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20 朝
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白くて、もふもふとしたものが鼻先に触れた。
微睡のなか目が覚めれば、隣には足、お腹には黒兎がいた。足だけなら飛び起きるところだが、自身の足元辺りに顔があると知っているので、メガネを手に取りのびのびと起き上がる。
黒兎も共に起き上がりイーナを待つ。
それにしてもすごい寝相。
横で大口を開けて眠るアルカナを見てイーナは思う。
寝た時には頭があったというのに、起きれば足になっていた。寝ている間にぐるりと一回転したということだ。
体は布団から飛び出していたので、イーナはかけていた布団をアルカナにかけてから、出来るだけ音を立てないように部屋に黒兎共に部屋を出る。
扉を開けた先には白く短い毛がある丸い生き物、精霊がイーナを待っていた。
精霊は浮かぶ体をゆっくりと傾けては『ついて来て』と言うように少し進んでは振り返り廊下の奥に誘導してくる。
イーナは無言で頷き、精霊に従い付いて行く。
太陽はまだ登り切っておらず、廊下は薄暗く、一人として歩いてはいなかった。新鮮で冷たい空気が流れる静寂の中、一人と一匹の足音がよく響く。
白い精霊に連れて来られたのは、寮の共同トイレ。そこで待っている人物はなんとなく分かっていたので、後ろから突然話しかけられてもイーナは驚くことはない。
「僕じゃないから」
不満げな声。後ろを振り向くと普段着を着たスズランが腕を組んでこちらを睨む。道を案内してくれた精霊は、スズランの元に戻っていく。
「朝から……なに。話の内容が掴めないんだけど……スズランさん」
「呼び捨てでいい。とにかく、僕は関わりないから。虐めたのはアイツらが勝手にやったことで指示とかしてない」
「あー、昨日の事。別に君が指示したとか、やったとか全く思ってないよ」
スズランがする訳ない。保障するものはないけれど、初めて会った時から、真っ直ぐというか手間を取るような事を嫌っているように感じる。
「……本当に? 上べで言ってない」
「言ってないよ。というか、俺を虐めたとしてスズランには徳ないし、裏でコソコソせず堂々とこっちに来るでしょ。現に直接会いに来ているし」
「……そうだけど。なんか僕のこと分かっています感が癪」
「癪って、どう答えれば納得するんだよ。誤解を解きに来たんじゃないのか」
「そうだけど……だから、あの……」
頬を少々膨らまし腕を組んだままのスズラン。何を言えば納得するのだろうかとイーナは苦笑う。
すると、足元にいた黒兎がスズランの方に向かって飛んで行く。
「黒兎、また」
人に噛み付くと思ったイーナは黒兎を捕まえようとしたが、その前にスズランが腰を下ろし、黒兎に手を伸ばす。
「なに、抱っこして欲しかったのか」
スズランは頬を緩ませ黒兎を抱き上げる。黒兎の方は噛むこともなければ暴れることなく腕に収まっていた。
「あれ? 噛まれない」
「噛む訳ないだろ、こんなに大人しいだから」
「いや、何もしてない人に噛みついたんだ」
「ふーん。その時、何かあった」
「……一人は戦いに挑まれた時に、もう一人はただ話しただけ。どちらも攻撃されたりはしていない」
「挑発。いや、感情の変化……」
黒兎を持ち上げ、スズランは呟きながら黒兎を観察する。
「君って、僕のこと好きなの」
訊かれて悩む。会った回数も、話した回数も少ないから、どうこうという感情がまだ湧いてこない。
「うーん、黒兎の事を教えてくれたのは、ありがたかったし、別に嫌いではないよ」
「なるほど、なるほど。僕が今から攻撃するって言ったとして、どうする」
「えっ、それは困る」
「困るだけ?」
スズランは黒兎の反応を見ているのか、こちらに目線を配ることはない。黒兎の反応といえば、鼻をヒクヒクと細かく動かすだけで無反応。動く気もない。
「うん、分かった」
「何が」
「トイレで長話するのも何だから食堂に行かない。君と他にも話がしたいし」
再びイーナの腕の中に黒兎を戻し。
それもそうだと、二人は寮の食堂に行く事となり、前を先導していたスズランが振り返る。
「君ってさぁ、弟とかいるの」
