学園最強と言われている術師に何故か好かれている

イケのタコ

文字の大きさ
28 / 29

25 街の喫茶店

しおりを挟む
結局、あの後灰色の兎は見つからなかった。レオンを突き放しただけに終わったイーナは、ため息を吐くしかなく。
謝罪したいけど、謝罪したくない。会いたいけど、会いたくない、矛盾した感情が渦巻いていた。

「今日で三回目だよ」
「そうだな。あと何回記録できるだろう」
「兄さん、そういう競技してないから」

頬杖をつくイーナを咎めるのは弟であり、ここは学園の外にある喫茶店に来ていた。
燻んだオレンジソファーに灰色のような白の壁紙と、大人っぽく落ち着いた店。
街の案内も兼ねて外がよく見える窓側に席を取り、対面になる様に座る。
黒髪、黒色の瞳、俺とそれほど変わらない顔。久しぶりあった弟は髪を流す方向が左から右に変わったくらいで、変わっておらず。いや、少し身長が伸びた気がする。

「で、悩みはなに? 聞いて欲しくてため息ついてるんでしょ」
「……言いたくない」
「こっちに来てから一回りに面倒な人になってますけど」
「……っこれは兄としての威厳をだな」
「はいはい。威厳ですね」

弟は自身の一切れのケーキがある皿を持ち上げて、俺の目の前に置く。

「馬鹿にしてるのか」
「あれ、いらない?」
「いらない。誰が、弟の物を食うか」
「じゃあ、半分」

そう言って三角のケーキをフォークで分けると、三角と台形ができた。
食べないと永遠に文句を言われそうなので、俺は小さく三角の方を手に取る。
弟は残った台形をフォークで切り分けて食べ始め、ポツリと話をする。

「こういうこと、小さい頃あったよね。お金がない時にパンを一つ買ってきて二人で分けた」
「あったな。あの時は餓死するかと思った」
「そのパンを二つに分けた時に、大きいのと小さいのが出来て、兄さんはお腹が空いてないからって小さいのを取った」
「そうだな」
「で、お腹が空きすぎて町中で倒れた」
「……そうだな」
「たまたま通りかかった優しい人が、クッキー一つを兄さんにあげた。そのクッキーがものすごく美味しくて、それ以来、甘いものが好きなった」

弟の話は確かに事実。お腹が空いている状態でクッキーを食べた時は衝撃だった、世の中にはこれほど美味しいものがあるのかと感動し。同じ物を食べていた事があるというのに、状況が違えばこんなにも違うのかとも驚いた。
という過去の話なのだが。何故、弟はこの話題を今ここを出したのだろうか。
ケーキを切り分けたから? 甘い物が好きだと知っているから?
俺の思考を読むかの様に弟は話を続ける。

「この話題をしたのは、兄さんは、兄さんでいようとするよね。ケーキを横取りをしないことが正しいと」
「……? 当たり前だろ。」
「そう、当たり前……。たまに思うんだ。そのせいで自分を自分で縛ってないかって。破裂しそうになっても、耐えらるくらい強いのは知っているし、どんな行く道でも俺はついていくつもりだけど。本当にそれはいいことかって、先が恐いんだよ」
「ヴァイス、話が掴めないだが。もう少し砕けた言い方をしてくれ」

ヴァイスは一度目を閉じてから改めて言葉にする。

「兄さんが甘えられる運命の出会いがあればいいなって、言いたいだけ」
「恋人作れって話ね……大きなお世話だ」
「案外近くに、いい人いるかもよ。あっ、聞いていたレオンさんとか」

その提案に、飲んでいたコーヒーを吹き出した。
思いついた様に人差し指を立てて何を言い出すかと思えば、突拍子のない事を言い出した。

「ない、絶対ない。あの人とは有り得ない」
「なんで? 好きって言ってたのに」
「その好きは、そっちのじゃなくて、友人てきな軽い方な好きであって……先輩だし、男だし、それぞれ立場とか色々違うし」

レオンとの出来事を走馬灯のように思い浮かび、赤くしたり、青くしたり、表情をコロコロと変えるイーナは、口がモゴモゴとこもる。

「そう? 強がりもいいけど、違う人を見つけないとね」
「だからっ、大きなお世話だ。お前、絶対信じてないだろ」

強く否定しても「はいはい」と流され、弟はニコニコと笑うのだった。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ
BL
 異世界に転生したと思ったら、オメガバースの世界でした。  しかも、どうやらここは前世の姉ちゃんが読んでいたBL漫画の世界らしい。  漫画の主人公であるハイスぺアルファ・レオンの友人モブアルファ・カイルとして過ごしていたはずなのに、なぜか俺が迫られている。 「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる」  え、後天的Ω?ビッチング!? 「カイル、僕を君のオメガにしてくれ」  この小説は主人公攻め、受けのビッチング(後天的Ω)の要素が含まれていますのでご注意を!  騎士団長子息モブアルファ×原作主人公アルファ(後天的Ωになる)

処理中です...