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25 街の喫茶店
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結局、あの後灰色の兎は見つからなかった。レオンを突き放しただけに終わったイーナは、ため息を吐くしかなく。
謝罪したいけど、謝罪したくない。会いたいけど、会いたくない、矛盾した感情が渦巻いていた。
「今日で三回目だよ」
「そうだな。あと何回記録できるだろう」
「兄さん、そういう競技してないから」
頬杖をつくイーナを咎めるのは弟であり、ここは学園の外にある喫茶店に来ていた。
燻んだオレンジソファーに灰色のような白の壁紙と、大人っぽく落ち着いた店。
街の案内も兼ねて外がよく見える窓側に席を取り、対面になる様に座る。
黒髪、黒色の瞳、俺とそれほど変わらない顔。久しぶりあった弟は髪を流す方向が左から右に変わったくらいで、変わっておらず。いや、少し身長が伸びた気がする。
「で、悩みはなに? 聞いて欲しくてため息ついてるんでしょ」
「……言いたくない」
「こっちに来てから一回りに面倒な人になってますけど」
「……っこれは兄としての威厳をだな」
「はいはい。威厳ですね」
弟は自身の一切れのケーキがある皿を持ち上げて、俺の目の前に置く。
「馬鹿にしてるのか」
「あれ、いらない?」
「いらない。誰が、弟の物を食うか」
「じゃあ、半分」
そう言って三角のケーキをフォークで分けると、三角と台形ができた。
食べないと永遠に文句を言われそうなので、俺は小さく三角の方を手に取る。
弟は残った台形をフォークで切り分けて食べ始め、ポツリと話をする。
「こういうこと、小さい頃あったよね。お金がない時にパンを一つ買ってきて二人で分けた」
「あったな。あの時は餓死するかと思った」
「そのパンを二つに分けた時に、大きいのと小さいのが出来て、兄さんはお腹が空いてないからって小さいのを取った」
「そうだな」
「で、お腹が空きすぎて町中で倒れた」
「……そうだな」
「たまたま通りかかった優しい人が、クッキー一つを兄さんにあげた。そのクッキーがものすごく美味しくて、それ以来、甘いものが好きなった」
弟の話は確かに事実。お腹が空いている状態でクッキーを食べた時は衝撃だった、世の中にはこれほど美味しいものがあるのかと感動し。同じ物を食べていた事があるというのに、状況が違えばこんなにも違うのかとも驚いた。
という過去の話なのだが。何故、弟はこの話題を今ここを出したのだろうか。
ケーキを切り分けたから? 甘い物が好きだと知っているから?
俺の思考を読むかの様に弟は話を続ける。
「この話題をしたのは、兄さんは、兄さんでいようとするよね。ケーキを横取りをしないことが正しいと」
「……? 当たり前だろ。」
「そう、当たり前……。たまに思うんだ。そのせいで自分を自分で縛ってないかって。破裂しそうになっても、耐えらるくらい強いのは知っているし、どんな行く道でも俺はついていくつもりだけど。本当にそれはいいことかって、先が恐いんだよ」
「ヴァイス、話が掴めないだが。もう少し砕けた言い方をしてくれ」
ヴァイスは一度目を閉じてから改めて言葉にする。
「兄さんが甘えられる運命の出会いがあればいいなって、言いたいだけ」
「恋人作れって話ね……大きなお世話だ」
「案外近くに、いい人いるかもよ。あっ、聞いていたレオンさんとか」
その提案に、飲んでいたコーヒーを吹き出した。
思いついた様に人差し指を立てて何を言い出すかと思えば、突拍子のない事を言い出した。
「ない、絶対ない。あの人とは有り得ない」
「なんで? 好きって言ってたのに」
「その好きは、そっちのじゃなくて、友人てきな軽い方な好きであって……先輩だし、男だし、それぞれ立場とか色々違うし」
レオンとの出来事を走馬灯のように思い浮かび、赤くしたり、青くしたり、表情をコロコロと変えるイーナは、口がモゴモゴとこもる。
「そう? 強がりもいいけど、違う人を見つけないとね」
