運命の糸の先に

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第35話

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 スタッフたちが修理作業に集中している姿が、奥のガラス越しに見える。

 手際よく道具を動かし、スマホを修理する様子がどこか安心感を与えてくれる。

 それでも、不安が消えるわけではない。

 その様子に少しだけ胸が落ち着きながら、私はバッグに手を伸ばし、割れてしまったスマホを取り出した。

 そのスマホは、ぶつかった瞬間の記憶とともに、ひび割れた画面を輝かせながら私の心を重くする。

 カウンターに近づき、何とかスタッフに状況を説明しなければと気持ちを奮い立たせる。

 けれども、口を開く前から緊張してしまい、心の中で深呼吸をする。

「すみません、スマホを落としてしまって。急に電源が入らなくなって、画面も全然反応しなくて…」

 初めての修理依頼に何を話せばいいか分からない。
 こんな説明でちゃんと伝わっただろうか。

 スタッフはスマホを慎重に手に取った。

 その動作がどこか専門家らしさを感じさせて、少しだけ気持ちが和らぐ。

「なるほど、少しお調べしてみますね。画面の不具合か、それとも内部の問題かを確認しますので、少々お待ちください」

 と、丁寧な言葉にうなずきながらも、結果がどうなるのかと心配でたまらない。

 スタッフが奥へと歩き去り、待つ時間がどんどんと長く感じられる。

 少し離れた場所で腕を組んで立っている瑞稀の存在がふと目に入る。

 そのぶっきらぼうな態度はいつもと変わらないけれど、その視線がこちらに向けられているのが分かるだけで心が少し落ち着く。

「心配すんな」

 短く言うその言葉が耳に届いた。

 その一言に、瑞稀の本心が込められているようで、
 彼なりの優しさを感じさせてくれる。

 しばらくしてスタッフが戻ってきた。

「内部の部品の交換が必要ですね。修理には約一時間ほどかかりますが、それで問題は解決すると思います」

 良かった…。

 直るという確証を得られたことで、不安が少しだけ軽くなる。

「そうなんですね。じゃあお願いします」

 返事をする声は、以前よりも落ち着きが戻ってきたように感じられた。

 スタッフの方が笑顔を浮かべて受け答える。

「かしこまりました。それでは修理を進めさせていただきます。お時間がかかりますので、よろしければこの間に少しお買い物などをお楽しみください」

 修理を待つ間、なにをしてようか…。

 一時間も待たせるのは可哀想だし、瑞稀は解放してあげようかな。

 店を出ると、瑞稀に向き直りながら声をかける。

「一時間もかかるって。瑞稀は先に帰ってもいいよ?」

 本当は一緒に待ってて欲しいんだけど。

 今日は散々な一日だったし、これも全部、瑞稀を外に連れ出した私の責任だったりする。

 すると、瑞稀が肩をすくめながら答える。

「それぐらいなら待ってやるよ」

 なんだよぉ。

 いつもはうざい。だるい。面倒臭い。三拍子のくせに。

 こういう時だけ優しいんだから。

「本当に迷惑かけてごめんね」


 繰り返すたびに、瑞稀を巻き込んでしまったことへの申し訳なさが胸に広がっていく。



 それでも瑞稀は「気にするな」と短く返してくれた。
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