【本編完結】愛だの恋だの面倒だって言ってたじゃないですか! あ、私もか。

ぱっつんぱつお

文字の大きさ
99 / 175

劇薬口に超苦し

しおりを挟む

(い、いたい……! 身体中痛い……! あーー、ツライーー……)

 この感じは久し振りだ。なんか色々頑張り過ぎると大体こうなる。こうなると分かっていても乗り越えなければならないものだから仕方無い。
 今回はパーティーが立て続けにあってその合間にも何やかんやあって、そして結婚までしちゃって、身体はとうに限界だったのだろう。
(ストレスも感じてたしなぁ…………普通に疲れたよわたしは……)

「はぁっ……つら……」

 ブルーは心配してくれているのか、大丈夫かと声を掛け、自室で寝込む私のベッドに腰掛けた。
 今日はクラリス含む帝国軍人数名と、騎士団・護衛騎士・異世界人の観光を兼ねての親睦会だったのだが、異世界人の一人である私はこんな状態だ。どう我慢しても無理。

 交流会に参加するのは、メグと殿下と、護衛騎士の隊長・副隊長、そしてブルーと騎士団の副団長。一応なりとも騎士団長の妻になったわけだから紹介の意もあるんだと思う。
 因みに帝国軍の部隊は第三まであって、第一と第二は皆が想像するような戦争で戦う兵士達。
 第三は簡単に言えば近衛で、護衛騎士とは似たような存在だ。
 今回来賓しているのは第一と第三部隊、第二は自国でお留守番中。とは言っても部隊の全員が来れるわけじゃないので限られた人しか来賓してないのだが。

「ひどい熱だな……」
「あはは……一気にくるタイプなもんで……」
「頼まれた薬、作ってもらったが……。これは人が飲めるものなのか……?」
「あ、ありがとうございます、すみません……わざわざ……」

 怪訝な顔してソレを見つめるブルー。
 濃い緑色したでろでろの液体……というのか物体と言ったほうが正しいのか。手のひらより少し小さい瓶に詰められた劇薬。でも効果は確か、な筈。

「人が飲めるかと問われたら……う~んって感じです……」
「は……?」
「いや、でも、ものすごく、強力な滋養強壮効果があるので、はぁ……もう少し熱下がったら飲ませてもらいます」
「辛いなら喋るな」

 はい、とほぼ吐息の返事をブルーは無言で受け止め、頬をすりすりと指で撫でる。
 頭がぼーっとしていま話してる内容も反射神経で喋ってるような感覚だが、彼の指先が火照った頬には冷たくて心地良い。

「早く良くなれ。グレンのチームも、団員たちも、皆心配していたぞ」
「ほんとですか……みんな優しー……」
「…………では、私はそろそろ行ってくるよ」
「はい……あ、あの、ごめんなさい、ほんと……クラリスさん達に行けなくて、すみませんって、言っといて下さい……はぁっ」
「ああ。……もう一度言うが、無理をさせたのは私達の国であるから、千聖のせいではないからな」
「あはは……優しさ身に沁みますね、はっ、はぁ、」

 もう喋るな、と念を押すブルー。
 この前も言われたっけ。いつだったか。
 そう、初花の儀だった。
 そういえば寝るときちゃんと歯を磨いただろうか。磨いて寝たような記憶もあるけど、いつ寝たんだっけ。
(……あれ、なんか誰かに乗っかられたような記憶が……え、まさか私、過ちを……?? いやいや……ブルーさんがそんな事するはずないか……あぁ……もうだめ……少し考えたら疲れる、あたま回んない……)

 ぐるぐると頭を回すわたしの手を、彼は自身の口元まで持っていくと、甲にちゅ、と口づけした。
 そしてブルーが腰掛け、沈んでいたベッドが元に戻る。
 はやく良くなれというまじないか何かなのか。顔の良い奴はなんでも様になるからズルい。加えてさらりとこんな事できるんだからモテるはずだ。
 メルヴィンも少しは見習ってほしい。じゃなきゃあの目をうるうるさせたエロそうな女を盗られてしまうぞ。

「あ、いってらっしゃい」
「っ…………いってきます」

 ブルーが部屋から出ると、入れ替わるようにメイド長のイザベラが入って来た。
 身体を拭いて着替えましょうと準備をするが、汗をかいたからどうしてもシャワーを浴びてさっぱりしたくて、無理を言ってお願いした。伝染るかもしれないのに嫌がりもせず、むしろ生き生きして手伝ってくれる。

「ありがとうございます……」
「いいえ、気にしないで下さい。私の主となった御方ですから」
「…………あの、ブルーさんって……あんな人でしたっけ……なんか最近おかしいような……」
「……おかしい、というならば、今までの方でしょうか」
「え?」
「それに相手が千聖様ですから」
「ああ、世間体とか……大事ですもんね……」
「……まぁ、ええ……否めませんが……」
「?」

 別に小さな子供でもないのに、「さ、お薬のんで寝ましょうね」と私を寝かしつけるイザベラ。
 昼寝するなんていつ振りだろう。とにかく身体が痛くて頭も痛くて疲れていた私は、風邪薬とグレンから貰ったアロマオイルで、すぐに眠りに就いた。



 *******

(めっちゃよく寝た……寝過ぎてだる……)

 夕方ぐらいに起きて、食事をとってまた寝た。
 昨日と今朝よりは随分と良くなったが、この風邪の終わりの怠い感じ。ついにアレを飲む時がやってきた。
 その前に一回シャワー浴びようと身体を起こすと、ベッド脇に椅子を持ってきて座ってうたた寝をするブルーの姿。
(え!? なに、何時から……!? 何時から居たの……!?)

 まさか心配してくれたのか。
 そりゃあ来訪者だし死なれちゃ困るだろうけど。何もここまで付きっきりでなくとも良いのでは。
(付きっきりにさせといて言う立場じゃないけど……起きる気配ないしシャワー浴びよ……)

 時計を見ると深夜一時。
 ディナーが終わったのが何時か分からないけれど、少なくとも一時間以上はここに居たのだろう。
 シャワーを浴びて戻ってきてもまだうたた寝している。ブルーなら少しの物音で起きそうなのに。今なら良い劇薬があるのになぁなんて思いながら、私は震える手でブツを取った。
 寒さで震えているのではない。これは恐怖からくる震えだ。

(え……これほんとに人が飲んで良いやつなのかな……なんか……沼の底から掬ってきたみたいな……)
 せっかく作ってくれてせっかく持って帰ってくれたのに、ここで飲まぬワケには行かぬ。逃げる心に駄目だ駄目だと首を振り、ティースプーン一杯、飲み込んだ。

「!!!!!???? ッがぁ……!!!」

 結果、人が飲めるモノじゃない。

「ッ、驚いた……起きていたのか。どうだ、少しは良く……な、何故泣いているんだ……? 何処か痛むのか……!?」
「いや、ちが……これっ、やば……これ、やば……!」
「それを飲んだのか。やはり変だと思ったんだ。貸してみろ、私も飲んで確かめてグレンに文句でも言ってやるさ」
「やめた方がいい、やめた方がいい……!」
「ッ……!!?」

 翌朝二人で元気になったのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

処理中です...