獣舎の全魔獣を管理していた私を、無能呼ばわりで解雇ですか?じゃあ好き勝手に旅をします。困っても知りません。

藤 ゆみ子

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第4話 初めての野営

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「――なので、聖女として働くために王宮へ行きましたが、聖女にはなれなかったのです」
「フィーナは人間じゃなくて、魔獣たちの聖女だったんだな」
「魔獣たちの、聖女……」

 私の魔力は人間ではなく、魔獣に対して使えるものだったんだ。

 ずっと、苦しかった。光属性の魔力を持ちながら治癒魔法を使えないことが。
 なんのための魔力なのか。
 私ではなく、違う人が持っていたら、聖女として国のために尽くすことができたかもしれないのにと。

 私はちゃんと、あの子たちの役に立っていたのかな。
 知っていたらもっと出来たことがあったかもしれないけど、それはもう考えても仕方ないこと。
 あの子たちが教えてくれなかったのも何か理由があるはずだし。

「フィーナはこれからどうするんだ?」
「旅をしようと思っているんです。昔友人だった魔獣のキュウを探しながら、いろいろな魔獣たちと出会う旅を」
「いいじゃん。キュウってどんな魔獣?」
「私もあの子もまだ幼かったのでよくわからないんですけど、小さな羽があって、可愛らしい牙がありました」

 六歳の時、家の裏にある丘でキュウキュウと鳴いている子を見つけた。
 近くに行くと「痛い痛い」と泣いているのがわかり、そっと抱き上げた。
 それが、キュウとの出会い。

「小さな羽と牙か。翼犬とかかな?」
「わかりませんが、会えばわかると思います」
「そっか! 見つかるといいな」
「はい。ありがとうございます」

 あの頃のキュウは背中にフワフワの毛が生えていて、モフモフして気持ちよかった。
 そういえば、お腹には毛はなかったな……。
 てことは翼犬ではないのかな。
 なんにせよ、会えばわかる。そう確信している。

「この後はどこに行くんだ?」
「森を抜けてアルカ国に入ろうと思っていたんです。しばらくキュウを探しながら滞在しようかと」
「なら、一緒に行こうぜ。俺もこれからアルカ国に戻るから」
「いいのですか? それは嬉しいです」

 さっきは可愛らしい天角鹿の子どもだったけど、この先魔物と遭遇するかもしれないし、危険な目に合わないとも限らない。
 A級テイマーのゼンデさんが一緒だと心強い。

「しばらく滞在するなら街も案内するよ。俺も少し休みがあるから」
「本当ですか? ありがとうございます。ランさんもよろしくお願いします」
(こちらこそ。女の子がいると華があっていいわあ)
「ラン、それはどういうことだよっ」

 二人のやり取りを微笑ましく思いながら、私たちはアルカ国に向かって歩き出した。

「ゼンデさん、先ほど言っていた魔獣を不正売買している組織とは、どういった組織なんですか?」
「やつらの正体は不明で、今のところわかっているのは、魔獣を手荒く捕まえては高値で商人に売りつけたり、見世物にして稼いでいるってことだな」
「ひどい……」

 魔獣をまるで物のように、商売道具として扱っているなんてひど過ぎる。
 たしかに、主人を亡くし行き場のなくなった魔獣たちの新しい飼い主を探すという目的で、売買を行う仕組みもある。
 でも、自然に生きている魔獣を怪我をさせて無理やり捕まえて売るなんて許せない。

「商売をしているグループと魔獣を捕獲するグループは違っていて、どれだけ商売元を取り締まっても、なくならない」
「捕獲グループを捕まえないといけないということですね」
「ああ。でも、なかなか足を掴ないんだ」

 今回、この森に仕掛けられていた罠の場所、数、狙われている魔獣などを報告するために戻るのだそう。
 他の冒険者たちも集めている情報を元に、データをまとめ、また任務に向かう。
 次の指令が出るまでは、アルカ国で待機なのだそうだ。

「私にできること、なにかありませんか?」
「手伝ってくれるのか?」
「もちろんです。お役に立てることがあればいいのですが……」
「だったら、一緒に行ってもらいたい場所があるんだ」

 アルカ国でキュウを探すといってもなんの手がかりもない。
 むやみにただ探すより、私にできることをしながら探す方がいい。
 それに、魔獣たちが危険にさらされているのに放っておけない。
 
「わかりました」
「ありがとう。とりあえず、そろそろ暗くなるから今日はここら辺で野営だな」
「野営……そうですよね。初めてですが、頑張ります!」
「そんなに張り切らなくても大丈夫だから」

 でも、野営って大変なんじゃないだろうか。
 薪や枯れ葉を集めて火を熾したり、食料を調達したり。
 けれど、座っていてと言われ、促されるまま大きく露出している木の根に腰掛ける。

 ゼンデさんは近くに落ちている木の枝を適当に集め、手をかざす。
 すると小さな炎が出現し、あっという間に火がついた。

「すごい……火の魔法だ」
「俺は火属性の魔力を持ってるんだ。けっこう便利だぜ」

 そこに、いつの間にかいなくなっていたランさんが、魚を三匹咥えて戻ってきた。

(血抜きもしといたわよ)
「ラン、今日はサービスがいいじゃん」
(女の子がいるんだから当たり前よ)

 ゼンデさんは魚を手際よく木の枝に刺し、焼き始める。

「お二人とも、何から何までありがとうございます」

 焼けた魚はしっかりと血抜きをしてくれていたおかげで生臭さもなく、とても美味しかった。

 食べたあと、すぐにゼンデさんは木の根を枕に寝転ぶ。
 
 こうやって寝るんだ。
 硬そうだけど、仕方ないよね。
 私も木の根を枕に寝転ぼうとしたが、その瞬間、フワフワで温かいものに包まれた。

(そんなところで寝たら体を痛めるわよ)
「ランさん……いいのですか?」
(もちろんよ。私もフィーナといると癒されるの)
「ありがとうございます」

 そのままランさんのモフモフの体に身を預ける。

「明日の昼くらには森を抜けれるから。そしたらすぐアルカの街がある」
「そうなのですね。エルドラードから出るのは初めてなので少しドキドキします」
「美味いもんもいっぱいあるし活気があっていいところだから」
「それは楽しみです」
「ああ。じゃあ寝ようぜ」
「はい、おやすみなさい」

 今日はいろいろなことがあり過ぎた。
 掃除婦を解雇されて勢いで旅に出てしまったけど、良い人たちに出会えてよかったな。

 私は温かなモフモフに安心しながら、ゆっくりと目を閉じた。
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