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4:大好きなお姉さまが狙われているようです(12)
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エレノアはにっこりと微笑む。
「セシリア。落ち着きなさい」
「落ち着けません、お姉さま」
先ほどから心はふわふわと浮いている。
「お姉さまがロックウェルに行くってどういうことですか?」
「どういうことって、そういうことね。ロックウェルで砂糖を作らせるのであれば、誰か指導者を派遣しなければならないでしょう? そう考えたときに、やはりわたくしが行って、事業の説明をしたうえで、作り方などを指導するのがいいのかなと思ったの」
その話を聞いたときのセシリアは、きっと間抜けな顔をしていたはずだ。口もぽかんと開けて、まばたきもしないくらいにエレノアを凝視していた。
カタン、と馬車が動き出す。それでも馬車の中は静まり返っていた。
「まぁ、かわいい顔が台なしよ?」
エレノアはいつもと変わらぬ口調で、セシリアの頬をなでる。
「お、お、お姉さまがロックウェルに行ったら、フェルトンはどうなるんですか!」
「こちらは問題ないわよ? 工場の稼働も安定しているし、工場長も商会長もいるしね。さとうきび畑にはモリスだっているでしょう? だから何も心配はないわ」
「……でも、セシリアは、お姉さまと離れたくありません!」
勝手に出てくる涙を堪えようとすると、鼻の奥がツンと痛む。
「ええ、だったらセシリアも一緒に行く? どうしようか悩んでいたのだけれど」
「へ?」
驚きのあまり、こぼれそうになった涙はぎりぎりのところで踏みとどまる。
「だって、指導といっても一年も二年もいるわけではないもの。大事なことを伝えれば、あとは他の職人がなんとかしてくれるでしょう? 長くても十日くらいかしら? それに、ロックウェルでの工場が稼働するまでは、まだまだ時間もかかるしね。それまではこちらに来てもらって、技術を習得してもらおうと思っているの」
セシリアは、涙がこぼれないようにと、何度もパチパチと瞬く。
「ごめんなさいね、セシリア。驚かせてしまったみたいね。でも、わたくしはロックウェルに行ってみたいの。この国から出たことがないから、やはり他にも足を運んで、知見を広めたいのよ。もちろん、セシリアも一緒にというのなら、大歓迎よ? わたくしも、あなたがいたほうが心強いもの」
「い、行きます! セシリアもお姉さまと一緒にロックウェルに行きます」
ケアード姉妹の話を黙って聞いていたコンスタッドは、これが絶好の機会と言わんばかりに口を開く。
「エレノア嬢、その際は、是非、我が家に滞在ください」
「考えておきます」
エレノアの返事は早かった。
このやりとりを見たシオンは、くすくすと笑いをこぼす。
だがそれによって、馬車内にはやっと和やかな空気が流れ始めた。
「あ、でも。モリスはどうしますか? モリスはセシリアの魔法の先生です」
「魔法の先生ったって、四六時中べったりしているわけではないだろ? 少しくらい、離れたっていいんじゃないのか?」
シオンが言うように、モリスはセシリアにべったりとくっついているわけではない。何よりも、昼前は寝ている。
だから気まぐれに「火をつけて」「土を掘って」「花を揺らして」「水を凍らせて」と、そんなことを言ってくる。これらは生活魔法だ。通りすがりの精霊の力を借りる魔法。
それでもすぐにセシリアが魔法を使えないでいると、モリスが口の中で何かを呟くだけで、その魔法が発動する。そしてその一連の流れの繰り返し。
だからモリスから魔法を教えてもらうと言っても、何かを定期的にするというのはないのだ。
基本的にはモリスが思い立ったとき。
「モリスにはきちんとお話をして、離れている間にどのような練習や勉強をしたらいいかを聞いておけばいいのよ。さっきも言ったように一年も離れるわけじゃないんだから」
「モリス……セシリアがいなくても、ここにいてくれますかね?」
「どういうこと?」
「だってモリスは王都に行こうとしていたんですよね? 精霊の導きで新しい弟子を探すためにアッシュクロフに来たって……」
その途中でセシリアに会ったのだ。モリスはセシリアの魔力が面白いとは言ってくれたが、セシリアが精霊の導きの相手かどうかはわからない。
セシリアがロックウェルに行ってしまったからって、フェルトンの街を出ていかれたら困る。
「そうね。モリスの当初の目的はそうだったかもしれない。だけど今、モリスには畑の管理という仕事を与えているの。彼女はその仕事を放り出して、どこかへ行くような人ではないと思うけど?」
