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夏だ! プールだ!
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本日は晴天なり! という事で、今日は夏休み前にした約束を果たす為、円香と千里と一緒にプールに来ています。
「いい天気で良かったね、ヒナ」
何故か保護者付きで。
数日前に円香からメッセージが来てこの日にプールに行こうと誘われたんだけど、その話を真那にしたら丁度【soar】自体がオフだから一緒に行くって言われた。
さすがに蜂蜜色の髪に規格外の長身ともなれば変装してたとしてもバレる確率の方が高くて、騒ぎになるのが目に見えてるから無理だって断ったら一日だけ黒髪に染めるって提案して来て…オマケにちゃんと水島さんと社長さんの許可も得たらしく、そこまで手を回すかと思ったね。
二周年記念ライブはツアーと違い、都内の大きな会場二日間と一日だけ関西の大きな会場でやるらしく、スケジュールも少しだけ余裕を持って組んであるそうだ。
でもだからって、こんな背の高い見るからにイケメンオーラ漂う奴がいたらそれだけで目立つ。黒髪にサングラス…似合いすぎるし。
擦れ違う人みーんな振り返ってる。
「ねぇ、あの人背ぇたかーい。かっこいいねー」
「ちょっと誰かに雰囲気似てない?」
「誰かって?」
「あ、あの人だ。【soar】の真那!」
「真那のそっくりさん? えー、並んで歩きたーい」
「声かけてみる?」
少し離れた場所にいた女の子たちの会話が聞こえ、オレは真那の背中を押して慌ててプール会場の方へ向かう。後ろから円香と千里がクスクス笑いながらついて来てたけど、笑い事じゃないんだ。
「やー、まさか三枝先輩まで来てくれるとは思わなかったです」
「しかも私たちのチケットまで…ありがとうございます」
「ヒナと仲良くしてくれてるんだから当然だよ」
「むしろ陽向くんが仲良くしてくれてるんですよ」
「私たち、学校では少し浮いてるので」
それはたぶん、円香と千里の見た目が良すぎるせいもあると思う。高嶺の花的な。実際、恨みの籠った目を向けられる事もあるし。
何ていうか、真那の時は幼馴染みだから優しさかなって思ってたけど、円香も千里も、何でオレに構ってくれるんだろうか。
「ほら、着替えないか?」
真那はサングラスしてるから目は見えないけど、見目麗しい三人の中に平凡なオレが混ざってる図が耐えられなくてそう促すと、にこやかに頷いてそれぞれ更衣室に向かう。
空いてるロッカーの中に荷物を入れ着替えようとした時、真那が背後に立ってオレを囲むようにしてロッカーに手をついた。
「ヒナはあっちのカーテンがある方で着替えて」
「え? 何で?」
「ヒナの裸を見せたくないから」
「誰も見ないって」
むしろこの状況の方がおかしすぎてみんながチラチラ見始めてるのは気にならないのか。
「駄目。ちゃんと上も着るんだよ。…本当は下も履いて欲しいけど」
「そもそも持ってない。じゃあ着替えてくるから、鍵はまだ閉めるなよ」
「ん」
なるほど、これが独占欲ってやつか。そもそも男の裸を見たがる奴なんていないだろ。……いや、真那の身体なら興味なくてもつい見るかも。ただ背が高いだけじゃなくて、ダンスレッスンやボイトレでちゃんと身体作ってるんだよな。
あれ? そういえば真那は日焼けとか大丈夫なのか?
