If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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総力戦

二航戦大破

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空には、地響きのような米軍機の爆音が響き渡った。
ソロモンの分厚い雲を突き破って現れたのは、
グラマンF4Fワイルドキャット戦闘機32機、TBFアベンジャー雷撃機12機、
TBDデバステーター雷撃機12機、そしてSBDドーントレス急降下爆撃機24機からなる、
総勢80機に及ぶ大編隊だった。彼らは
怒れる復讐の女神の使者のごとく、日本の空母へと殺到してきた。

「敵機、来ます!二航戦に集中!」

悲痛な叫びが無線を飛び交う。米軍のパイロットたちは
無線傍受とレーダーによって、日本の空母の位置を正確に把握していた。
彼らの狙いは、明確だった。
日本の残された母艦を叩き潰すこと。それが、彼らに与えられた使命だった。

米軍攻撃隊の先頭に立つグラマンF4Fのパイロット
ジョン・ミラー大尉は、愛機を駆りながら、眼下の日本の空母を睨みつけた。

「よし、あそこだ!目標は日本の空母二隻!奴らに母艦の借りを返してやる!」

ミラー大尉は、無線で叫んだ。彼の脳裏には
日本の第一次攻撃隊の攻撃で破壊された母艦と、友人の顔が鮮明に焼き付いていた。
日本軍が、真珠湾への奇襲を回避したとはいえ、戦争が始まってから
多くの米兵が太平洋で命を落としていた。
彼らは、その報復のために、今、ソロモンの空を飛んでいた。


日本の護衛艦隊は、来るべき猛攻に備え
熾烈な対空砲火を撃ち上げた。駆逐艦の艦橋では
対空見張員が叫び、対空砲の照準手が懸命に敵機を追いかける。

「方位三百!高角砲、撃て!」

艦橋に響く号令と共に、駆逐艦「雪風」の12.7センチ高角砲が火を噴いた。
砲身が唸りを上げ、砲弾が次々と空へと吸い込まれていく。
炸裂する対空砲弾は、空に無数の黒い煙の輪を描き、米軍機を包み込もうとする。
しかし、米軍機は、その煙の輪を巧みにすり抜け、日本の艦隊へと猛進してきた。

「機銃分隊、撃ち方始め!」

小型の機銃も、火を噴いて対空弾をばら撒く。
兵士たちは、機関銃の熱で焼ける砲身を顧みず、ひたすら引き金を引いた。
甲板上には、薬莢が降り注ぎ、火薬の焦げ付いた匂いが充満する。

高速戦艦「金剛」型四隻も、その巨体を揺らしながら
主砲すらも対空に転用し、火力を集中させた。
主砲の三式弾が唸りを上げ、巨大な砲弾が空中で炸裂すると
まるで小さな花火大会のように見えた。その爆風は、周囲の海水を揺らし、護衛の駆逐艦を波立たせた。

しかし、米軍機は、その圧倒的な数と
熟練したパイロットの技量によって、日本の対空砲火の網をすり抜けてくる。

「くそっ!全然当たらない!」

ある高角砲員が、歯噛みしながら叫んだ。
彼らは、文字通り血を吐くように撃ち続けた。砲弾の残りが少なくなるたびに
その焦りは募った。撃墜数は、懸命な迎撃にもかかわらず、驚くほど少なかった。
米軍機の巧みな回避行動と、一瞬の隙も与えない波状攻撃に、
日本の対空砲火は、効果的なダメージを与えることができなかったのだ。


