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2:大好きなお姉さまとひきこもります(12)
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さとうきびの汁をコンロにかけたところで昼食の時間になった。その間、ケビンが火を見てくれるというので、子どもたちと神父夫婦、ケアード公爵一家は一緒に食事をとった。
神父は子どもたちからは「先生」と呼ばれている。そして夫人は先生の奥さんという意味で「奥さん」だそうだ。
教会というのも名ばかりで、擁護院といった役割が大きいのだろう。
「どうだった? 子どもたちは」
神父夫妻と話をしていた父親は、娘たちの様子が気になっていたのだ。
「ええ、砂糖作りに興味をもってもらえたと思います。ですが、やはりさとうきびの汁を搾り出す過程が手作業では大変ですね。力も必要ですし」
「……なるほど」
昼食はケアード公爵家が用意したものだ。パンに具材を挟んだものだが、具材もパンもテーブルの上に並べて、自分で好きなものを挟んで食べる方式にした。
それから、砂糖を少しだけ混ぜたホットミルク。子どもたちには好評である。
「その件は、考えてはいるんだ。領地にいる職人に道具を作ってもらおうと思っている。そして、魔石を使う」
魔石とは魔力が込められた石のことで、自然界に存在する資源の一つ。幸いなことに、ケアード公爵は魔石が採掘できる鉱山を有している。
「魔石を使えば、魔石に反応して精霊の力――すなわち魔法が使える。魔石を動力として、砂糖のための道具を作れば、子どもたちの作業も楽になるだろう?」
「ええ、そうですね。素晴らしいです、お父様」
「だから、どのような道具が必要なのか、具体的な案を出してほしい」
「わかりました」
コクリと頷いたエレノアはホットミルクを飲む。牛乳が苦手なエレノアだというのに、砂糖を入れたら美味しいと言う。
「それから、せっかくだから砂糖をアグルル会長にも味見をしてもらおうと思っている。商会メンバーとの顔合わせがあるからな。そのときに、いくらか砂糖を用意できるといいのだが……」
「ええ、でしたら子どもたちが作った砂糖を是非。そのときには教会の子どもたちが作ったことをアピールしたいのです」
「それはいい。子どもたちでも作れることがわかれば、街の事業としても提案しやすいな」
そうですね、とエレノアも安堵の笑みを浮かべる。
「セシリアはおとなしいのね?」
もそもそとパンを食べているセシリアに、母親が声をかけてきた。
「それがですね、お母様。聞いてください」
エレノアがそう言って母親の耳元に口を近づける様子を見たセシリアは「お姉さま、内緒にしてください」と唇を尖らせる。
「あら? 子どもたちとは仲良くできなかったのかしら?」
「違うんですよ、お母様。セシリアと仲良くしたいと思っている子が、セシリアをいじめているのです。あの子、本当はセシリアと遊びたいのよ」
あの行為のどこに「仲良くしたい」という気持ちが隠れているのか、セシリアにはさっぱりわからない。
「なるほどね。セシリア、男の子とはそういうものよ」
エレノアは仲良くしたいと思っている子が、男女どちらであるかを口にしていなかったはずだ。しかし母親は男の子だと断言してきた。
「男の子とは、なぜか気の引きたい女の子にいたずらをしてしまうものなの。それを受け流す余裕のある心を持ちなさい。あなたたちのお父様も昔は……」
「ゴホッゴホッ」
いきなり父親が咽た。
「お父さま、大丈夫ですか?」
セシリアが心配して、水の入ったグラスを父親へと手渡す。
「あ、あぁ……ありがとう、セシリア……はぁ……」
公爵がじろりと夫人を睨んだが、睨まれた本人はツンとすましている。
「そういうことみたいよ、セシリア」
こそっとエレノアがささやいたので「わかりました」と答える。
昼食が終われば砂糖作りの再開だ。甘いにおいが建物の中に充満し始め、子どもたちの顔もどことなく嬉しそう。
だが、幼い子たちはお腹もいっぱいになったのか、うつらうつらとし始める。そんな子どもたちを寝かしつけるのは最年長のキャシーの役目。
残された子どもたちは、砂糖ができあがるのを今か今かと待っていた。
「そろそろいいかしら?」
昨日と同じように黒い塊ができたところで、鍋を火から下ろす。
「砂糖ができました。みんなで味見をしましょう。でも、熱いから気をつけてくださいね」
エレノアの言葉に子どもたちがわっと寄ってきた。砂糖がほどよく冷めたところで、小指の爪程度の塊を、一人一人に配り始めた。
「塊のままでもいいのですが、あとはこれを細かく砕きます。それで砂糖の完成です。そこでみなさんに考えてほしいことがあります」
エレノアの問いかけに、子どもたちは興味津々。
「このお砂糖を使って、どんな料理を作りたいか考えてみてください。もちろんお菓子でもかまいません。そして一緒に作りましょう」
