人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ

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可愛い恋人(真那視点)

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 ヒナが何を言ったのか、一瞬理解出来なかった。
 真剣な目で真っ直ぐに俺を見つめるヒナは相変わらず可愛いけど、俺の耳にはジワジワと告げられた言葉が染み込み口の中が渇き出す。

 恋愛感情で俺の事が好き? ヒナが?

 だってつい最近まで俺を幼馴染みとして見てたはず。勝算はあるかもとは思ってたけど、最後に会った時だっていつものヒナだったし、もしかしてなんて思えるような言動もなかった。
 それに、好きなんだったらライブ終わりに楽屋まで会いに来ない? 俺、物凄く忙しくて会える時間なかったんだよ?
 それともライブの時はまだ好きじゃなかった?

「真那と同じ気持ちだけど…信じられないか?」

 俺が一言も発しないからか、不安そうに眉尻を下げたヒナがもう一度言ってくれる。ヒナの言葉が信じられないなんて、そんな事あるはずないのに。
 でも俺と同じだって言うけど、ヒナは俺の心の中にある黒い気持ちを知らないだろう。俺よりも小さな身体を組み敷いて、何度も何度も口付けてたっぷり味わって、ヒナの身体中に触れて奥の奥まで暴きたいってドロドロした気持ち。
 ヒナが色事に関してどれだけの知識があるかは分からないけど、さすがに俺ほどエグいものは頭に浮かびもしないはず。

 視線を彷徨わせたあと目を伏せたヒナは、口を一文字に結びどうしたらいいかを考えてる様子だ。早く何か言わなきゃ悲しませてしまう。

「ヒナ」
「…ん?」
「好きだよ」
「……オレも好きだ」

 頬を撫で少しだけ震えた声で言うと、ヒナがホッとしたように返してくれて堪らなくなった。
 ヒナの細い腰の後ろで組んでいた手を解き背中を掻き抱いて、さっきお預けされたキスをすればヒナの手が俺の服を強めに掴む。でも、押し返されたりはしなかった。
 啄むようにヒナの唇を食み角度を変えて何度も口付ける。
 ヒナが俺を好きだなんて、夢みたいだ。
 この間の事があるから舌は入れなかったけど、思う存分キスをし吸い付きながら離すとギュッと目を瞑り真っ赤な顔で震えているヒナが目に入った。こういう事にヒナが慣れていないのは、ずっと傍にいた俺が良く知ってる。
 何と言っても俺は、ヒナのクラスメイトに、ヒナに悪い虫が付かないよう見張って貰っていたんだ。ヒナに好意を持った人には他の人よりほんの少しだけ話し掛けたり、目を合わせたりして俺に気が向くようにした。
 ヒナには俺だけがいればいい。ヒナに釣り合うのは俺だけだから。

「ヒナ、顔真っ赤だね。可愛い」
「ぅ……言うなよ…恥ずかしいんだから」
「これからもっと恥ずかしい事するのに?」
「え? や、今はまだ、オレの心の準備というものが…っ」
「分かってる。ヒナが嫌がる事はしたくないし、この先もずっと俺たちは一緒にいるんだから、がっついたりはしないよ」

 慌てたように首を振るヒナはどうやら先を知っているらしい。意外に思うけど、男同士のやり方までは分からないはず。でもヒナの事だから、知らないままなのは嫌だって言っていつの間にか調べてそう。
 でもそれは俺の方が嫌だ。図や絵ならまだいいけど、他人の裸を見るかもしれない状況は良くない。

「ねぇ、ヒナ」
「うん?」
「男同士の事、何も調べちゃ駄目だよ」
「何で?」
「全部俺が教えてあげたいから」

 小さな頃からずっとそうして来た。靴の履き方も、箸の持ち方も、服の着方も自転車の乗り方も。ヒナのご両親は忙しい人たちだったから、代わりに教えられる事は全部教えた。
 今はもう自分で何でもしてしまうけど、たまには頼って欲しいと思うのは俺の我儘かな。
 額を合わせてそう言えばヒナは困った顔をしながらも頷いてくれる。

「分かった。真那が言うなら調べない」
「ありがとう」
「じゃあオレ、そろそろ夕飯の準備するから……」
「まだ駄目」

 照れ臭さから視線を逸らしたヒナは俺の膝の上から降りようとする。でもまだくっついていたくて背中に回した腕に力を込めるとオロオロし始めた。

「せっかく恋人になれたんだから、もっとイチャイチャしたい」
「でも、お腹空かないか?」
「ヒナとこうしてる方が良い」
「オレはちょっと恥ずかしい…」
「いつも通りでいいんだよ」

 幼馴染みから恋人に変わっただけで、俺たちがする事は何も変わらない。まぁ少し大人な触れ合いは増えるけど、こうなれた時に少しでもヒナが怖がらないよう、スキンシップが当たり前に思えるようにしたんだから。
 ヒナの頬を軽く摘み顔を近付けると、少しだけビクッとしたあと口を引き結んで強く目を閉じる。
 ホント、俺のヒナは可愛い。
 軽く触れ合わせたあともう一度口付けた俺は、耐えられなくなったヒナから待ったがかかるまでずっとヒナの柔らかな唇を堪能していた。

 そのあと一緒に夕飯を作ったんだけど、器用に餃子の種を皮で包んでいくヒナと違い、ハミ出るし皮が破れるしで役に立てなかった俺は、余計手間がかかるから先に風呂に入れとキッチンから追い出されてしまった。
 俺に出来る事はせいぜいお皿を出したり運んだりくらいで、ヒナの為なら何でも出来ると思ってたのに料理の腕はないみたいだ。

