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3:大好きなお姉さまに新しい出会いがありました(6)
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さとうきび畑の次は、教会に向かう。
「ああ、あの建物だよ。私が、目印にして向かおうとしていたところは、教会だったのか……」
財布をすられて無一文になったモリスは、とにかく建物が見えるほうに向かって歩いていたらしい。教会は商会館の裏側に建っていて、真っすぐに伸びる尖塔が目立つ。だが、その教会にたどり着く前にモリスは力尽きた。
「なんか甘い匂いがするね」
教会に近づくにつれ、砂糖の甘い匂いに包まれる。
「そうなんです。この匂いも美味しい匂いだから、まだいいんですけど……本当は、よくないですよね。こうやって、作っている場所の外にも匂いとか音とかが漏れてしまうのが問題だって、お姉さまが言っていました」
「だから、専用の工場を作るってことね……」
これから砂糖を作る量も増える。それが実現できるようにと魔法具まで開発している。
セシリアとしては、魔法具を使って白い砂糖を作りたいのだ。だから、オリバーには遠心分離機を作るようにお願いした。もちろん遠心分離機なんて誰も知らない。セシリアの謎記憶を頼りにエレノアが絵を描いたうえで「遠心力を使うのね」なんて、彼女はすぐに理解した。
とにかく今はまだ、黒い砂糖しか作っていない。黒い砂糖も栄養たっぷりで美味しいが、白い砂糖はくせもなく、さまざまな料理に利用しやすいのだ。
「あ、セシリアだ」
「げっ」
教会に入る前に、外で作業をしていたマイクに見つかってしまった。
「はっは~ん、なるほどなるほど?」
セシリアとマイクのやりとりを見たモリスは、意味深な笑みを浮かべる。
「セシリア、その人、誰?」
「マイク! セシリア様に失礼でしょ」
「いてっ。だからキャシーには嫁のもらい手が現れないんだよ」
ぽかっとマイクの頭を叩くキャシーは慣れたものだ。小突いただけだというのに、マイクが大げさに痛がってみせる。
「今日はエレノア様と一緒じゃないんだな。ところで、隣のおばさん誰?」
ひゅっと周囲の空気が冷たくなった。体感的に五度くらい下がったような感じがする。
「も、モリス……顔、怖い……」
思わずセシリアがそう呟いてしまうほど、モリスの表情がガラッと変わっていた。
「おばさん、だって? このモリス様をそう呼んだのは、どこのどいつの悪ガキだい?」
このメンバーの中で、悪ガキに該当しそうな人間は一人しかいない。
「ご、ご、ごめんなさい。きれいなお姉さん。きれいなお姉さんは、セシリアとどういう関係ですか?」
あのマイクがすっかりと怯えている。
「素直な子は好きだよ。私はモリス。セシリアに魔法を教えることになったんだ」
「そうです。モリスはセシリアの魔法の先生です。さとうきび畑の管理もお願いしたので、これからはじゃんじゃんさとうきびが育ちます」
なんとも表現しがたい微妙な空気が流れていることに、セシリアも敏感に感じ取った。だからその場の雰囲気をなんとか変えようとしてみたのだ。
「キャシーさん、先生はいますか? 先生にもモリスを紹介したいです」
「はい、書斎にいると思います。奥さんは、食堂で砂糖を作っていますが」
マイクは誰かに呼ばれて向こうにいった。これからさとうきびの汁をしぼるようだ。マイクは力も強く活発だから、さとうきびの汁をしぼる仕事を担当している。さらに教会では子どもたち以外も、砂糖作りに携わっている。だからちらほらと大人の姿も見えるのだ。
もはや教会という名の、砂糖作り工場である。
セシリアは教会の中に入り、ここでの作業についてモリスに説明する。基本的には分業で行われ、それぞれの工程ごとに現場をとりまとめる代表を決めている。
代表は成人した大人が務め、子どもたちは自分でできる範囲でできる作業を行う。その作業は主に午前中に行われ、午後からは勉強の時間に充てられていた。だから子どもたちも、二か月前にあったときよりも読み書きができるようになっている。
「こんにちは、先生」
セシリアも教会の子たちの影響もあって、ドイル神父を先生と呼ぶ。
「これはこれは、セシリア様。今日はどうされましたか? エレノア様は一緒ではないのですね?」
たいていセシリアが教会を訪れるときは、エレノアが一緒だ。むしろセシリアが一人で教会に足を運んだのは、今日が初めてかもしれない。
「はい。お姉さまは、領主館でお仕事をしています。今日は先生に紹介したい人がいるのでつれてきました。こちら、モリスです。セシリアの魔法の先生で、さとうきび畑の管理をしてもらいます。さとうきびの育ち方とか、土の状態とかを見てくれる人です」
そこでドイル神父もモリスに向かってあいさつをする。
「ケアード公爵領になってから、子どもたちもお腹いっぱい食事ができるようになり、こうやって仕事も与えていただき……本当に感謝しているのです」
ドイル神父の話を、モリスは黙って聞いていた。今は明るく振る舞っている子どもたちが、二か月前まではどんよりと表情を曇らせていたことなど、きっとモリスにはわからないだろう。それだけ子どもたちの表情も晴れやかになったのだ。