子どもたちが「はい」と元気よく答えた。
エレノアには人を惹きつける魅力があるのだ。
子どもたちの心をすっかりと掴んだエレノアを、セシリアは誇らしく思った。
神父は子どもたちからは「先生」と呼ばれている。そして夫人は先生の奥さんという意味で「奥さん」だそうだ。
教会というのも名ばかりで、擁護院といった役割が大きいのだろう。
「どうだった? 子どもたちは」
神父夫妻と話をしていた父親は、娘たちの様子が気になっていたのだ。
「ええ、砂糖作りに興味をもってもらえたと思います。ですが、やはりさとうきびの汁を搾り出す過程が手作業では大変ですね。力も必要ですし」
「……なるほど」
昼食はケアード公爵家が用意したものだ。パンに具材を挟んだものだが、具材もパンもテーブルの上に並べて、自分で好きなものを挟んで食べる方式にした。
それから、砂糖を少しだけ混ぜたホットミルク。子どもたちには好評である。
「その件は、考えてはいるんだ。領地にいる職人に道具を作ってもらおうと思っている。そして、魔石を使う」
魔石とは魔力が込められた石のことで、自然界に存在する資源の一つ。幸いなことに、ケアード公爵は魔石が採掘できる鉱山を有している。
「魔石を使えば、魔石に反応して精霊の力――すなわち魔法が使える。魔石を動力として、砂糖のための道具を作れば、子どもたちの作業も楽になるだろう?」
「ええ、そうですね。素晴らしいです、お父様」
「だから、どのような道具が必要なのか、具体的な案を出してほしい」
「わかりました」
コクリと頷いたエレノアはホットミルクを飲む。牛乳が苦手なエレノアだというのに、砂糖を入れたら美味しいと言う。
「それから、せっかくだから砂糖をアグルル会長にも味見をしてもらおうと思っている。商会メンバーとの顔合わせがあるからな。そのときに、いくらか砂糖を用意できるといいのだが……」
「ええ、でしたら子どもたちが作った砂糖を是非。そのときには教会の子どもたちが作ったことをアピールしたいのです」
「それはいい。子どもたちでも作れることがわかれば、街の事業としても提案しやすいな」
そうですね、とエレノアも安堵の笑みを浮かべる。
「セシリアはおとなしいのね?」
もそもそとパンを食べているセシリアに、母親が声をかけてきた。
「それがですね、お母様。聞いてください」
エレノアがそう言って母親の耳元に口を近づける様子を見たセシリアは「お姉さま、内緒にしてください」と唇を尖らせる。
「あら? 子どもたちとは仲良くできなかったのかしら?」
「違うんですよ、お母様。セシリアと仲良くしたいと思っている子が、セシリアをいじめているのです。あの子、本当はセシリアと遊びたいのよ」
あの行為のどこに「仲良くしたい」という気持ちが隠れているのか、セシリアにはさっぱりわからない。
「なるほどね。セシリア、男の子とはそういうものよ」
エレノアは仲良くしたいと思っている子が、男女どちらであるかを口にしていなかったはずだ。しかし母親は男の子だと断言してきた。
「男の子とは、なぜか気の引きたい女の子にいたずらをしてしまうものなの。それを受け流す余裕のある心を持ちなさい。あなたたちのお父様も昔は……」
「ゴホッゴホッ」
いきなり父親が咽た。
「お父さま、大丈夫ですか?」
セシリアが心配して、水の入ったグラスを父親へと手渡す。
「あ、あぁ……ありがとう、セシリア……はぁ……」
公爵がじろりと夫人を睨んだが、睨まれた本人はツンとすましている。
「そういうことみたいよ、セシリア」
こそっとエレノアがささやいたので「わかりました」と答える。
昼食が終われば砂糖作りの再開だ。甘いにおいが建物の中に充満し始め、子どもたちの顔もどことなく嬉しそう。
だが、幼い子たちはお腹もいっぱいになったのか、うつらうつらとし始める。そんな子どもたちを寝かしつけるのは最年長のキャシーの役目。
残された子どもたちは、砂糖ができあがるのを今か今かと待っていた。
「そろそろいいかしら?」
昨日と同じように黒い塊ができたところで、鍋を火から下ろす。
「砂糖ができました。みんなで味見をしましょう。でも、熱いから気をつけてくださいね」
エレノアの言葉に子どもたちがわっと寄ってきた。砂糖がほどよく冷めたところで、小指の爪程度の塊を、一人一人に配り始めた。
「塊のままでもいいのですが、あとはこれを細かく砕きます。それで砂糖の完成です。そこでみなさんに考えてほしいことがあります」
エレノアの問いかけに、子どもたちは興味津々。
「このお砂糖を使って、どんな料理を作りたいか考えてみてください。もちろんお菓子でもかまいません。そして一緒に作りましょう」
子どもたちが「はい」と元気よく答えた。
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