堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

澤谷弥(さわたに わたる)

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【第三部】堅物騎士団長に溺愛されている変装令嬢は今日もその役を演じます

19.エピローグです

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「まあ、エレン。気がついたのね」
 目を開ければ見慣れた風景。そして見慣れた人物と聞き慣れた声。
 いつの間にかドレスから寝巻に着替えさせられている。これはパメラの仕業だろう。

「お義母さま?」

「あぁ、良かったわ。あなた、貧血で倒れたのよ。覚えているかしら?」

「えっと」
 覚えているかしら、と言われたため思い出そうとする。とりあえず悪党の親玉をやっつけたところまでは思い出した。
「はい、なんとなく。あの、ジル様とお義父さまは? また、例の件の取り調べであちらに行っているのでしょうか?」
 首だけを義母の方に向けて尋ねた。
 あれだけの悪党を捕まえてしまったのだ。また、騎士団の仕事が忙しくなるのは目に見えている。

「ええ、そうね。でも今はこちらにいるのよ。あなたが倒れたからって」
 ジルベルトのことだ。また、騎士団で一暴れしたに違いない。
「エレン、今、ジルがまた騎士団で暴れたって思ったでしょう?」

「もしかして、顔に出てましたか?」

「ええ、思いっきり」
 義母はエレオノーラを安心させるかのように静かに笑う。

「あなたのお兄さんたちが、ジルの代わりに引き受けてくれたらしいのよ。だから、心配しなくて大丈夫よ」
 それって、間違いなくジルベルトが暴れるのを事前に防いだとしか思えない。

「それよりも、あなた。気が付いていたのかしら?」

「何を、ですか?」

「お腹」

「腹筋ですか?」

「ではなくて。ああ、やっぱり。気がついていなかったのね」

 哀れみなのか喜びなのか、わからないような微妙な表情を浮かべる義母。

「あなたのお腹に、赤ちゃんがいるのよ。まだ、とっても小さな命だけれど」

「え?」

「心当たりは?」

「えっと、たくさんありすぎて。どれがどれだか。まぁ、間違いなく相手はジル様ですが」
 そう、と言って義母はぷっと笑った。
「そろそろジルを呼んできましょうね。あなたのことをかなり心配していたから」

「あの、お義母さま。その、ジル様はご存知なのですか? その、お腹のことを」

「いいえ。お医者様がいらしたときも、私が付き添いましたからね。だから、あなたから伝えてちょうだい」

「あの、お義母さま。お義母さまにはいろいろとご相談したいこともあるのですが」

「それは後からゆっくり聞くわ。まずはあの息子に、あなたの顔を見せてあげて」
 言うと義母はゆっくり立ち上がり、部屋を出ていく。その後、義母が廊下でスキップしていたのをエレオノーラは知らない。
 部屋に一人。エレオノーラは静かにお腹の上に両手を重ねた。ここに宿った小さな命。まだ何も感じない。

「エレン」
 ゆっくりと部屋の扉を開けて、ジルベルトが入ってきた。

「ジル様。ご心配をおかけしてしまって、すいません」
 エレオノーラは静かに首を横に向けた。ジルベルトはベッド脇の、先ほどまで義母が座っていた椅子に腰をおろす。

「急に倒れたから驚いた。貧血だと聞いた。やはり、潜入捜査が負担だったのか?」

「いいえ」

「きちんとご飯を食べていなかったのか?」

「いいえ。潜入捜査は、学院生活を送るだけですから、大した負担ではありません。ご飯もモリモリ美味しくいただいておりました」

「だったら、なぜ」
 ジルベルトがエレオノーラの手を握った。

「えっと、お腹に」
 その握られた手を、お腹の上へと移動させる。

「君の腹筋は相変わらずだな」

「えっと、腹筋ではなくて、ですね。どうやら、お腹に赤ちゃんがいるようで」

 ジルベルトは思わず手を離してしまった。そして、ガタンと激しく音を立てて立ち上がる。あまりにもの勢いに、椅子は後ろに倒れてしまった。

「ここに、赤ちゃんがいるのか?」

「はい」
 エレオノーラは優しく笑う。
「ジル様と私の赤ちゃんです」

「そうか」
 ジルベルトは優しくエレオノーラのお腹に手を添える。













 騎士団にも新入団員が入団する時期になった。王立学院の卒業生からの入団者は四名。そして、残念ながら第零騎士団への配属は零。何しろ特殊ルートからの入団だから仕方ないといったら仕方ないのだが、それよりも人手不足の方が深刻な問題として挙げられている。
 その人手不足を解消するためには、どうしたらよいのか、ということにショーン団長も頭を悩ませているとかいないとか。

