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本編
どんどんと罠が深まる(10)
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次の日。
一昨日、カリッドに連れていかれた例のお店でドレスというものを着せられ、髪の毛もきれいに結い上げられたモニカは、自分でも目を疑うほどの別人のようになっていた。
「ああ、やはり。私が見立てた通りですわ」
と誰よりも満足しているのは、この店の店員かもしれない。
モニカは鏡に映る自身の全身を舐めるように眺めては、そこから視線を外すことができなかった。一体、この鏡に映っている人物は誰、と。
「モニカ。準備はできたか?」
名を呼ばれ、くるりと振り返ると、そこには正装したカリッドの姿が。
いつもの騎士服とも違い、昨日までの平服までも違い、ぴりっとした正装。それはもうどちらの王子様ですか、と聞きたくなるくらいの。
「行くぞ」
有無を言わさぬ圧をかけてきたその言葉に、モニカは彼の手を取る。
「まあまあ」
と一番喜んでいるのも、恐らくはその店員。
モニカはカリッドと共に馬車に乗り込んだ。さりげなくいるイアンの目が、嬉しそうにニコニコと笑っている。その目はもう「よろしゅうございましたね」と言わんばかりの。
ガタガタと揺れる馬車に乗せられ、モニカはどこへ向かっているのだろうという不安な気持ちが生まれてきた。というのも、この馬車が向かっているのが王宮の方向だからだ。
「あの、リディ。どちらに向かわれているのでしょうか?」
「俺の両親がいるところに決まっているだろう」
そう言われても、その両親がいるところがどこなのか、というのが一番気になるとことでもあるのだが。だから、なぜに王宮の方に向かっているのか、という話。
馬車はその王宮がある敷地内に難なく入り、それでも奥へと進んでいく。止まった場所は。
「俺の両親はここに住んでる」
「ここ?」
王宮の離れにある宮、つまり離宮なのだが。ここに住んでいるような人物と言えば、前国王夫妻しか思い浮かばない。背筋に悪寒が走るというのは、こういう状況を指すのだろうか。よくわからない嫌な感覚が、背骨に沿って上から下へと駆け抜けた。
よくわからないままカリッドに連れていかれた場所にいた人物は、間違いなく前国王夫妻だった。
「久しいな、カリッド」
「ご無沙汰しております、父上、母上。こちらが今、私が結婚を考えている女性、モニカ・ルコティ」
カリッドの言葉に合わせて、モニカは礼をする。
「モニカ・ルコティ、あぁ。リヴァージュの民の長の」
と、前王妃が口にしたとき、カリッドはぎょっとしてモニカを見つめてしまった。
「はい。リヴァージュの長、アンドレイ・ルコティは、私の父です」
その答えに、前王妃はまあまあと喜んでいる。
「まあ、カリッドの相手があなただったとは。こんなに嬉しいことはないわ、ね、あなた」
と前国王夫妻は見つめ合って喜んでいる。もちろん、その話についていけないのが、当事者であるカリッドとモニカの二人。
モニカは、カリッドが前国王の息子だったことを知らなかった。今の国王は知っているが、その国王の弟がカリッドであるということを知らなかった。騎士になるまであの田舎で暮らしていて、王宮の催し物にも参加したようなことのないモニカにとっては、ある一定の有名人は知ってはいるが、その一定以下の人物は知らないということ。だから、前国王に兄弟がいるかとか、そういうところは知らない。今の国王だって、何人兄弟で誰がどこにいるのかっていうのも知らない。
だから、カリッドのことだって知らなかった。
逆にカリッドからしたら、モニカがリヴァーシュの民の長の娘であることを知らなかった。何しろ彼女は平民枠で騎士団に入団している。そういった民の長の子息であれば、本来であれば特別枠だ。
「あら嫌だわ、そんなに二人で見つめ合って。こちらに来て、お話を聞かせてちょうだい」