「それに、あのばばぁなら、食べ物で釣っておけばいい」
セシリアを励ますかのように、シオンがからりと明るく言った。
「セシリア。落ち着きなさい」
「落ち着けません、お姉さま」
先ほどから心はふわふわと浮いている。
「お姉さまがロックウェルに行くってどういうことですか?」
「どういうことって、そういうことね。ロックウェルで砂糖を作らせるのであれば、誰か指導者を派遣しなければならないでしょう? そう考えたときに、やはりわたくしが行って、事業の説明をしたうえで、作り方などを指導するのがいいのかなと思ったの」
その話を聞いたときのセシリアは、きっと間抜けな顔をしていたはずだ。口もぽかんと開けて、まばたきもしないくらいにエレノアを凝視していた。
カタン、と馬車が動き出す。それでも馬車の中は静まり返っていた。
「まぁ、かわいい顔が台なしよ?」
エレノアはいつもと変わらぬ口調で、セシリアの頬をなでる。
「お、お、お姉さまがロックウェルに行ったら、フェルトンはどうなるんですか!」
「こちらは問題ないわよ? 工場の稼働も安定しているし、工場長も商会長もいるしね。さとうきび畑にはモリスだっているでしょう? だから何も心配はないわ」
「……でも、セシリアは、お姉さまと離れたくありません!」
勝手に出てくる涙を堪えようとすると、鼻の奥がツンと痛む。
「ええ、だったらセシリアも一緒に行く? どうしようか悩んでいたのだけれど」
「へ?」
驚きのあまり、こぼれそうになった涙はぎりぎりのところで踏みとどまる。
「だって、指導といっても一年も二年もいるわけではないもの。大事なことを伝えれば、あとは他の職人がなんとかしてくれるでしょう? 長くても十日くらいかしら? それに、ロックウェルでの工場が稼働するまでは、まだまだ時間もかかるしね。それまではこちらに来てもらって、技術を習得してもらおうと思っているの」
セシリアは、涙がこぼれないようにと、何度もパチパチと瞬く。
「ごめんなさいね、セシリア。驚かせてしまったみたいね。でも、わたくしはロックウェルに行ってみたいの。この国から出たことがないから、やはり他にも足を運んで、知見を広めたいのよ。もちろん、セシリアも一緒にというのなら、大歓迎よ? わたくしも、あなたがいたほうが心強いもの」
「い、行きます! セシリアもお姉さまと一緒にロックウェルに行きます」
ケアード姉妹の話を黙って聞いていたコンスタッドは、これが絶好の機会と言わんばかりに口を開く。
「エレノア嬢、その際は、是非、我が家に滞在ください」
「考えておきます」
エレノアの返事は早かった。
このやりとりを見たシオンは、くすくすと笑いをこぼす。
だがそれによって、馬車内にはやっと和やかな空気が流れ始めた。
「あ、でも。モリスはどうしますか? モリスはセシリアの魔法の先生です」
「魔法の先生ったって、四六時中べったりしているわけではないだろ? 少しくらい、離れたっていいんじゃないのか?」
シオンが言うように、モリスはセシリアにべったりとくっついているわけではない。何よりも、昼前は寝ている。
だから気まぐれに「火をつけて」「土を掘って」「花を揺らして」「水を凍らせて」と、そんなことを言ってくる。これらは生活魔法だ。通りすがりの精霊の力を借りる魔法。
それでもすぐにセシリアが魔法を使えないでいると、モリスが口の中で何かを呟くだけで、その魔法が発動する。そしてその一連の流れの繰り返し。
だからモリスから魔法を教えてもらうと言っても、何かを定期的にするというのはないのだ。
基本的にはモリスが思い立ったとき。
「モリスにはきちんとお話をして、離れている間にどのような練習や勉強をしたらいいかを聞いておけばいいのよ。さっきも言ったように一年も離れるわけじゃないんだから」
「モリス……セシリアがいなくても、ここにいてくれますかね?」
「どういうこと?」
「だってモリスは王都に行こうとしていたんですよね? 精霊の導きで新しい弟子を探すためにアッシュクロフに来たって……」
その途中でセシリアに会ったのだ。モリスはセシリアの魔力が面白いとは言ってくれたが、セシリアが精霊の導きの相手かどうかはわからない。
セシリアがロックウェルに行ってしまったからって、フェルトンの街を出ていかれたら困る。
「そうね。モリスの当初の目的はそうだったかもしれない。だけど今、モリスには畑の管理という仕事を与えているの。彼女はその仕事を放り出して、どこかへ行くような人ではないと思うけど?」
「それに、あのばばぁなら、食べ物で釣っておけばいい」
セシリアを励ますかのように、シオンがからりと明るく言った。
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