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第1部
番外編 見習い魔導師は運命が変わる
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〈見習い魔導師アリス〉
卒業式を終えた私たち同窓生は最後のお茶会に興じていた。
既に皆の進路は決まっており、新たな船出に不安と期待で心踊らせている。
私、アリス・ドートレスもその一人だ。
父と最近再婚した母、上に音信不通がちな姉と兄、下にはまだ幼年の妹がいる下級貴族。
妹を生んですぐに亡くなった母だが、私はその母によく似ていると父や親族に言われている。
確かに、最近の鏡に映る私の姿は確かに記憶の中の母に似てきているが、実際のところはどうなのか姉と兄に尋ねたいが帰ってこないのでは尋ねようがない…
特に角がよく似ていると言われている。真っ直ぐではない角。この左右違う方向に曲がり、大きさも歪な角は好きではないのだが…いつも笑っていた母もそうだったのだろうか。
話はお茶会に戻る。
周囲の友人に冒険者になると宣言すると、やめた方がいいと必死に説得される。私の魔法の能力を知っているにも関わらずにだ。
身体能力が低すぎる。
おっちょこちょい過ぎる。
走るとよく転ぶ。
止める理由に心当たりがありすぎて反論出来ない。
それでも、私には冒険者になる、家を出る理由があったのだ。
その事を父と継母に話すと当然のように猛反対された。ただし、継母にだ。
父も驚いた様子であったが、私の意志に協力してくれると約束してくれる。
「お姉様、家を出るのですか?」
私と入れ替わるように、春から学生生活が始まるソニアが尋ねてきた。
「ええ、そうよ。冒険者になると、これからはあまり一緒に寝て上げられなくなるわね。」
「…そうですか。寂しいです。」
ああ、かわいい幼い妹よ。オムツも散々替えさせてくれた世界で一番可愛い妹よ。お姉ちゃんは離れたくない…でも、
…お母様の痕跡が無いこの家が息苦しい。
父が再婚して以来、母の思い出の品は少しずつ減っていった。継母が使用人に命じて棄てさせていたと聞いた時、怒りで我を忘れるほどだった。
父を糾弾したが、仕方がないの一言ばかりが帰って来るだけ。
…借金のカタの政略結婚。それが再婚の理由だと最後に質した時に知らされた。
継母は実家の支援金で贅沢。私とソニアは貴族の体面を保てる程度に生活をしている。学生で、制服だったのが幸いだ。
だが、これからは、極力自分でどうにかしていかなくてはなるまい。もう家を出ると決めたのだから。
しかし、現実はそう甘くはない。
ランクの低い内は遠出は出来ず、王都の中や近くでの仕事ばかりになる。ただでさえ物入りな駆け出し魔導師が実家暮らしなのはよくある事だと、自分に言い聞かせていた。
「大丈夫。しばらくはルエーリヴで仕事を受けるから。ちゃんと実績を作らないと遠征もさせてもらえないからね。」
「はい…」
欠陥制度なのでは?と思ったが、冒険者ギルドの歴史を紐解くと、初期はそういう制限は無かったようである。だが、未帰還率が跳ね上がっていた。
未熟ゆえにトラブルで殺害、戦死、トラップ死、自殺、餓死、奴隷化、行方不明がとんでもなく多い。初期の冒険者は、本当に無茶で無策で無謀な荒くれ者らの代名詞だったようだ。
その中で成り上がった者らの手で、制度を整える事を繰り返し、今日に至る。先人達の犠牲と経験と知恵が作った制度なのだと知ると、文句も言えなくなってしまう。
その制度の中で実力を高めていく必要があり、私は3年目にしてようやく遠征の権利を手にしたのだった。
大失敗だった。
いや、クエストは成功した。即席パーティーによる低級魔物退治、というありふれた内容なのだから失敗のしようがない。
とにかく、私が失敗を繰り返した。
森林地帯で火炎魔法を放ったり、先頭の重騎士に頼まれていないAGI強化を行ったり、肝心なところで魔法の不発を犯したりと本当に大失敗だった…
臨時リーダーの槍使いの男に慰められたが、女シーフには散々詰られた。他のメンバーは目を合わせてもくれなかった。
…大失敗だったのだ。
それを最後に私はパーティーを組むのを諦める。それでも簡単な討伐依頼はこなせるし、制度のお陰で地力も自信もついた。このまま、少しずつ装備を充実していけば大丈夫なはず。
そう思い、私は少しずつ強化系アクセサリーを増やしていくことにした。
「お姉様、最近面白い子が転入してきたのですよ。」
久し振りに実家の自室でのんびりしていると、ソニアはすっかり貴族の娘という風体になっている事に気付いた。…どこか小汚なさのある私とは違う。どこが違うのかしら?