 さらにフランシア三兄弟にとってはおめでたい話題が続く。
 長男のダニエルの結婚がやっとこ決まった。そして次男のドミニクが広報副部長として昇格したのも、おめでたい話題。三男のフレディは怪しい機械作りに勤しんでいる。エレオノーラにもたせた発信機が意外と好評で、今はこれの改良に励んでいるらしい。

 そして第零騎士団の名簿からはレオンという騎士の名前が消えた。代わりにエレオノーラ・リガウンといういかにも第一騎士団の団長の妻の名が名簿に並んだ。どうせ変装したらばれないんだから、どっちでもいいんじゃね? というショーン団長の意見にダニエルが同意した形になる。むしろ、エレオノーラでいてくれた方が、ジルベルトを扱いやすくていい、というショーン団長の意見にダニエルがその通りかもしれない、と思った結果でもある。
 そのエレオノーラは一時的に諜報部から広報部への異動となった。それは彼女の身体を気遣かったショーン団長の配慮にもよるものだが、彼女は新しい仕事を任されることになったのだ。

 というのも、騎士団はその不人気一掃のために、学生を騎士見習いとして受け入れることにしたからだ。基本的には学院の授業が無い日。そしてそれの初日が今日。
 騎士見習いは各団長が学院に赴いて、めぼしい生徒をスカウトしてきたらしい。そのスカウトされた生徒の名簿をエレオノーラが確認すると、見知った名前がちらほらと。
 クリス・トーレス、キャシー・ミラー、ジェイミ・タイラー、サイモン・フロスト、サリー・ヘイマン、ベルニス・ノアイユ。
 そして。
「エレオノーラ・リガウンです。皆さんがこちらで騎士見習いとして学んでいくためのお手伝いをさせていただきます」
 カタンと椅子を鳴らして立ち上がる生徒がいた。
「もしかして、エレンちゃん?」

「はい、お久しぶりです。ドロシーさん」
 学院で一番最初に声をかけてくれた生徒を、もちろんエレオノーラは忘れていない。彼女はドロシー・ラワット。

「エレンちゃんって、年上だったの?」
 ドロシーのその言葉に、他の生徒も動揺する、が。

「こう見えても人妻だ」
 というドミニクの一言によって、その場はさらに凍りついた、とか。


















「あ」
 エレオノーラがお腹に手を添える。

「どうかしたのか?」
 ジルベルトが優しく問う。

「今、蹴られました」
 エレオノーラのお腹も少しずつ膨らみ始めた。胎動も感じられるようになった。ポコポコと自分の意思とは関係なく動くお腹が、愛おしい。
「ジル様。私、幸せです」

「そうか、奇遇だな。私もだ」

「あの時、田舎に引っ込まなくて良かったです」

「そうだな」

 ジルベルトは隣に座る妻の肩を優しく抱き寄せる

「ジル様。きちんと最後まで責任を取ってくださいね」

 エレオノーラは夫の顔を見上げて、そう呟いた。
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感想 5

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みんなの感想(5件)

ori (kaori)
2022.01.07 ori (kaori)

夜中から一気読みで読了しました!

面白かった~!!

まだまだこのご夫妻…というか、ご両家、
騒動が続きそうですね…楽しみです。

2022.01.07 澤谷弥(さわたに わたる)

ご感想ありがとうございます。

えぇ、全年齢も書けるんですよ?(笑)

解除
タカちゃん
2021.11.09 タカちゃん

早々の修正ありがとうございます♡

魅力的な皆様のその後が気になります。
また、是非続きを♪

最後のベルちゃん誘拐事件も、金銭目的の割には組織だってたし、スペクターもどきの巨悪組織が裏にいたのかとか気になり期待値上がってます(๑>◡<๑)

2021.11.09 澤谷弥(さわたに わたる)

ご感想ありがとうございます。

個人的には、エレオノーラの兄3人がお気に入りです(笑)

解除
タカちゃん
2021.11.08 タカちゃん

今更、一気読みさせて頂いてます。

3部の7,10話の子どもの時間です⑴と⑵、内容が全く同じで〜す Σ੧(❛□❛✿)

2021.11.08 澤谷弥(さわたに わたる)

ご指摘ありがとうございます。
また予約投稿時にやってしまったものと思われます。。

解除

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