大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?

澤谷弥(さわたに わたる)

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5:大好きなお姉さまと隣国へいきます(5)

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 てっきりハンナが起こしてくれるものだと思ったのに、セシリアの顔をのぞいていたのはシオンだった。

「シオンさま?」
「おそよう、セシリア」
「……シオンさま?」

 夢かと思い、セシリアはぱちぱちと瞬く。

「セシリア様。お茶の用意が整っております」

 ハンナの声が聞こえ、そちらに顔を向ける。彼女が言うように、テーブルの上にはお茶とお菓子が並べられていた。

 しかも二人分。

 ハンナが下がったところを見れば、セシリアとハンナの分ではない。つまり、シオンと一緒にということのようだ。

「冷める前にいただこう」

 それでも寝起きのセシリアは、未だに夢か現かわからず。ただシオンの言葉に従うだけ。

「このお菓子は、砂糖は使われていないが。ジャムの甘みと酸味が混じって、うまいぞ?」

 ほら、とシオンが真ん中にジャムが乗ったクッキーをセシリアの前に差し出した。
 セシリアがそれを食べないと次には進まない感じで、彼がその手を引き下げる様子もない。
 仕方なくセシリアは、シオンの手からクッキーをぱくりと食べる。

「んっ! 美味しいです」

 彼が言ったように、ジャムのほのかな酸味が口の中に広がり、セシリアの頭をすっきりとさせる。
 そしてシオンがここにいる事実をやっと受け止めた。

「ところで、シオンさまはどうしてこちらに?」
「なんだよ。おまえに会いに来てやったんだよ」

 その言い方は相変わらずである。

「どうせ、スタンのやつがエレノアにべったりなんだろ? だから、姉離れできていないおまえが寂しがっているんじゃないかと思ってね」

 コンスタッドがエレノアにべったりなのは正しい。だが、後半の姉離れができていないとか、寂しがっているというのは事実と異なる内容だと、セシリアは思っているのだが。

「ここは、コンスタッドさまのお屋敷だから、セシリアは我慢できますよ」
「ほら、我慢するってことは寂しいんだろ?」

 もう一枚、シオンがセシリアにクッキーを差し出した。セシリアも反射的にそれをパクリと食べる。

「やっぱり、砂糖がないとジャムで味付けして甘くするのが一般的ですよね。紅茶にもジャムをいれますし」
「なるほど。紅茶に砂糖を入れれば、紅茶の渋みを感じなくなるのか?」
「やってみますか? モリスがよく紅茶に砂糖をいれて飲んでます。ちょっと待っててください。砂糖を準備しますので」

 セシリアは、持参した砂糖をテーブルの上に置いた。瓶に入れて、きっちりと蓋を閉めてある。

「なんだ? 砂糖を持ち歩いているのか?」

 どこか呆れたように呟くシオンだが、言葉の節々からは「楽しみだ」という気持ちが伝わってきた。
 コンスタッドの言葉を借りれば、シオンは素直じゃない。彼は、喜ぶ気持ちを反対の態度で抑え込んでいるのだ。

「はい。みんなに砂糖の味見をしてもらうために、持ち歩いてます」

 セシリアは瓶の蓋を開け、砂糖をさらさらと皿に移した。
 それをティースプーンですくったシオンは、紅茶の中に入れる。

「モリスはいつもスプーンで二回も入れてるんですよ。砂糖だって、食べすぎたら身体に悪いです。何事も適量です」
「なるほど。つまりセシリアのオススメはスプーン一杯ってことだな?」

 紅茶の中の砂糖をスプーンでぐるぐるとかき回してから、シオンはコクリと紅茶を一口飲んだ。

「うわっ……甘くて、うまい……」

 セシリアも紅茶にティースプーン一杯だけ砂糖を入れた。

 モリスはよくやっているが、セシリアはコーヒー牛乳ばかり飲んでいたから、こうやって砂糖を入れて紅茶を飲むことはなかった。だが、セシリアの謎の記憶が(忘れていた!)とささやく。

 紅茶に砂糖を入れて飲むというのは、何もおかしなことではないらしい。
 砂糖を使ったお菓子、料理を考えようという発想はあったが、今あるものに砂糖を加えるという考えが抜けていたのだ。

「シオンさま……これでもっと砂糖の良さを広めることができるかもしれません!」

 セシリアが紅茶の入ったカップを、トンと置いた。
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