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第六十四話 三国事変
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「ぐっ⋯⋯! ちっ、ちくしょうが⋯⋯⋯!」
再会した姉メアリの襲撃を受け、望まない死闘を演じているクリス。彼の左腿はメアリの剣に貫かれ、クリスはその場から身動きができずにいた。
メアリはクリスの傍を離れており、彼の眼前で一定の距離を取って立っている。油断しているような余裕の笑みを見せているが、僅かな隙すら見せないメアリに、足をやられているクリスの状況は絶望的であった。
左腿から出血してはいるものの、クリスは決して倒れる事なく、痛みに苦しみながらも立ち姿を貫いている。剣の構えも解かず、苦痛に襲われる中でもメアリの剣から決して目を離さない。
だがメアリ相手に片足を封じられた時点で、最早クリスに勝ち目はないと言える。何故なら彼は、これまでただの一度もメアリに勝った事はないのだ。
この圧倒的な強者の戦いを、クリスに敗れた雷の剣士の末裔グレイは、言葉を失いながらも目を離さず見ている。メアリの剣技と、彼女の神速の前では、さっきまでの自分の剣技が幼稚であったように思える程、グレイにとっては衝撃的なものだったのである。
「メアリ⋯⋯、俺を揶揄うんじゃねぇ」
「だって、クリスちゃんが本気を出してくれないんだもん。さっきので勝負を付けてしまったら、せっかくの殺し合いが秒で終わってしまうでしょう?」
「何の目的があるのか知らないが、舐めたことしてくれるぜ⋯⋯」
強がって見せるクリスだが、メアリの目からだけでなく、グレイの目から見ても、圧倒的に不利であるのは明らかであった。クリスは左脚を負傷し、得意の神速の剣技を放つための動きを封じられている。しかも、自分の剣技を全て見切れる者を前にしてである。
技は見切られ、速さも封じられ、残った攻撃手段は雷魔法のみであった。魔法攻撃だけが今できる攻撃方法となるが、技を出す瞬間の隙を突かれてしまうのが落ちである。
打つ手がないクリスは、必死に起死回生の一手を模索している。血を分けた姉を倒す一手を探るクリスだが、相手があのメアリであるという現実が、彼を邪魔し続ける。
「躊躇いは死よ、クリスちゃん」
「!」
「相手が何者であるかは関係ない。自分の剣が敵と定める者、その全てを斬ることが光龍の剣技。だから私が、クリスちゃんを躊躇いから解き放ってあげる」
それは、クリスの知らなかった真実。血の繋がった姉メアリと生き別れた、運命の日の真実である。
「あの夜、私達の暮らしていた屋敷に火を放ったのは私よ。レッドフォードの血族は、貴方を除いて全員殺したわ」
蘇る屋敷の火事。家族は自分だけが生き残り、姉すらも失ってしまったと嘆き悲しみ、燃える屋敷を見つめていた幼き日の自分。何もかもを失い、唯一残ったのは己の命と、当主となる者のみが持つ事を許される光龍の剣。
その剣は、燃え盛る屋敷の中で自分を救い、外に連れ出してくれた姉から手渡された。姉は、まだ他に屋敷に残っている者達を救うと言って、燃える屋敷の中へと戻った切り、帰っては来なかった。
何の冗談かと思ったが、不敵な笑みを浮かべて真実を語るメアリの瞳が、嘘ではない事を物語る。あまりの真実に動揺したクリスは、その身から力を失い地面に倒れそうになるも、何とか踏ん張った。
「メアリ⋯⋯⋯、お前がなんで親父や母さんを⋯⋯!」
「だって、キレちゃったんだもん」
「はっ⋯⋯⋯、はあ⋯⋯⋯?」
分からない。クリスには、何故彼女が自分の親を皆殺しにしたかったのか、まるで理由が分からなかった。伝説の六剣誕生以来になる、歴代最強の剣の才を持つ影の剣士と期待され、レッドフォード家の当主になる筈だったメアリが、血族を皆殺しにしたかった理由など、ある筈がないのだ。
「ねぇ、クリスちゃん。お父様はね、貴方をレッドフォードの当主するつもりだったのよ」
