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第2章 オストマルク王立学園
第34話 精霊の森訪問
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「ずるいですわ。」
ハイジさん-アーデルハイト殿下-が、お帰りになって、ほっと一息つく。
普段ミーナちゃんから、人の社会の身分制度に頓着しないにも程があると言われているわたしでも、部屋に王族が二人もいると肩が凝るよ。
「ずるいですわ。」
さて、ハイジさんが帰ったことだし、ミーナちゃんを呼んでお茶にでもしようか。
せっかくフローラちゃんから貰ったお菓子もあることだし。
「無視しないでください!」
こっちが聞こえない振りしているのに、フローラちゃんって結構空気読めない?
「ずるいって言われても、護衛もなしで一国の王女を他国へ連れ出す訳にはいかないでしょう。
それに、王女が訪問するとなると、面倒な手続きとかも必要でしょ。」
そう、わたしが、夏休みに帝国を訪問することを決めてしまったので、フローラちゃんが自分も行きたいとゴネているのだ。
「だって、夏休みには精霊の森に連れて行ってくれる約束だったでしょう。
帝国に行ったら、それだけで夏休み終っちゃうじゃない。
楽しみにしていたのに。」
フローラちゃんが、王族らしくない崩れた話し方で不平を漏らしている。
そういえば、そんな事言っていたっけ。でも約束はしてなかったような。
「精霊の森に行きたいのなら、次の休みに連れて行こうか?」
「いいの?」
「おかあさん達に帝国へ行く許可を貰わないといけないので、一度帰ろうと思ってたんだ。」
「行く!!」
そんな前のめりになって言わなくても……、そんなに楽しみにいていたのかい。
**********
王宮裏の精霊の泉、わたし達はここからウンディーネかあさんに、わたしの育った精霊の森、旧魔導王国の王宮の中庭にある泉に送ってもらう。
のだが、何故ここにミルト皇太子妃がいるの?
「八歳の子供を一人で遠くまでお泊りに行かせられる訳ないじゃないですか。
ここは、保護者として同行せねばならないと思って来たのですよ。」
そういう割には、フローラちゃんより落ち着きがなく楽しげに見えるのですけど。
ミルト皇太子妃は、これから行く旧魔導王国の王都に対する期待感に目を輝かせている。
「精霊の森に行くのですから、保護者がいなくても大丈夫ですよ。
それに、皇太子妃がお供も付けずに外泊する方が不味いのではないですか?」
「ターニャちゃんたらそんな意地悪言わなくてもいいじゃない。
旧魔導王国の王都を見る機会なんて滅多にないのだから、私も連れて行って欲しいな。
泉の精霊様も良いですよね?」
「こんな奴が、昔もおったの。図々しいのだが、お調子者で何か憎めない奴なのだ。
ヴァイスハイトにくっついて来よってな、色々と強請られたものだ。
お前を見ているとそいつを思い出すわ。まあいいだろう、付いて来るが良い。」
ウンディーネかあさんが、そう言うと瞬時に景色が変わる。
次の瞬間には、わたしが普段使っている魔導王国王宮の居住棟の中庭にいた。
凄いねウンディーネかあさんの力だとここまで一瞬で行き来できるんだ。
「これが魔導王国の王宮……。想像以上の大きさですね。」
フローラちゃんが唖然として言った。そうなの、歩くの大変なんだ。
わたしたちは、他のおかあさん達に挨拶をするため、リビングルームに足を向けた。
「おかあさん、ただいま。」
「おかえりなさい、ターニャ。息災であったか?
