If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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国内統合

丁型海防艦

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1943年、太平洋の戦況が激しさを増す中
日本の造船所では、従来の艦隊決戦を支援する
「準駆逐艦」とも言うべき千鳥型のような海防艦とは異なる
新たな艦艇の建造が急ピッチで進められていた。それは
連合艦隊司令長官 兼 海軍省軍務局長である高倉義人中将が推進する
シーレーン防衛に特化した、より簡略化された丁型海防艦である。
この新型艦艇の設計思想は、これまでの日本海軍のドクトリンとは大きく異なり
日本の置かれた絶望的な現実と、高倉の冷徹な戦略眼を反映したものだった。

マーシャル諸島やニューギニアでの激戦の裏で
日本は新たな、そしてより根深い脅威に直面していた。
それは、米国潜水艦による容赦ない通商破壊だった。真珠湾攻撃以降
着実に増強されてきた米潜水艦隊は、その性能と練度を向上させ
日本の生命線であるシーレーンを次々と寸断し始めていた。
すでに、各地の港では輸送艦やタンカーの被害が頻繁に報告され
日本の継戦能力に不可欠な石油、ゴム、ボーキサイト
食料といった南方からの重要資源の輸入が滞り始めていたのだ。
南方資源地帯からの補給路が断たれれば、日本は持久戦はおろか
短期間での継戦も不可能となる。この事態に対し
日本の対潜能力の抜本的な向上が喫緊の課題となっていた。
しかし、日本の造船能力と資源は限られており
従来の大型艦艇を大量建造する余裕はもはやなかった。


丁型海防艦は、その設計思想からして、従来の艦艇とは一線を画していた。
戦時下における迅速な量産と、限られた資源での効率的な運用を
最優先に考え抜かれた結果が、その簡素な要目にも表れている。
これは、「必要十分な性能を、可能な限り低コストで大量に」という
高倉が掲げた設計哲学の具現化だった。

丁型海防艦 要目

全長: 69.5m 
全幅: 8.6m 
機関出力: 2500馬力 
速力: 18ノット 
武装:45口径12センチ高角砲 単装2基
25mm三連装機銃2基
三式迫撃砲単装1基

対潜兵装:
三式爆雷投射機12基
爆雷投下軌条1基
二式爆雷120個
これらの要目からもわかるように、丁型海防艦は
高速力や重装甲、複雑な対空兵装は求められていない。
その主眼は、あくまで潜水艦を確実に探知し、撃破することに置かれている。
最新のソナー(探信儀)や水中聴音器を優先的に搭載し、
潜水艦の早期発見に努めることが、対潜戦闘の第一歩とされた。
対潜兵装の充実ぶりは、まさにこの艦の存在意義そのものだった。


しかし、この丁型海防艦の最も特徴的な点は、その徹底した簡略化と
それに伴う極めて割り切られた設計思想にある。
これは、従来の軍艦設計の常識を覆す、常軌を逸した判断とさえ言えるものだった。

丁型海防艦は、驚くべきことに、損傷管制や注排水装置を搭載していない。

これは、従来の軍艦設計の常識からすれば信じられない判断である。
通常、軍艦は被弾や浸水に備え、防水区画の細分化や
注排水ポンプ、消火設備などを充実させることで、たとえ損傷を受けても沈没を回避し
戦闘を継続できる能力を持たされている。これを「生残性」と呼ぶ。
しかし、丁型海防艦は、その一切を省いたのだ。艦の内部は極めて簡素な構造となり
防水隔壁の数も最小限に抑えられた。艦橋や機関室といった主要区画の防御力は
最低限の小口径機銃弾防御に留まり、魚雷や砲弾の直撃を受ければ、ひとたまりもない。

その背景には、日本の切迫した戦時下の現実と
高倉が掲げる「量による防衛」の思想がある。
一隻の艦を修復する時間も資材も惜しい。ドックは限りがあり
熟練工も不足している。損傷した艦を修理するよりも
新しく建造する方が、全体の防衛能力を高める上では
効率的だという、極めて冷徹な判断だった。

「被弾し大破すれば、乗組員はそのまま艦を捨てて
 次に竣工した艦に乗るのだ。躊躇は許されない。それが日本の生命線を守る道だ」

この言葉は、高倉が造船所の幹部たちに言い放ったものだ。
彼の言葉には、極限状態における合理性と、兵士たちの命をも顧みない非情さ
そして日本の未来を守るという強い使命感が込められていた。
設計を全く同じにすることで、慣熟訓練を行う必要もなく
新造艦が完成すればすぐに前線に投入できる。乗員たちは
沈没艦から脱出し、次の同じ設計の艦に乗り換えれば
すぐに任務に復帰できるという、まさに「艦は使い捨て、乗員は使い回し」という
究極の量産効率化が図られた。これにより、短期間に大量の対潜艦艇を建造し
飽和的な防衛網を構築するという、高倉の戦略思想が具現化されたのである。


丁型海防艦の建造は、日本の造船所にとって新たな挑戦だった。
簡略化された設計は、熟練工でなくとも短期間での建造を可能にし
各地の小規模な造船所でも生産が開始された。従来の大型軍艦建造に必須だった
特殊な設備や技術を要しないため、地方の造船所や民間の工場も動員され
全国的な生産体制が敷かれた。資材も、従来の大型艦艇に比べてはるかに少なくて済むため
鉄鋼、燃料、各種部品といった限られた資源を最大限に活用できる。
これにより、月産数隻という、それまでの日本の造船業界では
考えられなかったペースでの量産体制が確立されていった。

米国潜水艦による日本のシーレーンへの攻撃は、今後さらに激化するだろう。
米海軍の潜水艦は、日本の護衛艦艇が手薄なことを熟知しており
南方の輸送船団を狙い撃ちにしてきていた。日本が継戦能力を維持するためには
食料、石油、ゴム、ボーキサイトといった
南方からの重要物資の供給を確保することが不可欠だ。
丁型海防艦は、そのための最後の砦となる。彼らは、時には単独で
時には数隻で船団を組み、広大な太平洋を横断する
日本の輸送船団の護衛任務に就くことになる。

高倉は、この簡素な海防艦に、日本の未来を託していた。
それは、かつてのような華々しい艦隊決戦を夢見る時代は終わり、
地道で過酷なシーレーン防衛こそが、日本の生き残りの道であるという、
彼の冷徹な現実認識の表れでもあった。彼の頭の中には
ジェット機やロケット機の開発といった未来の戦力構想と並行して
今そこにある潜水艦の脅威から日本の生命線を守るという、喫緊の課題が常にあった。

これから、太平洋の海は、高速で魚雷を放つ米潜水艦と
それを追尾し爆雷を投下する無数の丁型海防艦との、熾烈な死闘の舞台となるだろう。
この小さな艦が、日本の生命線を守り抜けるかどうかが
日本の命運を握っていた。丁型海防艦のクルーたちは
常に死と隣り合わせの任務に就くことになるが、彼らの献身こそが
日本の未来を繋ぐ唯一の希望だった。彼らは、英雄的な個々の活躍ではなく
「数」と「割り切り」という
新たな戦略思想の象徴として、太平洋の荒波に立ち向かうことになるのだ。
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