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18話 熱
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「体調悪いのに雨の中転んでそれで熱出て気絶って、アホだな」
腕を組んで障子の前に立っていたアオ、そこに枕が飛んできた。
「危なっ!」
アオは何とか避けたが、枕が障子に当たって大きな音を立てる。
「無茶苦茶元気じゃねぇかっ」
アオに指を指されたのは、三船だった。額に冷却シート、口にはマスクをして大人しく布団で寝ていたのだが、余程腹が立ったのか自分がしていた枕を直接投げた。
「というか、お前。俺に礼を言えよ。ここまで運んだのは俺なんだぞ」
三船が倒れた後、俺は直ぐにアオに連絡し、気を失った泥だらけの三船を車まで運んでもらったのだ。
一応病院に診てもらった結果、案の定ただの風邪。安静していれば治るとの事なので、薬だけ貰い家に帰宅した。
言い返せないことに、不満だったのか三船は礼も言わずに無言ですそっぽを向く。
「おいコラ」
「アオをやめろ。病に響いたら可哀想だろ」
「響く訳ないだろ。ていうか、お前も俺に対しての扱い酷いだろ」
「元々だろ。良いから部屋出ろ」
義宗さんは文句を言うアオを障子の外に押し出した。不公平だと叫んでいたけど、お構いなし。
「おかゆ作ってくるから待ってて」
部屋から出て行こうとしたから、俺も行きますとついて行く。
「三船の隣にいても良かったのに」
「いや、何かをしてないと不安で」
あのままボーと傍観しながら部屋にいるのは、何もできなかった自分の嫌悪に押しつぶされそうになる。
少しでも三船の役にたてればと想い部屋から出たまでだ。
「なるほどね。じゃあ、お粥作るの手伝ってくれるかな」
義宗にそう言われて、俺は台所に立つことになった。といっても、食材の準備と風邪の薬を用意したぐらい。
お粥を作るのは義宗さん、一切触れはしていない。けれど、通りすがりのアオが台所に立つ俺を見て『人殺しでもする気か』と言ったので脛を蹴っておいた。
「後はコップ」
用意を着々と進める俺は丸盆を出して、薬を用意して、次は水を入れるコップを食器棚から探す。
コップは何でも良いのだけど、水に入れるには丁度の良いガラスコップがあったので取ろうと少し背を伸ばした。
その瞬間、カサリッと服のポケットから小さな物が落ちた。
何だろうと床に落ちた小さな物を見れば、いつか拾った赤い御守りだった。手に取り裏返しながら、義宗さんに渡すのを忘れていた事を思い出す。
丁度、義宗さんは鍋が煮立つまで待っていたので
「義宗さん、これ。俺の部屋にあった物なんですけど、一応渡しときます」
「うん?何だろう……」
受け取ると義宗さんは目を大きく見開いては、笑みを溢し手の中で御守りを転がし遊ばせる。
「まだ、こんなのあったんだ」
懐かしむようなポツリと呟き、御守りをなぞる指先は震えていた。
「ほんと、姉さんも捨てられない人だな。こんな物捨てれば良かったのに」
聞き取れないほどの掠れた声。
「義宗さん?」
「いや、ごめん。何もないよ。これは三船に返してあげて」
再び手の中に戻ってくる。
「あれ、三船の物だったんですか」
「そうとも言うのかな。三船なら持ち主を知ってると思うから」
「分かりました。訊いてみます」
「あっ、お粥そろそろ出来るから運んでくれるかな」
「はい!」
俺は再びお守りをポケットの中に戻し、丸盆に水と薬とそして出来たお粥を乗せて、三船の元に持って行く。
義宗さんによろしくと言われて、少しでも役に立てる事に恥ずかしいけど浮き足立っていた。
それにしてもポケットの中に御守りを入れていたかな、という疑問が浮かぶ、けれど部屋の襖を開ける頃には忘れた。
腕を組んで障子の前に立っていたアオ、そこに枕が飛んできた。
「危なっ!」
アオは何とか避けたが、枕が障子に当たって大きな音を立てる。
「無茶苦茶元気じゃねぇかっ」
アオに指を指されたのは、三船だった。額に冷却シート、口にはマスクをして大人しく布団で寝ていたのだが、余程腹が立ったのか自分がしていた枕を直接投げた。
「というか、お前。俺に礼を言えよ。ここまで運んだのは俺なんだぞ」
三船が倒れた後、俺は直ぐにアオに連絡し、気を失った泥だらけの三船を車まで運んでもらったのだ。
一応病院に診てもらった結果、案の定ただの風邪。安静していれば治るとの事なので、薬だけ貰い家に帰宅した。
言い返せないことに、不満だったのか三船は礼も言わずに無言ですそっぽを向く。
「おいコラ」
「アオをやめろ。病に響いたら可哀想だろ」
「響く訳ないだろ。ていうか、お前も俺に対しての扱い酷いだろ」
「元々だろ。良いから部屋出ろ」
義宗さんは文句を言うアオを障子の外に押し出した。不公平だと叫んでいたけど、お構いなし。
「おかゆ作ってくるから待ってて」
部屋から出て行こうとしたから、俺も行きますとついて行く。
「三船の隣にいても良かったのに」
「いや、何かをしてないと不安で」
あのままボーと傍観しながら部屋にいるのは、何もできなかった自分の嫌悪に押しつぶされそうになる。
少しでも三船の役にたてればと想い部屋から出たまでだ。
「なるほどね。じゃあ、お粥作るの手伝ってくれるかな」
義宗にそう言われて、俺は台所に立つことになった。といっても、食材の準備と風邪の薬を用意したぐらい。
お粥を作るのは義宗さん、一切触れはしていない。けれど、通りすがりのアオが台所に立つ俺を見て『人殺しでもする気か』と言ったので脛を蹴っておいた。
「後はコップ」
用意を着々と進める俺は丸盆を出して、薬を用意して、次は水を入れるコップを食器棚から探す。
コップは何でも良いのだけど、水に入れるには丁度の良いガラスコップがあったので取ろうと少し背を伸ばした。
その瞬間、カサリッと服のポケットから小さな物が落ちた。
何だろうと床に落ちた小さな物を見れば、いつか拾った赤い御守りだった。手に取り裏返しながら、義宗さんに渡すのを忘れていた事を思い出す。
丁度、義宗さんは鍋が煮立つまで待っていたので
「義宗さん、これ。俺の部屋にあった物なんですけど、一応渡しときます」
「うん?何だろう……」
受け取ると義宗さんは目を大きく見開いては、笑みを溢し手の中で御守りを転がし遊ばせる。
「まだ、こんなのあったんだ」
懐かしむようなポツリと呟き、御守りをなぞる指先は震えていた。
「ほんと、姉さんも捨てられない人だな。こんな物捨てれば良かったのに」
聞き取れないほどの掠れた声。
「義宗さん?」
「いや、ごめん。何もないよ。これは三船に返してあげて」
再び手の中に戻ってくる。
「あれ、三船の物だったんですか」
「そうとも言うのかな。三船なら持ち主を知ってると思うから」
「分かりました。訊いてみます」
「あっ、お粥そろそろ出来るから運んでくれるかな」
「はい!」
俺は再びお守りをポケットの中に戻し、丸盆に水と薬とそして出来たお粥を乗せて、三船の元に持って行く。
義宗さんによろしくと言われて、少しでも役に立てる事に恥ずかしいけど浮き足立っていた。
それにしてもポケットの中に御守りを入れていたかな、という疑問が浮かぶ、けれど部屋の襖を開ける頃には忘れた。
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