「ヒナにいろいろしてあげたいのに……」

 人気が出たおかげでお金はたくさんあるけど、ヒナはそういうものに興味はないし自分のものは自分で買う派だ。さっきのケーキは不意をつけたから払えたけど、普段ならいらないって突っぱねられる。
 ヒナは割と頑固だし、ご両親が転勤になって、更に俺が傍にいられる時間が少なくなったせいか、自分がしっかりしなきゃって思ったらしくて甘えてくれる事もほとんどなくなった。
 俺はヒナを甘やかしたくて堪らないのに。

「恋人になったら甘えてくれるかなって思ったけど、いっぱいいっぱいだったし、先は長いかな」

 それでもヒナとの関係が一歩進んだのは嬉しい。俺の立場上公に出来ないのは分かってるけど、ヒナに我慢させるのは俺の本意じゃないし間違ってる。

「そうだ、免許取るのもいいかもしれない」

 そうすれば人目を気にせずドライブデートも出来るし、少し遠出したり旅行に行ったりも出来る。今度水島さんに相談してみよう。

「真那? 結構長い事入ってるけど大丈夫か?」

 いろんな事を考え込んでいたらそれなりに時間が経っていたらしい。心配して様子を見に来てくれたヒナに「大丈夫だよ」と返した俺は、濡れた前髪を掻き上げて浴槽から抜け脱衣所へと出る。
 俺の裸なんて見慣れてるはずのヒナは肩を跳ね上げると慌てて出て行ったけど、ちゃんとそういう意味で意識してくれてるみたいで安心した。

 この家に置きっぱなしにしている部屋着を身に着けリビングに戻ると、香辛料のいい匂いがして途端にお腹が鳴る。それが聞こえていたらしいヒナは可愛く笑ってダイニングの椅子を指差した。

「ほら見ろ。真那が離してくれないから、夕飯も遅くなったんだからな?」
「浮かれてたんだよ、ヒナに好きって言って貰えて」
「えっと…待たせてごめん」
「ゆっくりでいいって言ったの俺なんだし、ヒナは気にしないで」

 何せ片思い歴十六年だ。ヒナに好きになって貰うまでまだまだ時間はかかると思っていたから、俺にとっては予想外で僥倖だった。
 それにしても、俺をずっと幼馴染みとして見てたヒナは何がきっかけで好きだと気付いたんだろう。

「ヒナ。俺を好きって気付いたの、いつ?」
「え? それは……真那が駅前で見た事を怒って家まで来た日?」
「何で疑問形……って、結構前なのに、今日まで黙ってたの?」
「だってツアー前だったし、集中して欲しかったんだよ。もしオレが言った事で何かあったら、オレは言わなきゃ良かったって後悔してたぞ」
「…………」

 もしその時ヒナに好きだって言われてたら、俺は確かにツアー中なのに浮き足立っていたかもしれない。ヒナが来てくれたライブだって相当嬉しくなって、普段なら絶対しないようなファンサをしてしまい大騒ぎになったのに。
 さすがヒナだ、俺の事を良く分かっている。

「はい。とりあえず、今はご飯食べよう」
「うん」

 目の前に炊き立ての白米が置かれ、向かいに座ったヒナが手を合わせる。それに倣って食事の挨拶をするとヒナがにこっと笑った。
 ああ、恋人になったヒナがいつも以上に可愛く見える。




「…真那さん?」
「ん?」
「いや、〝ん?〟じゃなくて、オレは何で見下ろされてるんでしょうか」

 就寝時、前みたいに部屋にダブルの布団を敷いてくれたヒナは当然のように隣に転んでくれた訳だけど、少しだけ悪戯心の湧いた俺はヒナの上に被さり困惑する顔を眺めていた。
 別に何かをするってつもりはなかったのに、そんな顔をされると俺の悪い部分が出て来そうで少しだけ申し訳なくなる。

「寝るのが勿体なくて」
「明日も休みだろ? 予定あるのか?」
「俺のオフはヒナと過ごすためにあるから」
「したい事とかは?」
「ないよ。ヒナと一緒にいたいし」

 俺の優先順位はいつだってヒナが一位だ。仕事だけはヒナにも怒られるから別として考えてるけど、何よりもヒナといる事が大事で、ヒナに勝るものなんて一つもない。
 だから明日は恋人になって初めてのオフだし、家でイチャイチャしたいなと思ってるんだけど、ヒナは用事があったりするんだろうか。

「ヒナは?」
「オレ? オレは元々家にいるつもりだったし特には」
「じゃあ一日中くっついてようか」
「あ、あんまりそういうのはナシだからな」
って?」

 ヒナが言いたい事は分かるけど、口に出して欲しくて目を細めて首を傾げれば、驚いて目を丸くしたヒナは途端にもごもごし始め俺から視線を逸らす。何も言わずにしばらく待っていたら、ゆっくりと手を伸ばしたヒナが俺のシャツの襟元を掴んで引っ張り口の端に口付けてきた。

「ず、ズレた……」
「…………」
だ! バカ!」

 決死の覚悟だったのにズレた事がショックだったのか、真っ赤な顔で拗ねたように吐き捨てると手を離して俺の身体を押しうつ伏せになる。
 何それ、可愛すぎるんだけど。

「ヒナ、もう一回」
「絶対やだ」

 素直で優しい俺の幼馴染みは、凄く凄く可愛い恋人になった。
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