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第11章 王都、三度目の春
第283話 ちょっとポルトまで出かけます
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トレナール王子がやってきた日からちょうど一週間後の休日、わたし達は今王宮の最奥にある精霊の泉の前にいる。
今ここには、いつものメンバーの他にミルトさんが引き抜いた元トレナール王子の側近エフォールさんがいる。
エフォールさんはあの後、正式にこの国の官吏に採用された。
さすがに、他国の出身者に高等文官試験をいきなり受けろというのは無理なので、ミルトさんは数年のうちに合格するように命じたらしい。
そして、今日はエフォールさんがポルトに赴任する日なんだ。
肝心のエフォールさんは何故自分がここにいるかわかっていないみたい。
「あの、ミルト様、私は今日ポルトへ向かって出立するように仰せ付かっておりまして、朝の乗合馬車に乗るため停留場に行かなくてはならないのですが。
このようなところでどのようなご用件なのでしょうか?」
王宮の最奥なんて普通は入れないところに連れてこられて戸惑っているね。
「エフォールさん、これからあなたが見るものはこの国の最高機密です。
それを知ったら、あなたはもう引き返すことができません。
あなたに問います、この国に骨を埋める覚悟はできていますか?」
「はい、ミルト様にお仕えすると決めたときからその覚悟はできています。」
ミルトさんの問い掛けに力強く答えたエフォールさんにミルトさんは満足げに頷いて言う。
「じゃあ、スイちゃんお願いできますか。」
「はい、ママ!いつでも大丈夫です。」
そう言ってスイはエフォールさんの手を取った。そして・・・。
**********
一瞬にして切り替わった目の前の光景、南国に強い日差しの中、目の前には白亜の離宮が姿を現した。
「ようこそ、ポルトへ。
悪いけどあなたを移動だけで一ヶ月も遊ばせておく訳には行かないの。
この瞬間移動の術は使える者が本当に限られているので極秘なのよ。
口外したらそれこそ儚いことになるから気をつけてくださいね。」
そう、エフォールさんを送るついでにポルトへ一泊二日で遊びに行こうということになったの。
ここは、ポルトにある王家の別荘という名の離宮、この規模の宮殿を普通別荘とは言わないよ。
「えっ、あれ?」
ミルトさんに説明されても状況が飲み込めないらしく、エフォールさんは呆然としている。
「ほら、しゃきっとしなさい。
繰り返すけど、もうここはポルトなのよ、ポルトにある王家の別荘。
あなたには、今後私の右腕となって働いて貰おうと思っているから特別に機密を教えたのよ。
王族とこの子達以外は知らないのだから本当に口外したらダメよ。」
ミルトさんにカツを入れられてエフォールさんはようやく我に帰ったみたい。
「東大陸の人が魔法というモノを使えるとは聞いてましたが、こんな魔法まであるとは…。」
いいえ、人はこんな大魔法は使えないよ。でも、精霊のことはもっと重要機密だからね。
今いるのは、ポルトの別荘の中庭、そこにある池に王家の泉から移動したの。
スイが瞬間移動をできるようになってから時々来てるんだって、知らなかったよ。
そして、わたし達は別荘に備え付けの馬車で、ポルト公爵の領館へ向かった。
「ポルト公爵、急で申し訳ありませんが、西大陸の事情に詳しい者を一人採用しました。
先日までノルヌーヴォ王国の宮廷に出仕しており、外務畑で一年勤務した経験を持つ者です。
すぐに実践で使えると思いますので、西大陸との交易拡大に役立ててください。」
ミルトさんは公爵に会うといきなりまくし立てるように言った。
「こら、いきなり現れたかと思ったら挨拶も抜きでまくし立てる者があるか。
ほら見ろ、その男も呆れているではないか。」
さすがに、いくら実の親子といえども挨拶も抜きで話を始めるのは拙かったようで公爵が苦言を呈した。
「ごめんない、西大陸との交易拡大計画に打って付けの人物が見つかったものでつい。
でも、これで計画が捗ると思います。」
その後、エフォールさんが公爵に挨拶をし、そのまま、エフォールさんと公爵の打ち合わせが始まってしまった。
取り残されたわたし達がこれからどうしたものかと思っていると、ミルトさんが二人の会話に割って入った。
「公爵、実は子供達にアレを見せようと思い連れてきたのですが、エフォールにも見せようと思います。よろしいでしょうか。」
うん?アレって何だ?
「ああ、アレか。おまえは西大陸との交易拡大計画をエフォールに任せるつもりなのであろう。
それであれば、早いうちに見せておいた方が良いだろう。
おまえが連れて来たのだから信頼できる者なのであろう。」
ポルト公爵の許可を得たミルトさんは、エフォールさんに公爵との打ち合わせを一旦打ち切らせ出かけることにした。
**********
公爵の領館を後にした馬車の中、ミルトさんが言う。
「これから見せるものは、最高機密の中でも最も機密にしなければならないものです。
漏らした者は厳罰に処します。
今まで、子供達にはこんな注意はしたことありませんでしたが、絶対人に話したらダメですよ。」
そんなものを子供に見せるのはいかがなものか?