「だからっ、大きなお世話だ。お前、絶対信じてないだろ」
強く否定しても「はいはい」と流され、弟はニコニコと笑うのだった。
謝罪したいけど、謝罪したくない。会いたいけど、会いたくない、矛盾した感情が渦巻いていた。
「今日で三回目だよ」
「そうだな。あと何回記録できるだろう」
「兄さん、そういう競技してないから」
頬杖をつくイーナを咎めるのは弟であり、ここは学園の外にある喫茶店に来ていた。
燻んだオレンジソファーに灰色のような白の壁紙と、大人っぽく落ち着いた店。
街の案内も兼ねて外がよく見える窓側に席を取り、対面になる様に座る。
黒髪、黒色の瞳、俺とそれほど変わらない顔。久しぶりあった弟は髪を流す方向が左から右に変わったくらいで、変わっておらず。いや、少し身長が伸びた気がする。
「で、悩みはなに? 聞いて欲しくてため息ついてるんでしょ」
「……言いたくない」
「こっちに来てから一回りに面倒な人になってますけど」
「……っこれは兄としての威厳をだな」
「はいはい。威厳ですね」
弟は自身の一切れのケーキがある皿を持ち上げて、俺の目の前に置く。
「馬鹿にしてるのか」
「あれ、いらない?」
「いらない。誰が、弟の物を食うか」
「じゃあ、半分」
そう言って三角のケーキをフォークで分けると、三角と台形ができた。
食べないと永遠に文句を言われそうなので、俺は小さく三角の方を手に取る。
弟は残った台形をフォークで切り分けて食べ始め、ポツリと話をする。
「こういうこと、小さい頃あったよね。お金がない時にパンを一つ買ってきて二人で分けた」
「あったな。あの時は餓死するかと思った」
「そのパンを二つに分けた時に、大きいのと小さいのが出来て、兄さんはお腹が空いてないからって小さいのを取った」
「そうだな」
「で、お腹が空きすぎて町中で倒れた」
「……そうだな」
「たまたま通りかかった優しい人が、クッキー一つを兄さんにあげた。そのクッキーがものすごく美味しくて、それ以来、甘いものが好きなった」
弟の話は確かに事実。お腹が空いている状態でクッキーを食べた時は衝撃だった、世の中にはこれほど美味しいものがあるのかと感動し。同じ物を食べていた事があるというのに、状況が違えばこんなにも違うのかとも驚いた。
という過去の話なのだが。何故、弟はこの話題を今ここを出したのだろうか。
ケーキを切り分けたから? 甘い物が好きだと知っているから?
俺の思考を読むかの様に弟は話を続ける。
「この話題をしたのは、兄さんは、兄さんでいようとするよね。ケーキを横取りをしないことが正しいと」
「……? 当たり前だろ。」
「そう、当たり前……。たまに思うんだ。そのせいで自分を自分で縛ってないかって。破裂しそうになっても、耐えらるくらい強いのは知っているし、どんな行く道でも俺はついていくつもりだけど。本当にそれはいいことかって、先が恐いんだよ」
「ヴァイス、話が掴めないだが。もう少し砕けた言い方をしてくれ」
ヴァイスは一度目を閉じてから改めて言葉にする。
「兄さんが甘えられる運命の出会いがあればいいなって、言いたいだけ」
「恋人作れって話ね……大きなお世話だ」
「案外近くに、いい人いるかもよ。あっ、聞いていたレオンさんとか」
その提案に、飲んでいたコーヒーを吹き出した。
思いついた様に人差し指を立てて何を言い出すかと思えば、突拍子のない事を言い出した。
「ない、絶対ない。あの人とは有り得ない」
「なんで? 好きって言ってたのに」
「その好きは、そっちのじゃなくて、友人てきな軽い方な好きであって……先輩だし、男だし、それぞれ立場とか色々違うし」
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「そう? 強がりもいいけど、違う人を見つけないとね」
「だからっ、大きなお世話だ。お前、絶対信じてないだろ」
強く否定しても「はいはい」と流され、弟はニコニコと笑うのだった。
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