隠居賢者の子育て余生

具体的な幽霊 

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第二十五話 罪滅ぼしの料理が美味しいのは、きっと素材がいいからだろう

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 丁度ミートローフを石窯から取り出す時間になる頃に、子供達とアイラはリビングに戻ってきた。
 私は努めて平静を装って、子供達に話しかける。

 「もうすぐ昼食だから、座って待っていてくれ」

 窯から取り出したミートローフを型から外し、切り分けて皿に盛り付け、付け合わせの野菜でそれっぽく皿を彩る。仕上げに、作っておいた『フライベリー』のソースをかければ完成だ。
 出来上がった料理を子供達が待つテーブルへと運ぶ。アイラが運ぶのを手伝ってくれた。
 子供達は自分の前に置かれた肉をまじまじと見てから、私の方を見た。

 「さあ、食べてみてくれ。味は保証しよう」

 ナイフとフォークを用意しておいたのだが、子供達は肉を手で掴んでかぶりついた。ソースと肉汁で手が汚れるのなんてお構い無しだ。
 お世辞にも綺麗な食べ方とは言えないが、その行為から料理が美味しく出来ている事が分かり嬉しく思う。
 
 「良かったですね、美味しそうに食べてくれて。まだ、最低限の信頼はされてるみたいですよ」

 隣で浮かぶアイラが、私にそう耳打ちする。
  他人から出された食べ物を疑わずに口にするのは、優しい世界で生きてきた人間だけだ。そういう人は、一度でも世界の優しくない部分に触れると腐ってしまう。「体調が良くなる薬だから」という文句を真に受け、麻薬に染まってしまうように。
 ゆえに、優しくない世界で生きてきたこの子等が、私の出した料理を疑うそぶりもなく食べてくれたということは、私という人間をそれほど危険視していないという事になる。
 この結論には多少の無理があるかもしれないが、それでも私はこの考えに縋りたかった。

 子供達の様子を見ながら、私自身も一片だけミートローフを食べた。我ながらよく出来ているとは思ったが、私が食べるには油分が多過ぎた。

 「どう、美味しかった?」

 食事を終えた子供達に、アイラがそう尋ねると、ラルーチェはすぐに、ウィルは少し迷ってから、首を縦に振ってくれた。
 それを見た私は、自然と笑みが溢れた。
 罪滅ぼしのつもりで作った料理ではあったが、また何かこの子等が好きそうなものを作ろうと思う。



 --------------
 造語解説
 
 『フライベリー』 水色の小さな木の実。仄かな甘味と爽やかな酸味がある。実が熟して弾ける時に、種子を空高く飛ばすのが名前の由来。
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