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第十四話 贖罪
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帝国女王ユリーシア・ヴァスティナの死は、表向きは病死だと発表された。
この知らせは今のところ、帝国内だけに発表された事であり、葬儀も済まされている。
葬儀の時には、帝国中の人々が城へと集まり、彼女の死に涙を流し続けた。女王の死からこの数日間、帝国内はようやく少しだけ落ち着きを取り戻し、如何にか国の機能を維持している状況だ。
「リックの様子はどうですか?」
「相変わらずだよ。部屋から出ようとしないし、話しかけても何も答えない」
ここは帝国軍参謀長の執務室。
ここでは今、参謀長に代わり軍師エミリオが一人で軍務に務めている。部屋にはもう一人、長い金髪の髪が特徴的な、美しい女性の姿。深紅のドレスを身に纏う、帝国宰相リリカ。彼女は政務を一段落させ、彼のもとへと足を運んだのである。
話の内容は、軍務を放棄して、ずっと部屋に籠っているリックの事だ。
「無理もないね。仲間だったロベルトを失い、愛する者を一度に二人も失った。二人はリックにとって、生きる意味そのものだったと言うのに」
「・・・・・・彼は、再び生きる希望を取り戻せますか?」
「無理かもしれない。陛下とメシアの死は、リックから全てを奪うに等しい。自らの死を選ばないだけ、奇跡と言えるかもしれないね」
女王ユリーシアに絶対の忠誠を誓い、騎士団長メシアを愛したリック。この世界は、彼から生きる希望と愛を奪った。もう彼は、この世界で生きる意味を持たない。
だからリリカは言った。自殺しないのが奇跡だと。
それはつまり、心が死んだリックの中に、まだ残されているものがある事を意味する。それが希望なのか何なのかは、リリカにもわからない。
もしも、彼を立ち直らせる事が出来る人物が、この世界に残っているとするならば、それはリリカ以外にいない。リックを救える希望はまだ残されている。だからエミリオは、たとえ彼女が無理と言おうとも、彼女に頼むしかない。
天才軍師と言われた事もある。しかし今の彼は、己が情けなくてならない。
自分にはリックを救う事が出来ない。彼を闇から救う事も叶わない。結局自分は、大事な時に何もできない無能者だと、そう思ってしまっている。
「心配いらないよ」
「・・・・・・」
「あれは弱い男だ。でも、大切な者たちのためには命を懸ける、本当に優しい男でもある」
「ええ・・・・・私もそう思います」
「お前たちを、リックは決して見捨てない。きっとまたこの部屋に戻って来るよ。今はまだ、時間が必要なだけ。私たちは信じて待っていればいい」
彼をもっともよく知るリリカが言うのだ。
エミリオの心境を思って、そう言ってくれている。本当は彼以上に辛いはずなのに、皆を助けてくれる大人の女性。リリカがいなければ、今頃帝国はどうなっていたのか、予想したくもない。
「私たちはやるべき事をやるだけさ。とにかく今は―――――」
その時、彼女の声を遮って扉を叩く声が聞こえた。
ノックの後、エミリオが入室を許すと、入って来たのは一人の帝国軍兵士だった。兵士はエミリオ指揮下の諜報班であり、国内外の調査が主な任務である。
兵士は真っ直ぐエミリオのもとを目指し、敬礼の後に、封に入った一通の手紙を彼に渡した。その後兵士は回れ右して、執務室を後にする。
常に諜報班を様々な目的で動かし、情報を集めさせている。そのため、エミリオのもとには毎日多くの情報が届くのだ。手紙の中身も、恐らくは何かしらの情報であるのは間違いない。早速彼は封を開け、中身を確認する。
封の中から手紙を取り出す。折り畳まれた紙を開き、書かれた文章に目を通していく。
「これは・・・・・・」
手紙を読み終えたエミリオは、後悔の念に襲われていた。
彼の様子から、何か重大な情報であったのは一目でわかる。
「どうしたんだい?」
「私は・・・・・・取り返しのつかない事をしてしまった・・・・・。私はリックに、合わす顔がない・・・・・・」
手紙は執務室の机に置かれた。その手紙を、リリカも手に取って中身を読む。
「・・・・・・エミリオ、今すぐに調べて欲しい事がある」
「わかっています。必ず突き止めます・・・・・・」
手紙を読んだリリカの眼には、誰も見た事のない、初めて彼女が見せる憤怒の炎が燃えている。
