと逃げ出した。
 リューは子供達を追って着陸と同時にハッチを開けVTOLを飛び出していく。

「リューッ!! 一人じゃ危ないよッ!!」

 パムもそんなリューを追いかけ森へと姿を消す。

「ミシマ、あたし等も追いかけるよっ!!」
「ヴヴヴヴヴッ!!」

 了解だッ!!

 パムに続きミラルダも機体から降りたのを確認し、健太郎はその身を人型へと変えた。

「とにかくリュー達を追おう。魔力よ大地を走る波となって我の周囲を照らし出せ、探知サーチッ!!」

 ミラルダは鞄から杖を取り出し、魔法を行使して周囲を探った。

「……この先、反応が集まってる。行こうミシマッ!!」
「コホーッ!!」

 ミラルダに先導される形で森に分け入り、反応、恐らく逃げた子供達が集まっているだろう場所を目指し走る。

 辿り着いた先では、リューが泣きじゃくる子供達を抱きしめしゃがみ込んでいた。

「パム、何があったんだいッ!?」
「リューが名前を呼んだら、みんな集まって来て……」
「コホーッ?」

 この子達は村の子供達って事?

「ヒッ!!」

 問い掛けた健太郎の言葉で彼の事に気付いた子供達は、一斉に顔を青ざめさせ大声で泣き始めた。

「コホッー!?」

 えっ、何で何でッ!? これでもお兄ちゃん、子供には好かれる体質なのにッ!?

「大丈夫、大丈夫だよ。この青いゴーレムはミシマ。この人は僕を助けてくれた恩人なんだ」
「ヒグッ……恩人……? だって……ヒグッ……お爺ちゃんとお婆ちゃんを……ヒグッ……殺して……お父さんとお母さんを……連れてったゴーレムと……グス……同じ形してる」

 答えた子供は両手の甲で涙を拭いながらリューに答えた。

「コホー……?」

 同じ……形……?

「ミシマと同じ……同族って事かい? ミシマ、あんた、仲間なんていたのかい?」
「コホー……」

 いや……でもロボットだからな……同じ規格で作られた別の個体って事か……。

「別の個体……あんたと同じ様に中身は人って事?」
「コホー……」

 それは分からない……とにかく、子供達に話を聞いて……。

 健太郎がそう言い掛けた時、子供の一人のお腹がクゥと鳴った。

「……みんな、ご飯食べてないの?」

 パムが問いかけると少年は少し怯えた目をしたが、リューが微笑み頷くとおずおずと口を開いた。

「……うん、そのまま食べれる物はもう食べちゃったし……さっきは玉ねぎを採ろうとしてたんだ」
「コホー」

 ミラルダ、まずは食事だ。宇宙戦艦モードなら内部に食堂があっただろう。

「だね……みんな、取り敢えずご飯にしようじゃないかッ!?」
「ご飯? 食べ物をくれるの?」
「ああ。あたしゃ子供が腹空かせてんの見るのは大嫌いなんだ。腹いっぱいご馳走するから、みんなついておいで」

 ミラルダがそう言ってニカッと笑うと、子供達は顔を見合わせていたがやがてゆっくりと頷きを返した。
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