贖罪の救世主

水野アヤト

文字の大きさ
512 / 875
第二十九話 アーレンツ攻防戦

21

しおりを挟む
 同時刻、アーレンツ鋼鉄防護壁裏門にて。
 
「いくぞ野郎共っ!派手におっぱじめようぜ!!」

 鋼鉄製の壁に守られたアーレンツ。その防護壁の裏門前に彼らの姿はあった。
 鎧を身に纏う事もなく、腰に剣も差していない、装備を収納して持ち運ぶためのベストを身に纏う、屈強なる兵士達が、裏門の前に姿を見せていた。彼らの人数は六十人。彼らの後ろには、彼らとは違う軍服と装備を身に着ける、別の国の軍隊の姿もあった。
 
「よーし、狙いは防護壁の裏門だ。バンデスとの戦いで大暴れした、この兵器の力を見せてやるぜ!」
 
 実戦慣れした空気を漂わす、ベストを身に着けた屈強な兵士達。彼らは鉄血部隊という名の、ヴァスティナ帝国軍で一番実戦経験が豊富な部隊であり、最強の愚連隊である。
 部隊を率いているのは、鉄血部隊の部隊長ヘルベルト。戦場に飢えた戦闘狂達を率いる、鉄血部隊の指揮官だ。
 ヘルベルトの命令を受けた十人の兵士達が、長く大きな鉄製の筒を担ぎ、その筒の先を防護壁の裏門へと一斉に向けた。筒の先は大きな穴が開いており、それを見て察するに、彼らが担いでいるのは砲の一種である。筒にはグリップのようなものが付いており、兵士達はそのグリップをしっかり握ると、同じく取り付けられている引き金に指をかけた。

「撃てっ!!」

 ヘルベルトの号令を受けた十人の兵士達は、一斉に引き金を引いた。次の瞬間、筒の先端から発砲音と煙と共に、何かが高速で撃ち出されたのである。一斉射されたその物体は、ほぼ同時に鋼鉄防護壁の裏門に直撃し、激しい爆発を巻き起こした。

「初弾は全弾命中だ!どんどん撃ち込め!!」

 彼らが使用した兵器は、バンデス国の反乱軍鎮圧時に攻城兵器として使用された、試作の携帯式対要塞破壊兵器である。つまり、バズーカ砲などとも呼ばれる事がある、無反動砲の事だ。
 発明家シャランドラは、遂に歩兵が携帯する事の出来る、無反動までも完成させてしまった。最早彼女には、作り出せない兵器が存在しないのかもしれない。そう思わせる程、この無反動砲もまた、完成度の高いものであった。
 この兵器の実戦テストは、既にバンデス国反乱軍鎮圧で済まされている。無反動砲の力で、要塞のような敵軍の砦の城壁を破壊したのだ。故に、破壊力は保証付きである。如何にアーレンツの鋼鉄防護壁が鉄壁を自負しようと、この無反動砲を前にしては、自慢の防護壁もそう長くは持たない。

「次弾装填よし!!」
「こいつであの門を鉄屑に変えてやるぜ!」
「撃てっ!!」

 戦闘狂である彼ら鉄血部隊にとって、この兵器は恐怖の玩具と言えるだろう。彼らは用意した無反動砲の弾を使い切らんとする勢いで、次々と弾を発射する。
 攻撃を受けている裏門のアーレンツ国防軍は、敵の奇襲攻撃と爆発によって混乱し、砲の攻撃を恐れて逃亡する兵士もいる。アーレンツ軍は現在も指揮系統を失っているため、そもそも士気が大幅に低下しているところに、この攻撃である。そのせいで、彼らの恐怖心は一層大きくなっていったのだ。
 士気が低く、恐怖心に駆られている今のアーレンツ兵士達に、無反動砲攻撃に対しての有効な対処が執れるはずもない。防護壁の裏門は攻撃に晒され続け、遂に限界を迎えたのだった。

「部隊長!門が倒れますぜ!!」

 無反動砲の連続一斉射によって、裏門は大きく凹み、門と壁を固定させていた固定具を引き千切りながら、音を立てて倒れていった。鋼鉄の門であったために、簡単に大穴が空くような事はなかったが、火薬の爆発による衝撃を受け続けたせいで、門自体が外からの衝撃に耐えきれなかったのだ。
 
「はっはははははははっ!!何が鉄壁の防護壁だよ!俺達にかかりゃあんなもん、その辺の石ころ砕くのと大差ねぇぜ!」

 裏門の破壊に大笑いする鉄血部隊の面々達。そんな彼らと、あの鋼鉄の門を破壊した光景に、驚愕を隠せない者達がいる。それは、鉄血部隊の後ろに控える、他国の軍の兵士達であった。
 彼らは、ジエーデル国軍警察の戦力であり、この戦いに勝利するための切り札である。彼らに裏門から奇襲攻撃を行なわせ、二方面からアーレンツへ侵攻する事こそが、帝国軍の真の目的だったのだ。

「ふふっ、報告通りの威力じゃないか、このバズーカ砲は」
「面白い玩具ですぜ姉御。奴らを皆殺しにするには丁度いい」

 裏門の破壊に沸き立つ鉄血部隊。アーレンツという名の獲物に狙いを定め、瞳の奥をぎらつかせているヘルベルトに、一人の女性が話しかけた。その女性は、戦場には全く似つかわしくない、紅いドレスを身に纏い、長く美しい金髪を風に靡かせていた。彼女こそ、帝国軍とジエーデル軍の共同戦線を造り上げた張本人である。

「ジエーデルの軍警察があれを見て驚いている。私の力を見せつける上でも、これは丁度いい機会だよ」
「私の力って・・・・・。姉御、バズーカの力はシャランドラの奴のお陰ですぜ?」
「何を言っている。シャランドラもまた私のものなのだから、あの子が作った兵器の力もまた私のものに決まっているだろう?」

 このとんでもない理論を口にする者こそ、帝国を裏で支配していると言われている、絶世の美女にして帝国宰相の、名をリリカという。帝国参謀長リクトビアが最も心を許し、大きな信頼を寄せている女性だ。
 彼女には誰も逆らえない。帝国女王ですら、時に彼女には逆らえない。帝国最凶と呼ばれる彼女は、この戦争に勝つための切り札を用意し、この地にやって来たのである。全ては、彼女にとっても大切な存在であるリックを、必ず取り戻すために・・・・・・。

「さあ、舞台は整った。そろそろ行こうじゃないか」
「了解ですぜ。野郎共、アーレンツに殴り込むぞ!!」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」

 帝国宰相リリカは、殺しを得意とする恐ろしき兵士達を引き連れ、戦場にその姿を現したのである。
 帝国最凶率いるその軍団の放つ異様な覇気は、まるで、彼女の怒りと殺意を表しているかのようであった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...