そして、米軍攻撃隊は、その全ての力を「飛龍」と「蒼龍」の
二隻に集中させた。彼らは、日本の航空戦力の中心を狙い撃ちにしてきたのだ。

まず、SBDドーントレス急降下爆撃機が、高空から垂直に
「蒼龍」めがけて急降下を開始した。地獄のようなサイレンが鳴り響き
爆弾が切り離される。

「直撃!蒼龍に!」

「蒼龍」の飛行甲板に、1000ポンド爆弾が4発も命中した。
衝撃波が艦橋を襲い、艦体が大きく揺れる。爆弾は、飛行甲板を突き破り
格納庫で大爆発を起こした。

「火薬庫に引火!だめだ、消火不能!」

艦内から悲鳴と怒号が飛び交う。爆弾の衝撃と
格納庫内の航空燃料や弾薬の誘爆により、「蒼龍」の飛行甲板は一瞬で燃え上がり
大破した。黒煙が空高く舞い上がり、飛行甲板は見る影もなく崩壊した
艦載機の離着艦は、もはや不可能となっていた。

その直後、TBFアベンジャー雷撃機が、低空で「蒼龍」の
舷側めがけて魚雷を放った。白い航跡が水面を走り
次々と「蒼龍」の艦体に命中する。

「魚雷命中!三本!」

凄まじい衝撃が艦全体を揺さぶる。浸水が始まり
「蒼龍」は左舷に大きく傾き始めた。彼女の雄姿は
瞬く間に炎と煙に包まれ、その場で航行不能となった。

一方、「飛龍」もまた、同様の猛攻に晒されていた。

「飛龍」の飛行甲板に、1000ポンド爆弾が1発命中した。
直撃弾は少なかったが、その一発が、格納庫内の航空燃料や
弾薬の貯蔵エリアに致命的な誘爆を引き起こした。

「後部格納庫、誘爆!弾薬に引火しました!」

轟音と共に、艦後部から巨大な火柱が噴き上がった。
爆風は、鋼鉄の飛行甲板をねじ曲げ、艦後部の飛行甲板は完全に吹き飛び、
使用不能となった。艦体が大きく揺れ、火災は瞬く間に艦全体へと広がっていく。
艦載機は、炎上する甲板の上で次々と爆発し、黒煙が空を覆い尽くした。

「飛龍」もまた、航行不能となり、その場に留まるしかなかった。
ミッドウェーの激戦を生き抜いた二航戦の二隻は、
このソロモンの海で、米軍の猛攻の前に、その輝きを失いかけていた。


しかし、日本の航空隊は、まだ全てを失ったわけではなかった。

幸運にも、第五航空戦隊の「瑞鶴」と「翔鶴」は
突如として発生したスコールの中に身を隠すことに成功していた。
激しい雨と雲が、米軍機の視界を遮り、彼女たちは難を逃れることができたのだ。

「全機、急げ!第二次攻撃隊、即時編成!」

「瑞鶴」の艦橋で、司令長官は震える声で叫んだ。
このまま二航戦を見捨てれば、日本の海軍力は壊滅する。
残された五航戦が、米軍の攻撃隊を叩き潰さなければ、日本の未来は閉ざされる。

整備員たちは、疲労困憊した体に鞭打ち、怒涛の勢いで作業に取り掛かった。
第一次攻撃隊の帰還機を燃料補給し、再武装を行う。
損傷が少ない機体を優先し、次々と爆弾や魚雷を懸架していく。
パイロットたちは、息つく暇もなく、再びコックピットへと乗り込んだ。

空母の飛行甲板には、怒りにも似た静かな闘志が満ちていた。
彼らの仲間が、今、ソロモンの海で炎上している。
その復讐のために、彼らは飛び立つ。

そして、スコールが去り、再び空が白み始めた頃、
「瑞鶴」と「翔鶴」の飛行甲板から、第二次攻撃隊が轟音と共に発進した。

編成は、零戦39機、九七式艦上攻撃機20機、九九式艦上爆撃機24機
そして、索敵と爆装を兼ねる試製二式艦上偵察機4機。総勢87機からなる
日本の希望を乗せた大編隊だった。

彼らは、ソロモンの空へと舞い上がり、燃え盛る「飛龍」「蒼龍」の方向へと向かった。
彼らの瞳には、米空母への猛烈な怒りと、失われた仲間たちの無念を晴らすという
強い決意が宿っていた。この一撃が、この「た号作戦」の
そして太平洋戦争の行方を決める、最後の賭けとなることを
彼らは肌で感じていた。
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