「俺を⋯⋯!? あの親父がそんなわけ―——」
「お父様は女である私ではなく、男であるクリスちゃんを当主に選んだ。光龍の剣は最も強き者が受け継ぐという掟に逆らった。だから私は真の当主として、掟を正すためにお父様を殺したわ」
あの父親であるなら、そう考えてもおかしくはないと思えた。厳格だったクリスの父は、常にレッドフォードの家と、この家を継ぐ者の事だけを考えている男だった。
父はクリスによく言っていた。姉が相手だからといって、男が女に負けるようではならない。誰にも負けぬ強き剣士になる事だけを考えて生きろと、常にそうクリスに言い続けた。
「レッドフォード家当主は影の剣士の証。かつて影の剣士が目指した、ローミリア最強の剣士となる資格を持つ者。私だって剣士なのだから、最強の剣士が私であると証明してみたい」
「だからって、親父達を殺す必要はなかったはずだ!」
「いいえ、殺す必要はあったの。でないと貴方は―——」
その時メアリは、クリスの前で初めて動揺を露わにする。過去の記憶を呼び覚まし、感情が昂ったせいで余計な事まで口に出してしまいかけたのだ。
彼女が初めて見せた動揺を、クリスの本能は見逃さなかった。直感的に今が攻撃の好機と思った時には身体が動いていて、戸惑いと怒りを乗せた彼の魔法が発動していた。
「奔れ、雷光⋯⋯!!」
クリスの放つ雷魔法の一撃。一筋の雷撃がメアリに向かって放たれ、彼女を感電させるかに思われた。
眩い閃光を発して襲い掛かった雷撃に、メアリは剣を持たぬ左手をかざして見せる。避けるわけでも、剣で防ごうともせず、彼女はかざした左手でクリスの雷を受け止めた。
「またまた残念。クリスちゃんの魔法も、私には通用しないの」
「おっ、お前! まさか⋯⋯!?」
「私も貴方と同じ魔法使い。けれど私の魔法の方が、貴方よりずっと強力」
左手で受け止められた雷は、メアリの身体を感電させるどころか逆に吸収されてしまった。メアリは無詠唱で魔方陣を展開すると、吸収した雷を増幅させ、今度は自分の魔法を発動する。
メアリが合図とばかりに左手で指を鳴らした刹那、クリスの真上から巨大な稲妻が襲い掛かった。クリスは咄嗟に自身の剣を盾にし、稲妻を刃で受け止める。夜闇を払う眩しい発光で周囲が白く輝く中で、クリスは必死に稲妻と戦う。
「こんなもんに⋯⋯! 俺は負けねええええええっ!!」
雄叫びを上げて自身を奮い立たせたクリスは、メアリの放った稲妻の衝撃を受け止め切った。我が身への直撃は防いだが、もし今の攻撃をその身で受けていたなら、如何に雷魔法への耐性があるクリスでも、感電死は免れなかったであろう。
クリスが生き延びれたのは、魔法耐性を持つ彼の剣のお陰であった。レッドフォード家の当主が受け継ぐ、光龍を素材に作り出された一振り。この剣でなければ、自分より遥かに強力な魔法を放ったメアリの一撃に耐えられなかった。
「はあ⋯⋯はあ⋯⋯⋯はあっ⋯⋯⋯!」
「クリスちゃんとお揃いよ。私の魔法も雷属性なの」
「はあっ⋯⋯、今までずっと隠してたのか⋯⋯!」
「貴方より強い魔法が使えるって教えたら、剣でも魔法でも私には勝てないってことになる。貴方に自信を失くして欲しくなかった」
魔法すらも扱え、クリスに対して圧倒的な優位に立つメアリ。彼女が魔法まで使えるとは、今その目で見るまでクリスも知らなかった。
クリスの記憶にある彼女は、誰よりも剣術に長けた剣士だったが、魔法を使って見せた事は一度もない。レッドフォードの家で魔法を発現させたのは、クリスだけのはずだった。
全てを知ったクリスにとって、メアリの全てが屈辱的である。剣技でも魔法でも敵わない、最強の剣士を目指す彼の前に立ち塞がる、最大最強の壁。彼女を超える事が出来ない限り、六剣の末裔全員を倒そうが、最強の頂きには辿り着けない。
あまりの悔しさを前に、剣を強く握り締め、砕かんばかりの勢いで歯を噛むクリスを、メアリが憐れむように見ている。クリスがここまで彼女に屈辱を覚えたのは、これが初めてだった。
