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料理がやってくるまで、健太郎さんの説教が始まった。
会社で使用しているパソコンは、社員がどういった状態であるのか管理できるようになっている。オンライン、オフライン、離籍中、取り込み中。それを確認して、電話をしたり問い合わせたりと、作業の効率化のために利用されているのだが。
「タマがオフラインになった。だけど、携帯にメールの返事はない。となれば、心配になるよな?」
「おっしゃる通りです」
健太郎さんからは『何時に帰る予定?』『一緒に帰ろう』『夕飯はどうする?』『待ち合わせの場所は……』と、メッセージがきていたのに、肝心の私は既読スルーではなく、未読のまま。
「それに、俺と結婚する予定があることを会社には報告したのか?」
「いえ……それも、まだです……」
「ということは、妊娠のことも報告していないのだな?」
「はい、申し訳ございません」
健太郎さんはそれ以上、何も言わない。私の視線は目の前のお通しに向けられたまま。怖くて、顔があげられない。
彼が、小さく息を吐いた。
「わかった。俺から、会社に伝えよう」
「……いえ。それだけは……。私が自分で言いますから……」
自分のことなのに、他人に頼るのが嫌だった。それよりも、湾曲して伝わるのも嫌だった。いや、むしろ、健太郎さんが言うことで、いろいろと揉め事がおこるような気もするのだ。
健太郎さんは、また小さくため息をつく。
「俺は、俺との婚約を隠されて怒っているわけじゃない。どちらかというと、君の身体が心配なんだ。今日だって、なんですぐに残業をしている? 休み明け、体調も本調子ではないのだろう?」
「……新人のOJT担当になっておりまして、やっぱり、そこは責任をもって取り組みたいと言いますか……」
「OJT担当を変えてもらえ」
「え?」
「と、言われるのは嫌だろう? だったら無理をせずに、長く続けられる方法を考えろ。初日から飛ばし過ぎだ」
障子戸がすすっと開いて「お待たせしました」と、お義母さまが入ってきた。
「ケンちゃんの声。外まで聞こえていたわ」
「今日は、母さん以外の店員はいないのですか!」
「あら、やだ。このお部屋は、私の担当なのよ」
おほほと、お上品に笑ったお義母さまは、テーブルの上に土鍋を二つ置いた。
「ごゆっくりどうぞ」
「タマ。食べたらさっさと帰るぞ」
「ゆっくりしていけばいいのに」
お義母さまのその言葉に、健太郎さんは眉間にしわを寄せた。
こういう健太郎さんを見るのも、悪くはない。
私のお腹が、グゥと鳴った。土鍋の蓋の隙間から漏れ出るにおいが、先ほどから私のお腹を刺激している。
「お腹空いたので、食べてもいいですか?」
お義母さまは「失礼します」と言って、部屋を出て行った。
その様子を横目で見送った健太郎さんが、土鍋の蓋を開ける。もわもわっと、白い湯気が立ち昇る。
これから暑い夏がやってくるというのに、寒い冬に食べるような料理。私の眼鏡は一気に曇った。
会社で使用しているパソコンは、社員がどういった状態であるのか管理できるようになっている。オンライン、オフライン、離籍中、取り込み中。それを確認して、電話をしたり問い合わせたりと、作業の効率化のために利用されているのだが。
「タマがオフラインになった。だけど、携帯にメールの返事はない。となれば、心配になるよな?」
「おっしゃる通りです」
健太郎さんからは『何時に帰る予定?』『一緒に帰ろう』『夕飯はどうする?』『待ち合わせの場所は……』と、メッセージがきていたのに、肝心の私は既読スルーではなく、未読のまま。
「それに、俺と結婚する予定があることを会社には報告したのか?」
「いえ……それも、まだです……」
「ということは、妊娠のことも報告していないのだな?」
「はい、申し訳ございません」
健太郎さんはそれ以上、何も言わない。私の視線は目の前のお通しに向けられたまま。怖くて、顔があげられない。
彼が、小さく息を吐いた。
「わかった。俺から、会社に伝えよう」
「……いえ。それだけは……。私が自分で言いますから……」
自分のことなのに、他人に頼るのが嫌だった。それよりも、湾曲して伝わるのも嫌だった。いや、むしろ、健太郎さんが言うことで、いろいろと揉め事がおこるような気もするのだ。
健太郎さんは、また小さくため息をつく。
「俺は、俺との婚約を隠されて怒っているわけじゃない。どちらかというと、君の身体が心配なんだ。今日だって、なんですぐに残業をしている? 休み明け、体調も本調子ではないのだろう?」
「……新人のOJT担当になっておりまして、やっぱり、そこは責任をもって取り組みたいと言いますか……」
「OJT担当を変えてもらえ」
「え?」
「と、言われるのは嫌だろう? だったら無理をせずに、長く続けられる方法を考えろ。初日から飛ばし過ぎだ」
障子戸がすすっと開いて「お待たせしました」と、お義母さまが入ってきた。
「ケンちゃんの声。外まで聞こえていたわ」
「今日は、母さん以外の店員はいないのですか!」
「あら、やだ。このお部屋は、私の担当なのよ」
おほほと、お上品に笑ったお義母さまは、テーブルの上に土鍋を二つ置いた。
「ごゆっくりどうぞ」
「タマ。食べたらさっさと帰るぞ」
「ゆっくりしていけばいいのに」
お義母さまのその言葉に、健太郎さんは眉間にしわを寄せた。
こういう健太郎さんを見るのも、悪くはない。
私のお腹が、グゥと鳴った。土鍋の蓋の隙間から漏れ出るにおいが、先ほどから私のお腹を刺激している。
「お腹空いたので、食べてもいいですか?」
お義母さまは「失礼します」と言って、部屋を出て行った。
その様子を横目で見送った健太郎さんが、土鍋の蓋を開ける。もわもわっと、白い湯気が立ち昇る。
これから暑い夏がやってくるというのに、寒い冬に食べるような料理。私の眼鏡は一気に曇った。
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