全身日焼け止めを塗って、着替えてラッシュガードを羽織りカーテンから出ると、すぐ前に真那が待っていて驚いた。オレを見るなり目を細めて下げたままだったチャックを首元まで上げられ目を瞬く。
「日焼け止めは?」
「塗った。真那は日焼けしていいのか? 何か言われないか?」
「言われるから、基本的には日陰にいる」
「ここまで来たのに入れないのか」
「ヒナが遊んでる姿が見られるだけで充分だよ」
アイドルっていろいろ制限あって大変だよな。オレは気の毒になり手招きして屈んだ真那の頭を軽く撫でてやる。一応事務所経由で美容師さんにお願いしたらしいけど、一日だけとはいえ結構しっかり染めるんだな。
「飲み物とか食べ物とか、欲しいのあったら言って」
「え、オレもコインケース持ってくつもりだけど」
「着替えと一緒に全部ちょうだい」
「? はい」
不思議に思いつつ預かってくれるのかと着ていた服とコインケースを渡すと全部ロッカーに入れられ鍵を掛けられてしまった。
あっという顔をすると、鍵をパーカーのポケットに入れた真那がふっと笑う。
「行こうか、ヒナ」
「……真那ってたまに意地悪になるよな」
「ヒナの反応が可愛いから」
「どこがだ」
真那はしょっちゅうオレを可愛いって言うけど、そこだけはまったくと言っていいほど同意出来ない。こんな平凡顔のどこが可愛いんだか。
更衣室から出ると既に円香と千里が待っていて、道行く人たちがチラチラと見ながら通り過ぎてる。円香は普通の服にも見えるような水着で、千里はそのスタイルを惜しみなく見せるビキニにUV加工が施されたパーカーだった。
め、目のやり場に困る…。
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫よ」
「浮き輪膨らましてた。陽向くんも使う?」
「え、いいのか? ありがとう」
円香が持っているのは二人でも余裕で入れそうなほど大きな浮き輪で、子供の時に使ってた小さい浮き輪しか持ってないオレはその巨大さに目を丸くする。
今どきの浮き輪ってこんなデカいのもあるのか。
「荷物とロッカーの鍵預かっておくよ」
「あ、ありがとうございます」
「真那、あそこなら日陰っぽいぞ」
「ホントだ。じゃああそこにいるから、なるべく俺から見える位置にいて」
「あっちの波が来るプールに行きたい時は?」
「声かけて」
髪を撫でられ額にキスされて驚いてる間に真那はさっさと日陰の方に行ってしまったんだけど…だから目立つ事はやめろっての。
「ふふ、牽制されてしまったわ」
「あれ? もしかして陽向くん」
「…うん、今は付き合ってる」
「そうなんだ! わー、何か嬉しい!」
「円香が気付かせてくれたおかげだけど…何で?」
「言ったでしょ? 二人は理想のカップリングだって」
ああ、あの謎の言葉。結局意味は教えて貰えなかったんだけど、気になって調べたらなるほどと思った。二人はそういうのが好きらしい。
苦笑したオレはプールを指差して入ろうと促し、体操代わりに手足をブラブラさせながら流れるプールへと歩き始めた。
プールなんて中学の時の授業以来で、浮き輪に乗ってるだけでゆらゆら流れるのは意外に楽しい。二人が通ろうとするとみんなが避けていく様が、まるでモーゼの十戒みたいでちょっと面白かった。
円香は美少女だし、千里は美人だもんな。
チラチラと真那を見てたんだけど、そのたびに目が合って手を振るからテンションが上がったオレも大きく振り返してたりして。でも気付いたら女の人に話しかけられてるのが見えてモヤっとした。
まぁ、真那はガン無視でしたけど。
「ちょっと休憩しましょうか」
「水分補給だね」
「二人とも、お腹は空いてない?」
「ちょっと食べたいかも」
「私、買ってくるわ」
「あ、待って。オレと真那が行くから、二人は真那がいたとこにいて」
「いいのかしら」
「もちろん」
「ありがとう、陽向くん。じゃあ先輩のとこ行こっか」
二人を行動させてナンパでもされたら大変だ。今日は真那がいるからまだいいけど、下手に騒ぎになっても困るからな。
真那に声をかけて、欲しいものを聞いて買いに行く。オレが食べたいものが違うお店だったから真那が買いに言ってくれて、オレがお礼を言って先に戻ると二人に声をかけてる三人組の男がいてしまったと慌てて駆け寄った。
「いいじゃん、あっち行こうよ」
「行きませんー」
「つれない事言わずにさ」
「あの、オレの友達に何の用ですか?」
「は? ……何、お前」
「二人の友達です」
オレより背が高いからちょっと腰が引けるけど、二人の前に立って三人と向かい合う。真那がいない今、二人を守れるのはオレだけだ。
騒ぎにしたくないから穏便に済ませたいのに、真ん中にいた男がオレを見下ろして鼻で笑う。
「はー? お前、この子たちに全然釣り合ってねぇじゃん」
「友達とかウケる。パシリだろ」
「はいはい、お前はお役御免だから下がってなー?」
「だ、ダメです!」
肩を押されて少しよろけるけど、どうにか足を踏ん張って二人の前に立ち続ける。そうしたら真ん中の男が舌打ちしてオレの胸倉を掴んで来た。
「は? うぜぇんだけど」
「!」
「いいから消えろよ、邪魔だから」
「お前にこの子たちは勿体ねーから」
「ごくろーさん」
「……あんた達の方が邪魔なんだけど」
「私たちそんなに安くないのよ。それから、その手を離してくれる?」
「陽向くんに触るなんて、ボコボコにされても文句言えないんだから」