出血する脚の苦痛すらも忘れ、我が姉を倒したいという怒りと闘志が、クリスを戦いへと突き動かす。その熱を肌で感じ取ったメアリが、嬉しそうに笑みを浮かべ、クリスの間合いに歩を進めていった。
「ふふっ⋯⋯、やっとお姉ちゃんを本気で斬ってくれる気になったわね」
「メアリ⋯⋯! 何の真似だ!?」
「貴方の脚を使えなくしてしまったのは私だもの。これだけ近ければ届くでしょう?」
メアリはクリスの間合いに入り込み、彼の目の前で立ち止まった。その場から動けないクリスでも、自分の刃を届かせられる距離である。しかもメアリは、クリスの剣を一切防ぐ気がなく、いつでも仕掛けてこいと言わんばかりの状態だった。
「動けない今の貴方でも、この距離なら剣技を打ち込める。でも、その脚でちゃんと使える技は限られるわ」
「どこまでも馬鹿にしやがって⋯⋯! 喰らいたい技があるなら言って見ろ!!」
「そう来なくっちゃ♪ じゃあ、久しぶりに貴方の演舞を見せて」
メアリの口にした光龍の技の名。それはクリスが、未だ会得できていないと思っている唯一の技だ。
それが分かっていて、メアリはクリスにその技を使えと言うのだ。クリスの師とも言えるメアリが、彼の成長を知るために、技が放たれるのを待っている。
彼女の言う通り、今のクリスが満足に放てる技は限られていた。確かに「演舞」ならば、負傷した左脚の負担を最小限に放つ事もできる。最初からメアリは、この状況を作り出す事が目的だったのだ。
未完成故に、師である姉の前では絶対に使わない技。その技を使わせるためだけに、彼女はクリスをここまで追い込んだ。
「⋯⋯⋯上等だ。俺を昔のままだと思うんじゃねぇぞ」
「さあ、来なさい。貴方の光龍で、私を斬って見せて」
クリスは剣を構え、必殺の一撃を放つべく深く呼吸した。対するメアリは、変わらず構えは取らない。防御する気も、技を妨害する気もなかった。
明らかにクリスの力を侮った振る舞いだが、既に彼はこの程度の挑発で心を乱す事はない。全神経を集中させ、全てを懸けたこの一撃で、我が姉を斬る。今のクリスは、それだけしか考えていない。
深呼吸して集中力を最高まで高め、握る己の剣に彼の感情の全てが乗る。我が身が剣と一体になった瞬間、弾かれたようにクリスが動く。
「いくぜ! 光龍演舞っ!!」
それは、まるで舞い踊るように剣を操る必殺の剣技。振るわれた刃が蝶の羽ばたきの様に、柔らかく軌跡を描いたかと思えば、刃は確実に相手の身体を捉える。
クリスもまた、剣と共に戦場に舞う。燃え盛る彼の闘志を体現するかの如く、美しくも何処か荒々しい。踊りながら剣を振るうクリスの美技は、相手を魅了すると同時に命を奪う、死の演舞だ。
だが、舞い踊って刃を振るったクリスの全ての攻撃は、一撃もメアリに届かなかった。メアリはクリスの剣を全て見切り、その場から動く事なく、全ての技を最小限の動きだけで躱して見せたのだ。
クリスの剣は掠るどころか、彼女の髪の毛一本、斬り落とす事させ叶わなかった。この間合いで、この無防備を晒した相手の前で、自分の技が通用せず驚愕するクリスを、憐れむ瞳でメアリが見つめている。
「これが貴方の演舞? こんなものを、光龍の演舞と呼ぶつもり?」
「っ⋯⋯⋯!」
「貴方のそれは演舞じゃない。ただ剣を振りまわして敵を斬ろうとしてるだけ。まだ貴方は、光龍演舞の本質を理解できていない」
そう言うとメアリは、絶句しているクリスの眼前で構えを取った。クリスが放った演舞と同じ構えを取り、猛烈な殺意を彼に向けたメアリ。技が来ると悟ったクリスが、急いで彼女の剣を防ごうと構えを取るが、メアリはその防御の構えごと打ち破るべく剣技を放つ。
「我が舞に酔え。光龍演舞」
メアリの身が剣と一体になり、蝶の羽ばたきの様に軽く柔らかい舞が、クリスの目の前で行なわれる。その舞から繰り出される刃を、クリスは自身の剣で防ぎ弾こうとするが、防げたのは初めの二撃のみであった。
