If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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戦力再建計画

太平洋の天王山

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1944年9月下旬、真珠湾。
太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ提督の司令部会議室は
深い緊張感に包まれていた。窓の外に広がる青い海は穏やかだが
室内の空気は張り詰めている。
会議の議題は、来るべきマリアナ諸島侵攻作戦だ。
司令官たち、レイモンド・スプルーアンス提督とマーク・ミッチャー提督は
作戦の最終確認を行うため、地図を前に議論を交わしていた。

彼らの顔には、今なお癒えぬ傷跡が残っている。
関東沖海戦でハルゼー艦隊が壊滅的な打撃を受けたあの悪夢は
彼らの心に深く刻まれていた。しかし、その敗北の記憶は
彼らを臆病にさせることはなかった。
むしろ、二度と同じ過ちを繰り返さないという、確固たる決意へと変わっていた。

「日本の抵抗は、予想を上回るものだった。
 特に、彼らの航空隊の練度と、一部の新型機は
 我々が認識していたよりも遥かに高い能力を持っていた。
 今回は、そうした不確実性を排除し、圧倒的な力で彼らをねじ伏せる必要がある。」

スプルーアンスは、いつものように冷静沈着な声で語る。
彼は、関東沖海戦での経験から、日本の戦力を決して侮ってはいけないことを痛感していた。


情報部からの最新報告が、会議室の空気をさらに重くした。

「日本軍は、マリアナ諸島に大量の航空隊を集中させている模様です。
 偵察機が捉えた情報によれば、零戦や一式陸攻、彗星
 そして天山といった機種の存在が確認されています。
 これは、彼らがこの地を、次の決戦の場と定めている証拠です。」

ミッチャーは、その報告を聞いて、舌打ちした。

「彼らは、前回と同じことを狙っている。
 本土の基地航空隊で我々の空母を叩き、その隙に艦隊を壊滅させるつもりだろう。
 我々が最初にやるべきことは、彼らの航空隊をグアムの滑走路ごと破壊することだ。」

ミッチャーは、攻撃的な性格で知られている。
彼は、真っ先に敵の航空兵力を叩き潰し、上陸作戦の安全を確保することを主張した。

一方、スプルーアンスは、より大きな視野で考えていた。
彼は、マリアナ諸島の重要性を再確認する。

「マリアナは、B-29による日本本土爆撃の足がかりとして
 絶対に必要な拠点だ。日本もその重要性を理解している。
 だからこそ、彼らはここに全力を集中させている。
 我々は、この戦いで、彼らの航空戦力を根こそぎ奪う。
 そうすれば、今後の戦争は我々のペースで進められるだろう。」


作戦は、スプルーアンスの慎重な計画と
ミッチャーの攻撃的な姿勢が融合したものとなった。

第一段階:基地航空隊の殲滅

まず、米機動艦隊は、グアム、サイパン、テニアンの日本軍基地を徹底的に空襲する。
艦載機は、日本の航空隊が発進する前に
滑走路を破壊し、駐機中の機体を炎上させることを第一目標とする。
この空襲には、関東沖海戦で失われた戦力を遥かに上回る数の航空機が投入される。

「日本軍の搭乗員は練度が高い。しかし、我々には数がある。
 一機撃墜されても、その倍、その三倍の航空機を送り込むことができる。
 これは、消耗戦ではない。一方的な殲滅戦だ。」

ミッチャーは、そう言って自信に満ちた表情を見せた。

第二段階:日本の機動艦隊の迎撃

日本が、空母を含む機動艦隊を来援させた場合、それを迎撃する。
スプルーアンスは、この段階を最も警戒していた。

「日本が、我々の艦隊に気づかないはずがない。
 彼らは必ず、我々を叩きにくる。だが、我々は彼らを待たない。
 我々の艦載機は、空母を徹底的に叩き、彼らの航空戦力を根こそぎ奪う。」

スプルーアンスは、関東沖海戦で受けた教訓を、作戦計画に反映させていた。
彼は、日本が再び空母と基地航空隊を連携させてくる可能性を考慮し
それを上回る圧倒的な物量で応戦するつもりだった。

第三段階:上陸作戦の援護

日本の航空戦力を完全に無力化した後
海兵隊によるグアム、サイパン、テニアンへの上陸作戦を援護する。

「今回の作戦は、すべてが完璧に進むだろう。日本に二度目の奇跡は起こせない。」

幕僚の一人が、そう言って、作戦の成功を確信した。


彼らが作戦会議を終え、港を見下ろす高台に立つと
そこには、信じられないほどの艦隊が停泊していた。
関東沖海戦で失われた艦艇を遥かに上回る
圧倒的な数の軍艦が、真珠湾にひしめき合っていた。

新鋭のエセックス級空母、『ホーネットII』『フランクリン』
『バンカーヒル』『ワスプII』などが、その威容を誇示していた。
それぞれの空母は、70機以上の艦載機を搭載し、いつでも出撃できる状態にあった。

そして、その護衛にはアイオワ級戦艦『ミズーリ』『ウィスコンシン』が控えていた。
彼らの40.6cm主砲は、日本の艦艇を一撃で沈めることができるだろう。
さらに、多くの巡洋艦や駆逐艦が、これらの主力艦を守るために、整然と並んでいた。

スプルーアンスは、その光景を見て、静かに言った。

「これが、我々の本気だ。日本は、この圧倒的な物量の前に、ひれ伏すだろう。」

彼の言葉は、自信に満ちていた。
彼らは、もはや敗北を恐れてはいなかった。
彼らが恐れていたのは、この巨大な艦隊を動かすことによって生じる
膨大な犠牲だけだった。


作戦計画が最終決定され、艦隊は出撃準備に入った。
司令官たちの間に、もはや迷いはなかった。
彼らは、この圧倒的な戦力をもってすれば
いかなる敵も打ち破ることができると確信していた。

マリアナは、日本の最後の希望だ
しかし、彼らにとって、それはただの障害物に過ぎない。
彼らは、このマリアナの地を、日本海軍の墓場とすることで
太平洋での完全なる勝利を確定させるつもりだった。

「マリアナは、日本の墓場となるだろう。」

スプルーアンスの静かな決意は
彼の艦隊に、そして、全米の将兵に、確固たる勝利の予感をもたらしていた。
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