大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?

澤谷弥(さわたに わたる)

文字の大きさ
50 / 57

4:大好きなお姉さまが狙われているようです(16)

しおりを挟む
 コンスタッドとシオンが、明日ロックウェル王国に戻るという。だから、今のうちにモリスの作ったわたあめを食べてもらうことにした。

 サロンに四人が集まった。モリスはわたあめを作ったら、どこかに消えていった。彼女は、人の多い場所を好まない。

「シング公爵さま、これがやわらかい砂糖です」

 セシリアが両手を腰に当て、えっへんと胸を張ってみせる。

「綿みたいだな」

 シオンもぽかんと口を開けて、そう呟いた。

「はい。綿みたいだから、わたあめと言います。いいから早く、食べてください。ふわふわしてるから、すぐに溶けちゃうんです」
「どうやって食べるんだ? かぶりつく?」

 しかも今日のわたあめは、串に刺してあるから、かぶりつくことも可能。

「串を持って、そのまま食べてもいいですし。食べにくいなら、ちぎって食べてください」

 セシリアに促されたコンスタッドとシオンは、ふわふわっとしたわたあめに手を伸ばして、それをちぎった。

 彼らがわたあめを食べる様子を、エレノアとセシリアは息を呑んで見守っていた。

 興味津々といった様子でゆっくりと口元に運ばれていくわたあめだが、シオンはそれを観察するかのように見回してから、一気にパクッと食べた。

「ん? なんだ、これ。ふわっとして口の中に消えていく」

 それはコンスタッドも同じ意見のようだ。わたあめを食べた彼は、目を大きく見開いた。

「シング公爵さま……?」

 わたあめを食べた瞬間、コンスタッドはぴくりとも動かない。その姿勢のまま固まっていたのだ。

「あ、あぁ……すまない。あまりにも、衝撃的すぎた……。これは、本当にやわらかい砂糖だな……」

 感心するコンスタッドの様子を目にしたエレノアとセシリアは、二人顔を合わせて満足そうに頷き合った。

「これは、誰でも作れるのか?」

 シオンが、ちぎっては食べ、ちぎっては食べを繰り返しながら、合間に、そう聞いてきた。

「誰でも作れるんですけど、作るための道具が必要なんです。今は、モリスにぱっとやってもらってますけど……」

 セシリアが答えると、シオンは「そうか……」と寂しそうに答える。

「なんだ? シオン。これが気に入ったのか? 見た目よりもお子ちゃまだからな」
「誰が子どもだ。スタンだって、これを気に入ったんじゃないのか? おまえの手と口、べたべただぞ?」

 シオンに指摘されたコンスタッドは、慌てて手巾で手と口を拭いた。どうやら、その自覚はあったらしい。

「シオンさま。わたあめが気に入ったんですか?」

 セシリアが尋ねると、シオンは少しだけ苦しそうに微笑んだ。

「まぁ、そうだな。これは美味いし、やわらかい。いや、溶けていく。だから、母上にも……って思ったんだ」

 シオンの言葉に、コンスタッドもしまった、という表情をする。

「わかりました」

 そこでエレノアがパチンと指を鳴らす。

「シオン殿下のためにも、わたあめが作れる魔法具を用意いたしましょう。今日、明日は無理ですけれど、ケアード公爵領の技術を集結させ、誰でも簡単にわたあめを楽しめる魔法具を作ります」

 ね? とエレノアはセシリアを見やる。
 急に話を振られたセシリアは「はい!」としか答えられなかった。

「シオンさま。お姉さまと一緒に、わたあめの魔法具を作ります。そうしたら、シオンさまもいつでもわたあめが食べられます」

 ケアード姉妹から熱い視線を向けられたシオンは、照れ隠しのつもりなのか顔を背けて「ありがとう」と答える。

「あと、シオンさま。お土産も持って帰ってくださいね。黒いお砂糖と『さとう氷』です。硬いお砂糖は、シオンさまが次、こちらに来るまでには作っておきます。また、来ますよね?」

 シオンに尋ねたのに、答えたのはコンスタッドだった。

「セシリア嬢、すぐにまた来るよ。ケアード公爵とは、さとうきび事業の件について正式に契約をする必要があるからね。今はまだ、仮契約の段階だから。それに……」

 そこでコンスタッドは、エレノアのほうに顔を向けたが、それに気づいたエレノアはわざと反対方向に視線を逸らした。

「次は、もう少しゆっくりさせてもらうよ」

 そう言ったコンスタッドは、しつこいくらいにエレノアを視線で追っていた。
 そして次の日――。

「ケアード公爵。とても有意義な時間を過ごさせていただきました。何かありましたら、私たちを頼ってください」

 コンスタッドが父親と熱く握手を交わすものの、父親は複雑な表情をしていた。

「また、遊びにいらしてください」

 エレノアの社交辞令の言葉にすら、コンスタッドは顔をほころばせる。

「シオンさまも、また来てくださいね。それまでに、約束通り、新しいお菓子とお砂糖を考えておきます」

 セシリアは胸を張った。

「わかった、わかった。楽しみにしている」

 シオンはぽんぽんとセシリアの頭をなでる。

「では、ケアード公爵。十年後にはセシリアをもらうからな」

 そう言ってシオンは、コンスタッドと一緒に馬車へと乗り込んだ。

 父親は驚き、ぽかんと口を開けたままだったが、セシリアにはその言葉の意味がさっぱりとわからなかった。


------------------------

ここで1部終了です。
2部開始まで、少々お待ちください。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。  乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。  そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。   (小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...