クリスには見切れている剣の動きではある。自身が放つ技より速い剣でもない。それなのにクリスは、眼前で踊り舞う彼女の剣を防げず、次々と我が身を斬り裂かれていくのだ。
蝶のように舞い、蜂のように刺すという言葉を体現した技。幼き頃のクリスが憧れた、メアリの美しい演舞。防御が間に合わず、全身を斬り裂かれ続けるクリスだったが、前より磨きのかかった彼女の舞に、自分の演舞の未熟さを痛感させられている。
振るわれる切っ先は追えているのに、刃で弾こうとした時には、既に剣で斬られている。自分の目の前で、ただ得物と共に舞い踊っているだけの剣が、どうやっても防げず、そして躱せない。
そこでようやく、クリスは悟った。剣で防げないのも、そもそも躱せないのも、彼女の速さや剣捌きに負けているからではない。我が姉が披露する演舞に、自分が心奪われてしまっているのだ。
思わず魅了されてしまっているがために、剣を振るう腕が遅れ、全身も思うように動かせない。クリスにとって最大の壁であり、彼が思う最強の剣士たる彼女が振るう、この世で最も美しいと思わせる剣技に、目が離せず酔い痴れてしまう。
メアリと共に舞い踊る剣がクリスに魅入られながらも、確実に彼を切り刻み、その命を奪おうとしている。滑らかに、流れるような動きで、柔らかな舞を踊るメアリが、いよいよ舞の終わりに移る。
下方からの斬撃でクリスの胸を斬り裂き、返す切っ先は下に向け、彼の右腿を刺し貫いた。演舞を踊り終えたメアリは汗一つかかず、女神すら嫉妬するであろう微笑を浮かべ、舞に魅入られてしまった我が弟に決着を告げた。
「貴方の負けよ」
再会した姉メアリの襲撃を受け、望まない死闘を演じているクリス。彼の左腿はメアリの剣に貫かれ、クリスはその場から身動きができずにいた。
メアリはクリスの傍を離れており、彼の眼前で一定の距離を取って立っている。油断しているような余裕の笑みを見せているが、僅かな隙すら見せないメアリに、足をやられているクリスの状況は絶望的であった。
左腿から出血してはいるものの、クリスは決して倒れる事なく、痛みに苦しみながらも立ち姿を貫いている。剣の構えも解かず、苦痛に襲われる中でもメアリの剣から決して目を離さない。
だがメアリ相手に片足を封じられた時点で、最早クリスに勝ち目はないと言える。何故なら彼は、これまでただの一度もメアリに勝った事はないのだ。
この圧倒的な強者の戦いを、クリスに敗れた雷の剣士の末裔グレイは、言葉を失いながらも目を離さず見ている。メアリの剣技と、彼女の神速の前では、さっきまでの自分の剣技が幼稚であったように思える程、グレイにとっては衝撃的なものだったのである。
「メアリ⋯⋯、俺を揶揄うんじゃねぇ」
「だって、クリスちゃんが本気を出してくれないんだもん。さっきので勝負を付けてしまったら、せっかくの殺し合いが秒で終わってしまうでしょう?」
「何の目的があるのか知らないが、舐めたことしてくれるぜ⋯⋯」
強がって見せるクリスだが、メアリの目からだけでなく、グレイの目から見ても、圧倒的に不利であるのは明らかであった。クリスは左脚を負傷し、得意の神速の剣技を放つための動きを封じられている。しかも、自分の剣技を全て見切れる者を前にしてである。
技は見切られ、速さも封じられ、残った攻撃手段は雷魔法のみであった。魔法攻撃だけが今できる攻撃方法となるが、技を出す瞬間の隙を突かれてしまうのが落ちである。
打つ手がないクリスは、必死に起死回生の一手を模索している。血を分けた姉を倒す一手を探るクリスだが、相手があのメアリであるという現実が、彼を邪魔し続ける。
「躊躇いは死よ、クリスちゃん」
「!」
「相手が何者であるかは関係ない。自分の剣が敵と定める者、その全てを斬ることが光龍の剣技。だから私が、クリスちゃんを躊躇いから解き放ってあげる」
それは、クリスの知らなかった真実。血の繋がった姉メアリと生き別れた、運命の日の真実である。
