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4:大好きなお姉さまが狙われているようです(15)
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それから数日後。父親たちが王都から戻ってきた。シオンもコンスタッドも、しばらくの間、領主館に滞在するとのことだった。
エレノアが小さく喜んだのをセシリアは見逃さなかった。エレノアは直接的なコンスタッドの求愛には素直になれないようだが、それでも彼を意識している。
(もしかして……お姉様ってツンデレでは?)
新たな姉の魅力に気づいてしまった。
「王城は大混乱だったよ」
夕食の席で父親がそう言った。
「ジェラルド殿下とイライザ殿の婚約もまとまっていなかったようですしね」
コンスタッドが会話の続きを奪う。
「それに、ジェラルド殿下もイライザ殿も、シオン殿下を本当に私の従者だと思っていたのには、笑いが込み上げてきましたよ。近隣諸国の王族の顔すら覚えていないような者が、国のトップにふさわしいとは思えませんがね。この国の行く末は、少し心配ですね」
ははっと笑ったコンスタッドは、そのままエレノアに視線を向けた。するとそれに答えるかのように、エレノアもにっこりと微笑む。
「あと十年、持つか持たないかだろう」
シオンがそう言うと、グラスの中の水を見つめている。なんとなく、気まずい空気が流れた。
その流れを断ち切ったのはコンスタッドだ。
「そうそう、ケアード公爵。国に戻ったら、正式に申し込みをしてもよろしいでしょうか?」
そう言った彼はワイングラスを手にし、緊張をほぐすかのようにコクリと一口飲んだ。
「何をだろうか?」
父親の声が普段よりも低く聞こえた。
「エレノア嬢に結婚の申し込みを」
シンとその場が静まり返る。エレノアは恥ずかしそうに顔を伏せ、カトラリーを持つ手を動かす。間違いなくエレノアは喜んでいる。
「なるほど。申し込むのは自由だ。その答えがどうなるかはわからないがな」
「では、そのお言葉に甘えさせていただきます」
やはり緊張していたのだろう。コンスタッドは残りのワインを一気に飲み干した。
「ダメです」
セシリアの甲高い声が響いた。
「ダメです。お姉さまは結婚してはダメです。お姉さま、シング公爵と結婚したらロックウェルに行ってしまうのでしょう? いやです。セシリア、寂しいです」
大好きな姉には幸せになってもらいたい。だけど、ロックウェルで暮らすのは寂しい。砂糖事業指導のように、ほんの数日の滞在であるならば、我慢できる。
だけど、今後ずっとというのであれば――。
「そういうことのようだ、シング公爵」
なぜか父親が勝ち誇った笑みを浮かべている。
「セシリア嬢。何も、今すぐエレノア嬢と結婚してロックウェルに連れて帰るというわけではないよ? そうだね、まずは結婚の約束だ。一緒にデートしませんか? というお願いをする。これならどうだい?」
エレノアとコンスタッドがデートする。
それなら何も問題ないだろう。
「それなら……いいですよ……?」
渋々といったセシリアの返事に、コンスタッドも苦笑した。
「なるほど。ケアード公爵よりもセシリア嬢の許可をとるほうが、難しそうだ」
「なんだ。今回の視察はコンスタッドの嫁捜しでおしまいか……」
さも残念そうにシオンが言う。
「アッシュクロフ王国に聖女が現れたというのは、嘘だったのだな……聖女の治癒能力。それを頼りたかったのだが……まあ、いい。次の作戦を考えるだけだ」
「治癒能力? どなたか、具合が悪いのですか?」
そう尋ねたのはエレノアだ。
「母上がな」
シオンの母となればロックウェル王妃。
(王妃様はお身体が弱いのよね。それをイライザが聖魔法で救って……あ、イライザの聖魔法を導いたのは、賢者モリス……)
セシリアの頭の中には、謎の記憶が大量に流れ込んできた。
学園を卒業して半年後に聖属性の魔法が使えるとわかったイライザだが、それは王都セッテを訪れていた賢者モリスによって引き出されたものだ。
(つまり、イライザはモリスと出会っていないから、聖属性の魔力に目覚めていない?)
本来であれば、セッテに聖女がいると聞きつけたロックウェルの第二王子シオンがイライザに会い、彼から話を聞いたイライザは王妃を助ける。それによって、ロックウェル王国とアッシュクロフ王国の関係が強固なものとなるのだ。
(あ……お姉様を処刑したのは、シング公爵だわ。ロックウェルの騎士団長。これもロックウェル王国とアッシュクロフ王国の関係を見せつけるために)
「どうした? セシリア。急に黙り込んで」
スプーンを持ったまま、ぴくりとも動かぬセシリアを心配したのだろう。尋ねるシオンの声はやさしい。
「あの。お砂糖はお薬にもなります。もし、咳がひどいのであれば、砂糖をお湯にとかして湯気を吸い込むようにしながら、ゆっくり飲むといいですよ。でも、身体が冷えているのであれば、黒いお砂糖のほうがいいです」
「セシリア」
父親に名を呼ばれ、はっとしてセシリアは口をつぐんだ。
「申し訳ない。セシリアは、砂糖のことになると、夢中になってしまって。今も、次のお菓子のレシピでも考えていたのかな?」
コクコクと頷いて、スープ皿にスプーンを突っ込んだ。
この場にはコンスタッドもシオンもいる。セシリアの能力が知られてしまうのはよくない。
そこから父親が話題をかえ、コンスタッドたちと談笑にふけった。
エレノアが小さく喜んだのをセシリアは見逃さなかった。エレノアは直接的なコンスタッドの求愛には素直になれないようだが、それでも彼を意識している。
(もしかして……お姉様ってツンデレでは?)
