運命の糸の先に

hayama_25

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第36話

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「一時間って意外と長いよね。どうする?何か見たいお店とかある?」

 待ち時間をどうにか楽しいものにしたいと思い、明るい声で提案してみる。

 瑞稀の反応を気にしながら、ちらりとその横顔を盗み見る。

 彼の表情は相変わらず無表情で、何を考えているのか分からない。

 けれど、そんな彼の態度には慣れているから、今更なんとも思わない。

「別に。お前が行きたいとこ行けよ」

 瑞稀はポケットに手を突っ込みながら、ぶっきらぼうに答える。

 彼の不器用な優しさを知っているからこそ、そんな態度にもどこか愛着を感じてしまう。

 瑞稀の言葉の前には、いつも括弧が隠れてる。

 今の言葉だって、

 (俺に気を使わなくていいから)お前が行きたいとこ行けよ。

 ってことなんだと思う。

「そう言うと思った!」

 本人にはそんなこと聞けない。

 頭に花がいっぱい咲いてんだな。
 なんて言われそうだから。

 周囲を見渡していると、ふと目に入ったのは近くの雑貨屋。

 カラフルなディスプレイが目を引き、心が少し弾む。

「じゃあ、あそこ!行ってみよう!」

 勢いよく提案し、瑞稀の方を振り返る。

 瑞稀は肩をすくめながらも黙ってその後をついてきてくれる。

 その何気ない仕草が瑞稀らしかった。

 店内に入ると、目の前に広がるカラフルな小物やインテリアに心を奪われる。

 ふと目に留まったのは、棚に並べられたクマのキーホルダー。

 その愛らしさに思わず手を伸ばし、手に取ってみる。

「これ見て!可愛くない?」

 キーホルダーを瑞稀に向けて見せながら、彼の反応を期待してしまう自分がいる。

 けれど、彼の返事はいつも通りそっけない。

「ふーん」

 やっぱりこんなもんか。と思いながらも、瑞稀の視線が別の棚に留まっているのに気づく。

「それ、気に入ったの?」

 問いかけると、瑞稀はハッとしたように顔を上げる。

「…別に」

 慌てた様子で手にしていたキーホルダーを棚に戻すその仕草が、なんだか分かりやすくて微笑ましい。

 つい笑いながらからかってしまう。

「嘘だ。そういうとこ、ほんと分かりやすいんだから」

 冗談めかして言うと、瑞稀は近くの棚に手を伸ばす。

「ふっ。これなんてお前にそっくりだ」

 その手に収められたのは、ハムスターがほっぺたを膨らませたフィギュア。

 突然の言葉に驚き、思わず彼の顔をじっと見つめる。

「ちょっと!それどういう意味?」

 ほっぺた膨らませたハムスターって。
 私がいつも怒ってるみたいじゃない!

 少しムッとしたように問いかけると、瑞稀は軽く笑みを浮かべながら答える。

「褒めてんだよ」

 その言葉に次第に頬が緩むのを感じる。

 なんだか素直に喜んでしまう自分が恥ずかしい。

「えーほんと?だったらいいけど」

 褒めてるって、ハムスターみたいに可愛いってことか。

 もう、素直じゃないんだからっ。

「チョロいな」

 そうだと思った!
 瑞稀が私のこと褒めてくれるわけないもん!

「やっぱり悪口だったんじゃん!」

 頬を膨らませながら言い返す。

 それでもなんだか楽しくて、笑いが込み上げてくるのを感じた。



 瑞稀のそばにいると、何気ない瞬間でも心が弾んでしまうのだった。
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