そちらの三人は、ミーナに、フローラに、ミルトだったか。良くぞ参った。」
エーオースかあさんが代表して、みんなに歓迎の言葉をかけた。
わたしは、みんなを紹介した後、帝国の王妃が病気で臥せっており治療を頼まれたことと帝国内で瘴気の濃度が高まってそうで気掛かりなことをおかあさん達に説明し、帝国へ行く許可を求めた。
「ターニャの話を聞く限り、帝国はかなり危険な水準まで瘴気の濃度が高まっているようだ。
正直なところ私の可愛いターニャをそんなところへ行かせたくはないのだが……。
ターニャが行きたいと言うのであれば、許可しよう。
帝国の姫も一緒に行くのであれば、追加で魔導車も必要であるな、用意しておこう。」
意外とあっさり許可が下りてしまった、もっと反対されるかと思った。
さて、このあとはフローラちゃんお待ちかねの旧魔導王国の王宮散策だ。
その前に、フローラちゃん達を客間に案内する。
ベッドルームはこの居住棟の二階に配置されている。
階段を上がると正面の大きなガラス窓から、木々に覆われてしまった王都が見渡せる。
「本当に廃墟なんですね。一面が木に覆われてしまっている。
でも不思議な気分です、瘴気の森の中にこんな清浄な森があるなんて。
それに、精霊さんがいっぱいいます。」
フローラちゃんが感嘆の声を上げた。
確かに、人の立ち入りを拒む瘴気の森のど真ん中に、こんな森があるとは想像できないよね。
「ねえ、ターニャちゃん、この王宮って何処を歩いても明るいし、何か快適な温度なんだけど。」
「ああ、それは光が届かない場所ができないように照明の魔導具が配置されているらしいです。
それと、この居住棟全体が空調の魔導具で、温度管理されていて一年中過ごしやすい気温と湿度に保たれているんですって。
魔導王国の末期の技術らしいですよ。」
わたしの説明に、ミルト皇太子妃はしきりに感心している。旧魔導王国の技術力に興味を示したようだ。
そういえば、オストマルク王国に空調の魔導具は無いみたいだからね。
この間、フローラちゃんが欲しがっていたものね。
そして、寝室、フローラちゃんとミルト皇太子妃にはわたしの隣の部屋を使ってもらう。
ベッドルーム二つに、リビング、浴室、トイレ付きの部屋だ。
もちろん浴室には給湯の魔導具がついており、好きな時に入浴できるようになっている。
フローラちゃん親子は、部屋の調度品をみて一々驚いていた。大げさだな。
ミーナちゃんはもちろんわたしと一緒の部屋だ。
部屋で一休みしたら、王宮散策に出発だ。
ハイジさん-アーデルハイト殿下-が、お帰りになって、ほっと一息つく。
普段ミーナちゃんから、人の社会の身分制度に頓着しないにも程があると言われているわたしでも、部屋に王族が二人もいると肩が凝るよ。
「ずるいですわ。」
さて、ハイジさんが帰ったことだし、ミーナちゃんを呼んでお茶にでもしようか。
せっかくフローラちゃんから貰ったお菓子もあることだし。
「無視しないでください!」
こっちが聞こえない振りしているのに、フローラちゃんって結構空気読めない?
「ずるいって言われても、護衛もなしで一国の王女を他国へ連れ出す訳にはいかないでしょう。
それに、王女が訪問するとなると、面倒な手続きとかも必要でしょ。」
そう、わたしが、夏休みに帝国を訪問することを決めてしまったので、フローラちゃんが自分も行きたいとゴネているのだ。
「だって、夏休みには精霊の森に連れて行ってくれる約束だったでしょう。
帝国に行ったら、それだけで夏休み終っちゃうじゃない。
楽しみにしていたのに。」
フローラちゃんが、王族らしくない崩れた話し方で不平を漏らしている。
そういえば、そんな事言っていたっけ。でも約束はしてなかったような。
「精霊の森に行きたいのなら、次の休みに連れて行こうか?」
「いいの?」
「おかあさん達に帝国へ行く許可を貰わないといけないので、一度帰ろうと思ってたんだ。」
「行く!!」
そんな前のめりになって言わなくても……、そんなに楽しみにいていたのかい。
**********
王宮裏の精霊の泉、わたし達はここからウンディーネかあさんに、わたしの育った精霊の森、旧魔導王国の王宮の中庭にある泉に送ってもらう。
のだが、何故ここにミルト皇太子妃がいるの?