「弟、いるけど。何でそんなことを」
「何となく、聞いたところで意味なんかないんだけど」
「うん?」
彼なりの話題作りだったのだろうか。それ以上、スズランは何も訊かなかった。
微睡のなか目が覚めれば、隣には足、お腹には黒兎がいた。足だけなら飛び起きるところだが、自身の足元辺りに顔があると知っているので、メガネを手に取りのびのびと起き上がる。
黒兎も共に起き上がりイーナを待つ。
それにしてもすごい寝相。
横で大口を開けて眠るアルカナを見てイーナは思う。
寝た時には頭があったというのに、起きれば足になっていた。寝ている間にぐるりと一回転したということだ。
体は布団から飛び出していたので、イーナはかけていた布団をアルカナにかけてから、出来るだけ音を立てないように部屋に黒兎共に部屋を出る。
扉を開けた先には白く短い毛がある丸い生き物、精霊がイーナを待っていた。
精霊は浮かぶ体をゆっくりと傾けては『ついて来て』と言うように少し進んでは振り返り廊下の奥に誘導してくる。
イーナは無言で頷き、精霊に従い付いて行く。
太陽はまだ登り切っておらず、廊下は薄暗く、一人として歩いてはいなかった。新鮮で冷たい空気が流れる静寂の中、一人と一匹の足音がよく響く。
白い精霊に連れて来られたのは、寮の共同トイレ。そこで待っている人物はなんとなく分かっていたので、後ろから突然話しかけられてもイーナは驚くことはない。
「僕じゃないから」
不満げな声。後ろを振り向くと普段着を着たスズランが腕を組んでこちらを睨む。道を案内してくれた精霊は、スズランの元に戻っていく。
「朝から……なに。話の内容が掴めないんだけど……スズランさん」
「呼び捨てでいい。とにかく、僕は関わりないから。虐めたのはアイツらが勝手にやったことで指示とかしてない」
「あー、昨日の事。別に君が指示したとか、やったとか全く思ってないよ」
スズランがする訳ない。保障するものはないけれど、初めて会った時から、真っ直ぐというか手間を取るような事を嫌っているように感じる。
「……本当に? 上べで言ってない」
「言ってないよ。というか、俺を虐めたとしてスズランには徳ないし、裏でコソコソせず堂々とこっちに来るでしょ。現に直接会いに来ているし」
「……そうだけど。なんか僕のこと分かっています感が癪」
「癪って、どう答えれば納得するんだよ。誤解を解きに来たんじゃないのか」
「そうだけど……だから、あの……」
頬を少々膨らまし腕を組んだままのスズラン。何を言えば納得するのだろうかとイーナは苦笑う。
すると、足元にいた黒兎がスズランの方に向かって飛んで行く。
「黒兎、また」
人に噛み付くと思ったイーナは黒兎を捕まえようとしたが、その前にスズランが腰を下ろし、黒兎に手を伸ばす。
「なに、抱っこして欲しかったのか」
スズランは頬を緩ませ黒兎を抱き上げる。黒兎の方は噛むこともなければ暴れることなく腕に収まっていた。
「あれ? 噛まれない」
「噛む訳ないだろ、こんなに大人しいだから」
「いや、何もしてない人に噛みついたんだ」
「ふーん。その時、何かあった」
「……一人は戦いに挑まれた時に、もう一人はただ話しただけ。どちらも攻撃されたりはしていない」
「挑発。いや、感情の変化……」
黒兎を持ち上げ、スズランは呟きながら黒兎を観察する。
「君って、僕のこと好きなの」
訊かれて悩む。会った回数も、話した回数も少ないから、どうこうという感情がまだ湧いてこない。
「うーん、黒兎の事を教えてくれたのは、ありがたかったし、別に嫌いではないよ」
「なるほど、なるほど。僕が今から攻撃するって言ったとして、どうする」
「えっ、それは困る」
「困るだけ?」
スズランは黒兎の反応を見ているのか、こちらに目線を配ることはない。黒兎の反応といえば、鼻をヒクヒクと細かく動かすだけで無反応。動く気もない。
「うん、分かった」
「何が」
「トイレで長話するのも何だから食堂に行かない。君と他にも話がしたいし」
再びイーナの腕の中に黒兎を戻し。
それもそうだと、二人は寮の食堂に行く事となり、前を先導していたスズランが振り返る。
「君ってさぁ、弟とかいるの」
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