「どんな子なの?」
私も興味が湧き尋ねてみる。面白い子、と言えば国境で会ったヒュマスっぽい強面の男は元気だろうか。見た目の割に、強い魔力を宿していたが…
「ヒュマス系の亜人の子です。背は私と同じくらいなのですが、戦闘も魔法も敵いませんでした。」
「…髪が真っ黒?」
「その子は私たちより薄い色ですわ。ですが、義理のお父上が真っ黒ですよ。」
ああ、あの男だ。どうやらこっちに居るようである。
子供が学園に通っているという事は、こっちに住んでいるようだ。
「その男について教えて。」
こうして私は妹から情報を得て、ありったけのアクセサリーを身に付けて町に飛び出した。
ヒガンと再開出来たのはそれから二週間後である。
…何故、妹に頼んで仲介して貰わなかったのか。その時の私を問い詰めるべきである。
「ソニアがお世話になってる人のところか…」
ヒガンに渡された加入同意書を見せると父が考える仕草を見せる。
「もうおやめなさい。どうせ長続きしません。冒険者など辞め、家のために結婚したらどうですか?」
継母には求めていないので黙っていて欲しい。
「そのような奇抜な格好…貰い手がある内にお辞めなさい。」
黙っていて欲しい。
「だいたい、冒険者など花形と言えども荒くれ者の集団。貴族は使う側であってなる者では」
「始祖様も今で言う冒険者と変わらないよ。そんな事を言っちゃいけない。」
「…ふん。」
そう言うと、父はサインをして紙を渡してきた。
「僕から言えることはない。好きにしてくると良いよ。」
…言葉の意味が分からない。表情の深意が読み取れない。
「…ありがとうございます。お父様。」
「アリス、あの家の状況は知っているかい?」
「…いいえ。何か問題でも?」
「いいや。ちゃんと自分で見て、考えて、使えるものを全て使ってくると良い。これも良い経験だ。」
「…はい。」
「どうせすぐに音を上げて戻ってきます。あの女そっくりの貴女にお似合いの姿で。いつまで頑張れるか楽しみにしておりますわ。ふふふ。」
…本当に気に入らない。
だが、言い返すことが何も出来なかった…
「失礼します。」
応接間から出て、一目散に自室に飛び込み、荷物をまとめる。
持っていくのは鞄いっぱいの旅道具、日用品、服…枕とお気に入りの毛布も鞄の上に括り付ける。同意書も忘れてはいけない。
「…お世話になりました。」
雨の中、誰にも、大好きな妹にすら見送られずに、私は走って実家を後にした。
完全に負け犬ではないか。学園を魔法学だけとはいえ主席で卒業した者の姿ではない。こんな将来を望んで冒険者になったのではない。
私は、もっと活躍がしたくて、家の力を、父の助けを借りずに、独りで、たちたくて、しょうめいしたくて…
足を引っ掛け、転んでしまった。服が嫌な音を立てる。押さえないと完全に胸が見えてしまっていた。
…泣きたい。情けない。でも、既にあの男の家の敷地の中。それだけが不幸中の幸いだ。
決死の思いでその玄関のドアを叩いた。もう私には他に頼れるものはない…
〈器用貧乏アリス〉
寛容である。それがこの家の印象だ。
一緒にお風呂に入ったメイドの体にびっしり刻まれた犯罪紋。冤罪だったそうで、後で思いっきり驚いたことを謝った。
毎日たくさんやって来る子供たち。娘たちの同級生らしいが数が半端じゃない。特に初等部が多く、高等部は戦闘科しかいないようだ。
午前中はカトリーナさんとヒガンにきたえてもらい、午後は戦闘科に混じって訓練をするようにしている。…が、当然ながら鍛え続けてきた高等部にはついていけない。中等部に混じっての訓練である。
訓練が休みの時は製薬助手、裁縫、料理の手伝いと色々な事をさせてもらえた。
物作りに関しては本当に容赦がなかった。訓練も、特にカトリーナさんのは厳しいのだが、物作りはヒガンの娘達が厳しい。
製薬はバニラちゃんが、裁縫はバンブーちゃんが厳しい中、料理だけは特に何も言われないのが逆に怖かった。
