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【第二部】堅物騎士団長と新婚の変装令嬢は今日もその役を演じます
6.会食です
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「呼び出して悪いな」
昼食の時間。食堂の個室。第一騎士団からジルベルトが一人、相手の第零騎士団からは三人。完全アウェイな感じがするジルベルト。だが、ジルベルトが席に座った時のショーンの第一声はそれだったし、隣にはレオンとしてエレオノーラがいて、そのショーンの隣にはダニエルがいる。
「何かあったのか?」
ジルベルトが尋ねると、またショーンは歯切れ悪く答える。
「まあ、あれだ。陛下の隣国視察の件だ」
「ああ、あれか。だが、第零には関係ないだろう。護衛としてつかなければならないのは第一だからな。今、それの人選で悩んでいるところだが。第零からも人を出したいのか?」
「いや、そういうわけではないのだが。陛下の通訳の件は知っているだろ?」
「一番優秀な奴が体調不良で同行できないとか言っていたような気もする」
「そうなると、通訳がいないよな」
「そうだな」
「陛下は通訳を探している。通訳ができそうな人間に心当たりはあるか?」
ショーンのその問いに、ジルベルトは目を細めた。その心当たりを考えているのだろう。陛下と通訳というキーワードで該当する人物は一人いるのだが、あえて「ない」と答える。
「陛下のご指名はエレオノーラだ」
ショーンが言うと、すかさずジルベルトは。
「却下」
「そうなると、第零からレオンを出すことになるがいいか?」
「同じじゃないか」
あのジルベルトがツッコミを入れた。
「いや、違う。エレオノーラ・リガウンとして同行するか、第零騎士団のレオンとして同行するかでは、彼女の立ち位置がかわってくる」
「その選択できない選択肢はなんなんだ……」
ジルベルトは頭を抱えた。
「だから、あえてお前に選ばせている。お前の嫁のエレオノーラを差し出すか、第零としてレオンを差し出すか」
「リガウン団長」
そこで優しく声をかけたのはダニエルだ。
「リガウン団長も、陛下の護衛で隣国に行かれるのではないですか?」
それをサニエラに押し付けようとしていたところだが、それはあえて言わない。
「そうなるかもしれないな」
「でしたら、妹が通訳として同行しても何も問題ないですよね。リガウン団長も一緒なのですから」
そう言われるとそうかもしれない。
「ただ、我々が悩んでいるのは、妹をエレオノーラとして扱うか、レオンとして扱うかなのです。その、陛下も一緒ですからね。陛下は、エレオノーラとレオンが同一人物であるとは気づいておりませんので」
「やはり、そこに違いはあるのか?」
「あります。私の妹のエレオノーラはとても可憐な妹です。しかも病弱ですので、人前に出ることは滅多にありません」
兄が真面目な顔をしてそんなことを言うので、口にいれていた食べ物を思わず吹き出しそうになってしまったエレオノーラ。あれ、そんな設定だっけ?
「ですが、レオンは騎士ですから。自分の身は自分で守れます。ちなみに、妹はこう見えても腹筋も割れています」
兄よ、いらん情報を流すな。そして、いつ確認した。
「ああ、それは知っている」
そして夫よ、そこで肯定しない。
「自宅待機中も、訓練に励んでいたようだな」
とショーンは二人の話を受け流していた。
「はい。毎朝の訓練は欠かしておりません。それにリガウン侯爵にも稽古をつけていただきましたから、以前よりパワーアップしております」
「え? リガウン侯爵にも稽古してもらってるのか、お前は」
ショーンがいささか驚いている。「あの人、鬼団長って呼ばれてたんだけど」という呟きは聞こえなかったことにしよう。
ジルベルトは腕を組んだ。何やら考えているようだ。
「だったら、彼女を通訳として陛下につけて欲しい」
「どういう意味だ?」
「彼女を第零の人間であることを伏せておきたい。エレンの知人ということで陛下に紹介したい」
「つまり、エレオノーラでもレオンでもない、他の人物ってことか?」
ショーンが尋ねる。
「そういうことだ。私とエレンからの紹介であれば、陛下も納得するだろう」
ジルベルトが答えた。
「リガウン団長。なぜ、そんな面倒くさいことを?」
ダニエルが尋ねた。
「今、隣国のバーデールではよくない噂が流れている」
「ああ、あれか」
どうやらショーンには心当たりがあるらしい。
「ああ。グリフィン公爵の件とも絡んでいる。だから、場合によっては第零に潜入を頼もうと思っていたところだ」
「そうなった場合、妹が担当することになりますが。隣国に潜入できるような人物はレオンしかいない。そうなりますと、リガウン団長はまた、一月以上、妹と会えなくなることになりますが、よろしいのですか?」
何やらダニエルが脅しにかかっている。
「だから、このタイミングで潜入を試みて欲しい。陛下の護衛という名目で我々も同行するので、何かあれば助けることができる」
「うむ」
そこでショーンは頷いた。「その件も考えておこう。ところで、第一からは誰を出す予定だ?」
「ああ、まだ決めきれていないが。私は出ることになるだろう。その間、サニエラにはこちらを任せることになるな。それから、陛下の護衛から二人だな。他、第一の警備担当から二人」
「つまり、全部で五人だな」
「そうだ」
ふーむ、とショーンは顎に手をあて考えた。
「こちらからはレオンを通訳として出す。だが、彼女一人では危険だな。ドミニクも出そう」
「え。ドムお兄さまですか?」
「なんだ、不満か? バーデールの言葉ならドミニクも得意だ」
「いえ。不満ではありませんが」
つっこみ担当のダニエルがいないことに不安を感じる。つっこみ不在の恐怖。いや、ダニエルがつっこみかどうかも怪しいところではあるが。
「そうそう。リガウン団長。二つほどお願いがあるのですが」
そこでダニエルが口を開いた。
「なんだろうか」
「今回、私は同行しませんので、妹のことを頼みます」
「わかった」
「それから、これが一番重要なことなのですが」
「なんだろうか」
「新婚ですので、とやかく言うつもりはないのですが。営みの痕を、衣服で隠れないところにつけるのはやめていただきたい。妹の潜入調査に係わることですので」
ショーンが吹き出した。
兄よ、このタイミングで言うか。
「承知した。昨夜はついつい」
とか、言わないで欲しいと、エレオノーラは隣の夫を見て思った。
昼食の時間。食堂の個室。第一騎士団からジルベルトが一人、相手の第零騎士団からは三人。完全アウェイな感じがするジルベルト。だが、ジルベルトが席に座った時のショーンの第一声はそれだったし、隣にはレオンとしてエレオノーラがいて、そのショーンの隣にはダニエルがいる。
「何かあったのか?」
ジルベルトが尋ねると、またショーンは歯切れ悪く答える。
「まあ、あれだ。陛下の隣国視察の件だ」
「ああ、あれか。だが、第零には関係ないだろう。護衛としてつかなければならないのは第一だからな。今、それの人選で悩んでいるところだが。第零からも人を出したいのか?」
「いや、そういうわけではないのだが。陛下の通訳の件は知っているだろ?」
「一番優秀な奴が体調不良で同行できないとか言っていたような気もする」
「そうなると、通訳がいないよな」
「そうだな」
「陛下は通訳を探している。通訳ができそうな人間に心当たりはあるか?」
ショーンのその問いに、ジルベルトは目を細めた。その心当たりを考えているのだろう。陛下と通訳というキーワードで該当する人物は一人いるのだが、あえて「ない」と答える。
「陛下のご指名はエレオノーラだ」
ショーンが言うと、すかさずジルベルトは。
「却下」
「そうなると、第零からレオンを出すことになるがいいか?」
「同じじゃないか」
あのジルベルトがツッコミを入れた。
「いや、違う。エレオノーラ・リガウンとして同行するか、第零騎士団のレオンとして同行するかでは、彼女の立ち位置がかわってくる」
「その選択できない選択肢はなんなんだ……」
ジルベルトは頭を抱えた。
「だから、あえてお前に選ばせている。お前の嫁のエレオノーラを差し出すか、第零としてレオンを差し出すか」
「リガウン団長」
そこで優しく声をかけたのはダニエルだ。
「リガウン団長も、陛下の護衛で隣国に行かれるのではないですか?」
それをサニエラに押し付けようとしていたところだが、それはあえて言わない。
「そうなるかもしれないな」
「でしたら、妹が通訳として同行しても何も問題ないですよね。リガウン団長も一緒なのですから」
そう言われるとそうかもしれない。
「ただ、我々が悩んでいるのは、妹をエレオノーラとして扱うか、レオンとして扱うかなのです。その、陛下も一緒ですからね。陛下は、エレオノーラとレオンが同一人物であるとは気づいておりませんので」
「やはり、そこに違いはあるのか?」
「あります。私の妹のエレオノーラはとても可憐な妹です。しかも病弱ですので、人前に出ることは滅多にありません」
兄が真面目な顔をしてそんなことを言うので、口にいれていた食べ物を思わず吹き出しそうになってしまったエレオノーラ。あれ、そんな設定だっけ?
「ですが、レオンは騎士ですから。自分の身は自分で守れます。ちなみに、妹はこう見えても腹筋も割れています」
兄よ、いらん情報を流すな。そして、いつ確認した。
「ああ、それは知っている」
そして夫よ、そこで肯定しない。
「自宅待機中も、訓練に励んでいたようだな」
とショーンは二人の話を受け流していた。
「はい。毎朝の訓練は欠かしておりません。それにリガウン侯爵にも稽古をつけていただきましたから、以前よりパワーアップしております」
「え? リガウン侯爵にも稽古してもらってるのか、お前は」
ショーンがいささか驚いている。「あの人、鬼団長って呼ばれてたんだけど」という呟きは聞こえなかったことにしよう。
ジルベルトは腕を組んだ。何やら考えているようだ。
「だったら、彼女を通訳として陛下につけて欲しい」
「どういう意味だ?」
「彼女を第零の人間であることを伏せておきたい。エレンの知人ということで陛下に紹介したい」
「つまり、エレオノーラでもレオンでもない、他の人物ってことか?」
ショーンが尋ねる。
「そういうことだ。私とエレンからの紹介であれば、陛下も納得するだろう」
ジルベルトが答えた。
「リガウン団長。なぜ、そんな面倒くさいことを?」
ダニエルが尋ねた。
「今、隣国のバーデールではよくない噂が流れている」
「ああ、あれか」
どうやらショーンには心当たりがあるらしい。
「ああ。グリフィン公爵の件とも絡んでいる。だから、場合によっては第零に潜入を頼もうと思っていたところだ」
「そうなった場合、妹が担当することになりますが。隣国に潜入できるような人物はレオンしかいない。そうなりますと、リガウン団長はまた、一月以上、妹と会えなくなることになりますが、よろしいのですか?」
何やらダニエルが脅しにかかっている。
「だから、このタイミングで潜入を試みて欲しい。陛下の護衛という名目で我々も同行するので、何かあれば助けることができる」
「うむ」
そこでショーンは頷いた。「その件も考えておこう。ところで、第一からは誰を出す予定だ?」
「ああ、まだ決めきれていないが。私は出ることになるだろう。その間、サニエラにはこちらを任せることになるな。それから、陛下の護衛から二人だな。他、第一の警備担当から二人」
「つまり、全部で五人だな」
「そうだ」
ふーむ、とショーンは顎に手をあて考えた。
「こちらからはレオンを通訳として出す。だが、彼女一人では危険だな。ドミニクも出そう」
「え。ドムお兄さまですか?」
「なんだ、不満か? バーデールの言葉ならドミニクも得意だ」
「いえ。不満ではありませんが」
つっこみ担当のダニエルがいないことに不安を感じる。つっこみ不在の恐怖。いや、ダニエルがつっこみかどうかも怪しいところではあるが。
「そうそう。リガウン団長。二つほどお願いがあるのですが」
そこでダニエルが口を開いた。
「なんだろうか」
「今回、私は同行しませんので、妹のことを頼みます」
「わかった」
「それから、これが一番重要なことなのですが」
「なんだろうか」
「新婚ですので、とやかく言うつもりはないのですが。営みの痕を、衣服で隠れないところにつけるのはやめていただきたい。妹の潜入調査に係わることですので」
ショーンが吹き出した。
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