嬉しそうに微笑んでいる前王妃に呼ばれてしまっては「こちら」に行くしかない。
一昨日、カリッドに連れていかれた例のお店でドレスというものを着せられ、髪の毛もきれいに結い上げられたモニカは、自分でも目を疑うほどの別人のようになっていた。
「ああ、やはり。私が見立てた通りですわ」
と誰よりも満足しているのは、この店の店員かもしれない。
モニカは鏡に映る自身の全身を舐めるように眺めては、そこから視線を外すことができなかった。一体、この鏡に映っている人物は誰、と。
「モニカ。準備はできたか?」
名を呼ばれ、くるりと振り返ると、そこには正装したカリッドの姿が。
いつもの騎士服とも違い、昨日までの平服までも違い、ぴりっとした正装。それはもうどちらの王子様ですか、と聞きたくなるくらいの。
「行くぞ」
有無を言わさぬ圧をかけてきたその言葉に、モニカは彼の手を取る。
「まあまあ」
と一番喜んでいるのも、恐らくはその店員。
モニカはカリッドと共に馬車に乗り込んだ。さりげなくいるイアンの目が、嬉しそうにニコニコと笑っている。その目はもう「よろしゅうございましたね」と言わんばかりの。
ガタガタと揺れる馬車に乗せられ、モニカはどこへ向かっているのだろうという不安な気持ちが生まれてきた。というのも、この馬車が向かっているのが王宮の方向だからだ。
「あの、リディ。どちらに向かわれているのでしょうか?」
「俺の両親がいるところに決まっているだろう」
そう言われても、その両親がいるところがどこなのか、というのが一番気になるとことでもあるのだが。だから、なぜに王宮の方に向かっているのか、という話。
馬車はその王宮がある敷地内に難なく入り、それでも奥へと進んでいく。止まった場所は。
「俺の両親はここに住んでる」
「ここ?」
王宮の離れにある宮、つまり離宮なのだが。ここに住んでいるような人物と言えば、前国王夫妻しか思い浮かばない。背筋に悪寒が走るというのは、こういう状況を指すのだろうか。よくわからない嫌な感覚が、背骨に沿って上から下へと駆け抜けた。
よくわからないままカリッドに連れていかれた場所にいた人物は、間違いなく前国王夫妻だった。
「久しいな、カリッド」
「ご無沙汰しております、父上、母上。こちらが今、私が結婚を考えている女性、モニカ・ルコティ」
カリッドの言葉に合わせて、モニカは礼をする。
「モニカ・ルコティ、あぁ。リヴァージュの民の長の」
と、前王妃が口にしたとき、カリッドはぎょっとしてモニカを見つめてしまった。
「はい。リヴァージュの長、アンドレイ・ルコティは、私の父です」
その答えに、前王妃はまあまあと喜んでいる。
「まあ、カリッドの相手があなただったとは。こんなに嬉しいことはないわ、ね、あなた」
と前国王夫妻は見つめ合って喜んでいる。もちろん、その話についていけないのが、当事者であるカリッドとモニカの二人。
モニカは、カリッドが前国王の息子だったことを知らなかった。今の国王は知っているが、その国王の弟がカリッドであるということを知らなかった。騎士になるまであの田舎で暮らしていて、王宮の催し物にも参加したようなことのないモニカにとっては、ある一定の有名人は知ってはいるが、その一定以下の人物は知らないということ。だから、前国王に兄弟がいるかとか、そういうところは知らない。今の国王だって、何人兄弟で誰がどこにいるのかっていうのも知らない。
だから、カリッドのことだって知らなかった。
逆にカリッドからしたら、モニカがリヴァーシュの民の長の娘であることを知らなかった。何しろ彼女は平民枠で騎士団に入団している。そういった民の長の子息であれば、本来であれば特別枠だ。
「あら嫌だわ、そんなに二人で見つめ合って。こちらに来て、お話を聞かせてちょうだい」
嬉しそうに微笑んでいる前王妃に呼ばれてしまっては「こちら」に行くしかない。
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