紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.2

田中

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第七章 大森林のそのまた奥の

本戦前夜

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 予行演習という名の手合わせを終えた真田さなだと仲間達を乗せ、健太郎けんたろうはラテールの街へと戻った。
 体を動かした真田、ギャガン、ロミナはホテルに戻ると風呂に入り早々にベッドに潜り込んで寝てしまった。
 ニーナもずっとコロと一緒に応援した疲れからか真田達同様、夕食を終えるとすぐに床についた。
 逆に昼寝をしてしまったミラルダとグリゼルダは眠れない様で深夜まで何やら話し込んでいた。

 そんな中、健太郎は窓から見える月をボンヤリと眺めていた。

「ミシマも眠れないのかい?」

 話疲れたのかソファーで寝てしまったグリゼルダに毛布を掛けたミラルダが、窓際にいた健太郎に歩み寄り声を掛ける。
 彼女は健太郎が座っていた窓際の椅子の向かいに腰を下ろし、手にしたグラスをテーブルに置いた。
 グラスの中には白ワインが入っており、冷たく冷やされたその液体の所為でグラスは汗をかいていた。

「コホー」

 俺の体は疲れる事が無いからね。

「そうかい……大会、勝てるといいね」
「コホーッ」

 そうだな。俺か先生が勝てばニーナさんと先生の願いが叶う……ただ、親父さんを説得出来てないから無理矢理ってとこが気になるけど……。

「確かにね……でもね、親子であっても完全に分かり合えるって事は無いと思うんだよ……あたしだって師匠とは結構ぶつかっていたからね」
「コホーッ」

 へへッ、確かに幽霊になった婆ちゃんと言い合いしてたもんね……先生も親父さんと徹底的に喧嘩してぶつかった方が良かったのかもしれないな。

 真田の父親カルボとは分かり合えそうにないと感じ、家を抜け出しこの街まで来てしまった。
 だがあの時、逃げ出さず話し合いを続けるべきだったのかもしれない。

 健太郎はそんな風に思ったが、自分自身、両親とは分かり合えていない状況で、一体何が正しかったのか正解を見つけられなかった。

「コホーッ?」

 所でグリゼルダとは何を話していたの?

「ん? 獣人と魔法の事でちょっとね」
「コホーッ」

 そういえばギャガンが魔法を使ってたね。

「ああ、ただ、やっぱりそもそもの魔力量が少ないらしくてね、ギャガンの使ってた魔力付与エンチャントは初歩の魔法で、魔力を武器に宿らせて切れ味を良くするって奴なんだけど、それでも三回ぐらいしか使えないらしいのさ」
「コホーッ」

 三回……でもまぁ俺みたいに全然使えないよりはいいんじゃないの?

「グリゼルダはなんとかギャガンの魔力量を増やしたいみたいだよ。フフッ、あの子も変な所で凝り性だからねぇ……所でさ、ミシマ。あんた、先生やロミナになれたんなら転生前の姿にもなれるんじゃないかい?」

 ミラルダはそう言うとクイッとグラスを傾けた。
 心なしか頬が赤く、瞳がトロンとしている所を見るに酔っているらしい。

「コホーッ」

 俺の転生前の顔が見たいのか? 無精ひげでガリガリの冴えない顔だよ?

「それでも見たい……今のゴーレムの顔も悪くないけど、自分の相棒が昔どんな顔だったのか知りたいのさ……駄目かい?」



 そう言うとミラルダは上目遣いで濡れた瞳を健太郎に向けた。
 窓から差し込む月明かりでミラルダの顔が白く淡く照らされる。
 女性には縁遠かった健太郎にはその表情は破壊力が強すぎた。

「ブシューッ!!」

 健太郎のドキドキに誘発され吐き出された水蒸気は、一瞬でリビングを真っ白に染めた。

「わっ!? 急にどうしたんだいッ!? こんなに蒸気を出したら何も見えないじゃないかッ!?」

 健太郎が突然、蒸気を噴き出したのでミラルダは慌てて窓を開ける。
 窓から蒸気が流れ出て、白く染まったリビングから霧が晴れていく。

「もう、急に何なんだい……」

 そう言ってミラルダが椅子に腰を下ろし健太郎に視線を送ると、そこには見知らぬ黒髪の男が座っていた。

「……ミシマなのかい?」
「コホーッ」

 ちょっと恥ずかしいけど、これがホントの俺の姿だよ。

 ポリポリと頭を掻いた健太郎の頬にミラルダの手が伸びる。



「……フフッ、これが転生前のミシマなんだね……」

 そう言うとミラルダは嬉しそうにニッコリと微笑んだ。

「コホー……」

 そんなにじっくり見られると恥ずかしいんだが……。

「いいじゃないか…………あのさ……それ他の人には見せないで欲しいんだけど…………いいかい?」
「コホー?」

 なんで?

「一つぐらい、あたししか知らない事があってもいいだろ?」
「……コホー」

 ……そうかもな。

 見つめ合う二人を月が静かに照らしていた。
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