魔法は師匠であるヒガンに自主練習で良いと言われ、何か指導されることはなかったが遠く及ばない。見えているもの、備えている知識が違うのだとやり取りを重ねると思い知らされる。でも、この人を目標にすることは間違っていない事だけは確信できた。
それでも、自分が未熟なのだと毎日思い知らされる。
私はあの白エルフが本当に苦手だ。飄々として掴み所がない。魔法や元々備えていた有用なスキルが一切使えないという制約があるにも関わらず、訓練で触れることさえできないのだ。気が付くと、いつもお尻を蹴られている。本当に意味が分からないし腹が立つ。
…まあ、同じパーティーメンバーのジュリアも同じ目に遭っているのだが。
そんな白エルフでも、ヒガンの横には並び立てないと時々言う。
恐らく、ヒガンと並んで戦える者はカトリーナさんだけだろう。というか、ヒガンもそのカトリーナさんには全く歯が立たない辺り、この家は王都内の魔窟ではないかという疑念が湧いてくる。力を求めたのは私の意志だが、なんだかとんでもないところに来てしまった…
だが、そんなおどろおどろしい魔窟というものではない事は住んでみればよく分かる。とにかく、皆が世話焼きで面倒見がよく、それが伝播して互いを高め合う。そんな環境だ。
そんな中で私が出来ることは…
「裁縫の練習を始めるわよー」
『はーい。』
初等部が相手だが、これが私の出来ること。旅の合間の修繕に、訓練後の修繕に、生活の中での手直しにととても重要な技術。ここの面々にとって腐ることのない技術である。向き不向きはどうしようもないのだが。
ソニアを含めた初等部に、こんな形で裁縫の授業をする事になるなんて思いもしなかったわね…
意外な運命の変転に、思わず笑みがこぼれてしまった。
卒業式を終えた私たち同窓生は最後のお茶会に興じていた。
既に皆の進路は決まっており、新たな船出に不安と期待で心踊らせている。
私、アリス・ドートレスもその一人だ。
父と最近再婚した母、上に音信不通がちな姉と兄、下にはまだ幼年の妹がいる下級貴族。
妹を生んですぐに亡くなった母だが、私はその母によく似ていると父や親族に言われている。
確かに、最近の鏡に映る私の姿は確かに記憶の中の母に似てきているが、実際のところはどうなのか姉と兄に尋ねたいが帰ってこないのでは尋ねようがない…
特に角がよく似ていると言われている。真っ直ぐではない角。この左右違う方向に曲がり、大きさも歪な角は好きではないのだが…いつも笑っていた母もそうだったのだろうか。
話はお茶会に戻る。
周囲の友人に冒険者になると宣言すると、やめた方がいいと必死に説得される。私の魔法の能力を知っているにも関わらずにだ。
身体能力が低すぎる。
おっちょこちょい過ぎる。
走るとよく転ぶ。
止める理由に心当たりがありすぎて反論出来ない。
それでも、私には冒険者になる、家を出る理由があったのだ。
その事を父と継母に話すと当然のように猛反対された。ただし、継母にだ。
父も驚いた様子であったが、私の意志に協力してくれると約束してくれる。
「お姉様、家を出るのですか?」
私と入れ替わるように、春から学生生活が始まるソニアが尋ねてきた。
「ええ、そうよ。冒険者になると、これからはあまり一緒に寝て上げられなくなるわね。」
「…そうですか。寂しいです。」
ああ、かわいい幼い妹よ。オムツも散々替えさせてくれた世界で一番可愛い妹よ。お姉ちゃんは離れたくない…でも、
…お母様の痕跡が無いこの家が息苦しい。
父が再婚して以来、母の思い出の品は少しずつ減っていった。継母が使用人に命じて棄てさせていたと聞いた時、怒りで我を忘れるほどだった。
父を糾弾したが、仕方がないの一言ばかりが帰って来るだけ。
…借金のカタの政略結婚。それが再婚の理由だと最後に質した時に知らされた。
継母は実家の支援金で贅沢。私とソニアは貴族の体面を保てる程度に生活をしている。学生で、制服だったのが幸いだ。
