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第二十一話 優麗なる亡霊は嘆き微笑む
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レキムが私以外に謝っているところを始めて見た私は、内心かなり驚いていた。立場が上の人間から謝罪を求められようとも、理路整然と反撃し、最終的には相手の方に謝罪させていたような人が、子供二人に頭を下げているのだから。
あんな謝り方じゃ、ウィルとラルーチェが困惑するだけで何の解決にもなってないってわからないのかしら。
まあ実際のところ、あの人はあの子達に対して謝っているのではなくて、自分の理想を傷つけたことに対して謝っているのだから、あの人らしいと言えばあの人らしいのかも。
「まだお昼ご飯には早いですし、この家自慢の書庫でも案内してあげましょうか」
私はレキムにしばらく考える時間をあげようと思い、ウィルとラルーチェを地下にある書庫に連れていくことにする。平文字だけで書いてある本は少ないけれど、本という目新しい紙の束を見るだけでも面白いかもしれない。少なくとも私は、初めて本を見たときにそう感じた。
「さ、いきましょ」
子供達の手を優しく取って、怯えていない事を確認してから握る力を強める。手を引っ張るのではなく、行く方向を示して子供達と一緒に進んでいく。
書庫へ続く通路は隠されており、リビングの突き当りにある本が満載の本棚を真上に持ち上げることで通ることが出来るようになる。魔法で本棚の質量を空気よりも軽くさせる事で浮かせて、中に入っていく。
入った瞬間に、真っ暗だった地下に次々と灯りが付いていく。家を建てた当初に、レキムが頑張って作った人間を感知して自動的に魔法灯が点く仕組みによるものだ。
「この先、階段だから気を付けてね」
子供達に注意を促してから、ゆっくりと螺旋階段を下りていく。
眼下に広がるのは本の森。本棚にはびっしりと本が揃えられており、入りきらなかった本が空いたスペースで山を成している。
「どう、凄いでしょ。ここがこの家の書庫。小説から専門書まで一通り揃っているのよ。特に多いのは魔法についての本ね」
一番下まで下りた私は、子供達にこの光景を自慢する。
ウィルは天井の高さが気になるようで、上の方ばかりを見ているのに対し、ラルーチェは本が気になるらしく、自分の手の届く高さにある本を見ている。
「あのお爺さんはね、ここにある本を全部読んでいるのよ」
折角だから、あの人の地に落ちた面子を泥が付かない程度に浮かせてあげようと思い、私はこの子達にあの人の武勇伝を聞かせてみることにする。
「全部?!」
声を出して反応したのはウィルで、ラルーチェも本を見ていた目をビックリさせて私に向けた。
反応は上々。分かりやすく狂っているあの人の人生は、語り草としては申し分ない。
「そう、全部。あのお爺さん、昔は軍隊を指揮する人だったり、魔法の道具を作った魔法使いだったり、国の偉い人だったりたから、新しい情報を沢山勉強しなきゃいけなかったの。この本はその勉強の痕跡。でも、一番大変だったのは、本を読むことじゃなくて、これだけの本を集めることだったらしいわ。
特に、あの人がよく読んでいた専門知識を扱う書物は、欲しいと思う人が少ないから作られる本の数も少なくて、手に入れにくいのよ。だからあの人は、良い本を書く人に、新しい本を書いたら自分の元へ送ってもらえるように頼んでいたの。そんなことをしていたら、最終的にあの人は、色々な人の本の元になる文章を仕事の合間に手直しするようになっていた。この家に住んでからもたまに、『飛行紙』っていう空飛ぶ紙で、馴染みの作家さんや教授さんから本の元になる文章が送られてくるのよ」
話を終えた私は、少し喋りすぎたかな、と反省する。
「ふーん」
ウィルの明らかな生返事。やっぱり、興味ない事を長々話したって興味を持つようにはならないものだ。
けれどラルーチェは、思っていたよりも真剣な眼差しで私の話を聴いてくれていた。どうやらラルーチェの方は、レキム人生物語に何かしら感じるものがあったみたいだ。だとしたら、語った甲斐があるというものだけれど、ここに来たのはこの話をするためではない。
本題に移ろう。
------------------
造語解説
『飛行紙』:レキム・グラントが考案した魔法道具の一つで、その名の通り飛行する紙。表面はただの原稿用紙だが、裏面には紙を目的地点まで飛ばすための魔法を現出させるための存在定義と、点線で紙の折り方が描いてあり、描いてある通りに折ると紙飛行機のような形状になる。これを晴れている日に窓から外へ飛ばすことで、対応する『発着ポスト』に向かって飛んでいく。
