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【第三部】堅物騎士団長に溺愛されている変装令嬢は今日もその役を演じます
3.取材させてください
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エレン・フランシス、十六歳。バーデールからの留学生。というのが、エレオノーラに与えられた名前だった。微妙に隠しきれていないのだが。
「バーデールからの留学生、エレン・フランシスさんです」
担任の先生に促され、エレオノーラも「エレン・フランシスです」と自己紹介をすると、パチパチと乾いた拍手が起こった。
エレオノーラの潜入先は二学年の特別クラスといわれているところ。このクラスは何かしら秀でた者たちが集められているクラスらしい。
「エレンさんの席は、そこの空いている席です」
特別クラスであるからか、生徒の人数も十五人程度しかいない。席も五列かける三行になっているのではなく、ゆるやかな半円の弧になっていて横に並んでいる。
エレオノーラの席は、その一番右端だった。一つ席を足すのであれば端っこに足すのが普通なのだろうが。
「私、ドロシー。よろしくね、エレンちゃん」
席につくと同時に、隣の赤毛の女の子が声をかけてくれた。
「はい、よろしくお願いします」
笑顔で答えてみた。だけど心の中は嬉しさで溢れている。
そう、よくよく考えてみたら、エレオノーラに友達と呼べるような人物がいなかったのだ。ウェンディは兄の婚約者ということもあってよく話はするけれど、周囲には大人が多かったし、騎士団の仲間たちも年上が多いし。何かの相談事も家族にすることが多かったし。
と、やっぱり友達がいなかったということに気付く。ちらっと、隣のドロシーに視線を向けると目が合った。嬉しい。この一言に尽きる。
授業はエレオノーラにとっては簡単なものだった。何しろ、二学年も下の内容だ。できない方がおかしい、と兄たちには言われている。変なプレッシャーをかけてくるのだ。
休憩時間になると、ドロシーが声をかけてくれた。それから数人の女子生徒も。どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい。
昼休憩時間もドロシーが食堂を案内してくれた。学食と言うらしい。
「ドロシーさんが声をかけてくださって、本当に助かりました」
エレオノーラはプレートにのっている付け合わせの野菜をゆっくりとカットする。
「そう? でもね、私も裏心があって声をかけたんだ」
「裏心、ですか?」
どんな心だろう。
「うん。私ね、新聞部なの。それでエレンちゃんに取材させて欲しいんだけど? ダメかな?」
「取材、ですか?」
「そうそう」
ドロシーの満面の笑みが怖い。「バーデールからの留学生って珍しいし、みんなもエレンちゃんのことに興味あると思うんだよね」
「そう、ですか?」
「そうそう。しかもロリっぽいし」
聞いたことないような、あるような言葉が飛び出したが、それはスルーしておこう。
「どう? 引き受けてくれない?」
「え、でも。取材って何をするんですか?」
「私のアンケートに答えてくれればいいのよ。後でアンケート用紙を渡すから、それに書いてくれればいいわ。今日の授業が終わったら、新聞部の部室に案内するから。そのときに今までの新聞も見てみたらどうかしら?」
「あ、はい。わかりました」
「でも、前向きに考えてね」
本人が言ったように、裏心は満載だった。でも悪い気がしないのはなぜだろう。
一日の授業が終わり、ぐでっと机に突っ伏していたところ、エレオノーラは再びドロシーに声をかけられた。
「エレンちゃん。疲れちゃった?」
「え、ええ。まあ。慣れていないので」
「そうよね……。どうする? 新聞部の方は明日にする?」
「いえ、今行きます」
疲れたといっても脳みそが疲れただけ。体力的には全然問題は無いのだ。エレオノーラはすっと立ち上がった。
「じゃ、新聞部に案内するわね」
学院は大きく二つの建物があるらしい。それぞれ勉強をする講義棟と、部活や委員会活動を行う活動棟。
二人は講義棟を出て活動棟へと向かう。その棟の一階の一番手前に新聞部の部室があった。