彼女の怒りの矛先は、この悲劇の元凶である者たちに向けられていた。
二人はすぐに動いた。それぞれの権力を最大限に利用して、真実を確かめるために・・・・・・。
この知らせは今のところ、帝国内だけに発表された事であり、葬儀も済まされている。
葬儀の時には、帝国中の人々が城へと集まり、彼女の死に涙を流し続けた。女王の死からこの数日間、帝国内はようやく少しだけ落ち着きを取り戻し、如何にか国の機能を維持している状況だ。
「リックの様子はどうですか?」
「相変わらずだよ。部屋から出ようとしないし、話しかけても何も答えない」
ここは帝国軍参謀長の執務室。
ここでは今、参謀長に代わり軍師エミリオが一人で軍務に務めている。部屋にはもう一人、長い金髪の髪が特徴的な、美しい女性の姿。深紅のドレスを身に纏う、帝国宰相リリカ。彼女は政務を一段落させ、彼のもとへと足を運んだのである。
話の内容は、軍務を放棄して、ずっと部屋に籠っているリックの事だ。
「無理もないね。仲間だったロベルトを失い、愛する者を一度に二人も失った。二人はリックにとって、生きる意味そのものだったと言うのに」
「・・・・・・彼は、再び生きる希望を取り戻せますか?」
「無理かもしれない。陛下とメシアの死は、リックから全てを奪うに等しい。自らの死を選ばないだけ、奇跡と言えるかもしれないね」
女王ユリーシアに絶対の忠誠を誓い、騎士団長メシアを愛したリック。この世界は、彼から生きる希望と愛を奪った。もう彼は、この世界で生きる意味を持たない。
だからリリカは言った。自殺しないのが奇跡だと。
それはつまり、心が死んだリックの中に、まだ残されているものがある事を意味する。それが希望なのか何なのかは、リリカにもわからない。
もしも、彼を立ち直らせる事が出来る人物が、この世界に残っているとするならば、それはリリカ以外にいない。リックを救える希望はまだ残されている。だからエミリオは、たとえ彼女が無理と言おうとも、彼女に頼むしかない。
天才軍師と言われた事もある。しかし今の彼は、己が情けなくてならない。
自分にはリックを救う事が出来ない。彼を闇から救う事も叶わない。結局自分は、大事な時に何もできない無能者だと、そう思ってしまっている。
「心配いらないよ」
「・・・・・・」
「あれは弱い男だ。でも、大切な者たちのためには命を懸ける、本当に優しい男でもある」
「ええ・・・・・私もそう思います」
「お前たちを、リックは決して見捨てない。きっとまたこの部屋に戻って来るよ。今はまだ、時間が必要なだけ。私たちは信じて待っていればいい」
彼をもっともよく知るリリカが言うのだ。
エミリオの心境を思って、そう言ってくれている。本当は彼以上に辛いはずなのに、皆を助けてくれる大人の女性。リリカがいなければ、今頃帝国はどうなっていたのか、予想したくもない。
「私たちはやるべき事をやるだけさ。とにかく今は―――――」
その時、彼女の声を遮って扉を叩く声が聞こえた。
ノックの後、エミリオが入室を許すと、入って来たのは一人の帝国軍兵士だった。兵士はエミリオ指揮下の諜報班であり、国内外の調査が主な任務である。
兵士は真っ直ぐエミリオのもとを目指し、敬礼の後に、封に入った一通の手紙を彼に渡した。その後兵士は回れ右して、執務室を後にする。
常に諜報班を様々な目的で動かし、情報を集めさせている。そのため、エミリオのもとには毎日多くの情報が届くのだ。手紙の中身も、恐らくは何かしらの情報であるのは間違いない。早速彼は封を開け、中身を確認する。
封の中から手紙を取り出す。折り畳まれた紙を開き、書かれた文章に目を通していく。
「これは・・・・・・」
手紙を読み終えたエミリオは、後悔の念に襲われていた。
彼の様子から、何か重大な情報であったのは一目でわかる。
「どうしたんだい?」
「私は・・・・・・取り返しのつかない事をしてしまった・・・・・。私はリックに、合わす顔がない・・・・・・」
手紙は執務室の机に置かれた。その手紙を、リリカも手に取って中身を読む。
「・・・・・・エミリオ、今すぐに調べて欲しい事がある」
「わかっています。必ず突き止めます・・・・・・」
手紙を読んだリリカの眼には、誰も見た事のない、初めて彼女が見せる憤怒の炎が燃えている。
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