開発者曰く、表面に書かれた文章に宿る魔法に惑わされないような『魔法文字』を、紙という薄く柔らかい物質に書き込む技術を、活版印刷の要領で自動化できることに気付いたことで、実用化することが可能になったのだとか。
あんな謝り方じゃ、ウィルとラルーチェが困惑するだけで何の解決にもなってないってわからないのかしら。
まあ実際のところ、あの人はあの子達に対して謝っているのではなくて、自分の理想を傷つけたことに対して謝っているのだから、あの人らしいと言えばあの人らしいのかも。
「まだお昼ご飯には早いですし、この家自慢の書庫でも案内してあげましょうか」
私はレキムにしばらく考える時間をあげようと思い、ウィルとラルーチェを地下にある書庫に連れていくことにする。平文字だけで書いてある本は少ないけれど、本という目新しい紙の束を見るだけでも面白いかもしれない。少なくとも私は、初めて本を見たときにそう感じた。
「さ、いきましょ」
子供達の手を優しく取って、怯えていない事を確認してから握る力を強める。手を引っ張るのではなく、行く方向を示して子供達と一緒に進んでいく。
書庫へ続く通路は隠されており、リビングの突き当りにある本が満載の本棚を真上に持ち上げることで通ることが出来るようになる。魔法で本棚の質量を空気よりも軽くさせる事で浮かせて、中に入っていく。
入った瞬間に、真っ暗だった地下に次々と灯りが付いていく。家を建てた当初に、レキムが頑張って作った人間を感知して自動的に魔法灯が点く仕組みによるものだ。
「この先、階段だから気を付けてね」
子供達に注意を促してから、ゆっくりと螺旋階段を下りていく。
眼下に広がるのは本の森。本棚にはびっしりと本が揃えられており、入りきらなかった本が空いたスペースで山を成している。
「どう、凄いでしょ。ここがこの家の書庫。小説から専門書まで一通り揃っているのよ。特に多いのは魔法についての本ね」
一番下まで下りた私は、子供達にこの光景を自慢する。
ウィルは天井の高さが気になるようで、上の方ばかりを見ているのに対し、ラルーチェは本が気になるらしく、自分の手の届く高さにある本を見ている。
「あのお爺さんはね、ここにある本を全部読んでいるのよ」
折角だから、あの人の地に落ちた面子を泥が付かない程度に浮かせてあげようと思い、私はこの子達にあの人の武勇伝を聞かせてみることにする。
「全部?!」
声を出して反応したのはウィルで、ラルーチェも本を見ていた目をビックリさせて私に向けた。
反応は上々。分かりやすく狂っているあの人の人生は、語り草としては申し分ない。
「そう、全部。あのお爺さん、昔は軍隊を指揮する人だったり、魔法の道具を作った魔法使いだったり、国の偉い人だったりたから、新しい情報を沢山勉強しなきゃいけなかったの。この本はその勉強の痕跡。でも、一番大変だったのは、本を読むことじゃなくて、これだけの本を集めることだったらしいわ。
特に、あの人がよく読んでいた専門知識を扱う書物は、欲しいと思う人が少ないから作られる本の数も少なくて、手に入れにくいのよ。だからあの人は、良い本を書く人に、新しい本を書いたら自分の元へ送ってもらえるように頼んでいたの。そんなことをしていたら、最終的にあの人は、色々な人の本の元になる文章を仕事の合間に手直しするようになっていた。この家に住んでからもたまに、『飛行紙』っていう空飛ぶ紙で、馴染みの作家さんや教授さんから本の元になる文章が送られてくるのよ」
話を終えた私は、少し喋りすぎたかな、と反省する。
「ふーん」
ウィルの明らかな生返事。やっぱり、興味ない事を長々話したって興味を持つようにはならないものだ。
けれどラルーチェは、思っていたよりも真剣な眼差しで私の話を聴いてくれていた。どうやらラルーチェの方は、レキム人生物語に何かしら感じるものがあったみたいだ。だとしたら、語った甲斐があるというものだけれど、ここに来たのはこの話をするためではない。
本題に移ろう。
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造語解説
『飛行紙』:レキム・グラントが考案した魔法道具の一つで、その名の通り飛行する紙。表面はただの原稿用紙だが、裏面には紙を目的地点まで飛ばすための魔法を現出させるための存在定義と、点線で紙の折り方が描いてあり、描いてある通りに折ると紙飛行機のような形状になる。これを晴れている日に窓から外へ飛ばすことで、対応する『発着ポスト』に向かって飛んでいく。
開発者曰く、表面に書かれた文章に宿る魔法に惑わされないような『魔法文字』を、紙という薄く柔らかい物質に書き込む技術を、活版印刷の要領で自動化できることに気付いたことで、実用化することが可能になったのだとか。
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