最後に隣に建てている砂糖工場も見学して帰ってきた。工場はあと十日もすれば完成するとのこと。一か月後には本格稼働が目指せるだろう。
「ああ、あの建物だよ。私が、目印にして向かおうとしていたところは、教会だったのか……」
財布をすられて無一文になったモリスは、とにかく建物が見えるほうに向かって歩いていたらしい。教会は商会館の裏側に建っていて、真っすぐに伸びる尖塔が目立つ。だが、その教会にたどり着く前にモリスは力尽きた。
「なんか甘い匂いがするね」
教会に近づくにつれ、砂糖の甘い匂いに包まれる。
「そうなんです。この匂いも美味しい匂いだから、まだいいんですけど……本当は、よくないですよね。こうやって、作っている場所の外にも匂いとか音とかが漏れてしまうのが問題だって、お姉さまが言っていました」
「だから、専用の工場を作るってことね……」
これから砂糖を作る量も増える。それが実現できるようにと魔法具まで開発している。
セシリアとしては、魔法具を使って白い砂糖を作りたいのだ。だから、オリバーには遠心分離機を作るようにお願いした。もちろん遠心分離機なんて誰も知らない。セシリアの謎記憶を頼りにエレノアが絵を描いたうえで「遠心力を使うのね」なんて、彼女はすぐに理解した。
とにかく今はまだ、黒い砂糖しか作っていない。黒い砂糖も栄養たっぷりで美味しいが、白い砂糖はくせもなく、さまざまな料理に利用しやすいのだ。
「あ、セシリアだ」
「げっ」
教会に入る前に、外で作業をしていたマイクに見つかってしまった。
「はっは~ん、なるほどなるほど?」
セシリアとマイクのやりとりを見たモリスは、意味深な笑みを浮かべる。
「セシリア、その人、誰?」
「マイク! セシリア様に失礼でしょ」
「いてっ。だからキャシーには嫁のもらい手が現れないんだよ」
ぽかっとマイクの頭を叩くキャシーは慣れたものだ。小突いただけだというのに、マイクが大げさに痛がってみせる。
「今日はエレノア様と一緒じゃないんだな。ところで、隣のおばさん誰?」
ひゅっと周囲の空気が冷たくなった。体感的に五度くらい下がったような感じがする。
「も、モリス……顔、怖い……」
思わずセシリアがそう呟いてしまうほど、モリスの表情がガラッと変わっていた。
「おばさん、だって? このモリス様をそう呼んだのは、どこのどいつの悪ガキだい?」
このメンバーの中で、悪ガキに該当しそうな人間は一人しかいない。
「ご、ご、ごめんなさい。きれいなお姉さん。きれいなお姉さんは、セシリアとどういう関係ですか?」
あのマイクがすっかりと怯えている。
「素直な子は好きだよ。私はモリス。セシリアに魔法を教えることになったんだ」
「そうです。モリスはセシリアの魔法の先生です。さとうきび畑の管理もお願いしたので、これからはじゃんじゃんさとうきびが育ちます」
なんとも表現しがたい微妙な空気が流れていることに、セシリアも敏感に感じ取った。だからその場の雰囲気をなんとか変えようとしてみたのだ。
「キャシーさん、先生はいますか? 先生にもモリスを紹介したいです」
「はい、書斎にいると思います。奥さんは、食堂で砂糖を作っていますが」
マイクは誰かに呼ばれて向こうにいった。これからさとうきびの汁をしぼるようだ。マイクは力も強く活発だから、さとうきびの汁をしぼる仕事を担当している。さらに教会では子どもたち以外も、砂糖作りに携わっている。だからちらほらと大人の姿も見えるのだ。
もはや教会という名の、砂糖作り工場である。
セシリアは教会の中に入り、ここでの作業についてモリスに説明する。基本的には分業で行われ、それぞれの工程ごとに現場をとりまとめる代表を決めている。
代表は成人した大人が務め、子どもたちは自分でできる範囲でできる作業を行う。その作業は主に午前中に行われ、午後からは勉強の時間に充てられていた。だから子どもたちも、二か月前にあったときよりも読み書きができるようになっている。
「こんにちは、先生」
セシリアも教会の子たちの影響もあって、ドイル神父を先生と呼ぶ。
「これはこれは、セシリア様。今日はどうされましたか? エレノア様は一緒ではないのですね?」
たいていセシリアが教会を訪れるときは、エレノアが一緒だ。むしろセシリアが一人で教会に足を運んだのは、今日が初めてかもしれない。
「はい。お姉さまは、領主館でお仕事をしています。今日は先生に紹介したい人がいるのでつれてきました。こちら、モリスです。セシリアの魔法の先生で、さとうきび畑の管理をしてもらいます。さとうきびの育ち方とか、土の状態とかを見てくれる人です」
そこでドイル神父もモリスに向かってあいさつをする。
「ケアード公爵領になってから、子どもたちもお腹いっぱい食事ができるようになり、こうやって仕事も与えていただき……本当に感謝しているのです」
ドイル神父の話を、モリスは黙って聞いていた。今は明るく振る舞っている子どもたちが、二か月前まではどんよりと表情を曇らせていたことなど、きっとモリスにはわからないだろう。それだけ子どもたちの表情も晴れやかになったのだ。
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