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第11章 王都、三度目の春
第273話 王都に春が来た
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長い冬もようやく終わりに近付いてきた、あれだけ降り続いた雪もいつしかちらちらと舞うような降り方となり、降雪のない日も見られるようになったよ。
ただ、王都の外は凄い積雪で除雪が難航したの。
ミルトさんが今年もフェイさんに助けを求めてくるかなと思っていたのだけど、なんとここで活躍したのがスイだったの。
「ママ、フェイに頼まなくても大丈夫です。私ができますので見ていてください。」
とミルトさんに言ったらしい。
スイなりにミルトさんに良いところを見せたかったみたい。
見た目は少女であるがさすがに水の上位精霊だけのことはあって、スイは積もった雪を意のままに操って街道から除けていったの。
その光景に除雪に駆り出されていた人たちは大興奮だったらしい。
奇跡を起こす王女としてスイの評判はうなぎのぼりみたい。
ともかく、スイの活躍により王都と他の都市を結ぶ街道も無事に開通し、王都は春の訪れを待つだけになったの。
**********
そして、月が変わって三の月、春の訪れと共にわたし達は王立学園の三年生になりました。
わたしのいる特別クラスは一応王立学園の初等部ということになっているけど、今年からカリキュラムは中等部の内容になるの。
初等部の四年間で中等部までの七年分の授業内容をこなし卒業試験に合格すると初等部と中等部両方の卒業証書がもらえるみたい。
わたしはどうするか決めていないけど、従来特別クラスの卒業生はそのまま高等部へ進むそうなの。
二月に進級試験があり落第点を取ると下のクラスに落ちて初等部の内容を続けて勉強することになったのだけど、みんな真面目に勉強してきた甲斐があって、クラスの全員が合格点をとって中等部の内容を学ぶことになったよ。
ということで、全く変わり映えのしない教室の中、隣の席のクラーラちゃんが声をかけてくれたの。
「今年も隣の席でよろしくね、ターニャちゃん。
そういえば、冬休みが終わってすぐに進級試験やらなんやらでバタバタしていて落ち着いて話も出来ませんでしたが、ターニャちゃん、冬休み中に面白いことしていたでしょう?」
「面白いこと?何かしていたかな、雪が酷くてあまり出歩かなかったけど…。」
「王国始まって以来の不祥事、貴族の大量取り潰し、それにターニャちゃんが関わっていたでしょう。
皇太子妃様の隣にいつでもターニャちゃんがいたって私の父さんが言っていたわよ。」
「わたしはあの件には直接関わっていないよ、あれはミルトさんが殆ど一人でやったことだし。
どちらかと言えばわたしより、ルーナちゃんの方がお手柄だったよ。」
そう言って、わたしは、貴族が取り潰しに至った経緯をクラーラちゃんに説明し、その発端はルーナちゃんのお見合い逃亡事件だったことを話した。
「わはは、おっかしいの。笑わせてくれるわね。
そいつら全部が全部、同じ貴族に見合いを申し込んだの?
馬鹿じゃないの、同じ派閥なんだから少しは相談して、見合い相手が競合しないようにすれば良いのに。
急にそんなたくさんの縁談が来れば、ルーナちゃんでなくても逃げ出したくなるわよ。
第一、縁談を申し込まれた当主の誰かが変だと気がつくに決まっているでしょう。
そんな頭も回らないから、取り潰しの憂き目に会うのよ。」
クラーラちゃんはお腹を抱えて笑っている。
たしかに、ルーナちゃんが逃げ出したから速やかに発覚したけど、遅かれ早かれ発覚していたんだろうね。
クラーラちゃんはひとしきり笑い飛ばした後、真面目な顔を取り戻して言った。
「でも、私の父さんはミルト様とターニャちゃんに感謝していたわよ。
お父さんが営んでいる商会でも取り潰しになった貴族の一つに抵当を付けていたの。
その貴族ったら、借りたお金を全然返す気がないのよ。
抵当物件を処分して回収したいところだけど相手は貴族でしょう、中々そういう訳にもいかなかったの。
ミルト様が抵当物件を積極的に処分するように言ってくださったから、塩漬けになっていた貸し金を利息を含めて全額回収できたのですって。
うちだけではなく、王都の大きな商会はみんな感謝していると思うわ。
ターニャちゃんも王都の商会の間ではちょっとした有名人よ。」
王都の商人の間では取り潰された貴族は、貴族であることを盾にツケは払わない、借金は返さないで非常に評判が悪かったらしい。
あいつら、王宮内だけでなく市井の人にも態度が悪かったんだ…。
それを潰してくれたミルトさんは商人たちの間で非常に賞賛されていて、いつも一緒に行動していたわたしも何か関係しているのだろうという事でついでに感謝されているらしい。
実は結末が気になってくっついて歩いていただけなんだけどね。
わたしがしたのは、一連の出来事の発端になったプッペ一味を捕らえるのに手を貸したくらいだものね。それくらいのことで感謝されてもね…。
とりあえず、みんなに喜んでもらっているのなら良かったね。
