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【第三部】堅物騎士団長に溺愛されている変装令嬢は今日もその役を演じます
12.開演です
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学院の卒業パーティの前に、演劇部の卒業公演がある。これは卒業生たちに、在校生が贈るもの。最終学年がこの劇を見て、安心して後輩たちに部を任せられると思うように行っている公演。
たいてい、観覧者は演劇部の関係者が多いのだが、なぜか今年は部外者が多い。それは演劇部員の宣伝のおかげに違いないだろう。
さて、観客席にどんな部外者がいるかというと、目立つのは生徒会長であるアレックス・リンドレー。彼の目的はもちろんエレオノーラだ。アレックスが暴走したときのためにハリーがその隣にいる。それから前評判が高いとして、ドロシーも取材を兼ねて観客席にいた。隣にはサイモン。
関係者としては、演劇部員の家族や親類。そしてこの学院の教師陣。エレオノーラの関係者はもちろんリガウン侯爵夫妻。残念ながらジルベルトは招待できていない、と思ったら、別枠でこちらに潜り込んだらしい。フレディ経由の騎士団枠としての参加らしい。ちなみに騎士団枠としては、ちゃっかりダニエルやドミニクまでいる。ダニエルが言うには、こんな面白いものを見ないわけにはいかない、らしい。だが、この演劇部の中から第零の諜報部として三人も推してきているため、そこも見ておきたいという気持ちがあった。ドミニクはエレオノーラの活躍をひたすら楽しみにしている。ちなみにこの騎士団枠席は、五列から六列目のセンターブロック席を占有している。舞台からこの一団に気付いたら、多分ビビる。むしろエレオノーラは嫌がるだろう。
静かに幕が上がった。すると部隊の中央には、白いドレスを身に着けた女性、いや女性役だから中身は男子生徒が、しおらしく立っていた。舞台とこちらの座席ではそれなりに距離はあるが、女性にしか見えない。
え、と言う疑問形の声と、キャー、クリスさまーという黄色いファンの声が上がった。学院の卒業公演だから、見る側も演劇の邪魔にならない限り、言動は自由だ。
ダニエルはその少女ではなく男子生徒をじっと見つめていた。彼はエレオノーラが諜報部にと推してきた男子生徒だ。腕を組み、難しい表情を浮かべていると、隣のジルベルトが不思議そうに彼に視線を向けた。彼はセリフを少し高い声で発していた。これも、なかなかの技術。エレオノーラが推すだけのことはある。
下手の方から、一人の男性が現れた。男性、つまり中身は女子生徒のはずなのだが、どこからどう見ても男性。この男性を見て、フランシア三兄弟は気付いた。間違いなく、これはエレオノーラである、と。
ここでも、キャー、エレンさまーという黄色い声が上がった。いつの間にかファンがついていた。
「あれが留学生か?」
アレックスは隣のハリーに尋ねた。
「そうだな。彼女はクリスと共に主役を務めているはずだからな」
「なるほど。だが、あれはどこからどう見ても男だな。歩き方も。だが、声はどうだろうか」
生徒会室で言葉を交わしたとき、彼女の声はその姿に似合ったとても可愛らしい声だった。だが、どこか凛とした強さを感じた。
彼女が舞台でその声を出す。また、客席はざわつく。
「あれは、本当に留学生か?」
アレックスは再び隣の席のハリーに尋ねてしまった。
「ああ、そうだな。間違いなく留学生のエレンだな。彼女はクリスと共に主役を務めているはずだから」
ハリーも再び同じような答えをしてしまった。
わかっている、あの男性を留学生のエレンが演じていると言うことは。だが、なぜかそれが信じられないのだ。あそこにいるのは、ドラギラ騎士団のノディという男。そしてこの男から目が離せない。
この劇の中で、男女入れ替えをうまく演じていたのは主役級の二人。この二人は仕草だけでなく声色が全然違っていた。他の脇役たちは、観客から笑いを引き出すために一役買っていた。いや、一役どころではなく四役くらい。それだけ、笑いが溢れる劇なのだ。
だが、クライマックスに向けてその笑いも封印される。どこからか、鼻をすする音が聞こえてくる。これは不思議なもので、誰か一人が鼻をすすり始めると、次から次へとそのような人たちが増えてくる。もちろん劇の内容がそうさせている、というのもあるのだが。
そんな涙を誘うなか、幕が下りた。それと同時に割れんばかりの拍手が起こった。座席を立ち上がる者もいる。そしてその拍手は鳴りやまない。
再び幕が上がり、それでやっと拍手が鳴りやんだ。舞台の上には出演者、そして裏方たちも一列に並んでいた。それの中心にいるのはジェイミ。演劇指導をしたいと言いながらも、この舞台を全部取り仕切る舞台監督的な立場を担っていたのだ。
