56 / 57
5:大好きなお姉さまと隣国へいきます(6)
しおりを挟む
「シオンさま。お姉さまたちのところに行きましょう! 報告しないと!」
はしゃぐセシリアに対し、シオンはどこか冷めた様子。
「シオンさま?」
「あ~。エレノアたちには、夕食のときにでも伝えればいいんじゃないか?」
どこか棒読みのようなセリフの言い回しに、セシリアは逸る気持ちをぶつける。
「だって、近々、王城に行くんですよ? ロックウェルの王様に砂糖のよさを紹介しなきゃいけないのに……」
コホンとシオンはわざとらしく空咳をした。
「今、エレノアは新しい事業について相談中なんだよ」
そう言えって言ってたな……と呟いたシオンの声が、興奮しているセシリアには届いていない。
「新しい事業? 相談中? 誰とですか?」
「あ~。まあ、その話は置いといて、だな。あ~えぇと……セシリアも王城には来るのか?」
「え? あ、はい。その予定です」
ふ~ん、と言いながら、シオンが紅茶をゴクリと飲む。
「やっぱり、美味いな。これなら、母上にも……」
「あ」
そこでセシリアがぽんと手を叩いた。
「シオンさま。王妃さまに、わたあめを食べてもらいましょう」
「わたあめ……。あの白くてふわふわした砂糖か?」
「はい。モリスがわたあめを作る魔法具を作ってくれたんです。実は、それを持ってきました」
えへへ、とセシリアは自慢げに笑う。
「あれなら、母上も喜ぶかな……」
シオンを出産してから、体調を崩しやすくなった王妃を、彼は常に気にかけている。心のどこかに「もしかして自分が……」という気持ちがあるのかもしれない。
「はい、王妃さまも喜んでくれると思います。だって、ふわふわで甘くて、口の中に入れると溶けて。わたあめって、食べると幸せになりますよね?」
「幸せ……あ……まぁ、そうか。そう、だな……」
何か考えているのか、シオンは歯切れが悪い。
「シオンさま。どうかしましたか?」
「あ、いや……」
そう答えながらもシオンの目はセシリアを見ない。どこか見えない何かを追いかけるような、そんな視線。
「シオンさまは、王妃さまのことが大好きなんですね」
セシリアの突然の言葉に、シオンは「な、何を言って……」と慌て始める。
「セシリアはお母さまが大好きです。今は、離れて暮らしてますけど……。お母さまにはお父さまがいるから、セシリアはお姉さまと一緒に暮らすことにしました」
「じゃあ。エレノアにも、そういった相手が現れたらどうするんだ? エレノアと一緒に暮らすような相手が現れたら」
「う~ん」
いつも悩む問題だ。
エレノアとは一緒にいたい。だけど、最近はその気持ちがセシリアのわがままなのではと思うようになってきたのも事実。
「……そうですね。お姉さまが幸せなら、それでいいです」
「なるほどな。おまえ、前に会ったときより、大人になったな」
シオンがわしゃわしゃとセシリアの頭を撫でた。
「やめてください。髪の毛、ぼさぼさになっちゃいます」
「やっぱりさ、おまえ。十年後にはおれのところにこい。どうせその頃には、エレノアも結婚しているだろ?」
シオンが言うように、十年後にはエレノアも三十歳に近い年齢になっている。
本人に「私は絶対に結婚しません!」という強い意志がない限り、結婚しているはず。むしろ、周囲が結婚するようにと、次から次へと縁談を持ってくるという、それくらいの年齢だ。
「そうですね。お姉さまは、きっと結婚していると……思います……」
その相手はコンスタッドなのだろうか。だが、そうなった場合、ケアード公爵家は誰が継ぐのか。
「だったら、おまえがおれのところに来ても何も問題はないだろ? 十年後だと、セシリアは……」
「十八歳です。だから、アッシュクロフの学園に通っています。卒業したくらい……?」
「よし。学園を卒業したらおれのところに来い!」
「う~ん。それはすぐには返事できません」
「なんでだ!」
セシリアの答えが面白くなかったようで、シオンは不機嫌そうに顔をゆがませる。
「もし、お姉さまとコンスタッドさまが結婚したら、お姉さまはここに来ますよね?」
「まあ、そうなるな」
「てことは、セシリアたちが公爵家を継がなきゃいけないですよね? フェルトンの街のこともありますし……」
「あ~。なるほど、そういうことか」
シオンも納得したというように、大きく頷く。
「わかった。おまえが学園を卒業したら、おれがおまえのところに行く!」
自信満々にそんなことを言われ、セシリアは目を瞬いた。
はしゃぐセシリアに対し、シオンはどこか冷めた様子。
「シオンさま?」
「あ~。エレノアたちには、夕食のときにでも伝えればいいんじゃないか?」