新たな姉の魅力に気づいてしまった。
「王城は大混乱だったよ」
夕食の席で父親がそう言った。
「ジェラルド殿下とイライザ殿の婚約もまとまっていなかったようですしね」
コンスタッドが会話の続きを奪う。
「それに、ジェラルド殿下もイライザ殿も、シオン殿下を本当に私の従者だと思っていたのには、笑いが込み上げてきましたよ。近隣諸国の王族の顔すら覚えていないような者が、国のトップにふさわしいとは思えませんがね。この国の行く末は、少し心配ですね」
ははっと笑ったコンスタッドは、そのままエレノアに視線を向けた。するとそれに答えるかのように、エレノアもにっこりと微笑む。
「あと十年、持つか持たないかだろう」
シオンがそう言うと、グラスの中の水を見つめている。なんとなく、気まずい空気が流れた。
その流れを断ち切ったのはコンスタッドだ。
「そうそう、ケアード公爵。国に戻ったら、正式に申し込みをしてもよろしいでしょうか?」
そう言った彼はワイングラスを手にし、緊張をほぐすかのようにコクリと一口飲んだ。
「何をだろうか?」
父親の声が普段よりも低く聞こえた。
「エレノア嬢に結婚の申し込みを」
シンとその場が静まり返る。エレノアは恥ずかしそうに顔を伏せ、カトラリーを持つ手を動かす。間違いなくエレノアは喜んでいる。
「なるほど。申し込むのは自由だ。その答えがどうなるかはわからないがな」
「では、そのお言葉に甘えさせていただきます」
やはり緊張していたのだろう。コンスタッドは残りのワインを一気に飲み干した。
「ダメです」
セシリアの甲高い声が響いた。
「ダメです。お姉さまは結婚してはダメです。お姉さま、シング公爵と結婚したらロックウェルに行ってしまうのでしょう? いやです。セシリア、寂しいです」
大好きな姉には幸せになってもらいたい。だけど、ロックウェルで暮らすのは寂しい。砂糖事業指導のように、ほんの数日の滞在であるならば、我慢できる。
だけど、今後ずっとというのであれば――。
「そういうことのようだ、シング公爵」
なぜか父親が勝ち誇った笑みを浮かべている。
「セシリア嬢。何も、今すぐエレノア嬢と結婚してロックウェルに連れて帰るというわけではないよ? そうだね、まずは結婚の約束だ。一緒にデートしませんか? というお願いをする。これならどうだい?」
エレノアとコンスタッドがデートする。
それなら何も問題ないだろう。
「それなら……いいですよ……?」
渋々といったセシリアの返事に、コンスタッドも苦笑した。
「なるほど。ケアード公爵よりもセシリア嬢の許可をとるほうが、難しそうだ」
「なんだ。今回の視察はコンスタッドの嫁捜しでおしまいか……」
さも残念そうにシオンが言う。
「アッシュクロフ王国に聖女が現れたというのは、嘘だったのだな……聖女の治癒能力。それを頼りたかったのだが……まあ、いい。次の作戦を考えるだけだ」
「治癒能力? どなたか、具合が悪いのですか?」
そう尋ねたのはエレノアだ。
「母上がな」
シオンの母となればロックウェル王妃。
(王妃様はお身体が弱いのよね。それをイライザが聖魔法で救って……あ、イライザの聖魔法を導いたのは、賢者モリス……)
セシリアの頭の中には、謎の記憶が大量に流れ込んできた。
学園を卒業して半年後に聖属性の魔法が使えるとわかったイライザだが、それは王都セッテを訪れていた賢者モリスによって引き出されたものだ。
(つまり、イライザはモリスと出会っていないから、聖属性の魔力に目覚めていない?)
本来であれば、セッテに聖女がいると聞きつけたロックウェルの第二王子シオンがイライザに会い、彼から話を聞いたイライザは王妃を助ける。それによって、ロックウェル王国とアッシュクロフ王国の関係が強固なものとなるのだ。
(あ……お姉様を処刑したのは、シング公爵だわ。ロックウェルの騎士団長。これもロックウェル王国とアッシュクロフ王国の関係を見せつけるために)
「どうした? セシリア。急に黙り込んで」
スプーンを持ったまま、ぴくりとも動かぬセシリアを心配したのだろう。尋ねるシオンの声はやさしい。
「あの。お砂糖はお薬にもなります。もし、咳がひどいのであれば、砂糖をお湯にとかして湯気を吸い込むようにしながら、ゆっくり飲むといいですよ。でも、身体が冷えているのであれば、黒いお砂糖のほうがいいです」
「セシリア」
父親に名を呼ばれ、はっとしてセシリアは口をつぐんだ。
「申し訳ない。セシリアは、砂糖のことになると、夢中になってしまって。今も、次のお菓子のレシピでも考えていたのかな?」
コクコクと頷いて、スープ皿にスプーンを突っ込んだ。
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