「ようこそ、新聞部へ」
インクの匂いが立ち込めていた。「どうぞ、適当なところに座って」
ドロシーにそう言われたが、エレオノーラが座れそうな場所はソファしか見当たらない。あとは作業机になっているのだろう。書きかけの模造紙やらペンやらがいたるところに散乱している。
「ところで新聞部って、どのようなことをされているのですか?」
ソファにゆっくりと腰を沈めながら、エレオノーラは聞いた。
「え? 新聞部ってわからない?」
「なんとなくはわかるような、わからないような?」
エレオノーラの答えを聞いて、ドロシーは笑った。
「新聞部ってね、こういった学院の情報をまとめて、新聞を作って発行しているの」
「学院新聞?」
「そうそう、その学院新聞を作っているのが私たち新聞部。やっぱり、学院のいいところはみんなに教えてあげたいでしょう? エレンちゃんがわざわざバーデールから留学してきたことも、みんなに教えてあげたいでしょう? それを見た人がエレンちゃんに興味を持って、このドラギラとバーデールの交流が深まるかもしれないよね?」
「そう、ですね?」
エレオノーラにはピンとこないところもあったが、このドロシーが学院のことを好きだということは伝わった。
「相変わらず、ドロシー先輩は部室に来るのが早いですね」
言いながら一人の男子生徒が入ってきた。「あれ? 見慣れない子がいる」
「留学生のエレンちゃん。二学年にきたのよ。今、取材の申し込み中なの」
エレオノーラはすっと立ち上がり「エレン・フランシスです」と名乗ってみる。
「あ、一学年のジェイです」
「ジェイ。今までの新聞、エレンちゃんにあげたいんだけど、どこだっけ?」
「はいはい。バックナンバーですね。とりあえず一年分でいいですかね?」
エレオノーラはジェイから学院新聞を受け取った。
「僕たち新聞部は、二月に一回、学院新聞を発行してるんですよ」
新聞に目を通す。何やら見知った名前を見つけた。フレディ・フランシアと書いてある。
「あ、その先生は、先月学院にいらした先生です。第零騎士団から来たみたいです」
「そうそう、エレンちゃんに頼みたいのもこんな内容だから」
ドロシーが言うこんな内容はフレディの名前が書いてあるところの記事。
「これがアンケート用紙ね。明後日までに書いてきてもらえると助かるな」
エレオノーラはドロシーから一通の封筒を受け取った。ドロシーは楽しそうに笑っていた。
「バーデールからの留学生、エレン・フランシスさんです」
担任の先生に促され、エレオノーラも「エレン・フランシスです」と自己紹介をすると、パチパチと乾いた拍手が起こった。
エレオノーラの潜入先は二学年の特別クラスといわれているところ。このクラスは何かしら秀でた者たちが集められているクラスらしい。
「エレンさんの席は、そこの空いている席です」
特別クラスであるからか、生徒の人数も十五人程度しかいない。席も五列かける三行になっているのではなく、ゆるやかな半円の弧になっていて横に並んでいる。
エレオノーラの席は、その一番右端だった。一つ席を足すのであれば端っこに足すのが普通なのだろうが。
「私、ドロシー。よろしくね、エレンちゃん」
席につくと同時に、隣の赤毛の女の子が声をかけてくれた。
「はい、よろしくお願いします」
笑顔で答えてみた。だけど心の中は嬉しさで溢れている。
そう、よくよく考えてみたら、エレオノーラに友達と呼べるような人物がいなかったのだ。ウェンディは兄の婚約者ということもあってよく話はするけれど、周囲には大人が多かったし、騎士団の仲間たちも年上が多いし。何かの相談事も家族にすることが多かったし。
と、やっぱり友達がいなかったということに気付く。ちらっと、隣のドロシーに視線を向けると目が合った。嬉しい。この一言に尽きる。
授業はエレオノーラにとっては簡単なものだった。何しろ、二学年も下の内容だ。できない方がおかしい、と兄たちには言われている。変なプレッシャーをかけてくるのだ。
休憩時間になると、ドロシーが声をかけてくれた。それから数人の女子生徒も。どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい。
昼休憩時間もドロシーが食堂を案内してくれた。学食と言うらしい。