だが、これからは、極力自分でどうにかしていかなくてはなるまい。もう家を出ると決めたのだから。
しかし、現実はそう甘くはない。
ランクの低い内は遠出は出来ず、王都の中や近くでの仕事ばかりになる。ただでさえ物入りな駆け出し魔導師が実家暮らしなのはよくある事だと、自分に言い聞かせていた。
「大丈夫。しばらくはルエーリヴで仕事を受けるから。ちゃんと実績を作らないと遠征もさせてもらえないからね。」
「はい…」
欠陥制度なのでは?と思ったが、冒険者ギルドの歴史を紐解くと、初期はそういう制限は無かったようである。だが、未帰還率が跳ね上がっていた。
未熟ゆえにトラブルで殺害、戦死、トラップ死、自殺、餓死、奴隷化、行方不明がとんでもなく多い。初期の冒険者は、本当に無茶で無策で無謀な荒くれ者らの代名詞だったようだ。
その中で成り上がった者らの手で、制度を整える事を繰り返し、今日に至る。先人達の犠牲と経験と知恵が作った制度なのだと知ると、文句も言えなくなってしまう。
その制度の中で実力を高めていく必要があり、私は3年目にしてようやく遠征の権利を手にしたのだった。
大失敗だった。
いや、クエストは成功した。即席パーティーによる低級魔物退治、というありふれた内容なのだから失敗のしようがない。
とにかく、私が失敗を繰り返した。
森林地帯で火炎魔法を放ったり、先頭の重騎士に頼まれていないAGI強化を行ったり、肝心なところで魔法の不発を犯したりと本当に大失敗だった…
臨時リーダーの槍使いの男に慰められたが、女シーフには散々詰られた。他のメンバーは目を合わせてもくれなかった。
…大失敗だったのだ。
それを最後に私はパーティーを組むのを諦める。それでも簡単な討伐依頼はこなせるし、制度のお陰で地力も自信もついた。このまま、少しずつ装備を充実していけば大丈夫なはず。
そう思い、私は少しずつ強化系アクセサリーを増やしていくことにした。
「お姉様、最近面白い子が転入してきたのですよ。」
久し振りに実家の自室でのんびりしていると、ソニアはすっかり貴族の娘という風体になっている事に気付いた。…どこか小汚なさのある私とは違う。どこが違うのかしら?
「どんな子なの?」
私も興味が湧き尋ねてみる。面白い子、と言えば国境で会ったヒュマスっぽい強面の男は元気だろうか。見た目の割に、強い魔力を宿していたが…
「ヒュマス系の亜人の子です。背は私と同じくらいなのですが、戦闘も魔法も敵いませんでした。」
「…髪が真っ黒?」
「その子は私たちより薄い色ですわ。ですが、義理のお父上が真っ黒ですよ。」
ああ、あの男だ。どうやらこっちに居るようである。
子供が学園に通っているという事は、こっちに住んでいるようだ。
「その男について教えて。」
こうして私は妹から情報を得て、ありったけのアクセサリーを身に付けて町に飛び出した。
ヒガンと再開出来たのはそれから二週間後である。
…何故、妹に頼んで仲介して貰わなかったのか。その時の私を問い詰めるべきである。
「ソニアがお世話になってる人のところか…」
ヒガンに渡された加入同意書を見せると父が考える仕草を見せる。
「もうおやめなさい。どうせ長続きしません。冒険者など辞め、家のために結婚したらどうですか?」
継母には求めていないので黙っていて欲しい。
「そのような奇抜な格好…貰い手がある内にお辞めなさい。」
黙っていて欲しい。
「だいたい、冒険者など花形と言えども荒くれ者の集団。貴族は使う側であってなる者では」
「始祖様も今で言う冒険者と変わらないよ。そんな事を言っちゃいけない。」
「…ふん。」
そう言うと、父はサインをして紙を渡してきた。
「僕から言えることはない。好きにしてくると良いよ。」
…言葉の意味が分からない。表情の深意が読み取れない。
「…ありがとうございます。お父様。」
「アリス、あの家の状況は知っているかい?」
「…いいえ。何か問題でも?」