あ、あれ? 何か二人の雰囲気が。
円香と千里がオレの両側に立ち三人に対して睨みを効かせている。目の前の三人もポカーンだ。
「えっと…?」
「陽向くんをパシリ扱いだなんて、愚かにもほどがあるわ」
「私たちに、陽向くんが勿体ないの! そこんとこ間違えないで!」
「ふ、二人とも…?」
「そ、そうなんだ……うわっ」
「何勝手に触ってんの」
どう答えたらいいか分かっていない男は今だにオレの胸倉を掴んだままだったんだけど、その腕が唐突に伸びて来た手に捕らわれ引き剥がされた。途端に低い声が聞こえて冷気が漂う。
真那、と呼びそうになった口を慌てて噤み二人に飲み物を渡した。
「汚い手で触んないでくれる」
「は、え? ……デカっ!」
「何か用」
「……イエ、ナンデモナイデス」
「し、失礼しました」
「すんませーん」
サングラス越しに睨まれてるのが分かったのか、見下ろされ身体を震わせた三人はあっという間に走り去って行き、監視員に「プールサイドは走らないで下さい」って注意されてた。
おかげで注目があっちに移ったけど、オレ何にも出来なかったな。
「ヒナ、大丈夫?」
「うん。助かったよ、真那」
「ありがとう、陽向くん」
「すっごくカッコよかったよー」
「や、でもオレ何の役にも…」
「そんな事ないよ、嬉しかった」
「でもいきなり前に割って入るのは危ないから、今度からはしないでね」
「う、うん」
途中から二人がオレを庇うみたいになってたもんな。男として情けないと思いつつも、あっという間に追い払ってくれた真那に感謝だ。今回ばかりはいてくれて良かった。
それにしても、予想はしてたのに上手に対処出来なかったオレ、カッコ悪いな。
「食べたら人工波の方に行きましょうか」
「だね」
「あっちにも日陰あるか、あとで見てくるな」
「一人で行動しない。ヒナは危なっかしいんだから」
「転んだりプールに落ちたりなんてしないぞ」
「そういう意味じゃないよ。とにかく、みんな一人行動は禁止」
「はーい」
「はい」
「……分かった」
年長者の言う事はちゃんと聞いておかないと、あとで何かあった時に落ち込むのは真那だし、大人しく返事をしておく。
オレに向けて柔らかく微笑んだ真那は「いい子」って言いながら頭を撫で、日陰に腰を下ろした。
こういうとこ、年上って感じるんだよなぁ。
膝においでって言われたけど、場所が場所だから全力で拒否しておいた。
「いい天気で良かったね、ヒナ」
何故か保護者付きで。
数日前に円香からメッセージが来てこの日にプールに行こうと誘われたんだけど、その話を真那にしたら丁度【soar】自体がオフだから一緒に行くって言われた。
さすがに蜂蜜色の髪に規格外の長身ともなれば変装してたとしてもバレる確率の方が高くて、騒ぎになるのが目に見えてるから無理だって断ったら一日だけ黒髪に染めるって提案して来て…オマケにちゃんと水島さんと社長さんの許可も得たらしく、そこまで手を回すかと思ったね。
二周年記念ライブはツアーと違い、都内の大きな会場二日間と一日だけ関西の大きな会場でやるらしく、スケジュールも少しだけ余裕を持って組んであるそうだ。
でもだからって、こんな背の高い見るからにイケメンオーラ漂う奴がいたらそれだけで目立つ。黒髪にサングラス…似合いすぎるし。
擦れ違う人みーんな振り返ってる。
「ねぇ、あの人背ぇたかーい。かっこいいねー」
「ちょっと誰かに雰囲気似てない?」
「誰かって?」
「あ、あの人だ。【soar】の真那!」
「真那のそっくりさん? えー、並んで歩きたーい」
「声かけてみる?」
少し離れた場所にいた女の子たちの会話が聞こえ、オレは真那の背中を押して慌ててプール会場の方へ向かう。後ろから円香と千里がクスクス笑いながらついて来てたけど、笑い事じゃないんだ。
「やー、まさか三枝先輩まで来てくれるとは思わなかったです」
「しかも私たちのチケットまで…ありがとうございます」
「ヒナと仲良くしてくれてるんだから当然だよ」
「むしろ陽向くんが仲良くしてくれてるんですよ」
「私たち、学校では少し浮いてるので」
それはたぶん、円香と千里の見た目が良すぎるせいもあると思う。高嶺の花的な。実際、恨みの籠った目を向けられる事もあるし。
何ていうか、真那の時は幼馴染みだから優しさかなって思ってたけど、円香も千里も、何でオレに構ってくれるんだろうか。
「ほら、着替えないか?」
真那はサングラスしてるから目は見えないけど、見目麗しい三人の中に平凡なオレが混ざってる図が耐えられなくてそう促すと、にこやかに頷いてそれぞれ更衣室に向かう。
空いてるロッカーの中に荷物を入れ着替えようとした時、真那が背後に立ってオレを囲むようにしてロッカーに手をついた。
「ヒナはあっちのカーテンがある方で着替えて」
「え? 何で?」
「ヒナの裸を見せたくないから」
「誰も見ないって」
むしろこの状況の方がおかしすぎてみんながチラチラ見始めてるのは気にならないのか。
「駄目。ちゃんと上も着るんだよ。…本当は下も履いて欲しいけど」
「そもそも持ってない。じゃあ着替えてくるから、鍵はまだ閉めるなよ」
「ん」
なるほど、これが独占欲ってやつか。そもそも男の裸を見たがる奴なんていないだろ。……いや、真那の身体なら興味なくてもつい見るかも。ただ背が高いだけじゃなくて、ダンスレッスンやボイトレでちゃんと身体作ってるんだよな。
あれ? そういえば真那は日焼けとか大丈夫なのか?