ミルトさんが大雪の中を駆けずり回った甲斐があったね、普通皇太子妃があんなことしないよ…。
こうして、王都で迎える三度目の春は穏やかに訪れたのです。
ただ、王都の外は凄い積雪で除雪が難航したの。
ミルトさんが今年もフェイさんに助けを求めてくるかなと思っていたのだけど、なんとここで活躍したのがスイだったの。
「ママ、フェイに頼まなくても大丈夫です。私ができますので見ていてください。」
とミルトさんに言ったらしい。
スイなりにミルトさんに良いところを見せたかったみたい。
見た目は少女であるがさすがに水の上位精霊だけのことはあって、スイは積もった雪を意のままに操って街道から除けていったの。
その光景に除雪に駆り出されていた人たちは大興奮だったらしい。
奇跡を起こす王女としてスイの評判はうなぎのぼりみたい。
ともかく、スイの活躍により王都と他の都市を結ぶ街道も無事に開通し、王都は春の訪れを待つだけになったの。
**********
そして、月が変わって三の月、春の訪れと共にわたし達は王立学園の三年生になりました。
わたしのいる特別クラスは一応王立学園の初等部ということになっているけど、今年からカリキュラムは中等部の内容になるの。
初等部の四年間で中等部までの七年分の授業内容をこなし卒業試験に合格すると初等部と中等部両方の卒業証書がもらえるみたい。
わたしはどうするか決めていないけど、従来特別クラスの卒業生はそのまま高等部へ進むそうなの。
二月に進級試験があり落第点を取ると下のクラスに落ちて初等部の内容を続けて勉強することになったのだけど、みんな真面目に勉強してきた甲斐があって、クラスの全員が合格点をとって中等部の内容を学ぶことになったよ。
ということで、全く変わり映えのしない教室の中、隣の席のクラーラちゃんが声をかけてくれたの。
「今年も隣の席でよろしくね、ターニャちゃん。
そういえば、冬休みが終わってすぐに進級試験やらなんやらでバタバタしていて落ち着いて話も出来ませんでしたが、ターニャちゃん、冬休み中に面白いことしていたでしょう?」
「面白いこと?何かしていたかな、雪が酷くてあまり出歩かなかったけど…。」
「王国始まって以来の不祥事、貴族の大量取り潰し、それにターニャちゃんが関わっていたでしょう。
皇太子妃様の隣にいつでもターニャちゃんがいたって私の父さんが言っていたわよ。」
「わたしはあの件には直接関わっていないよ、あれはミルトさんが殆ど一人でやったことだし。
どちらかと言えばわたしより、ルーナちゃんの方がお手柄だったよ。」
そう言って、わたしは、貴族が取り潰しに至った経緯をクラーラちゃんに説明し、その発端はルーナちゃんのお見合い逃亡事件だったことを話した。
「わはは、おっかしいの。笑わせてくれるわね。
そいつら全部が全部、同じ貴族に見合いを申し込んだの?
馬鹿じゃないの、同じ派閥なんだから少しは相談して、見合い相手が競合しないようにすれば良いのに。
急にそんなたくさんの縁談が来れば、ルーナちゃんでなくても逃げ出したくなるわよ。
第一、縁談を申し込まれた当主の誰かが変だと気がつくに決まっているでしょう。
そんな頭も回らないから、取り潰しの憂き目に会うのよ。」
クラーラちゃんはお腹を抱えて笑っている。
たしかに、ルーナちゃんが逃げ出したから速やかに発覚したけど、遅かれ早かれ発覚していたんだろうね。
クラーラちゃんはひとしきり笑い飛ばした後、真面目な顔を取り戻して言った。
「でも、私の父さんはミルト様とターニャちゃんに感謝していたわよ。
お父さんが営んでいる商会でも取り潰しになった貴族の一つに抵当を付けていたの。
その貴族ったら、借りたお金を全然返す気がないのよ。
抵当物件を処分して回収したいところだけど相手は貴族でしょう、中々そういう訳にもいかなかったの。
ミルト様が抵当物件を積極的に処分するように言ってくださったから、塩漬けになっていた貸し金を利息を含めて全額回収できたのですって。
うちだけではなく、王都の大きな商会はみんな感謝していると思うわ。
ターニャちゃんも王都の商会の間ではちょっとした有名人よ。」
王都の商人の間では取り潰された貴族は、貴族であることを盾にツケは払わない、借金は返さないで非常に評判が悪かったらしい。
あいつら、王宮内だけでなく市井の人にも態度が悪かったんだ…。
それを潰してくれたミルトさんは商人たちの間で非常に賞賛されていて、いつも一緒に行動していたわたしも何か関係しているのだろうという事でついでに感謝されているらしい。
実は結末が気になってくっついて歩いていただけなんだけどね。
わたしがしたのは、一連の出来事の発端になったプッペ一味を捕らえるのに手を貸したくらいだものね。それくらいのことで感謝されてもね…。
とりあえず、みんなに喜んでもらっているのなら良かったね。
ミルトさんが大雪の中を駆けずり回った甲斐があったね、普通皇太子妃があんなことしないよ…。
こうして、王都で迎える三度目の春は穏やかに訪れたのです。
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