「あの夜、私達の暮らしていた屋敷に火を放ったのは私よ。レッドフォードの血族は、貴方を除いて全員殺したわ」
蘇る屋敷の火事。家族は自分だけが生き残り、姉すらも失ってしまったと嘆き悲しみ、燃える屋敷を見つめていた幼き日の自分。何もかもを失い、唯一残ったのは己の命と、当主となる者のみが持つ事を許される光龍の剣。
その剣は、燃え盛る屋敷の中で自分を救い、外に連れ出してくれた姉から手渡された。姉は、まだ他に屋敷に残っている者達を救うと言って、燃える屋敷の中へと戻った切り、帰っては来なかった。
何の冗談かと思ったが、不敵な笑みを浮かべて真実を語るメアリの瞳が、嘘ではない事を物語る。あまりの真実に動揺したクリスは、その身から力を失い地面に倒れそうになるも、何とか踏ん張った。
「メアリ⋯⋯⋯、お前がなんで親父や母さんを⋯⋯!」
「だって、キレちゃったんだもん」
「はっ⋯⋯⋯、はあ⋯⋯⋯?」
分からない。クリスには、何故彼女が自分の親を皆殺しにしたかったのか、まるで理由が分からなかった。伝説の六剣誕生以来になる、歴代最強の剣の才を持つ影の剣士と期待され、レッドフォード家の当主になる筈だったメアリが、血族を皆殺しにしたかった理由など、ある筈がないのだ。
「ねぇ、クリスちゃん。お父様はね、貴方をレッドフォードの当主するつもりだったのよ」
「俺を⋯⋯!? あの親父がそんなわけ―——」
「お父様は女である私ではなく、男であるクリスちゃんを当主に選んだ。光龍の剣は最も強き者が受け継ぐという掟に逆らった。だから私は真の当主として、掟を正すためにお父様を殺したわ」
あの父親であるなら、そう考えてもおかしくはないと思えた。厳格だったクリスの父は、常にレッドフォードの家と、この家を継ぐ者の事だけを考えている男だった。
父はクリスによく言っていた。姉が相手だからといって、男が女に負けるようではならない。誰にも負けぬ強き剣士になる事だけを考えて生きろと、常にそうクリスに言い続けた。
「レッドフォード家当主は影の剣士の証。かつて影の剣士が目指した、ローミリア最強の剣士となる資格を持つ者。私だって剣士なのだから、最強の剣士が私であると証明してみたい」
「だからって、親父達を殺す必要はなかったはずだ!」
「いいえ、殺す必要はあったの。でないと貴方は―——」
その時メアリは、クリスの前で初めて動揺を露わにする。過去の記憶を呼び覚まし、感情が昂ったせいで余計な事まで口に出してしまいかけたのだ。
彼女が初めて見せた動揺を、クリスの本能は見逃さなかった。直感的に今が攻撃の好機と思った時には身体が動いていて、戸惑いと怒りを乗せた彼の魔法が発動していた。
「奔れ、雷光⋯⋯!!」
クリスの放つ雷魔法の一撃。一筋の雷撃がメアリに向かって放たれ、彼女を感電させるかに思われた。
眩い閃光を発して襲い掛かった雷撃に、メアリは剣を持たぬ左手をかざして見せる。避けるわけでも、剣で防ごうともせず、彼女はかざした左手でクリスの雷を受け止めた。
「またまた残念。クリスちゃんの魔法も、私には通用しないの」
「おっ、お前! まさか⋯⋯!?」
「私も貴方と同じ魔法使い。けれど私の魔法の方が、貴方よりずっと強力」
左手で受け止められた雷は、メアリの身体を感電させるどころか逆に吸収されてしまった。メアリは無詠唱で魔方陣を展開すると、吸収した雷を増幅させ、今度は自分の魔法を発動する。
メアリが合図とばかりに左手で指を鳴らした刹那、クリスの真上から巨大な稲妻が襲い掛かった。クリスは咄嗟に自身の剣を盾にし、稲妻を刃で受け止める。夜闇を払う眩しい発光で周囲が白く輝く中で、クリスは必死に稲妻と戦う。
「こんなもんに⋯⋯! 俺は負けねええええええっ!!」
雄叫びを上げて自身を奮い立たせたクリスは、メアリの放った稲妻の衝撃を受け止め切った。我が身への直撃は防いだが、もし今の攻撃をその身で受けていたなら、如何に雷魔法への耐性があるクリスでも、感電死は免れなかったであろう。
