孤独な青年はひだまりの愛に包まれる

ミヅハ

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鷹臣さんは凄い人

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 引っ越しを終えて三日。
 大学のカフェテリアで次の講義までの時間を潰していた僕は、後ろから名前を呼ばれて何気なく振り向いた。そこには叶くんと、叶くんの彼女である茉莉まつりちゃんがいてヒラヒラと手を振ってる。

「叶くん、茉莉ちゃん」
「相席いい?」
「もちろん」

 四人掛けを一人で使ってたから頷けば、二人は僕の前に並んで腰を下ろす。
 読んでいた本を閉じて鞄にしまうと、茉莉ちゃんが両手で頬杖をついてにこっと笑い僕に話しかけてきた。

「何か久し振りだね、遥斗くん」
「そうだね。叶くんもそうだけど、茉莉ちゃんもあんまり講義被らないからなかなか会わないね」
「遥斗くんともっと話したいんだけどなぁ」

 茉莉ちゃんは本当に気さくな人で、叶くんと知り合ったばかりの頃はもうお付き合いをしてたんだけど、上手に話せない僕の事を笑ったり揶揄ったりしないでくれただけじゃなく、ゆっくりでいいよってペースを合わせてくれる優しい人。
 叶くんの助力もあって、茉莉ちゃんとも割とすぐに仲良くなれた。

「そういや、年上彼氏とはどうなんだ?」
「え! 年上彼氏!?」
「あ、相変わらずです⋯」
「甘やかされてんのか」

 それはもう、他の人が聞いたらそんな事までして貰ってるの? って驚くくらい甘やかされてる。
 ニヤニヤする叶くんに頷きで返したら、どうしてか目をキラキラさせた茉莉ちゃんが身を乗り出す勢いで聞いてきた。

「年上彼氏って何? 遥斗くん、彼氏が出来たの?」
「あ、う、うん」
「しかもスパダリ」
「スパダリ!? やだもう、詳しく聞かせてよ!」
「詳しく⋯」

 こ、こんなに興奮してる茉莉ちゃんは初めて見る。
 というか、詳しくってどう話したら詳しくなるんだろう。そもそも詳しく話せるような事がないというか⋯。

「どこで知り合ったの?」
「僕のバイト先に、お客さんで来てて」
「告白した? された?」
「えっと⋯告白された⋯」
「どんな風に?」
「こ、恋人なって欲しいって薔薇の花束も渡されて⋯」
「うわぁ⋯! 何それ素敵!」

 次から次へと質問が投げ掛けられるから答えてたものの、なんか、だんだん恥ずかしくなってきた。女の子は恋バナが好きだって聞くけど、同性同士でもいいのかな。

「っつか、聞いてなかったけど彼氏さん何て名前?」
「宝条鷹臣さん」
「ほうじょう? ⋯もしかして、〝宝〟に条件の〝条〟?」
「うん」
「どっかで聞いた事ある名前だね」

 テレビやネットのニュースを見てる人なら聞き覚えはあるんじゃないかなってくらい大きな会社の社長さんだから、もしかしたら二人も知ってるのかも。
 首を傾げる茉莉ちゃんに、スマホを操作していた叶くんが画面を向ける。それを見た茉莉ちゃんは大きな目を更に大きくして叶くんと顔を見合わせ、それから僕を見て何故か親指を立てた。

「解釈一致! ありがとう!」
「え?」
「前々から遥斗くんには、包容力があって甘やかしてくれる彼氏の方が絶対合うと思ってたんだよねぇ。この、ってところが重要ね。しかもこんなイケメンなんて!」
「う、うん⋯?」

 茉莉ちゃんは何を言ってるんだろう。
 困惑してたら叶くんがスマホを見ながら頬杖をつき、一頻り画面を見たあとテーブルに置いたけど、そこに写ってたのはスーツ姿の鷹臣さんで僕は思わず「あ」と声を出した。
 仕事中の写真なのかな。かっこいい。

「マジでスパダリじゃん。大企業の社長で、家事完璧で、包容力あって頭も良くてイケメンで? やっば、ハイスペすぎ」
「それに遥斗くんを見初めるなんて、見る目があるよね」
「それは同感」
「幸せになるんだよ、遥斗くん」
「ありがとう」

 幸せを願ってくれる優しい友達が二人もいて、僕は本当に幸せ者だ。
 嬉しさのあまり表情が緩んでそのままお礼を言えば叶くんも茉莉ちゃんも笑ってくれて、何だかほのぼのとした空気が流れた。




「鷹臣さんは、ハイスペでスパダリだそうですよ」
「うん?」

 家のソファでまったりしている時、ふと叶くんと茉莉ちゃんとの話を思い出して僕のカフェオレと自分のコーヒーを淹れてソファに座った鷹臣さんに言ってみると、不思議そうな顔で首を傾げられた。
 お礼を言って受け取り、湯気の立つカフェオレに息を吹き掛ける。

「ハイスペでスパダリ⋯悪い気はしないけど、俺には不相応だよ」
「そんな事ないです。鷹臣さんは素敵だしかっこいいし凄いです」
「⋯俺からしてみれば、遥斗の方が凄いけどね」
「え?」
「いつだって俺を喜ばせてくれる」

 顎に長い指がかかり、軽く上向かされたと思ったら鷹臣さんの顔が近付いて唇が触れ合った。すぐ離れたけどまた重なって、今度は優しく啄まれる。

「ん⋯」
「君の言葉一つで年甲斐もなく舞い上がって⋯こんなの初めてだよ」
「⋯た、鷹臣さ⋯っ」
「ん?」
「カフェオレ⋯零れる⋯」
「ああ」

 言葉の合間に与えられるキスに頭がぼんやりしてきてカップを持つ手が震えてきたからそう言えば、気付いた鷹臣さんがそれを取り上げテーブルに置いてくれる。
 零さなくて済んだ事にホッとしてたら、不意に肩が抱き寄せられ深めのキスをされた。

「ンッ」

 まるでこのまま食べられてしまいそうなくらい唇に吸い付かれ背中がゾワゾワする。上手く息が出来なくて、苦しくて酸素を求めて口を開けたらぬるりと舌が入ってきた。

「ん、んん⋯っ」

 驚いて思わず逃げた舌がつつかれ、裏から掬われるように絡め取られて擦られる。舌が触れるたび唾液が混ざり合う音が聞こえて、耳も刺激されているようで腰が震えてきた。
 こ、このままだとあらぬところが反応してしまう。
 いろいろマズイし、何かに縋りたくて鷹臣さんの服を掴んだら強めに舌が吸われて離れた。

「⋯っ、は⋯ぅ⋯⋯はぁ⋯」
「真っ赤になって⋯遥斗は本当に可愛いね」
「ん⋯っ」

 身体に力が入らなくて、くたっと鷹臣さんに寄り掛かったら耳元で囁かれ軽く歯を立てられる。緩く首を振り噛まれた耳を手で隠すとぎゅうっと抱き締められた。

「⋯愛してるよ、遥斗」
「⋯⋯僕も⋯大好きです⋯」

 言葉は違うけど気持ちの大きさは同じだって思ってる。
 背中と髪を撫でる優しい手に促されるように、僕はドキドキしながら両手を鷹臣さんの背中へと回した。
 もっと自分からも何か出来るように頑張らないと。
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