全身日焼け止めを塗って、着替えてラッシュガードを羽織りカーテンから出ると、すぐ前に真那が待っていて驚いた。オレを見るなり目を細めて下げたままだったチャックを首元まで上げられ目を瞬く。
「日焼け止めは?」
「塗った。真那は日焼けしていいのか? 何か言われないか?」
「言われるから、基本的には日陰にいる」
「ここまで来たのに入れないのか」
「ヒナが遊んでる姿が見られるだけで充分だよ」
アイドルっていろいろ制限あって大変だよな。オレは気の毒になり手招きして屈んだ真那の頭を軽く撫でてやる。一応事務所経由で美容師さんにお願いしたらしいけど、一日だけとはいえ結構しっかり染めるんだな。
「飲み物とか食べ物とか、欲しいのあったら言って」
「え、オレもコインケース持ってくつもりだけど」
「着替えと一緒に全部ちょうだい」
「? はい」
不思議に思いつつ預かってくれるのかと着ていた服とコインケースを渡すと全部ロッカーに入れられ鍵を掛けられてしまった。
あっという顔をすると、鍵をパーカーのポケットに入れた真那がふっと笑う。
「行こうか、ヒナ」
「……真那ってたまに意地悪になるよな」
「ヒナの反応が可愛いから」
「どこがだ」
真那はしょっちゅうオレを可愛いって言うけど、そこだけはまったくと言っていいほど同意出来ない。こんな平凡顔のどこが可愛いんだか。
更衣室から出ると既に円香と千里が待っていて、道行く人たちがチラチラと見ながら通り過ぎてる。円香は普通の服にも見えるような水着で、千里はそのスタイルを惜しみなく見せるビキニにUV加工が施されたパーカーだった。
め、目のやり場に困る…。
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫よ」
「浮き輪膨らましてた。陽向くんも使う?」
「え、いいのか? ありがとう」
円香が持っているのは二人でも余裕で入れそうなほど大きな浮き輪で、子供の時に使ってた小さい浮き輪しか持ってないオレはその巨大さに目を丸くする。
今どきの浮き輪ってこんなデカいのもあるのか。
「荷物とロッカーの鍵預かっておくよ」
「あ、ありがとうございます」
「真那、あそこなら日陰っぽいぞ」
「ホントだ。じゃああそこにいるから、なるべく俺から見える位置にいて」
「あっちの波が来るプールに行きたい時は?」
「声かけて」
髪を撫でられ額にキスされて驚いてる間に真那はさっさと日陰の方に行ってしまったんだけど…だから目立つ事はやめろっての。
「ふふ、牽制されてしまったわ」
「あれ? もしかして陽向くん」
「…うん、今は付き合ってる」
「そうなんだ! わー、何か嬉しい!」
「円香が気付かせてくれたおかげだけど…何で?」
「言ったでしょ? 二人は理想のカップリングだって」
ああ、あの謎の言葉。結局意味は教えて貰えなかったんだけど、気になって調べたらなるほどと思った。二人はそういうのが好きらしい。
苦笑したオレはプールを指差して入ろうと促し、体操代わりに手足をブラブラさせながら流れるプールへと歩き始めた。
プールなんて中学の時の授業以来で、浮き輪に乗ってるだけでゆらゆら流れるのは意外に楽しい。二人が通ろうとするとみんなが避けていく様が、まるでモーゼの十戒みたいでちょっと面白かった。
円香は美少女だし、千里は美人だもんな。
チラチラと真那を見てたんだけど、そのたびに目が合って手を振るからテンションが上がったオレも大きく振り返してたりして。でも気付いたら女の人に話しかけられてるのが見えてモヤっとした。
まぁ、真那はガン無視でしたけど。
「ちょっと休憩しましょうか」
「水分補給だね」
「二人とも、お腹は空いてない?」
「ちょっと食べたいかも」
「私、買ってくるわ」
「あ、待って。オレと真那が行くから、二人は真那がいたとこにいて」
「いいのかしら」
「もちろん」
「ありがとう、陽向くん。じゃあ先輩のとこ行こっか」