ジェイミが何か言うと、最終学年の元演劇部部長も舞台に上がり、ジェイミから大きな花束が渡された。元部長も、今日の劇は予想外の斜め上をいくもので、後輩たちには期待しかありません、と。涙ながらに語っていた。
これにて劇はおしまい。あとは客席のみなさんも帰るだけ。ぞろぞろと観客席からホールへと人が移動する。すでにホールには演劇部員がずらっと並んでいて、今日、この演劇を見てくれた人たちに御礼を言っていた。やはり進みが悪いのはクリスの前で、女子生徒が彼を囲んで群がっている。次にエレオノーラ。こちらも不思議なことに女子生徒。
エレオノーラがリガウン侯爵夫妻の姿を見つけると、群がる女子生徒たちにちょっと挨拶をしてから、そちらの方に駆け寄った。
「今日はわざわざお越しいただいてありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ素敵な劇に招待してくれてありがとう。あまりここではお話できないのでしょう? あとは戻ってきたときにゆっくりね」
義母はウィンクをすると、義父と共に会場を後にする。
「エレン、あちらはドラギラの騎士団の皆さんよ」
ジェイミに声をかけられたので、彼女と一緒にそちらへと向かう。完全に見知った顔ではあるが、それを悟られないようにしなければならない。
「本日はお越しいただきまして、ありがとうございます」
ジェイミがペコリと頭を下げたので、エレンもそれの真似をした。頭を上げた時に、ジルベルトと目が合ったが、気付かない振りをした。ここで彼との関係が露呈することは望ましくない。
「ジェイミ。素晴らしい劇だったよ。これからも期待している」
フレディがジェイミにそう声をかけて、その場を去った。エレオノーラはふっと、短く息を吐いた。顔見知りがいなくなったことへの安堵感。
「エレンちゃぁぁああん」
と言って駆け寄ってきたのはドロシー。その彼女の声に驚いたのか、帰ろうとする人たちまでもがギョッと振り返る。その中にはもちろんフランシア三兄弟とジルベルトも含まれるのだが。
「エレンちゃん。あなた、もう、最高よ。私、ますますエレンちゃんのことが好きになっちゃった」
ドロシーがエレオノーラの首元に抱き着くと、これまたキャーと言う黄色い声が上がる。
「ドロシーさん。ありがとうございます。でも、他の方もおりますからまずは落ち着いてください」
エレオノーラは張り付いていたドロシーを引き離した。
ジルベルトに見られたら面倒くさいなと思って、周囲を確認すると、彼はまだいた。会場から出ていなかったらしい。ジルベルトは何やらこちらをチラチラと気にしながらも、ダニエルと会話をしながらそこから遠ざかる。
ドロシーは女性だし、多分、大丈夫だろう。というエレオノーラの考えが甘かったのは、その日、屋敷に戻ってから知らされることとなった。
たいてい、観覧者は演劇部の関係者が多いのだが、なぜか今年は部外者が多い。それは演劇部員の宣伝のおかげに違いないだろう。
さて、観客席にどんな部外者がいるかというと、目立つのは生徒会長であるアレックス・リンドレー。彼の目的はもちろんエレオノーラだ。アレックスが暴走したときのためにハリーがその隣にいる。それから前評判が高いとして、ドロシーも取材を兼ねて観客席にいた。隣にはサイモン。
関係者としては、演劇部員の家族や親類。そしてこの学院の教師陣。エレオノーラの関係者はもちろんリガウン侯爵夫妻。残念ながらジルベルトは招待できていない、と思ったら、別枠でこちらに潜り込んだらしい。フレディ経由の騎士団枠としての参加らしい。ちなみに騎士団枠としては、ちゃっかりダニエルやドミニクまでいる。ダニエルが言うには、こんな面白いものを見ないわけにはいかない、らしい。だが、この演劇部の中から第零の諜報部として三人も推してきているため、そこも見ておきたいという気持ちがあった。ドミニクはエレオノーラの活躍をひたすら楽しみにしている。ちなみにこの騎士団枠席は、五列から六列目のセンターブロック席を占有している。舞台からこの一団に気付いたら、多分ビビる。むしろエレオノーラは嫌がるだろう。
静かに幕が上がった。すると部隊の中央には、白いドレスを身に着けた女性、いや女性役だから中身は男子生徒が、しおらしく立っていた。舞台とこちらの座席ではそれなりに距離はあるが、女性にしか見えない。
え、と言う疑問形の声と、キャー、クリスさまーという黄色いファンの声が上がった。学院の卒業公演だから、見る側も演劇の邪魔にならない限り、言動は自由だ。
ダニエルはその少女ではなく男子生徒をじっと見つめていた。彼はエレオノーラが諜報部にと推してきた男子生徒だ。腕を組み、難しい表情を浮かべていると、隣のジルベルトが不思議そうに彼に視線を向けた。彼はセリフを少し高い声で発していた。これも、なかなかの技術。エレオノーラが推すだけのことはある。
下手の方から、一人の男性が現れた。男性、つまり中身は女子生徒のはずなのだが、どこからどう見ても男性。この男性を見て、フランシア三兄弟は気付いた。間違いなく、これはエレオノーラである、と。