クリスが生き延びれたのは、魔法耐性を持つ彼の剣のお陰であった。レッドフォード家の当主が受け継ぐ、光龍を素材に作り出された一振り。この剣でなければ、自分より遥かに強力な魔法を放ったメアリの一撃に耐えられなかった。
「はあ⋯⋯はあ⋯⋯⋯はあっ⋯⋯⋯!」
「クリスちゃんとお揃いよ。私の魔法も雷属性なの」
「はあっ⋯⋯、今までずっと隠してたのか⋯⋯!」
「貴方より強い魔法が使えるって教えたら、剣でも魔法でも私には勝てないってことになる。貴方に自信を失くして欲しくなかった」
魔法すらも扱え、クリスに対して圧倒的な優位に立つメアリ。彼女が魔法まで使えるとは、今その目で見るまでクリスも知らなかった。
クリスの記憶にある彼女は、誰よりも剣術に長けた剣士だったが、魔法を使って見せた事は一度もない。レッドフォードの家で魔法を発現させたのは、クリスだけのはずだった。
全てを知ったクリスにとって、メアリの全てが屈辱的である。剣技でも魔法でも敵わない、最強の剣士を目指す彼の前に立ち塞がる、最大最強の壁。彼女を超える事が出来ない限り、六剣の末裔全員を倒そうが、最強の頂きには辿り着けない。
あまりの悔しさを前に、剣を強く握り締め、砕かんばかりの勢いで歯を噛むクリスを、メアリが憐れむように見ている。クリスがここまで彼女に屈辱を覚えたのは、これが初めてだった。
出血する脚の苦痛すらも忘れ、我が姉を倒したいという怒りと闘志が、クリスを戦いへと突き動かす。その熱を肌で感じ取ったメアリが、嬉しそうに笑みを浮かべ、クリスの間合いに歩を進めていった。
「ふふっ⋯⋯、やっとお姉ちゃんを本気で斬ってくれる気になったわね」
「メアリ⋯⋯! 何の真似だ!?」
「貴方の脚を使えなくしてしまったのは私だもの。これだけ近ければ届くでしょう?」
メアリはクリスの間合いに入り込み、彼の目の前で立ち止まった。その場から動けないクリスでも、自分の刃を届かせられる距離である。しかもメアリは、クリスの剣を一切防ぐ気がなく、いつでも仕掛けてこいと言わんばかりの状態だった。
「動けない今の貴方でも、この距離なら剣技を打ち込める。でも、その脚でちゃんと使える技は限られるわ」
「どこまでも馬鹿にしやがって⋯⋯! 喰らいたい技があるなら言って見ろ!!」
「そう来なくっちゃ♪ じゃあ、久しぶりに貴方の演舞を見せて」
メアリの口にした光龍の技の名。それはクリスが、未だ会得できていないと思っている唯一の技だ。
それが分かっていて、メアリはクリスにその技を使えと言うのだ。クリスの師とも言えるメアリが、彼の成長を知るために、技が放たれるのを待っている。
彼女の言う通り、今のクリスが満足に放てる技は限られていた。確かに「演舞」ならば、負傷した左脚の負担を最小限に放つ事もできる。最初からメアリは、この状況を作り出す事が目的だったのだ。
未完成故に、師である姉の前では絶対に使わない技。その技を使わせるためだけに、彼女はクリスをここまで追い込んだ。
「⋯⋯⋯上等だ。俺を昔のままだと思うんじゃねぇぞ」
「さあ、来なさい。貴方の光龍で、私を斬って見せて」
クリスは剣を構え、必殺の一撃を放つべく深く呼吸した。対するメアリは、変わらず構えは取らない。防御する気も、技を妨害する気もなかった。
明らかにクリスの力を侮った振る舞いだが、既に彼はこの程度の挑発で心を乱す事はない。全神経を集中させ、全てを懸けたこの一撃で、我が姉を斬る。今のクリスは、それだけしか考えていない。
深呼吸して集中力を最高まで高め、握る己の剣に彼の感情の全てが乗る。我が身が剣と一体になった瞬間、弾かれたようにクリスが動く。
「いくぜ! 光龍演舞っ!!」
それは、まるで舞い踊るように剣を操る必殺の剣技。振るわれた刃が蝶の羽ばたきの様に、柔らかく軌跡を描いたかと思えば、刃は確実に相手の身体を捉える。
