運命の糸の先に

hayama_25

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第45話

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「ねぇ瑞稀。さっきは無理して言わないでいいって言ったけど、理由を聞かないことには無視したりできないよ」

 言葉を口にするまで、何度も喉の奥で飲み込んだ。瑞稀のために黙っていようと思った。

 でも、黙っていることが、逆に彼を遠ざけてしまうような気がして、怖くなった。

 理由も知らずに誰かを拒絶するなんて、自分にはできない。

 それがたとえ、瑞稀の言葉だったとしても。

 視線を彼に向ける。

 目を合わせるのが怖いのに、合わせずにはいられない。

 彼の瞳の奥に、何か答えがあるような気がして。

「理由は教えられない」

 その言葉が落ちてきた瞬間、胸の奥が静かに沈んでいく。

 拒絶されたわけじゃないのに、距離を置かれたような感覚。
   
 信じてほしいという気持ちと、信じるための材料が足りないという現実。

 その間で揺れる心が、どうしても落ち着かない。

 瑞稀の声はいつも通り淡々としているのに、どこかで痛みを隠しているようにも聞こえた。

 言えない理由があることは分かる。

 でも、それを知らないまま誰かを傷つけることは、やっぱりできない。

「だったら、私も瑞稀の言う通りにはできない」

 言葉にした瞬間、胸がぎゅっと締めつけられる。

 瑞稀の言葉に背くことが、こんなにも苦しいなんて思っていなかった。

 でも、ただ従うだけじゃ、自分の気持ちが置き去りになる。

 自分の心を無視してまで動くことは、きっと瑞稀も望んでいない。そう信じたい。

「梨華、」

 名前を呼ばれた瞬間、心が揺れる。

 その声には、怒りも苛立ちもなかった。

 ただ、戸惑いと、何かを伝えようとする気配があった。

「分かってる。いつも瑞稀が正しいってことぐらい。ただ、口で言うのと、実際するのって、やっぱり難しいよね、」

 言葉が震える。

 瑞稀が正しいことは分かってる。
 彼の判断はいつも冷静で、間違いがない。

 でも、自分はそんなふうに割り切れない。

 感情が先に動いてしまう。
 誰かの表情に引っ張られてしまう。

「こいつとは、」

 瑞稀が口を開けようとした瞬間、空気が張り詰める。

 何を言おうとしているのか、分からない。

 でも、その言葉が何かを決定づけてしまいそうで、息を止めてしまう。

 そのとき…

「言えないですよね。梨華さんのせいで別れたんですから」

 佳代の声が、空気を切り裂いた。

 その言葉が耳に届いた瞬間、頭の中が真っ白になる。

 何を言われたのか、すぐには理解できなかった。

 ただ、胸の奥に冷たいものが流れ込んでくるのを感じた。

 私のせい…?

 視線が揺れる。

 瑞稀の顔を見ようとして、でも見られない。
 佳代の表情を探ろうとして、でも見たくない。

 足元がぐらつく。
 立っているだけなのに、地面が遠く感じる。

 言葉を返したい。

 でも、何を言えばいいのか分からない。
 ただ、心の奥で静かに叫んでいた。

 違う。そんなつもりじゃなかった。


 でも、その声は誰にも届かない。
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