ここでも、キャー、エレンさまーという黄色い声が上がった。いつの間にかファンがついていた。
「あれが留学生か?」
アレックスは隣のハリーに尋ねた。
「そうだな。彼女はクリスと共に主役を務めているはずだからな」
「なるほど。だが、あれはどこからどう見ても男だな。歩き方も。だが、声はどうだろうか」
生徒会室で言葉を交わしたとき、彼女の声はその姿に似合ったとても可愛らしい声だった。だが、どこか凛とした強さを感じた。
彼女が舞台でその声を出す。また、客席はざわつく。
「あれは、本当に留学生か?」
アレックスは再び隣の席のハリーに尋ねてしまった。
「ああ、そうだな。間違いなく留学生のエレンだな。彼女はクリスと共に主役を務めているはずだから」
ハリーも再び同じような答えをしてしまった。
わかっている、あの男性を留学生のエレンが演じていると言うことは。だが、なぜかそれが信じられないのだ。あそこにいるのは、ドラギラ騎士団のノディという男。そしてこの男から目が離せない。
この劇の中で、男女入れ替えをうまく演じていたのは主役級の二人。この二人は仕草だけでなく声色が全然違っていた。他の脇役たちは、観客から笑いを引き出すために一役買っていた。いや、一役どころではなく四役くらい。それだけ、笑いが溢れる劇なのだ。
だが、クライマックスに向けてその笑いも封印される。どこからか、鼻をすする音が聞こえてくる。これは不思議なもので、誰か一人が鼻をすすり始めると、次から次へとそのような人たちが増えてくる。もちろん劇の内容がそうさせている、というのもあるのだが。
そんな涙を誘うなか、幕が下りた。それと同時に割れんばかりの拍手が起こった。座席を立ち上がる者もいる。そしてその拍手は鳴りやまない。
再び幕が上がり、それでやっと拍手が鳴りやんだ。舞台の上には出演者、そして裏方たちも一列に並んでいた。それの中心にいるのはジェイミ。演劇指導をしたいと言いながらも、この舞台を全部取り仕切る舞台監督的な立場を担っていたのだ。
ジェイミが何か言うと、最終学年の元演劇部部長も舞台に上がり、ジェイミから大きな花束が渡された。元部長も、今日の劇は予想外の斜め上をいくもので、後輩たちには期待しかありません、と。涙ながらに語っていた。
これにて劇はおしまい。あとは客席のみなさんも帰るだけ。ぞろぞろと観客席からホールへと人が移動する。すでにホールには演劇部員がずらっと並んでいて、今日、この演劇を見てくれた人たちに御礼を言っていた。やはり進みが悪いのはクリスの前で、女子生徒が彼を囲んで群がっている。次にエレオノーラ。こちらも不思議なことに女子生徒。
エレオノーラがリガウン侯爵夫妻の姿を見つけると、群がる女子生徒たちにちょっと挨拶をしてから、そちらの方に駆け寄った。
「今日はわざわざお越しいただいてありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ素敵な劇に招待してくれてありがとう。あまりここではお話できないのでしょう? あとは戻ってきたときにゆっくりね」
義母はウィンクをすると、義父と共に会場を後にする。
「エレン、あちらはドラギラの騎士団の皆さんよ」
ジェイミに声をかけられたので、彼女と一緒にそちらへと向かう。完全に見知った顔ではあるが、それを悟られないようにしなければならない。
「本日はお越しいただきまして、ありがとうございます」
ジェイミがペコリと頭を下げたので、エレンもそれの真似をした。頭を上げた時に、ジルベルトと目が合ったが、気付かない振りをした。ここで彼との関係が露呈することは望ましくない。
「ジェイミ。素晴らしい劇だったよ。これからも期待している」
フレディがジェイミにそう声をかけて、その場を去った。エレオノーラはふっと、短く息を吐いた。顔見知りがいなくなったことへの安堵感。
「エレンちゃぁぁああん」
と言って駆け寄ってきたのはドロシー。その彼女の声に驚いたのか、帰ろうとする人たちまでもがギョッと振り返る。その中にはもちろんフランシア三兄弟とジルベルトも含まれるのだが。
「エレンちゃん。あなた、もう、最高よ。私、ますますエレンちゃんのことが好きになっちゃった」
ドロシーがエレオノーラの首元に抱き着くと、これまたキャーと言う黄色い声が上がる。
「ドロシーさん。ありがとうございます。でも、他の方もおりますからまずは落ち着いてください」
エレオノーラは張り付いていたドロシーを引き離した。
ジルベルトに見られたら面倒くさいなと思って、周囲を確認すると、彼はまだいた。会場から出ていなかったらしい。ジルベルトは何やらこちらをチラチラと気にしながらも、ダニエルと会話をしながらそこから遠ざかる。
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