「ドロシーさんが声をかけてくださって、本当に助かりました」
エレオノーラはプレートにのっている付け合わせの野菜をゆっくりとカットする。
「そう? でもね、私も裏心があって声をかけたんだ」
「裏心、ですか?」
どんな心だろう。
「うん。私ね、新聞部なの。それでエレンちゃんに取材させて欲しいんだけど? ダメかな?」
「取材、ですか?」
「そうそう」
ドロシーの満面の笑みが怖い。「バーデールからの留学生って珍しいし、みんなもエレンちゃんのことに興味あると思うんだよね」
「そう、ですか?」
「そうそう。しかもロリっぽいし」
聞いたことないような、あるような言葉が飛び出したが、それはスルーしておこう。
「どう? 引き受けてくれない?」
「え、でも。取材って何をするんですか?」
「私のアンケートに答えてくれればいいのよ。後でアンケート用紙を渡すから、それに書いてくれればいいわ。今日の授業が終わったら、新聞部の部室に案内するから。そのときに今までの新聞も見てみたらどうかしら?」
「あ、はい。わかりました」
「でも、前向きに考えてね」
本人が言ったように、裏心は満載だった。でも悪い気がしないのはなぜだろう。
一日の授業が終わり、ぐでっと机に突っ伏していたところ、エレオノーラは再びドロシーに声をかけられた。
「エレンちゃん。疲れちゃった?」
「え、ええ。まあ。慣れていないので」
「そうよね……。どうする? 新聞部の方は明日にする?」
「いえ、今行きます」
疲れたといっても脳みそが疲れただけ。体力的には全然問題は無いのだ。エレオノーラはすっと立ち上がった。
「じゃ、新聞部に案内するわね」
学院は大きく二つの建物があるらしい。それぞれ勉強をする講義棟と、部活や委員会活動を行う活動棟。
二人は講義棟を出て活動棟へと向かう。その棟の一階の一番手前に新聞部の部室があった。
「ようこそ、新聞部へ」
インクの匂いが立ち込めていた。「どうぞ、適当なところに座って」
ドロシーにそう言われたが、エレオノーラが座れそうな場所はソファしか見当たらない。あとは作業机になっているのだろう。書きかけの模造紙やらペンやらがいたるところに散乱している。
「ところで新聞部って、どのようなことをされているのですか?」
ソファにゆっくりと腰を沈めながら、エレオノーラは聞いた。
「え? 新聞部ってわからない?」
「なんとなくはわかるような、わからないような?」
エレオノーラの答えを聞いて、ドロシーは笑った。
「新聞部ってね、こういった学院の情報をまとめて、新聞を作って発行しているの」
「学院新聞?」
「そうそう、その学院新聞を作っているのが私たち新聞部。やっぱり、学院のいいところはみんなに教えてあげたいでしょう? エレンちゃんがわざわざバーデールから留学してきたことも、みんなに教えてあげたいでしょう? それを見た人がエレンちゃんに興味を持って、このドラギラとバーデールの交流が深まるかもしれないよね?」
「そう、ですね?」
エレオノーラにはピンとこないところもあったが、このドロシーが学院のことを好きだということは伝わった。
「相変わらず、ドロシー先輩は部室に来るのが早いですね」
言いながら一人の男子生徒が入ってきた。「あれ? 見慣れない子がいる」
「留学生のエレンちゃん。二学年にきたのよ。今、取材の申し込み中なの」
エレオノーラはすっと立ち上がり「エレン・フランシスです」と名乗ってみる。
「あ、一学年のジェイです」
「ジェイ。今までの新聞、エレンちゃんにあげたいんだけど、どこだっけ?」
「はいはい。バックナンバーですね。とりあえず一年分でいいですかね?」
エレオノーラはジェイから学院新聞を受け取った。
「僕たち新聞部は、二月に一回、学院新聞を発行してるんですよ」
新聞に目を通す。何やら見知った名前を見つけた。フレディ・フランシアと書いてある。
「あ、その先生は、先月学院にいらした先生です。第零騎士団から来たみたいです」
「そうそう、エレンちゃんに頼みたいのもこんな内容だから」
ドロシーが言うこんな内容はフレディの名前が書いてあるところの記事。
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