大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?

澤谷弥(さわたに わたる)

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4:大好きなお姉さまが狙われているようです(14)

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「あ、モリスにお願いしたいことがあったんです」

 少しだけ重々しい空気になった室内を、セシリアの明るい声が吹き飛ばす。

「お姉さまとお話をしていたんですけれど、やわらかい砂糖を作ってみたいんです」

 つい先日、話題にあがったやわらかい砂糖。つまり『わたあめ』だ。

「へぇ? やわらかい砂糖ね。面白そうじゃないか」

 今までその話をしなかったのは、やはりコンスタッドとシオンがいたからだ。あの二人に、セシリアの謎の記憶を知られてはならない。むしろ未来視や過去視といった名前の記憶。

「それで、どうしたら砂糖はやわらかくなるんだい?」

 モリスのことだから興味を示すだろうなと思ったら、案の定。
 セシリアはエレノアと顔を見合わせ、頷き合う。

「砂糖に熱を加えて、一度、溶かします。そして冷えて固まるときに、糸のようにすれば、こう、ふわふわっと、なるかなって」
『わたあめ』について説明するのが難しい。しかも、わたあめを作る機械もないのだ。

「綿や羽毛ってふわふわするでしょう? そんな感じにできないかなと思って」

 エレノアが助け船を出す。

「なるほどなるほど、綿のようにするってことだね?」
「だからモリスの魔法でパッと砂糖を溶かして、パッとふわふわに」

 セシリアが言えば、モリスはにっこりと笑う。

「この私の魔法を、ふわふわの砂糖のために使うとは……。なかなか面白いね。砂糖を溶かすのに必要なのは火だね」
「ええ、砂糖は高熱で溶けて液体になるから。それを一気に冷やして繊維状にしたいのよ」
「ぐるぐるまわして、パーッと」

 エレノアの言葉には理解を示すモリスだが、セシリアが言うと顔を曇らせる。

「砂糖を繊維状にするために、遠心力を使おうという話をしていたの。砂糖の結晶を取り出すときもその力を使っているでしょう? そして出てきた繊維状の砂糖をからめとれば、ふわふわの砂糖ができるんじゃないかって」
「わかった、イメージは湧いた」

 モリスがポンと手を叩いた。

「だけど、その前に腹ごしらえをしないとね」

 そういったモリスは目の前のお茶とお菓子に手を伸ばした。
 そしてモリスのお腹が膨れたところで、早速、やわらかい砂糖の実験となった。

「本当にエレノアとセシリアは、面白いことを考えるね。砂糖だけでも衝撃的だったのに、やわらかい砂糖っていったいなんなんだい?」
「硬い砂糖を作ろうと思ったんです。でも、硬いのができるなら、やわらかいのもって、シング公爵がいったので……」
「へぇ? あの子立ちもたまには役に立つものだ」

 モリスは紅茶にいれるために用意してあったシュガーポットの蓋を開けて、スプーンで山盛り二杯を皿の上に盛った。

「熱して溶かして、風を起こして、溶けた砂糖をふわっとまとめるんだよね?」

 モリスの言葉にセシリアは「はい」と元気に答える。

「では、いくよ」

 モリスがパチンと指を鳴らすと、砂糖が溶けて、白い霧のように広がっていく。しかし、もう一度モリスが指を鳴らせば、広がった砂糖がくるくるとまとまった。

「モリス、すごい。あっというまにわたあめができました」
「わたあめ? 綿のようだから?」

 モリスが聞き返してきたところで、セシリアは自分の口を手で押さえた。
 しかしエレノアが何かに気がついたようだ。

「飴……今まで、飴と言えば穀物から作っていたけれど……砂糖を使えば、簡単に飴も作れるのかしら?」
「作れます。砂糖を溶かしてもう一度固めたら、べっ甲のようになるからべっ甲飴です」
「それよりもお二人さん。このふわふわ砂糖はどうしたらいいんだい? もう、周りが溶け始めてるよ」

 モリスが言うように、少しずつわたあめがしぼんでいるように見える。

「はい。食べます」

 セシリアがわたあめを少しだけちぎって、口の中に入れると、すっと溶けるようにして消えていった。

「あま~い、美味しい。お姉さまもモリスも食べてください。ふわっとして、口の中で溶けるんですよ」

 セシリアにうながされた二人も、わたあめをちぎって食べてみる。

「んっ! セシリアが言うように、本当に口の中で溶けて消えていくわ」

 エレノアがもう一口と、わたあめに手を伸ばす。

「これはいいね。だけど、手がべたべたするのが欠点だ」
「じゃあ、串焼き肉のように串に巻き付けるのはどうですか?」

 それこそ謎の記憶から流れ込んできたわたあめと近い形になる。

「それはいいね。そうしたら、串焼き肉のようにかぶりつけるわけだ」

 そうやって、わたあめについてああでもないこうでもないと話しながらも、モリスの魔法で作られたわたあめは、あっという間になくなってしまった。

「これならシング公爵さまも納得してくれますかね?」

 彼が言ったやわらかい砂糖。それをわたあめで満足してくれるかどうかが、少し不安だった。
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