クリスもまた、剣と共に戦場に舞う。燃え盛る彼の闘志を体現するかの如く、美しくも何処か荒々しい。踊りながら剣を振るうクリスの美技は、相手を魅了すると同時に命を奪う、死の演舞だ。
だが、舞い踊って刃を振るったクリスの全ての攻撃は、一撃もメアリに届かなかった。メアリはクリスの剣を全て見切り、その場から動く事なく、全ての技を最小限の動きだけで躱して見せたのだ。
クリスの剣は掠るどころか、彼女の髪の毛一本、斬り落とす事させ叶わなかった。この間合いで、この無防備を晒した相手の前で、自分の技が通用せず驚愕するクリスを、憐れむ瞳でメアリが見つめている。
「これが貴方の演舞? こんなものを、光龍の演舞と呼ぶつもり?」
「っ⋯⋯⋯!」
「貴方のそれは演舞じゃない。ただ剣を振りまわして敵を斬ろうとしてるだけ。まだ貴方は、光龍演舞の本質を理解できていない」
そう言うとメアリは、絶句しているクリスの眼前で構えを取った。クリスが放った演舞と同じ構えを取り、猛烈な殺意を彼に向けたメアリ。技が来ると悟ったクリスが、急いで彼女の剣を防ごうと構えを取るが、メアリはその防御の構えごと打ち破るべく剣技を放つ。
「我が舞に酔え。光龍演舞」
メアリの身が剣と一体になり、蝶の羽ばたきの様に軽く柔らかい舞が、クリスの目の前で行なわれる。その舞から繰り出される刃を、クリスは自身の剣で防ぎ弾こうとするが、防げたのは初めの二撃のみであった。
クリスには見切れている剣の動きではある。自身が放つ技より速い剣でもない。それなのにクリスは、眼前で踊り舞う彼女の剣を防げず、次々と我が身を斬り裂かれていくのだ。
蝶のように舞い、蜂のように刺すという言葉を体現した技。幼き頃のクリスが憧れた、メアリの美しい演舞。防御が間に合わず、全身を斬り裂かれ続けるクリスだったが、前より磨きのかかった彼女の舞に、自分の演舞の未熟さを痛感させられている。
振るわれる切っ先は追えているのに、刃で弾こうとした時には、既に剣で斬られている。自分の目の前で、ただ得物と共に舞い踊っているだけの剣が、どうやっても防げず、そして躱せない。
そこでようやく、クリスは悟った。剣で防げないのも、そもそも躱せないのも、彼女の速さや剣捌きに負けているからではない。我が姉が披露する演舞に、自分が心奪われてしまっているのだ。
思わず魅了されてしまっているがために、剣を振るう腕が遅れ、全身も思うように動かせない。クリスにとって最大の壁であり、彼が思う最強の剣士たる彼女が振るう、この世で最も美しいと思わせる剣技に、目が離せず酔い痴れてしまう。
メアリと共に舞い踊る剣がクリスに魅入られながらも、確実に彼を切り刻み、その命を奪おうとしている。滑らかに、流れるような動きで、柔らかな舞を踊るメアリが、いよいよ舞の終わりに移る。
下方からの斬撃でクリスの胸を斬り裂き、返す切っ先は下に向け、彼の右腿を刺し貫いた。演舞を踊り終えたメアリは汗一つかかず、女神すら嫉妬するであろう微笑を浮かべ、舞に魅入られてしまった我が弟に決着を告げた。
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※カクヨムとなろうにも投稿しています
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
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世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
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※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
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