そんな重要秘密なら見せなければ良いじゃないと思っていたら、ミルトさんが言った。
「そうまでしてでも見てもらいたいものなのよ、あなた達のような未来を背負って立つ子供達にね。
きっと新しい時代の扉を開くものになると思うから。」
そんな事を聞いていると馬車はポルトの町の城門を出てしまった。
ポルトの町を城壁の沿って回り込むように移動すると、ポルトの町のすぐ近くに海側からは隠れるように入り江があった。
門兵が厳重に外部からの侵入を防いでいる入り江の施設にそれはあった。
今ここには、いつものメンバーの他にミルトさんが引き抜いた元トレナール王子の側近エフォールさんがいる。
エフォールさんはあの後、正式にこの国の官吏に採用された。
さすがに、他国の出身者に高等文官試験をいきなり受けろというのは無理なので、ミルトさんは数年のうちに合格するように命じたらしい。
そして、今日はエフォールさんがポルトに赴任する日なんだ。
肝心のエフォールさんは何故自分がここにいるかわかっていないみたい。
「あの、ミルト様、私は今日ポルトへ向かって出立するように仰せ付かっておりまして、朝の乗合馬車に乗るため停留場に行かなくてはならないのですが。
このようなところでどのようなご用件なのでしょうか?」
王宮の最奥なんて普通は入れないところに連れてこられて戸惑っているね。
「エフォールさん、これからあなたが見るものはこの国の最高機密です。
それを知ったら、あなたはもう引き返すことができません。
あなたに問います、この国に骨を埋める覚悟はできていますか?」
「はい、ミルト様にお仕えすると決めたときからその覚悟はできています。」
ミルトさんの問い掛けに力強く答えたエフォールさんにミルトさんは満足げに頷いて言う。
「じゃあ、スイちゃんお願いできますか。」
「はい、ママ!いつでも大丈夫です。」
そう言ってスイはエフォールさんの手を取った。そして・・・。
**********
一瞬にして切り替わった目の前の光景、南国に強い日差しの中、目の前には白亜の離宮が姿を現した。
「ようこそ、ポルトへ。
悪いけどあなたを移動だけで一ヶ月も遊ばせておく訳には行かないの。
この瞬間移動の術は使える者が本当に限られているので極秘なのよ。
口外したらそれこそ儚いことになるから気をつけてくださいね。」
そう、エフォールさんを送るついでにポルトへ一泊二日で遊びに行こうということになったの。
ここは、ポルトにある王家の別荘という名の離宮、この規模の宮殿を普通別荘とは言わないよ。
「えっ、あれ?」
ミルトさんに説明されても状況が飲み込めないらしく、エフォールさんは呆然としている。
「ほら、しゃきっとしなさい。
繰り返すけど、もうここはポルトなのよ、ポルトにある王家の別荘。
あなたには、今後私の右腕となって働いて貰おうと思っているから特別に機密を教えたのよ。
王族とこの子達以外は知らないのだから本当に口外したらダメよ。」
ミルトさんにカツを入れられてエフォールさんはようやく我に帰ったみたい。
「東大陸の人が魔法というモノを使えるとは聞いてましたが、こんな魔法まであるとは…。」
いいえ、人はこんな大魔法は使えないよ。でも、精霊のことはもっと重要機密だからね。
今いるのは、ポルトの別荘の中庭、そこにある池に王家の泉から移動したの。
スイが瞬間移動をできるようになってから時々来てるんだって、知らなかったよ。
そして、わたし達は別荘に備え付けの馬車で、ポルト公爵の領館へ向かった。
「ポルト公爵、急で申し訳ありませんが、西大陸の事情に詳しい者を一人採用しました。
先日までノルヌーヴォ王国の宮廷に出仕しており、外務畑で一年勤務した経験を持つ者です。
すぐに実践で使えると思いますので、西大陸との交易拡大に役立ててください。」
ミルトさんは公爵に会うといきなりまくし立てるように言った。
「こら、いきなり現れたかと思ったら挨拶も抜きでまくし立てる者があるか。
ほら見ろ、その男も呆れているではないか。」
さすがに、いくら実の親子といえども挨拶も抜きで話を始めるのは拙かったようで公爵が苦言を呈した。
「ごめんない、西大陸との交易拡大計画に打って付けの人物が見つかったものでつい。
でも、これで計画が捗ると思います。」
その後、エフォールさんが公爵に挨拶をし、そのまま、エフォールさんと公爵の打ち合わせが始まってしまった。
取り残されたわたし達がこれからどうしたものかと思っていると、ミルトさんが二人の会話に割って入った。
「公爵、実は子供達にアレを見せようと思い連れてきたのですが、エフォールにも見せようと思います。よろしいでしょうか。」
うん?アレって何だ?
「ああ、アレか。おまえは西大陸との交易拡大計画をエフォールに任せるつもりなのであろう。
それであれば、早いうちに見せておいた方が良いだろう。
おまえが連れて来たのだから信頼できる者なのであろう。」
ポルト公爵の許可を得たミルトさんは、エフォールさんに公爵との打ち合わせを一旦打ち切らせ出かけることにした。
**********
公爵の領館を後にした馬車の中、ミルトさんが言う。
「これから見せるものは、最高機密の中でも最も機密にしなければならないものです。
漏らした者は厳罰に処します。
今まで、子供達にはこんな注意はしたことありませんでしたが、絶対人に話したらダメですよ。」
そんなものを子供に見せるのはいかがなものか?
そんな重要秘密なら見せなければ良いじゃないと思っていたら、ミルトさんが言った。
「そうまでしてでも見てもらいたいものなのよ、あなた達のような未来を背負って立つ子供達にね。
きっと新しい時代の扉を開くものになると思うから。」
そんな事を聞いていると馬車はポルトの町の城門を出てしまった。
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