二人を行動させてナンパでもされたら大変だ。今日は真那がいるからまだいいけど、下手に騒ぎになっても困るからな。
真那に声をかけて、欲しいものを聞いて買いに行く。オレが食べたいものが違うお店だったから真那が買いに言ってくれて、オレがお礼を言って先に戻ると二人に声をかけてる三人組の男がいてしまったと慌てて駆け寄った。
「いいじゃん、あっち行こうよ」
「行きませんー」
「つれない事言わずにさ」
「あの、オレの友達に何の用ですか?」
「は? ……何、お前」
「二人の友達です」
オレより背が高いからちょっと腰が引けるけど、二人の前に立って三人と向かい合う。真那がいない今、二人を守れるのはオレだけだ。
騒ぎにしたくないから穏便に済ませたいのに、真ん中にいた男がオレを見下ろして鼻で笑う。
「はー? お前、この子たちに全然釣り合ってねぇじゃん」
「友達とかウケる。パシリだろ」
「はいはい、お前はお役御免だから下がってなー?」
「だ、ダメです!」
肩を押されて少しよろけるけど、どうにか足を踏ん張って二人の前に立ち続ける。そうしたら真ん中の男が舌打ちしてオレの胸倉を掴んで来た。
「は? うぜぇんだけど」
「!」
「いいから消えろよ、邪魔だから」
「お前にこの子たちは勿体ねーから」
「ごくろーさん」
「……あんた達の方が邪魔なんだけど」
「私たちそんなに安くないのよ。それから、その手を離してくれる?」
「陽向くんに触るなんて、ボコボコにされても文句言えないんだから」
あ、あれ? 何か二人の雰囲気が。
円香と千里がオレの両側に立ち三人に対して睨みを効かせている。目の前の三人もポカーンだ。
「えっと…?」
「陽向くんをパシリ扱いだなんて、愚かにもほどがあるわ」
「私たちに、陽向くんが勿体ないの! そこんとこ間違えないで!」
「ふ、二人とも…?」
「そ、そうなんだ……うわっ」
「何勝手に触ってんの」
どう答えたらいいか分かっていない男は今だにオレの胸倉を掴んだままだったんだけど、その腕が唐突に伸びて来た手に捕らわれ引き剥がされた。途端に低い声が聞こえて冷気が漂う。
真那、と呼びそうになった口を慌てて噤み二人に飲み物を渡した。
「汚い手で触んないでくれる」
「は、え? ……デカっ!」
「何か用」
「……イエ、ナンデモナイデス」
「し、失礼しました」
「すんませーん」
サングラス越しに睨まれてるのが分かったのか、見下ろされ身体を震わせた三人はあっという間に走り去って行き、監視員に「プールサイドは走らないで下さい」って注意されてた。
おかげで注目があっちに移ったけど、オレ何にも出来なかったな。
「ヒナ、大丈夫?」
「うん。助かったよ、真那」
「ありがとう、陽向くん」
「すっごくカッコよかったよー」
「や、でもオレ何の役にも…」
「そんな事ないよ、嬉しかった」
「でもいきなり前に割って入るのは危ないから、今度からはしないでね」
「う、うん」
途中から二人がオレを庇うみたいになってたもんな。男として情けないと思いつつも、あっという間に追い払ってくれた真那に感謝だ。今回ばかりはいてくれて良かった。
それにしても、予想はしてたのに上手に対処出来なかったオレ、カッコ悪いな。
「食べたら人工波の方に行きましょうか」
「だね」
「あっちにも日陰あるか、あとで見てくるな」
「一人で行動しない。ヒナは危なっかしいんだから」
「転んだりプールに落ちたりなんてしないぞ」
「そういう意味じゃないよ。とにかく、みんな一人行動は禁止」
「はーい」
「はい」
「……分かった」
年長者の言う事はちゃんと聞いておかないと、あとで何かあった時に落ち込むのは真那だし、大人しく返事をしておく。
オレに向けて柔らかく微笑んだ真那は「いい子」って言いながら頭を撫で、日陰に腰を下ろした。
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