どこか棒読みのようなセリフの言い回しに、セシリアは逸る気持ちをぶつける。
「だって、近々、王城に行くんですよ? ロックウェルの王様に砂糖のよさを紹介しなきゃいけないのに……」
コホンとシオンはわざとらしく空咳をした。
「今、エレノアは新しい事業について相談中なんだよ」
そう言えって言ってたな……と呟いたシオンの声が、興奮しているセシリアには届いていない。
「新しい事業? 相談中? 誰とですか?」
「あ~。まあ、その話は置いといて、だな。あ~えぇと……セシリアも王城には来るのか?」
「え? あ、はい。その予定です」
ふ~ん、と言いながら、シオンが紅茶をゴクリと飲む。
「やっぱり、美味いな。これなら、母上にも……」
「あ」
そこでセシリアがぽんと手を叩いた。
「シオンさま。王妃さまに、わたあめを食べてもらいましょう」
「わたあめ……。あの白くてふわふわした砂糖か?」
「はい。モリスがわたあめを作る魔法具を作ってくれたんです。実は、それを持ってきました」
えへへ、とセシリアは自慢げに笑う。
「あれなら、母上も喜ぶかな……」
シオンを出産してから、体調を崩しやすくなった王妃を、彼は常に気にかけている。心のどこかに「もしかして自分が……」という気持ちがあるのかもしれない。
「はい、王妃さまも喜んでくれると思います。だって、ふわふわで甘くて、口の中に入れると溶けて。わたあめって、食べると幸せになりますよね?」
「幸せ……あ……まぁ、そうか。そう、だな……」
何か考えているのか、シオンは歯切れが悪い。
「シオンさま。どうかしましたか?」
「あ、いや……」
そう答えながらもシオンの目はセシリアを見ない。どこか見えない何かを追いかけるような、そんな視線。
「シオンさまは、王妃さまのことが大好きなんですね」
セシリアの突然の言葉に、シオンは「な、何を言って……」と慌て始める。
「セシリアはお母さまが大好きです。今は、離れて暮らしてますけど……。お母さまにはお父さまがいるから、セシリアはお姉さまと一緒に暮らすことにしました」
「じゃあ。エレノアにも、そういった相手が現れたらどうするんだ? エレノアと一緒に暮らすような相手が現れたら」
「う~ん」
いつも悩む問題だ。
エレノアとは一緒にいたい。だけど、最近はその気持ちがセシリアのわがままなのではと思うようになってきたのも事実。
「……そうですね。お姉さまが幸せなら、それでいいです」
「なるほどな。おまえ、前に会ったときより、大人になったな」
シオンがわしゃわしゃとセシリアの頭を撫でた。
「やめてください。髪の毛、ぼさぼさになっちゃいます」
「やっぱりさ、おまえ。十年後にはおれのところにこい。どうせその頃には、エレノアも結婚しているだろ?」
シオンが言うように、十年後にはエレノアも三十歳に近い年齢になっている。
本人に「私は絶対に結婚しません!」という強い意志がない限り、結婚しているはず。むしろ、周囲が結婚するようにと、次から次へと縁談を持ってくるという、それくらいの年齢だ。
「そうですね。お姉さまは、きっと結婚していると……思います……」
その相手はコンスタッドなのだろうか。だが、そうなった場合、ケアード公爵家は誰が継ぐのか。
「だったら、おまえがおれのところに来ても何も問題はないだろ? 十年後だと、セシリアは……」
「十八歳です。だから、アッシュクロフの学園に通っています。卒業したくらい……?」
「よし。学園を卒業したらおれのところに来い!」
「う~ん。それはすぐには返事できません」
「なんでだ!」
セシリアの答えが面白くなかったようで、シオンは不機嫌そうに顔をゆがませる。
「もし、お姉さまとコンスタッドさまが結婚したら、お姉さまはここに来ますよね?」
「まあ、そうなるな」
「てことは、セシリアたちが公爵家を継がなきゃいけないですよね? フェルトンの街のこともありますし……」
「あ~。なるほど、そういうことか」
シオンも納得したというように、大きく頷く。
「わかった。おまえが学園を卒業したら、おれがおまえのところに行く!」
自信満々にそんなことを言われ、セシリアは目を瞬いた。
327
あなたにおすすめの小説
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。
乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。
そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。
(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる