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【第二部】堅物騎士団長と新婚の変装令嬢は今日もその役を演じます
11.騎士たちの時間です
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ドアをノックされた。部屋で本を読んでいたドミニクは顔を上げ返事をした。ドアの向こうから姿を現したのは平服姿のジルベルトだった。
「あれ、ジルさん。どうかしましたか?」
その姿を見て、思わずくだけた口調で話しかけてしまったドミニク。
「あ、いや。どうもしないのだが。夕飯でも一緒にどうかと思ってだな」
「僕でいいんですかね? ジルさんには他に誘いたい人がいるんじゃないんですか?」
ウオッホン、とジルベルトは咳払いをした。そのジルベルトの後ろから、ひょっこりと頭が飛び出した。
「こんにちは、ドミニクさん。ボクもいますよ」
行きの馬車で一緒だったジャックだ。
「まあ。ちょっと外に食べに行こうかと思ったのだが、言葉がイマイチ自信がなくてだな」
そういうことか、とドミニクは察した。
「わかりました。すぐに準備します」
ドミニクは読みかけの本にしおりを挟んでゆっくりと立ち上がった。
三人は宿から近い食堂に入った。
「今夜は、陛下の護衛はよろしいのですか?」
「ああ。別な者がついているから問題ない」
四人掛けのテーブル席を案内された。ジルベルトは身体が大きいため、一人で。その向かいにドミニクとジャックが並んで座る。
ドミニクがメニューを手にすると、二人に何が食べたいのかを聞いて、メニューについて簡単に説明した。
「団長、アルコールはオッケーですか?」
陽気なジャックが尋ねる。
「たしなむ程度にしておけ」
「了解でーす」
軽いお酒と、それから食べ物をいくつか注文した。もちろんドミニクが。
「団長。今回は、奥さんに会えなくても平気なんですか?」
ジャックに言われ、ジルベルトは思わず飲んでいた酒を吹き出しそうになった。ドミニクも口に入れていた肉を吹き出しそうになった。
「お、おまえ。なぜ、それを?」
珍しくジルベルトが動揺している。
「え? 第一ではみんな知ってますよ?」
「みんな、だと?」
「少なくとも第一のメンバーは全員知っているんじゃないですかね」
そこでジャックは骨付き肉にしゃぶりついた。
「少なくとも第零のメンバーは全員知っていません」
ドミニクが喉につかえそうだった肉を、飲み物で流し込んだ。
「おい、ジャック。お前、それ、誰から聞いた?」
あの場には、サニエラとショーンとダニエルと総帥しかいなかったはず。ショーンとダニエルは言いふらすようなことはしないだろう。となると。
「もちろん、サニエラ副団長ですよ。あの方、面白おかしく、第一に言いふらしてますよ」
ジルベルトは手にしていたアルコールを一気に飲み干した。
「おかわり、だ」
ドミニクは店員を呼んで、飲み物を頼んだ。
「団長、たしなむ程度ですよ」
ジャックが声をかけているが「俺はこれしきでは酔わん」とか言っている。ジルベルトの一人称が私から俺になった時点で相当怒っているな、とドミニクは思ったが口にはしない。
「ドミニクさんて、本当にバーデール語が堪能ですよね」
ジャックが話題をかえた。「ボクたちだけでは、こんな美味しい夕飯にありつけなかったですよ」
「ええ。バーデール語は学院時代に専攻していましたから」
「ボクも習ったはずなんだけどなぁ」
とぼやく。
「まあ、言葉は使っていないと忘れますからね」
そこへ店員がお替わりの飲み物を持って現れた。
「はい、ジルさん」
「ああ、ありがとう」
「なんか、お二人の関係っていいですね」
ジャックが頬杖をついて言った。ジルベルトとドミニクはジャックを見つめた。
「そうそう。団長に相談があるんですけど」
ジャックは頬杖をついていないほうの手で、機械的に豆を口に放り込んでいる。
「なんだ?」
「ボクとセレナさんの仲をとりもってくれませんかね?」
ジルベルトはまた飲んでいた酒を吹き出しそうになった。
「どうした? 急に。頭でも打ったのか?」
「いえ。いたって真面目ですよ。セレナさんって、ボクの理想の女性そのものだったんです」
ジャックが言うには、同じ馬車に乗り合わせた時に、思い描いていた理想の女性が目の前にいた、というのだ。さらに言うならば、語学も堪能で、あの陛下の通訳を堂々とこなしている姿も凛々しいとか。
「ジャックさん。本当にセレナが好みなんですか? あんな真面目くさった女性が」
「はい。ボク、こんな見た目だから、女性に騙されることが多くて」
こんな見た目。つまり、どこか頼りない見た目。女性に騙されやすいということは、根が真面目なのだろう。
「でも、セレナさんなら誠実なお付き合いができると思うんですよね」
「だが、彼女も年頃の娘だ。誰かいい相手がいるかもしれないぞ?」
「でも、婚約者はいないって言ってました」
もう、聞いたのか、こいつは。とジルベルトは思っている。
「だから、団長。ボクとセレナさんの仲をとりもってください」
テーブルの上に両手をついて、ジャックは頭を下げる。
とうしたらいい? という意味をこめて、ジルベルトはドミニクに視線を向けた。彼は、小さく顔を横に振ったが。
「ジャックさん。婚約者はいないってだけで、もしかしたらお付き合いしている男性とかはいるかもしれませんよ?」
ドミニクは、サラダをとりわけながら言った。
「だったら。団長、確認してくださいよ」
その流れで、俺かよ、とジルベルトは思う。「ああ、聞くだけは聞いといてやる」
そこでジルベルトは酒を呷った。
「あれ、ジルさん。どうかしましたか?」
その姿を見て、思わずくだけた口調で話しかけてしまったドミニク。
「あ、いや。どうもしないのだが。夕飯でも一緒にどうかと思ってだな」
「僕でいいんですかね? ジルさんには他に誘いたい人がいるんじゃないんですか?」
ウオッホン、とジルベルトは咳払いをした。そのジルベルトの後ろから、ひょっこりと頭が飛び出した。
「こんにちは、ドミニクさん。ボクもいますよ」
行きの馬車で一緒だったジャックだ。
「まあ。ちょっと外に食べに行こうかと思ったのだが、言葉がイマイチ自信がなくてだな」
そういうことか、とドミニクは察した。
「わかりました。すぐに準備します」
ドミニクは読みかけの本にしおりを挟んでゆっくりと立ち上がった。
三人は宿から近い食堂に入った。
「今夜は、陛下の護衛はよろしいのですか?」
「ああ。別な者がついているから問題ない」
四人掛けのテーブル席を案内された。ジルベルトは身体が大きいため、一人で。その向かいにドミニクとジャックが並んで座る。
ドミニクがメニューを手にすると、二人に何が食べたいのかを聞いて、メニューについて簡単に説明した。
「団長、アルコールはオッケーですか?」
陽気なジャックが尋ねる。
「たしなむ程度にしておけ」
「了解でーす」
軽いお酒と、それから食べ物をいくつか注文した。もちろんドミニクが。
「団長。今回は、奥さんに会えなくても平気なんですか?」
ジャックに言われ、ジルベルトは思わず飲んでいた酒を吹き出しそうになった。ドミニクも口に入れていた肉を吹き出しそうになった。
「お、おまえ。なぜ、それを?」
珍しくジルベルトが動揺している。
「え? 第一ではみんな知ってますよ?」
「みんな、だと?」
「少なくとも第一のメンバーは全員知っているんじゃないですかね」
そこでジャックは骨付き肉にしゃぶりついた。
「少なくとも第零のメンバーは全員知っていません」
ドミニクが喉につかえそうだった肉を、飲み物で流し込んだ。
「おい、ジャック。お前、それ、誰から聞いた?」
あの場には、サニエラとショーンとダニエルと総帥しかいなかったはず。ショーンとダニエルは言いふらすようなことはしないだろう。となると。
「もちろん、サニエラ副団長ですよ。あの方、面白おかしく、第一に言いふらしてますよ」
ジルベルトは手にしていたアルコールを一気に飲み干した。
「おかわり、だ」
ドミニクは店員を呼んで、飲み物を頼んだ。
「団長、たしなむ程度ですよ」
ジャックが声をかけているが「俺はこれしきでは酔わん」とか言っている。ジルベルトの一人称が私から俺になった時点で相当怒っているな、とドミニクは思ったが口にはしない。
「ドミニクさんて、本当にバーデール語が堪能ですよね」
ジャックが話題をかえた。「ボクたちだけでは、こんな美味しい夕飯にありつけなかったですよ」
「ええ。バーデール語は学院時代に専攻していましたから」
「ボクも習ったはずなんだけどなぁ」
とぼやく。
「まあ、言葉は使っていないと忘れますからね」
そこへ店員がお替わりの飲み物を持って現れた。
「はい、ジルさん」
「ああ、ありがとう」
「なんか、お二人の関係っていいですね」
ジャックが頬杖をついて言った。ジルベルトとドミニクはジャックを見つめた。
「そうそう。団長に相談があるんですけど」
ジャックは頬杖をついていないほうの手で、機械的に豆を口に放り込んでいる。
「なんだ?」
「ボクとセレナさんの仲をとりもってくれませんかね?」
ジルベルトはまた飲んでいた酒を吹き出しそうになった。
「どうした? 急に。頭でも打ったのか?」
「いえ。いたって真面目ですよ。セレナさんって、ボクの理想の女性そのものだったんです」
ジャックが言うには、同じ馬車に乗り合わせた時に、思い描いていた理想の女性が目の前にいた、というのだ。さらに言うならば、語学も堪能で、あの陛下の通訳を堂々とこなしている姿も凛々しいとか。
「ジャックさん。本当にセレナが好みなんですか? あんな真面目くさった女性が」
「はい。ボク、こんな見た目だから、女性に騙されることが多くて」
こんな見た目。つまり、どこか頼りない見た目。女性に騙されやすいということは、根が真面目なのだろう。
「でも、セレナさんなら誠実なお付き合いができると思うんですよね」
「だが、彼女も年頃の娘だ。誰かいい相手がいるかもしれないぞ?」
「でも、婚約者はいないって言ってました」
もう、聞いたのか、こいつは。とジルベルトは思っている。
「だから、団長。ボクとセレナさんの仲をとりもってください」
テーブルの上に両手をついて、ジャックは頭を下げる。
とうしたらいい? という意味をこめて、ジルベルトはドミニクに視線を向けた。彼は、小さく顔を横に振ったが。
「ジャックさん。婚約者はいないってだけで、もしかしたらお付き合いしている男性とかはいるかもしれませんよ?」
ドミニクは、サラダをとりわけながら言った。
「だったら。団長、確認してくださいよ」
その流れで、俺かよ、とジルベルトは思う。「ああ、聞くだけは聞いといてやる」
そこでジルベルトは酒を呷った。
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