「いいや。ちゃんと自分で見て、考えて、使えるものを全て使ってくると良い。これも良い経験だ。」
「…はい。」
「どうせすぐに音を上げて戻ってきます。あの女そっくりの貴女にお似合いの姿で。いつまで頑張れるか楽しみにしておりますわ。ふふふ。」
…本当に気に入らない。
だが、言い返すことが何も出来なかった…
「失礼します。」
応接間から出て、一目散に自室に飛び込み、荷物をまとめる。
持っていくのは鞄いっぱいの旅道具、日用品、服…枕とお気に入りの毛布も鞄の上に括り付ける。同意書も忘れてはいけない。
「…お世話になりました。」
雨の中、誰にも、大好きな妹にすら見送られずに、私は走って実家を後にした。
完全に負け犬ではないか。学園を魔法学だけとはいえ主席で卒業した者の姿ではない。こんな将来を望んで冒険者になったのではない。
私は、もっと活躍がしたくて、家の力を、父の助けを借りずに、独りで、たちたくて、しょうめいしたくて…
足を引っ掛け、転んでしまった。服が嫌な音を立てる。押さえないと完全に胸が見えてしまっていた。
…泣きたい。情けない。でも、既にあの男の家の敷地の中。それだけが不幸中の幸いだ。
決死の思いでその玄関のドアを叩いた。もう私には他に頼れるものはない…
〈器用貧乏アリス〉
寛容である。それがこの家の印象だ。
一緒にお風呂に入ったメイドの体にびっしり刻まれた犯罪紋。冤罪だったそうで、後で思いっきり驚いたことを謝った。
毎日たくさんやって来る子供たち。娘たちの同級生らしいが数が半端じゃない。特に初等部が多く、高等部は戦闘科しかいないようだ。
午前中はカトリーナさんとヒガンにきたえてもらい、午後は戦闘科に混じって訓練をするようにしている。…が、当然ながら鍛え続けてきた高等部にはついていけない。中等部に混じっての訓練である。
訓練が休みの時は製薬助手、裁縫、料理の手伝いと色々な事をさせてもらえた。
物作りに関しては本当に容赦がなかった。訓練も、特にカトリーナさんのは厳しいのだが、物作りはヒガンの娘達が厳しい。
製薬はバニラちゃんが、裁縫はバンブーちゃんが厳しい中、料理だけは特に何も言われないのが逆に怖かった。
魔法は師匠であるヒガンに自主練習で良いと言われ、何か指導されることはなかったが遠く及ばない。見えているもの、備えている知識が違うのだとやり取りを重ねると思い知らされる。でも、この人を目標にすることは間違っていない事だけは確信できた。
それでも、自分が未熟なのだと毎日思い知らされる。
私はあの白エルフが本当に苦手だ。飄々として掴み所がない。魔法や元々備えていた有用なスキルが一切使えないという制約があるにも関わらず、訓練で触れることさえできないのだ。気が付くと、いつもお尻を蹴られている。本当に意味が分からないし腹が立つ。
…まあ、同じパーティーメンバーのジュリアも同じ目に遭っているのだが。
そんな白エルフでも、ヒガンの横には並び立てないと時々言う。
恐らく、ヒガンと並んで戦える者はカトリーナさんだけだろう。というか、ヒガンもそのカトリーナさんには全く歯が立たない辺り、この家は王都内の魔窟ではないかという疑念が湧いてくる。力を求めたのは私の意志だが、なんだかとんでもないところに来てしまった…
だが、そんなおどろおどろしい魔窟というものではない事は住んでみればよく分かる。とにかく、皆が世話焼きで面倒見がよく、それが伝播して互いを高め合う。そんな環境だ。
そんな中で私が出来ることは…
「裁縫の練習を始めるわよー」
『はーい。』
初等部が相手だが、これが私の出来ること。旅の合間の修繕に、訓練後の修繕に、生活の中での手直しにととても重要な技術。ここの面々にとって腐ることのない技術である。向き不向きはどうしようもないのだが。
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