大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?

澤谷弥(さわたに わたる)

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2:大好きなお姉さまとひきこもります(8)

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「フェルトンの街は、娘のエレノアが領主代理としてまとめることになる。だが、見たとおり娘は若く、なによりも女性だ。今の話を聞く限りでは、きっと街の人たちに舐められてしまうだろう」

 ボリスはよりいっそう身体を丸める。耳が痛いとでも言うかのよう。

「だから会長には娘の協力者、味方になってもらいたい」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。このさとうきび、とても素晴らしいです。これほどまで甘いものを食べたことがありません」
「さとうきびの汁ですが、そのまま料理に使うこともできます。ただ液体ですとどうしても保存には向きません。だからわたくしたちは、さとうきびから保存できる甘味料、砂糖を作ります」
「砂糖、ですか? さとうきびだから?」

 残念ながらセシリアも砂糖の由来は知らない。謎の記憶も静かである。
 ボリスの問いに「そうですね」と笑顔で答えているエレノアはさすがだ。

「その砂糖を作るのに、先ほども言ったように教会の人間に協力を頼みます。できるだけ彼らの負担にならないよう、体力にあった作業をお願いするつもりです」

 ボリスはうんうんと頷きながら、話を聞いている。

「教会に関しましては、私のほうでも後押しさせていただきます。まぁ、そのくらいしか役に立ちませんので……」

 そんなボリスの様子を見れば、商会に所属している他の者がどういった人物が多いのかというのは、容易に想像がつく。

「だが会長。そうは言っても、この砂糖作りはフェルトンの街をささえる事業としてやっていきたい。だから近いうちに商会に所属する者も紹介しいてもらいたいのだが」
「は、はい。それはもちろんでございます」

 そこでケアード公爵とボリスは、商会会員との顔合わせの日のすりあわせを行った。
 また、砂糖作りの初期については、教会にいる子どもたちの手を借りることでまとまった。できあがった砂糖を商会の人たちにも見てもらい、そこで勝負をかける。

 エレノアもほっと安心したのか、カップに手を伸ばしてお茶を飲んだ。だが、すぐに変な顔をした。

「お姉さま、このお茶、苦いですよね」
「せ、セシリア!」

 失礼なことを言わないの。
 エレノアの心の声が聞こえるほどの表情だった。

「申し訳ありません。この街のお茶なのですが、やはりこ……若い方には苦いですよね。お茶というよりは、豆を煎って砕いたものに湯を注いだものでして……」

 ボリスが子どもと言いかけて、若い方と言い直したのは変な顔のエレノアが視界に入ったからだろう。セシリアだけだったら子どもと言っていたはずだ。

「会長さん、牛乳はありますか?」

 セシリアが尋ねると、ボリスは目を大きく見開いてから「ありますよ」と笑みを浮かべる。

「やはり、苦いお茶よりはホットミルクのほうがよろしかったですね。気が回らずに申し訳ありません」
「冷たい牛乳で大丈夫です」

 セシリアたちを案内してくれたあの女性が、グラスに入った牛乳を二つ用意してくれた。
 ちなみにエレノアは牛乳が苦手である。なぜかセシリアを軽く睨みつけてきた。

「牛乳をこの苦いお茶にいれます。それから、さとうきびをください」

 少しだけお茶を飲んでしまったから、カップには六分目ほどのお茶が残っている。そこに牛乳を注いだ。
 さとうきびはエレノアが手渡してくれたので、それをカップの上にかかげる。

「精霊さん、精霊さん。さとうきびをぎゅっとしぼってくださいな」

 魔法は精霊の気まぐれ。そしてセシリアはまだ特定の精霊と契約をしていない。そして生活魔法はその辺にいる精霊の力を借りるとされている。

 特定の精霊と契約している両親やエレノアは指パッチンで周辺の精霊に指示を出すことができるが、幼いセシリアはこうやって言葉にしないと精霊に伝わらない。つまり詠唱を必要とする。これで魔法が使えなければ、周囲にいる精霊が反応しなかった、もしくは無視をしたということになり、魔力の弱い者は無視されることが多い。

 ぽた、ぽた、とさとうきびから液体がこぼれ、カップの中に落ちた。ほどよく入ったところで「おしまい」と言う。

 セシリアは、苦いお茶と牛乳とさとうきびの汁の入った謎の飲み物を作り上げた。

「なに、それ……」

 エレノアが心配そうに見つめてくる。

「お茶が苦いので牛乳でまろやかにして、さとうきびで甘くしました」

 セシリアがごくっと飲む。

(やっぱり……この苦いお茶はコーヒーだったのね。牛乳と砂糖を入れたからコーヒー牛乳ができたわ)

 そこにいる誰もが、怪しげな飲み物を美味しそうに飲むセシリアに視線を向けた。

「ぷはっ」
「セシリア」

 母親に名を呼ばれて「はい?」と首を傾げる。

「茶色のおひげがついていますよ」

 恥ずかしくなって、慌てて手巾で口元をぬぐう。

「わたくしも、試してみようかしら……」

 エレノアがぼそりと呟くと、父親も興味を持ったのか牛乳を注ぎ、さとうきびをたらす。もちろん母親も同じように真似をする。

「あの……私にも……」

 ボリスも遠慮がちに言うので、牛乳を注いでさとうきびをぎゅっとしぼったのは、セシリアだった。

「会長さん、どうぞ。セシリアでも飲めました。美味しいですよ」

 笑顔で言うと、ボリスの顔もほころんだ。
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