「八歳の子供を一人で遠くまでお泊りに行かせられる訳ないじゃないですか。
ここは、保護者として同行せねばならないと思って来たのですよ。」
そういう割には、フローラちゃんより落ち着きがなく楽しげに見えるのですけど。
ミルト皇太子妃は、これから行く旧魔導王国の王都に対する期待感に目を輝かせている。
「精霊の森に行くのですから、保護者がいなくても大丈夫ですよ。
それに、皇太子妃がお供も付けずに外泊する方が不味いのではないですか?」
「ターニャちゃんたらそんな意地悪言わなくてもいいじゃない。
旧魔導王国の王都を見る機会なんて滅多にないのだから、私も連れて行って欲しいな。
泉の精霊様も良いですよね?」
「こんな奴が、昔もおったの。図々しいのだが、お調子者で何か憎めない奴なのだ。
ヴァイスハイトにくっついて来よってな、色々と強請られたものだ。
お前を見ているとそいつを思い出すわ。まあいいだろう、付いて来るが良い。」
ウンディーネかあさんが、そう言うと瞬時に景色が変わる。
次の瞬間には、わたしが普段使っている魔導王国王宮の居住棟の中庭にいた。
凄いねウンディーネかあさんの力だとここまで一瞬で行き来できるんだ。
「これが魔導王国の王宮……。想像以上の大きさですね。」
フローラちゃんが唖然として言った。そうなの、歩くの大変なんだ。
わたしたちは、他のおかあさん達に挨拶をするため、リビングルームに足を向けた。
「おかあさん、ただいま。」
「おかえりなさい、ターニャ。息災であったか?
そちらの三人は、ミーナに、フローラに、ミルトだったか。良くぞ参った。」
エーオースかあさんが代表して、みんなに歓迎の言葉をかけた。
わたしは、みんなを紹介した後、帝国の王妃が病気で臥せっており治療を頼まれたことと帝国内で瘴気の濃度が高まってそうで気掛かりなことをおかあさん達に説明し、帝国へ行く許可を求めた。
「ターニャの話を聞く限り、帝国はかなり危険な水準まで瘴気の濃度が高まっているようだ。
正直なところ私の可愛いターニャをそんなところへ行かせたくはないのだが……。
ターニャが行きたいと言うのであれば、許可しよう。
帝国の姫も一緒に行くのであれば、追加で魔導車も必要であるな、用意しておこう。」
意外とあっさり許可が下りてしまった、もっと反対されるかと思った。
さて、このあとはフローラちゃんお待ちかねの旧魔導王国の王宮散策だ。
その前に、フローラちゃん達を客間に案内する。
ベッドルームはこの居住棟の二階に配置されている。
階段を上がると正面の大きなガラス窓から、木々に覆われてしまった王都が見渡せる。
「本当に廃墟なんですね。一面が木に覆われてしまっている。
でも不思議な気分です、瘴気の森の中にこんな清浄な森があるなんて。
それに、精霊さんがいっぱいいます。」
フローラちゃんが感嘆の声を上げた。
確かに、人の立ち入りを拒む瘴気の森のど真ん中に、こんな森があるとは想像できないよね。
「ねえ、ターニャちゃん、この王宮って何処を歩いても明るいし、何か快適な温度なんだけど。」
「ああ、それは光が届かない場所ができないように照明の魔導具が配置されているらしいです。
それと、この居住棟全体が空調の魔導具で、温度管理されていて一年中過ごしやすい気温と湿度に保たれているんですって。
魔導王国の末期の技術らしいですよ。」
わたしの説明に、ミルト皇太子妃はしきりに感心している。旧魔導王国の技術力に興味を示したようだ。
そういえば、オストマルク王国に空調の魔導具は無いみたいだからね。
この間、フローラちゃんが欲しがっていたものね。
そして、寝室、フローラちゃんとミルト皇太子妃にはわたしの隣の部屋を使ってもらう。
ベッドルーム二つに、リビング、浴室、トイレ付きの部屋だ。
もちろん浴室には給湯の魔導具がついており、好きな時に入浴できるようになっている。
フローラちゃん親子は、部屋の調度品をみて一々驚いていた。大げさだな。
ミーナちゃんはもちろんわたしと一緒の部屋だ。
部屋で一休みしたら、王宮散策に出発だ。
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